Interview

THE ORAL CIGARETTESが提示する“光”──「戦友みたい」な映画『亜人』主題歌「BLACK MEMORY」

THE ORAL CIGARETTESが提示する“光”──「戦友みたい」な映画『亜人』主題歌「BLACK MEMORY」

THE ORAL CIGARETTESの最新シングルは映画『亜人』の主題歌「BLACK MEMORY」。生きていくうえでの不条理に立ち向かう心情を映画の世界と重ね合わせた、彼らにとって代表曲となりそうな予感の楽曲に仕上がった。11月からはツアー、そして来年2月15日には大阪城ホールでのワンマンライヴも決定。成長と前進を続ける彼らのスピードはますます早くなっている。

取材・文 / 岡本明

ずっと戦ってきて正解だったねって、別のジャンルで確認し合えた感じがした

「BLACK MEMORY」は映画『亜人』の主題歌ですけれど、依頼があって曲を作るときはやりやすかったりしますか?

山中拓也 ありがたいことにこれまでにいただいたタイアップは、僕らのカラーをわかってくださったうえでお話をいただいているようで、あまり困ったことがなくて。今回の『亜人』の世界も僕らの世界観とぴったりだったので、いつもどおりに書かせていただきました。僕らの音楽は、どちらかと言うと、ポップで明るい要素が少ないので、ポップミュージックとしてはなかなか受け入れられにくくて、ずっと悩んでいたんです。そういうなかで、『亜人』もそうですけど、ダークサイドの漫画が実写になるところで、時代が変わってきたなとも感じていて。僕らもダークサイドの音楽性ですけど、今、そういうシーンが盛り上がってきているんだなと嬉しく感じています。『亜人』も昔からある作品ですけど、ようやくここで映画化され、僕らを主題歌に選んでいただいたので、勝手に戦友みたいに思っています(笑)。ずっと我慢しながら戦ってきて正解だったねって、別のジャンルで確認し合えた感じがして嬉しかったですね。

“我慢”という感じがあったんですね?

山中 そうですね。自分たちがやっているものを信じて、これがかっこいいからやるんだって続けてきたという部分では。

途中で妥協していたら、後悔していたかも?

山中 はい。芯というものが大事だなとは昔から思っていたので、妥協せずに続けさせてもらったことはありがたいなと思います。

映画の制作サイドから曲に関して何か注文はありました?

山中 まず、完成前の映像を観させていただいて、「このシーンから曲が流れ始めます」というのだけ教えていただきました。あとは、「オーラルのこれからのためになる曲にしていただけたら」「オーラルのライヴの最後を飾るようなドラマチックな曲を作っていただければ」というお話だったので、わりと自由に作りました。

特にこんなイメージとか、こんな曲調といったリクエストもなく?

山中 テンポ感も自由にさせていただきましたね。僕が「速いテンポでシーンに合ってる感じにしたい」って言ったら、「それでバッチリです」と。でも、そこから映画側のブラッシュアップもありましたし、僕らも曲のブラッシュアップを同時に進行していたので、プリプロのデモを送ったタイミングで「最後はこういうシーンになって広がりが出るので、もっと頭からパンチが欲しいです」というリクエストが出てきたりはしました。

それでイントロが強い感じなんですね。

山中 監督もあそこはメチャメチャこだわっていましたね。

完成形までは早かったですか?

山中 時間はかかりました。「自由に作ってください」と言われてからデモが出来上がるまでの段階は早かったんですけど、ブラッシュアップに時間がかかった気がします。アレンジ面も。

本来のバンドの良さがよく出ている

最初に曲が上がってきたとき、どんな印象を持ちました?

あきらかにあきら 普段のデモよりも完成度の高い、わかりやすいデモでしたね。「その感じはわかる」っていう意思疎通がしやすいというか。スタジオで音を合わせたら、もうこのままいけそうだという、ストレートでかっこいいロックが出来たなという感じでした。拓也なりに映画を曲に昇華したものが僕にも腑に落ちたので、同じベクトルを向いて制作できて良かったなと思います。

鈴木重伸 アレンジの話をしたときに、「ストレートに勝負したほうがいいんじゃないか」と拓也が言ってて。それを聞いてストレートな方向を考えました。

イントロのリフが強く入ってきますけど。

鈴木 あれはデモの段階から入っていたもので。これが主軸になるといいなと思って、そこから自分なりに考えて消化して、みんなでやり取りをしながら今の形にまとまりました。

中西雅哉 デモを拓也と2人で作っていたんですけど、そのときにもうゴールまでが見えている感じがしていました。ドラムとしてもストレートで伝わりやすく、そこにオーラルらしさをどうやって入れようと。オーラルってこういう攻め方があって、こういうストレートな部分があるという本来のバンドの良さがよく出ていると思います。

コーラスも印象的ですね。

山中 それも最初から頭の中で鳴っていました。

もしかしたら僕らの代表曲になるかもしれない曲

歌詞のイメージも早くからありました?

