Interview

『ナイツ&マジック』が“共感できるロボットアニメ”になった理由。メカニックデザイン・天神英貴氏が明かす、キャラクターとメカの正しい距離感

『ナイツ&マジック』が“共感できるロボットアニメ”になった理由。メカニックデザイン・天神英貴氏が明かす、キャラクターとメカの正しい距離感

転生した世界で新たな人生を歩みたい――誰もが一度はそんな夢を見るのではないだろうか。ましてや、その世界で自在にロボットを作り、操れるとなればロボットアニメ好きにはたまらない。そんな夢を叶えたTVアニメが『ナイツ&マジック』だ。本作では、近年のロボットアニメとしては珍しい、“ロボットアニメ好きが夢見るロボット”という熱いロマンが語られている。そのロマンあふれる作品づくりに大きく貢献しているのが、本作でメカニックデザインを担当する天神英貴氏だ。ロボットを作品世界に融合させるために数々の設定を起こしたという天神氏の話をもとに、『ナイツ&マジック』の魅力に迫っていきたいと思う。

文 / 加藤和弘(クリエンタ) 構成 / エンタメステーション編集部


『小説家になろう』発・ロボットへのロマンに満ちあふれたロボットアニメ

『ナイツ&マジック』は、天酒之瓢氏によるライトノベルを原作としたアニメーション作品だ。元々は2010年に小説投稿サイト『小説家になろう』にて掲載が開始された作品で、その後、加筆修正が加えられた単行本が2013年よりヒーロー文庫(主婦の友社刊)から刊行されるに至った。文庫版のイラストは注目のイラストレーター・黒銀氏が手がけている。

本作のストーリーはいわゆる“異世界転生”からスタートする。天才的プログラマーでロボットヲタクの倉田翼は、ある日交通事故に遭い命を落としてしまう。次に目覚めた時、彼はエルネスティ・エチェバルリア(通称エル)として異世界へと転生していた。そこは「幻晶騎士=シルエットナイト」と呼ばれる巨大なロボットが大地を蹴り、魔獣が咆哮を上げる“騎士と魔法”の世界だった。シルエットナイトの姿に心を奪われたエルは、異世界でシルエットナイトを操る騎操士(ナイトランナー)を目指して、剣術と魔法を学びはじめる。そして前世で身につけたプログラミングの仕組みが、魔法を発動させるための「魔法術式」に似ており、応用できることに気付いた彼は、その卓越したプログラミング技術を駆使することで頭角を現していく。と同時に、メカヲタクとしての情熱を存分に発揮し自分が理想とするロボット=シルエットナイトを作り上げようと奮闘する――といった内容だ。

本作でメカニックデザインを手がけた天神英貴氏は、有限会社スタジオ天神の代表を務めるイラストレーターでもある。元々『マクロス』シリーズのファンであり、趣味でバルキリー(劇中に登場する可変メカ)のイラストを描いていたことが高じて『マクロス』シリーズのプラモデルのパッケージイラストなどを担当することとなった。他にも『ガンダム』シリーズや『スター・ウォーズ』シリーズなどを手がけている。映像作品では『マクロスF』や『マクロスΔ』、『アクエリオンEVOL』などに参加し、今日のロボット・メカ作品を支える重要な人物だ。

ロボットとしての現実感とスケール感を伝えるマーキング術

ここからは天神氏へのインタビューをもとに、『ナイツ&マジック』が目指したロボットアニメとはどういったものだったのかに迫ってみたいと思う。ロボットアニメは数多くあるが、異世界に転生して自分が理想とするロボットを開発するという物語はとても珍しい。

天神英貴(以下、天神)「ロボットアニメは、何のために主人公がロボットに乗るのか、ということを描く必要があるんですが、『ナイツ&マジック』は、ロボットに乗りたいからロボットを作る! という、これまでにない動機があるロボットアニメなんですよね」

従来のロボットアニメであれば、主人公が偶然ロボットに遭遇する、または当初からロボットを操縦しなければならない立場にあるという作品が多いが、本作では自分の好きなようにロボットを設計・開発し、さらにはそれを操縦して戦うというロボットアニメ好きの夢の全てが盛り込まれていると言って過言ではないだろう。それゆえに、本作におけるロボットの存在感は重要と言える。主人公の憧れの対象のロボットに対し、視聴者も憧れを抱けなければ作品の魅力に気付いてもらえないからだ。

天神氏は、黒銀氏によるシルエットナイトデザインをベースに、その内部構造図や一部機体のコクピット、さらには機体に付随する武装デザインなど、シルエットナイトという存在のリアリティを高めるための設定類を起こしている。それらがシルエットナイトという現実離れした存在と、一方で中世ヨーロッパをモチーフにしたリアルな作品世界とをうまく融合させているのだ。ひとつ例を挙げるとすれば、ロボットに現実感を与えるためのマーキング。それはシルエットナイトの大きさを示すのにも一役買っているという。

天神「僕が参加した時点で、シルエットナイトの3Dモデルが3~4体くらい完成していまして、山本(裕介)監督と話をしたところ、これらの3Dモデルを世界観にマッチするものに仕上げてほしいと言われました。そのためにはシルエットナイトの大きさの質感を出す必要がありますし、実際に人間が使うとなると、運用にあたってのマーキング(注意書き)などもないと機械としての現実感がない。それらを入れることでサイズ感の対話ができるようになるんです。実際に人間が読むサイズでマーキングを入れるというのが重要なんですよ。

