LIVE SHUTTLE  vol. 194

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aiko オープニングからクライマックス級の盛り上がり。aikoに心をえぐられたツアー・ファイナルを報告

aiko オープニングからクライマックス級の盛り上がり。aikoに心をえぐられたツアー・ファイナルを報告

aiko「aiko Live Tour『Love Like Rock vol.8』」
2017年9月7日 Zepp Tokyo

観る者の期待と高揚感を煽る幻想的で美しいオープニング映像のラストにツアータイトルが映し出されると、そこには真っ赤な“Final”の文字が。全国のライブハウスを巡ってきたLove Like Rock Vol.8はこの日のZepp Tokyo公演で31本目、ついに最終日を迎えた。

高らかなフェイクを合図に幕が落ちると、赤いワンピースに身を包んだaikoが登場。1曲目は「夢見る隙間」だ。一瞬にして沸騰した会場の熱を全身で受け止めながら響かせる歌声が艶っぽい。髪を振り乱し、衣装を翻しながらステージ上を飛び跳ねる彼女の表情は本当に楽しそうで、観ているこちらまで笑顔になってくる。「最終日、みなさんよろしくお願いします!」とあいさつした後は「milk」へ。イントロが始まるや、オーディエンスはみんな手を頭上に掲げ、激しくジャンプ。揺れるフロアからは汗が水蒸気になって立ち上り、うっすら白いモヤがかかったような“♪雪もミルクも霞む”状態に。暑い!

激しくレーザーが飛び交う中、スタンドマイクを使ってクールに、でも激しく熱いロックを届けた「相合傘」、花道の先に用意されたセンターステージで観客たちを煽りまくり、さらなる一体感を生み出した「Power of love」と、オープニングからのわずか4曲にしてクライマックス級の盛り上がりを見せる。バンド陣の演奏もしょっぱなから暴れまくっていたし、たっぷりのフェイクを交えて感情をはじけさせるaikoの歌もすごかったし。だが、続くMCでは「心の中をえぐるような、そんな1日にしたいと思います。すげぇ1日にしたいと思います!」と宣言し、さらなるワクワクを約束してくれるあたり、さすがaiko。

息つく暇も与えず「なんて一日」「恋愛」「プラマイ」と、タイプの異なる楽曲を並べながら聴き手の元へと様々な色のせつない感情を注ぎ込んでいく。ライブならではの生々しい息遣いを感じさせるaikoの歌声は、どんなに興奮状態で聴いていたとしてもスッと心の奥底にまで染みてくるから不思議だ。

フロアを飛び交う様々な言葉を優しく拾っていき、観客一人ひとりと親密に会話を交わしていくMCタイムを挟んだ後の、「ドライヤー」からのパートも良かった。ライブ開始から激上がりしてきたテンションをほんの少し抑えるように、「アンドロメダ」ではミラーボールが光の粒を降らせる美しい演出を盛り込んでみたり、バラード「えりあし」では情感に満ちた歌声を凛とした立ち姿でまっすぐに届けてみたり。ライブ全体に巧みな緩急をつけつつも、歌の持つ力や、歌に込められた想いの強さによって観る者の体温を決して冷めさせないその選曲はほんと見事。

ライブは止まることなくぐんぐん続いていく。ジャジーな雰囲気で大人のムードを感じさせた「雨踏むオーバーオール」、光と音が弾む中でお約束の3連クラップが楽しい「恋のスーパーボール」、言葉を畳みかけるようにメロディへと乗せていく「明日の歌」を連続で。ざっくり言うならば初期、中期、そして最近の曲を並べたこのパートの3曲は、aikoの歴史をギュッと凝縮したような印象があった。「変わりたくない」と常々公言している彼女だが、この3曲だけを見ても進化という名の変化をしっかりと遂げていることは明確だし、生まれてから時間が経った曲たちを今の彼女が歌うことで新たな響きも生まれていたように思う。だが、それぞれの曲が持っている瑞々しさは間違いなく普遍的であり、どれだけ時間が経っても色あせることはない。それこそがaikoというアーティストの変わらない本質であり、大きな魅力、そんなことをあらためて実感した次第です。

ライブアーティストとしての大発明、「男子! 女子! そうでない人!」のコール&レスポンスで始まった怒涛の後半戦。ぴょんぴょんと楽しげに飛び跳ねてみたり、軽やかにステップを踏んでみたり、お立ち台に片足をのせてオーディエンスを激しく煽ってみたり、パフォーマンスのテンションをさらに熱くしながら「beat」「小鳥公園」「舌打ち」「赤いランプ」といったキラーチューンを連発していく。aikoの歌も、バンドの演奏も、照明の演出も、その瞬間を楽しみつくそうと我を忘れて手を突き上げ、ともに歌う観客たちも、すべてがカオスとも言える様相を呈している。みんな汗だくで、またモヤがかかってきた状況だが、aikoは容赦なく「もっと! もっと!」とさらに煽りまくる。会場の温度は際限なく上昇し続けていく。そして、「これからもみんなのそばにいられますように!」というひと言の後、本編ラストとなる「be master of life」へ。センターステージに立つaikoはイントロで「あーーー!」とこれまでに聞いたことのないほどのエモい叫び声を上げ、感情を爆発させながら全力のパフォーマンスを叩きつける。曲中のブレイクでは耳をつんざくほどの大歓声が沸き起こり、それをかみしめるように笑顔で受け止めると、息を切らせながらファンの存在が自分にとっていかに大切なものであるかを切々と語っていく。その後、お立ち台に片足をドンと力強く叩きつけ、「♪だるぇが~(誰が)」と巻き舌で歌を再開させると猛烈なテンションを維持したままエンディングまで突っ走ったのだった。