山中 そこも『亜人』のストーリーに寄せたいなと思って、「この映画で何を伝えたいんだろう?」というのを心象風景も込みで歌詞にしていたんですけど、ありがたいことに、本広(克行)監督から「サウンドで十分に映画に寄っているから、オーラルのためになる歌詞にしてもらって大丈夫」と言っていただけて。そのときに、もしかしたら僕らの代表曲になるかもしれない曲だから、自分たちのことを書いたほうがいいなと思えて、最初に書いた歌詞を取っ払ってもう一回書き直しました。

とはいえ、映画のダークな感じは残っていますね。

山中 やっぱり自分が思うことと映画で伝えたいことのリンクが皆無だったら曲が書けないので。リンクした部分で伝えなきゃいけないこと、オーラルに照らし合わせられると思うことを書いたので、どっちにも共通しているものだと思います。オーラルのことを知っている人も納得するし、映画を観た人も納得する歌詞になったんじゃないかなと。

映画を離れても楽曲として成立しているのは理想的ですね。“BLACK MEMORY”という言葉はデモの段階からあったんですか?

山中 最初からありました。このタイトルを決めて曲を作り始めたので。聴こえてくるメロディの中で強く入ってくる言葉だし、これを軸に作りました。

“BLACK”は誇りを持っている。闇があっての光

この言葉はどんなイメージなんですか?

山中 完全に映画を観た印象なんですけど。自分の生まれてくる環境や育つ環境は選べない。そこには生きていくうえでの不条理もある。でもそのなかで、なぜ生きていくのか、自分が生きている意味は何かってみんな考えていると思うんです。それを『亜人』はわかりやすく出していた。主人公が予期せぬ体で、その状況で自分の役割を問うという、その心情が描かれていて。そこは自分たちにもリンクする部分がありましたし、それを悪いものと捉えるのか、前向きに捉えるのか考えさせられる。『亜人』の中で、黒って印象的な色なんですよ。だから“BLACK”というワードは絶対入れたいと思って。“BLACK MEMORY”は“闇の記憶”で、自分が選べない環境とか怒りや憤りという感情がどんどん黒い記憶に変わり、暗い世界に行ってしまうんですけど、そこには自分が生きている理由を示す光や線があって、それを見つけていけるような歌詞が書けたらいいなと思いました。“BLACK”も人によって捉え方は違うと思うし、一般的には悪い印象かもしれないですけど、僕の中では“BLACK”は光のイメージなんです。

光のイメージなんですか?

山中 “BLACK”は誇りを持っているというか、まったくの負のイメージじゃないんですよ。闇があっての光、だから。

葛藤がありつつも前を向くという意志が詰まっているんですね。しかも、『亜人』って終わりのない戦いがテーマじゃないですか?

山中 それも監督に言われました。“エンドレス・リピート”というのがテーマなので、それを大事にして欲しいと。

映画の話が出発点ではあるけれど、バンドの本質が曲のテーマになっていて、いい形で楽曲にまとまりましたね。

山中 いちばんいいところにハマった気がします。

CDジャケットは砂時計で、しかも上下に分かれて頭と体が別々に入っているという印象的なものですけど?

山中 これも『亜人』のイメージから考えました。粒子が動いて人間の形になるというのが『亜人』の中での象徴にもなっていて、それを表現できないかなと思って。“エンドレス・リピート”ということもあったので、ひっくり返すと時間が続く砂時計がいいなと思いました。粒子も砂に見えるし。

いろんなところでイメージがリンクした作品になっていますね。収録曲「Flower」「接触」も同じ頃に作っていたんですか?

山中 「Flower」は2月頃、楽曲をいっぱい作っていた時期に作って。「接触」は本当に最近、作りました。

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