ただ、最初に提案したマーキングや汚し、ダメージ表現の案は、通常のTVシリーズで使用されている3Dモデルの質感としてはかなり多い情報量だったんです。監督は気に入ってくださったんですが、さすがにそのクオリティでTVシリーズを続けていくのは現実的に難しく、(本作で3DCGを手がける)オレンジさんと調整していって本編に使用されている状態になりました。最初の1~2話くらいでこういったスケール感に関してデザインではない部分でも視聴者に説明しておくと、“このシルエットナイトはこのくらいの大きさなんだ”と親しみを持ってもらえるんですよ。

アニメーション作品をやっていると、ロボットってどうしても大きく描きがちなんです。対比表などを作っておいても、作画スタッフから上がってくるものは実際の大きさよりも大きくなっちゃうことが多いんですよね。今回、レイアウトの前のラフをいただけることもあったので、その段階で“人間の大きさはこのくらいでお願いします”って修正を加えたりもしました。そういった意味では、お台場のガンダム立像(※)ができたことは凄いことだったんですよね。18mというサイズを、ようやく周囲の建造物との比較で、身近に感じられるようになりましたから。飛行機なども同じで、ただ飛行機だけが置いてあると大きさがわかりませんが、搭乗用のはしごをかけてみると、ようやくそこでサイズ感が伝わるんです。はしごのサイズなら皆さんもわかっているので」

※お台場のガンダム立像
『機動戦士ガンダム』30周年記念のイベントの一環で製作された等身大(約18m)のガンダム。当初はお台場の潮風公園に展示された。

「アールカンバー」のメカデザイン。マーキング、汚し、ダメージ表現について入念に設定されている。

キャラクター化されていない“人間が運用するロボット”としての描き方

天神「作品に登場するシルエットナイトの中には、200~300年使われている機体もあって。長期使用に伴う傷や経年劣化もあると思うので、それに該当する“汚し”を入れていくことになりました。ただ、この汚しというのが非常にくせ者で、汚しが全機体同じ位置に入っていては“ただのモブ”に見えてしまうんですね。かと言って、汚しを全機体ごとに違った位置に入れていくと、それは気の遠くなるような作業になってしまいます。ただ、劇中のシルエットナイトは段々と新しい機体が開発されていくので、新型機にはあまり汚しを入れない方針でした。全部は無理でも、最初期に登場する機体(「アールカンバー」や「グゥエール」など)で特に丁寧に汚しを入れておくことで印象に残るように工夫しています」

こうして天神氏の数々のこだわりがあったおかげで、シルエットナイトのスケール感、リアルさが視聴者に伝わり、『ナイツ&マジック』の世界観に視聴者を引き込むことに成功したのだろう。さらに注目してほしいのは、シルエットナイトの作中での扱いだ、シルエットナイトはあくまで人間が運用するロボットである。それは決して“キャラクター化されたロボット”ではない。そんな部分を天神氏は強く意識していた。

天神「以前に別の作品で、ロボットのイラストを描くときに“つるつるピカピカにしてください”とオファーされたことがあったんです。それって、もうロボットではなくキャラクターなんですよね。自分を投影するためのキャラクターであって、先ほど述べたような経年劣化のような汚れは付かない存在なんですよ。スーパーヒーローみたいなものです。

つまり、僕らが注意しなければいけないのが、人間が運用する道具としてのロボットなのか、自己投影をするキャラクター的なロボットなのかなんです。『ナイツ&マジック』はエルがシルエットナイトを作る物語ですから、人間が運用するという部分を重視しなければいけません。第1話ではエルがコクピットを覗いて中に入り込むも手が届かない……というシーンがあるんですが、実はとても重要なシーンなんです。コクピットのスケール感とともに、シルエットナイトが人間の運用するロボットであることを伝える、この作品を象徴しているシーンだと思いますね」

ロボットをキャラクターとして捉えるか、それとも人間が運用する道具として捉えるか。制作側も受け手側も、そのどちらで捉えるかにより、同じロボットアニメといえど印象は大きく異なる。『ナイツ&マジック』が、あくまで人間が運用するロボットとしてシルエットナイトを描いているのは天神氏のコメントから明白だ。だからこそ、エルが感じている道具としてのロボットの魅力が明確に伝わり、視聴者はエルのシルエットナイトを作るというロマンに共感することができるのではないだろうか。

(レビュー後編につづく)

後編では天神氏が『ナイツ&マジック』に込めたデザイン面でのオマージュや、マーキングに秘められた遊び心、そして天神氏ならではのアニメ最終話の見どころを掲載予定!

後編の記事はこちら

主人公も制作陣もロボットが大好きすぎ!? 3カ月を走り抜けた異世界ロボットファンタジーアニメ『ナイツ&マジック』が残したもの

主人公も制作陣もロボットが大好きすぎ!? 3カ月を走り抜けた異世界ロボットファンタジーアニメ『ナイツ&マジック』が残したもの

2017.09.24

『ナイツ&マジック』オンエア情報

TOKYO MX 毎週日曜 22:30~
KBS京都 毎週日曜 23:00~
サンテレビ 毎週日曜 24:30~
BS11 毎週火曜 24:00~
AT-X 毎週日曜 21:00~
※放送時間は都合により変更になる場合があります。

『ナイツ&マジック』公式サイト

公式Twitter @naitsuma_anime

©天酒之瓢・主婦の友社/ナイツ&マジック製作委員会