Interview

あいみょん “青春の興奮から生まれた音楽”が濃縮されたアルバム。心に突き刺さる歌声、エッジの効いた詞が生まれる秘密を探る

あいみょん “青春の興奮から生まれた音楽”が濃縮されたアルバム。心に突き刺さる歌声、エッジの効いた詞が生まれる秘密を探る

2015年3月に発表した「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、2016年11月にシングル「生きていたんだよな」で鮮烈なメジャーデビューを飾ったあいみょん。このたびリリースされた1stフルアルバム「青春のエキサイトメント」について、本人は「青春の興奮から生まれた音楽」と語る。聴く者の心に突き刺さる力強い歌声、過激な内容も含むエッジの効いた詞、キャッチーなメロディ、サウンドプロデューサー陣による多彩なアレンジなど、“これぞあいみょんの音楽”と言える魅力爆発の1作だ。
一種の興奮状態にいるという彼女は今、音楽とどう向き合っているのか、楽曲が生まれる源は何なのか。あいみょんにじっくりと話を訊いた。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 荻原大志

東京に来て音楽に自我が芽生えた

毎作、とんだ林蘭さんとのタッグで鮮烈なアートワークを打ち出していますが、今回もアー写とジャケ写めちゃくちゃいいですね。

ありがとうございます。アートワークはあくまでも“あいみょん×とんだ林蘭”だと思ってて。私らしさととんださんらしさがしっかり融合したものを作りたいんです。今回のアー写は「夏だし、スイカ持っちゃうか」ってノリから始まって、よく考えたら「君はロックを聴かない」って曲もあるしいいねって。あれロックじゃなくてスイカ聴いてるんで(笑)。そうやって後々アー写とかジャケ写が意味を持ってくるのが、とんださんとやってて面白いところですね。

ジャケは、花やトイレットペーパーや雑多なモチーフを全部赤く染めて撮ったそうで。

この案はとんださんが「青春のエキサイトメント」っていうタイトルと曲を踏まえて考えてきてくださったんです。原色の赤にしたのは、エキサイト感を表す色っていうのはもちろんですけど、とんださんにとっても周りの人にとっても私のイメージカラーが赤らしいので。よく見ると、今までの曲が絡んでる物ばかりなんですよ。生卵は「生きていたんだよな」のCDディスク外したところのデザインに使ったし、花束は「愛を伝えたいだとか」のミュージックビデオ、レコードは「君はロックを聴かない」のジャケ。そういう遊び心も入ってます。

今作のリリース発表時、あいみょんさんは「音楽の活動をさせてもらっている今がとても青春です。一種の興奮状態にいるからこそ楽曲が生まれると思ってます。青春は興奮、青春の興奮から生まれた音楽」とコメントしていました。インディーズデビューから2年半、メジャーデビューしてから9カ月。今とても良い状態なんだなというのがこれだけで伝わりました。

はい。今、周りの状況と自分の状態はすごい良いです。メジャーに対して、制約だったりマイナスなイメージだったりを持ってる人もいると思うんですけど、私は真逆で、メジャーに来てからのほうができることが増えたしハッピーになりました。そういう意味ではこのワーナーミュージックは自分に合ってるんやなと思います。

インディーズ期とメジャー期で、自分の中で一番の違いはなんでしょう?

兵庫県の西宮から東京に引っ越したっていう環境の変化はでかかったです。自分の中では西宮からずっと出たくないっていうのがあったので、メジャー行ったら東京行かなあかんのか……って正直すごい悩みましたけど、結果的に東京来て本当によかった。やっぱり吸収する量が全然違います。制作も、地元から通ってたインディーズの頃と違って隅から隅まで関われる。それによって作品作りに対して自我が芽生えてきました。「もっとこうしたいです」とか「この曲を入れたいんです」って意見をどんどん出すようになって。この1年ぐらいで音楽に対する感覚はかなり変わりましたね。

憧れてきた人のマネをするのの何が悪いんや

1曲目「憧れてきたんだ」は、無骨なアコギと恒岡章(Hi-STANDARD)さんのドラムのみの構成で、音が割れ気味でも叫ぶように歌っている曲で。導入から素晴らしいパンチですね。

この曲と、最後の「漂白」だけは順番を決めてました。「憧れてきたんだ」はアルバムの軸になってる曲で、絵本とか小説で言う「昔々あるところに〜」みたいな前書き代わりですね。新しいアーティストが出てくると、どうしても誰かに似てるとか言われがちじゃないですか。私は、憧れてきた人のマネをするのの何が悪いんやって思うタイプなんですよ。だってすごいカッコいい音楽をやってるアーティストに惹かれて音楽を始めたら、マネしたくなって当たり前やんって。ミュージシャンに限らず、俳優さん、女優さん、芸術家……いろんな人に憧れてきて今の私が構成されてるんですっていうのを言いたかったんです。

