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『探偵 神宮寺三郎 GOD』秋の夜長にハードボイルドADVを

『探偵 神宮寺三郎 GOD』秋の夜長にハードボイルドADVを

1987年にファミリーコンピュータ ディスクシステム向けに『探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』が発売して以降、さまざまなハードでリリースされ続け、ついに2017年でシリーズ30周年を迎えた『探偵 神宮寺三郎』(以下、『神宮寺』)シリーズ。2017年8月31日に発売されたシリーズ30周年記念作品『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』(以下、『神宮寺 GOD』)もシリーズのファンを中心に好評を博しており、『神宮寺』シリーズはいまだ確たる人気を誇っている。

本稿では、『神宮寺 GOD』を中心に『神宮寺』シリーズの魅力を2回に分けて追及していく。本シリーズをプレイしたことがない人も、本稿をきっかけにハードボイルドという言葉をこれ以上なく体現する『神宮寺』シリーズの世界に興味を持ってほしい。

文 / 村田征二朗(SPB15)

紫煙が揺らぐハードボイルド

新宿の歌舞伎町に事務所を構える探偵・神宮寺三郎がさまざまな理由で助けを求めてくる依頼人のために奔走し、事件を解決していく『神宮寺』シリーズ。本シリーズは30年もの歴史を誇るクラシックな推理アドベンチャーゲームです。アニメ的というよりは劇画的なビジュアル、各場面を彩るジャジーなBGM、主人公・神宮寺のモノローグからにじみ出る渋さ、事件を通して展開していく人間ドラマなどなど、ありとあらゆる部分に漂うハードボイルドの香りが本シリーズの魅力です。

▲こちらが主人公の神宮寺三郎。人の想いを大切にする実直さと暴漢にもひるまないタフさを持ち、洋酒を嗜み紫煙をくゆらせる、まさにハードボイルド……!

シリーズ30周年を記念した『神宮寺 GOD』には、ゲームのタイトルにもなっている本編“GHOST OF THE DUSK“(以下、“GOD“)のほかに、すでに配信が終了している携帯アプリ版の4シナリオ、そして本編とは打って変わってコミカルなタッチで展開する“謎の事件簿“、計6つのシナリオが収録されており、シナリオごとに異なった事件、異なった人間模様を楽しむことができます。本編である“GOD“は5~6時間程度、携帯アプリ版のシナリオはそれぞれ2~3時間程度、“謎の事件簿“は30分程度でクリアでき、各シナリオは手軽に楽しめつつも、全体としてはたっぷり満足できるボリュームとなっています。

▲本編はかなりがっつりとしたストーリーなので、シリーズ初体験の人は短めのアプリ版シナリオから読み進めてキャラクターになじんでいくのもいいでしょう

本作に収録されている物語の多くは探偵事務所の扉を叩く人々がもたらす些細な依頼から始まりますが、そこは推理アドベンチャー、簡単な依頼をこなすだけで完結するわけもなく、その依頼をこなしていくうえで物語は新たな事件へとつながっていきます。また、犯人かと疑いたくなるような人物が現れたと思ったら、続く場面でその人物の意外な正体が明らかになり、さらなる謎を呼ぶなど、いい意味でプレイヤーの予想を裏切ってくれる展開が連続し、純粋な読み物としてもしっかりとした読みごたえがあります。

そして、個人的に本作最大の魅力として挙げたいのは、事件の謎が明かされていく過程のスリルはもちろん、何と言っても依頼人や事件の被害者、加害者といった登場人物がくり広げるドラマの味わい深さです。頑なに人に頼ることを拒む母親を守ろうとする幼い息子、姉が昏睡状態に陥ってしまった事故の原因を探る妹、小さなころからいっしょに育った友人が受け継いだ骨董品屋を守るために奔走する青年など、各シナリオで依頼人を中心とした人間模様にスポットを当てた物語が描かれており、その人間関係が事件とともに描かれます。親子や姉妹、友人といったさまざまな間柄の登場人物たちが、自分にとって大切な相手を思いやる絆の描写は胸を打つものがあり、探偵ものとしてだけでなく、人と人とのつながりを描く物語としても楽しむことができます。

▲各シナリオで物語がシビアな展開を見せることもあり、事件の合間の平和なひとときを映し出す場面には癒されます

ハードボイルドそのものとでも言えるような雰囲気の中で描かれるハートウォーミングな物語は読後感も心地よく、すべての物語が完全なハッピーエンドを迎えるとは言わないものの、プレイ後はどこか爽やかな気分になっていることでしょう。携帯アプリ版のシナリオはひとつひとつがほどよい長さで、小説のように通勤、通学中や就寝前に少しずつ読み進めていくのもオススメです。秋の夜長を楽しむお供にもうってつけの本作、プレイを終えるころにはきっとあなたもハードボイルドになっている、かも? 

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