スピッツが僕たちに見せてくれた世界  vol. 11

Review

「亀田誠治×スピッツ=最強」時代の始まり-10thアルバム『三日月ロック』

「亀田誠治×スピッツ=最強」時代の始まり-10thアルバム『三日月ロック』

スピッツが結成30周年を迎え、シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』を届けてくれた。
世代を超えて愛され続けている音楽を作ることを成し得たアーティストが到達できる30周年。聴く人の喜怒哀楽、それぞれの想いにもそっと寄り添い、潤いを与え続けているスピッツが僕たちに見せてくれた世界をオリジナルアルバム単位で1枚ずつ振り返っていきたい。
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』に収録されているシングルの味わいもグッと増し、もっとスピッツを知りたくなってくれることを願って。

#11 10th Album「三日月ロック」(2002年9月11日発売)

ずっと変わらないのがスピッツ。いつも同じなのがスピッツ。なのに飽きないのがスピッツ。そこがすばらしいスピッツ。
と、普段思っているが、こうして1枚1枚じっくり聴いていくとやっぱりそれぞれ違うんだなあ、と、あたりまえのことをつい思ってしまう。特に前作『ハヤブサ』と本作『三日月ロック』の違いの大きさは、スピッツの歴史の中でもトップかもしれない。

棚谷祐一、石田ショーキチと1枚ずつ一緒に作って、このアルバムで組んだプロデューサー、亀田誠治がスピッツにとって決定打になった。ということは、この『三日月ロック』から始まって、『スーベニア』『さざなみCD』『とげまる』『小さな生き物』『醒めない』と、現在までこのタッグが続いているという事実が示している。要は、現在のスピッツの礎になっているのがこのアルバムだ、と言える。

ポップ・ソングとしての骨格がしっかりしていながら、同時にバンド・サウンドならではのダイナミズムに満ちている。ギター、ベース、ドラムが軸になったアレンジで、できうる限りよけいなものは入れないで、どこまで洗練されたもの、拓かれたものを作れるのか。という亀田誠治のプロデュース方法は、おそらくスピッツというバンドにとって、ものすごく適していたのだろう。

「さわって・変わって」とか「ミカンズのテーマ」とか「ババロア」とか「ハネモノ」といった曲タイトルを見るだけであきらかな、「地平を彩るのは ラブホのきらめき」(ローテク・ロマンティカ)、「細胞 全部に与えられた 鬼の力を集めよう 可愛いつもりの 醜いかたまり まだ これから」(けもの道)といったそれぞれの歌詞を見ればもっとあきらかな、誰はばかることなく全開になっているマサムネワールドな歌詞も、自然な抑揚でそれを発していくメロディも、その亀田式(と言っていいと思う)サウンド・プロダクトと、とてもよくなじんでいる。相性がすばらしい、この聴きやすく、心地よく、でもエッジも立っているバンド・サウンドと。

25th Single「さわって・変わって」(2001年12月12日発売)

ただ、これ、制作上、逆の方向からこうなったというところもあるようだ。何が「逆の方向から」なのかというと、2007年に バンド結成20周年を記念して刊行されたスピッツのヒストリーブックによると、マサムネに対して、歌詞までちゃんと完成した状態でレコーディングに入ることが求められたという。それが亀田誠治のバンドをプロデュースする時の流儀だそうだ。
って、じゃあ普段は歌詞ない状態でレコーディング始まっちゃうの?と思う人もいるかもしれないが、それ、どこのバンドでも、どこのソロ・アーティストでも、わりと普通のことです。ただ亀田誠治的にはそれはダメ、それだと曲にふさわしいアレンジやサウンド・プロデュースができない、ということだったようだ。なるほど、だからこういうアルバムを作れるのか、という話です。

なお、12曲目の「旅の途中」は、前述の20周年記念本の書名になりました。
それから、「さわって・変わって」の「天神駅の改札口で 君のよれた笑顔」という歌い出し、当時何か、とてもインパクトがあったのを憶えています。
これまで歌詞に、地元福岡の地名を出したりすることがあんまりなかったので、ちょっとびっくりした、というのと、「『よれた笑顔』ってなんじゃい! ああ、マサムネだなあ」というので。

文 / 兵庫慎司

楽曲/DISCOGRAPHY

10th Album
三日月ロック

発売日:2002年9月11日
品番:UPCH-1172

【収録曲】
01. 夜を駆ける
02. 水色の街
03. さわって・変わって
04. ミカンズのテーマ
05. ババロア
06. ローテク・ロマンティカ
07. ハネモノ
08. 海を見に行こう
09. エスカルゴ
10. 遥か(album mix)
11. ガーベラ
12. 旅の途中
13. けもの道

リリース情報

スピッツ

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

2017年7月5日発売
(3CD)UPCH-7329/31
¥3,900+税

1991年のデビューシングルから昨年2016年4月に発売されたシングル曲「みなと」までの全シングル曲、そして「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌としても話題となった配信限定シングル曲、さらには、新たにレコーディングをした新曲3曲を加えた全45曲収録のCD3枚組アルバム。

【収録曲】
【DISC 1】CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection
01.ヒバリのこころ
02. 夏の魔物
03.魔女旅に出る
04.惑星のかけら
05.日なたの窓に憧れて
06.裸のままで
07.君が思い出になる前に
08.空も飛べるはず
09.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット

【DISC 2】CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection
01.夢じゃない
02.運命の人
03.冷たい頬
04.楓
05.流れ星
06.ホタル
07.メモリーズ
08.遥か
09.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌

【DISC 3】CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
01.魔法のコトバ
02.ルキンフォー
03.群青
04.若葉
05.君は太陽
06.つぐみ
07.シロクマ
08.タイム・トラベル
09.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→ 

2006年に発売された2枚の『CYCLE HIT』も2017年最新のマスタリングをして再発売!

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2129 ¥2,500+税

CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2130 ¥2,500+税

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2131 ¥2,500+税

『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、そして『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』も、今回の新たなアイテムに合わせ、2017年の最新スピッツサウンドを表現する為に、世界最高峰の「Marcussen Mastering」にてリマスタリングを遂行。7月5日に再発売。

アナログ盤も“重量盤”で7月5日同時発売!

ファーストアルバム『スピッツ』から昨年7月に発売された最新アルバム『醒めない』までのオリジナルアルバム15作品に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた全16作品をアナログ盤で発売。

ライブ情報

『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』

8月05日(土):長野県・長野・ビッグハット
8月06日(日):長野県・長野ビッグハット
8月11日(金・祝):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月12日(土):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月16日(水):東京都・日本武道館
8月17日(木):東京都・日本武道館
8月19日(土):東京都・日本武道館
8月23日(水):神奈川県・横浜アリーナ
8月24日(木):神奈川県・横浜アリーナ
9月02日(土):福岡県・マリンメッセ福岡
9月03日(日):福岡県・マリンメッセ福岡
9月16日(土):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月17日(日):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月30日(土):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10月1日(日):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも大成功。
2017年結成30周年を迎え、7月5日は「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」を発売、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も敢行中と精力的に活動を展開している。
オフィシャルサイトhttp://spitz.r-s.co.jp/

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