その人が、今は「墓の中」「メジャーを辞めた」「ブタ箱ん中」など、別の場所に行ってしまったとしても。

今の時代、ちょっと何かやらかすとすぐ業界から消されてしまいますよね。私はある俳優さんのことがめっちゃ好きで、舞台も見に行ってすごい感動したんですよ。だからブタ箱に入っても出てきてもう1回いろんな人を魅了してくれよって。だって私はその人に憧れてきたから。才能を信じてるから。そういうことを日々思います。

わかります。CHAGE and ASKAの曲に今でも感動するし、SPEEDがいなければ今の自分はないって思いますし。

そうなんですよ! CHAGE and ASKAさんのときはマジで私怒ってました。あの頃、ラジオとかでもかけちゃダメってなって、そんな、音まで消さんくてもって。曲自体には何の罪もないじゃないですか。どれだけCHAGE and ASKAさんに影響されて新しい音楽が生まれてきたか。この曲には、こういう自粛のご時世の雰囲気とか、もったいないなって思うことも書きましたね。

収録曲はほとんどこの1年で作ったものだそうですが、その期間で訴求力がぐんぐん上がっている気がします。それはマインドが関係してるんでしょうか? それともフィジカル面で、技術的にレベルアップしたから?

うーん、技術的なステップアップは正直あまり感じていなくて、いまだにギターも苦手なんですよ。むしろ持ちたくないです、重たいし(笑)。技術的な面で進歩はしてないかもしれないけど、技術を知ったことは大きいですね。「こういう音もあるんや」って。となるとマインドになのかな? 東京に来てからいろんな音楽に出会って「私もこういうことやってみたいな」とか「作れるかもしれへん」って気持ちになったので、幅広い音になったんやと思います。

歌に関してはどうですか?

歌い方もインディーズの頃と比べて変わってきてますね。レコーディング環境に慣れたからかなあ。一番いい声を出せる状況を自分で作れるようになったので。

官能小説は本気で勉強になりました

「まじで僕に愛される気あんの?」「ため息は酸素の無駄使いさ」「死んだ後に天才だったなんて 死んでも言われたくないもんな」など、胸にガツンとくるパンチラインが毎曲あるので、なぜこんな歌詞が思いつくのか知りたいです。

インタビュアーさん泣かせなんですけど、私、曲作ってるときの感情って基本的に覚えてないんですよ。たぶん衝動的に興奮しながら書いてることが多いので。でも言葉選びに関しては、ちょっと頭を捻らせてる部分はあるんやと思います。「ため息は酸素の無駄使い」とかは普段からそう思ってて吐き出しただけなんですけどね。

発想の源はなんでしょう?

映画とか小説から影響を受けることも多少ありますね。

小説はどんなものを?

驚かれるかもしれないけど、官能小説は本気で勉強になりました。17歳ぐらいのときに勉強のために買ったんです、自由が丘のブックオフで。恥ずかしかったから100円のBRUTUSと一緒にシュッて出して(笑)。

あはは(笑)。勉強のために?

学校であんまり勉強してこなかった身なので、人より言葉を知らへんかもっていうのがコンプレックスで、本読んで知ろうとしたんですね。そのうちに、比喩表現が上手なアーティストが好きやなって思い始めて、比喩表現のたくさんある小説といえば官能小説かなって。エロい言葉をどう美しい表現に変換するか、じゃないですか。官能小説のオムニバス本で「しずく」っていうタイトルだったんですけど(笑)、表現がキレイですごい勉強になりました。

創作文も歌詞も、要は変換の仕方なのかもしれませんね。「あなたが好き」とか「元気ですか?」みたいな普遍的なメッセージや感情を、どういう言葉で表現するかっていう。

作詞って4、5分の短い物語を作るようなもんだと私は思ってて。だから起承転結を付けたり、あえて主人公を作らなかったりしてて、作り方は小説とか映画が参考になるんですよね。何にせよ聴き手が妄想働かせるような曲がいいな。必ずしも共感してほしいわけではないけど、聴く人と距離感が近い曲を書けたらいいなと思います。

ここまで言うとヤバいかな、この言葉だけ抜き出されて語弊を生むかな、と躊躇はしないですか? 「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」っていう曲があるくらいなので考えてないかもしれませんが……。

あはは(笑)。あの曲を出したときは音楽の世界のこと何も知らへんかったので、正直「死ねって言ったらあかんねや? へー」って感じだったんですよ。でもインディーズやからリリースできたらしく。そのへんは今メジャーっていう舞台にいて、この言葉を入れたらたぶんリリースできへんやろなって考えることもあります。でも、今自分が歌いたいことにはこの言葉しかマッチしないってなったら、そこは惜しみなく使います。リリースできひんならできひんで、まあいっかって。もちろんテレビとかラジオとかのNGワードは大人としては理解してるけど、アーティストとしては基本的に意識せず、ですね。

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