鳴りやまないaikoコールに応え、「恋をしたのは」からアンコールがスタート。この曲はツアーのラストを飾った東京2デイズのみで披露されたため、聴けた人は超ラッキー。本編であれだけ激しく歌い暴れた後なのに、感動的なバラードをうっとりさせる歌声で届けられてしまうaikoの歌い手としての驚異的なパワーに圧倒される。「Loveletter」では再び激しく、エモーショナルなボーカルで会場を大きく盛り上げる。「最後にみんなに届きますように!」という言葉で始まった「キラキラ」では、黄色い照明がフロア全体を照らし出す中、キラキラとした笑顔に包まれたaikoとファンが柔らかくひとつとなり、最高にハッピーな景色を作り上げた。この段階で21曲を歌い、2時間を超えていたわけだが、最終日はまだまだ終わらない。「みなさんこんばんは、初めましてaikoです!」というあいさつでダブルアンコールへ突入。歓喜に震えるオーディエンスたちであったが、そこでaikoは衝撃の告白を。「実は私、8月12日(新潟公演)に骨折したんですよ。全治3ヵ月(笑)」。それを聞いた瞬間に巻き起こった「えーーー!」という驚きの声は、今日一のボリュームだったかも。それも当然、aikoは骨折していることをひた隠し、この日を含めて7本ものライブを行ってきたのだから。誰にもバレずに隠し通せたのは、いつもと変わらない激しいパフォーマンスをしてきたことの証明でもあるわけで。この日のライブを振り返ってみても、たくさん走っていたし、楽しげに踊ってもいたし、思い切りジャンプもしてた……「えーーー!?」って気持ちになるのも当たり前だろう。心配をかけまいと秘密にしていたのは彼女なりの優しさゆえのことだっただろうし、それを最後の最後にバラし、「私、骨折れてるんで(笑)。その分、しっかり盛り上げてください!」と冗談めかして言うことでラストスパートへの起爆剤にしてしまうあたりもまた実にaikoらしいところ。その後に歌われた「エナジー」も「mix juice」も「鏡」も、とんでもない盛り上がりを見せたのは言うまでもないだろう。

今回のツアーは東京10公演すべてを見せてもらったが、それぞれのライブで「いやー今日が一番熱かった! 今日が最高だった!」と感じていた自分に気づく。それはつまり、ライブを重ねるごとにaikoが確実に“最高”を更新していっていることのあらわれでもあって。彼女にとって通産556本目となったこの日は、555本分の経験を積み重ねたことで生み出しえた、今の“最高”が鮮烈に刻まれていたように思う。エンディングムービーのラストにあらわれた「20th」の文字が示唆するように、aikoは来年でデビュー20周年を迎える。キャリアにあぐらをかくことのない彼女は、そこでもまた自身のベストを軽やかに書き換えていくのだろう。果たして次はどんな奇跡を、どんな伝説のライブを見せてくれるのか? 今からそれが楽しみで仕方ない。

文 / もりひでゆき 撮影 / 岡田貴之

aiko「aiko Live Tour『Love Like Rock vol.8』」
2017年9月7日 Zepp Tokyo
セットリスト

1.夢見る隙間
2.milk
3.相合傘
4.Power of Love
5.なんて一日
6.恋愛
7.プラマイ
8.ドライヤー
9.アンドロメダ
10.えりあし
11.雨踏むオーバーオール
12.恋のスーパーボール
13.明日の歌
14.beat
15.小鳥公園
16.舌打ち
17.赤いランプ
18.be master of life
<アンコール>
EN1.恋をしたのは
EN2.Loveletter
EN3.キラキラ
<ダブルアンコール>
EN1.エナジー
EN2.mix juice
EN3.鏡

イベント情報

オールナイトニッポン50周年 岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭 in 横浜アリーナ 2017

10/29(日) 神奈川・横浜アリーナ

出演者:岡村隆史、aiko、秋山竜次(ロバート)、鈴木健介、知念里奈、ToshI(X JAPAN)、ニューヨーク、ホブルディーズ、May.J.

aiko

1975年11月22日生まれ。大阪府出身。シンガーソングライター。1997年12月、インディーズ 1 stアルバム「astral box」発表。1998年7月に、シングル「あした」でメジャーデビュー。メロディはもちろん、彼女の恋愛観で綴られる歌詞に、そしてライブでの熱いパフォーマンスに、幅広い年齢のファンが支持している。現在、デビュー20周年目に突入中。

オフィシャルサイトhttp://aiko.com

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