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主人公も制作陣もロボットが大好きすぎ!? 3カ月を走り抜けた異世界ロボットファンタジーアニメ『ナイツ&マジック』が残したもの

主人公も制作陣もロボットが大好きすぎ!? 3カ月を走り抜けた異世界ロボットファンタジーアニメ『ナイツ&マジック』が残したもの

ロボットヲタクの青年が異世界に転生。“騎士と魔法”の異世界で、前世で身につけた豊富なメカ知識とプログラミング技術をもとに、自分の理想のロボットを作り上げていく。この異色な設定で注目を集めるTVアニメ作品『ナイツ&マジック』を2回にわたり紹介するロングレビュー。後編となる今回は、メカニックデザイン・天神英貴氏が作品に込めた先駆者へのオマージュや遊び心といったディープな部分に触れていく。さらに最終話のオンエアも間近に控え、天神氏ならではの視点で最終話の見どころについても聞いてみた。

文 / 加藤和弘(クリエンタ) 構成 / エンタメステーション編集部

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『ナイツ&マジック』が“共感できるロボットアニメ”になった理由。メカニックデザイン・天神英貴氏が明かす、キャラクターとメカの正しい距離感

『ナイツ&マジック』が“共感できるロボットアニメ”になった理由。メカニックデザイン・天神英貴氏が明かす、キャラクターとメカの正しい距離感

2017.09.23


今の時代にロボットアニメを成立させる主人公のあり方

本作でメカニックデザインを手がけた天神氏は、原作者である天酒之瓢氏ならではのロボット作品の成立のさせ方に注目していた。

天神英貴(以下、天神)「ロボット物は主人公の性格が重要になってきますよね。『ナイツ&マジック』のエルと同じ境遇になった場合、これまでのロボットアニメの主人公であれば、自分の持つ技術でたくさんの人が苦しんでいる……と思って逃げてしまったかもしれませんが、エルはシリアスにならず前向きに捉えてどんどん自分の技術で新しいロボット=シルエットナイトを開発していく。そのあたりが、これからの時代のロボットアニメを成立させる方法なのかなと、制作に関わっている僕らも学ばせてもらっています。また本作がロボットアニメ好きな人にはもちろん、ロボットアニメをこれまであまり観てこなかった人たちにも受けている理由なのかなとも思いますね。

原作イラストの黒銀さんがデザインされたシルエットナイトに関しても、やっぱり新世代の方が作りだしたデザインだなと感じました。適切な表現かわからないのですが、僕らがこれまでに体感してきたデザインにどこかしら通ずる部分があるんです。それは彼らにとってはオマージュであり、新たな世代のデザインというのを感じましたね。さらにWeb上で公開されていた天酒さんによるデザインも拝見したところ、そちらはまた黒銀さんのデザインと異なる魅力があり、それらお二方の意思を作品背景に合わせて表現するのも僕の作業かなと思っていました」

長年ロボットアニメに携わってきた天神氏だけに、現在のアニメ業界において下火と言われるロボットアニメの難しさを痛感している。新しいロボットアニメのあり方を土台に、経験豊富なスタッフ陣が結集した『ナイツ&マジック』だからこそ、往年のロボットアニメ好きにも、ロボットアニメを敬遠していた人にも魅力的に映る作品となったのではないだろうか。

作品に盛り込まれたオマージュと遊び心

ちなみに本作では内部構造図や一部機体のコクピットなど、アニメのために新たに起こされたメカ設定も数多く存在する。それらはシルエットナイトをよりリアルに感じさせるのに一役買っているのだが、天神氏によるオマージュや遊び心もあふれていた。

天神「ツェンドルグというメカのコクピットに関して、原作に“バイク状の操作システム”だという記述があり、監督からもそれを生かすというご指示でした。そこで今回は制作スタッフに宮武一貴さん(※)が参加されているので、宮武さんに対する何らかのオマージュを入れたいなと思いました。宮武さんがデザインされたメカでバイク状の物と言えば、『超時空世紀オーガス』に登場したモラーバがあったなと。あれほどセクシーな乗り方をするメカはなかなかないし、女の子のアディ(アデルトルート・オルター)が乗ることも考えて、他の機体とは違った操作システムにはしたいなと思ったんですよ。かと言ってそのままバイク状のデザインにしてしまうと作画が大変なことになるので、バイクの下半分は隠して作画の方の負担を減らす工夫をしています」

※宮武一貴
スタジオぬえ所属のメカニックデザイナー・イラストレーター。『宇宙戦艦ヤマト』『超時空世紀オーガス』など数々の伝説的アニメ作品に参加している。『マクロス』シリーズではメカニックデザインのみならず、世界観の構築といったコンセプトデザインも手がけている。『ナイツ&マジック』ではコンセプトデザインを担当。

天神氏による「ツェンドルグ」コクピットデザイン。

天神「また余談ですが、シルエットナイトにマーキングされている架空の文字については、デザイナーさんから文字の対応表をいただき、そこにふさわしい言葉を当てはめています。たまに冗談も混じっているので、そのあたりに注目して見ていただいても楽しいかもしれませんね。個人的には、いい作品には時々そういったスタッフの遊び心が入っているとも思うんですよ」

しばらくロボット物はいい!と声が上がるほどの“やりきった”感

そして最後に、天神氏ならではの『ナイツ&マジック』最終話の見どころについて聞いてみた。

天神「エル君とオラシオ(・コジャーソ)のロマンのぶつけ合いも見所のひとつだと思います。オラシオの大艦巨砲主義がまかり通ってしまうとエル君の好きなロボットの存在意義がなくなってしまう。だからエル君は僕の趣味の邪魔をしないでくれという思いでオラシオに対するという、戦争とはまた別のお互いの“ロマンのぶつけ合い”にも注目してほしいですね。

あと最終話もエル君は可愛いのでお見逃しなく(笑)。エンドカードをどうするかアニメーションプロデューサーの大友(寿也)さんと話をしていたのですが、冗談で「画面を全部エル君で埋めた方がいいんじゃないか?」と話したくらいエル君は可愛いですからね(笑)。スタッフも演者さんも全力投球しています。そのカロリーはもの凄いですよ。山本(裕介)監督も「もう、しばらくロボット物はいい!」と冗談で仰ってましたが、そういった作品っていいんですよ。しばらくいいです、ってスタッフが言うくらいやり切ることが、いい作品になる重要な要素だと思います」

ロボットアニメがヒットしづらくなっていると言われる今日、『ナイツ&マジック』はひとつの方向性を照らした作品なのかもしれない。過去のロボットアニメ全盛期の作品と比べれば、物語の単なる一ファクターとしてロボットが登場する作品が多くなった今、あえてロボットを作品世界の中心に据えつつ、その実ロボットに対する主人公のロマンを主題とした本作は、幅広い層にロボットアニメの魅力をあらためて伝える役割を果たす作品のように思える。

本作の視聴者がこれを機にロボットアニメに興味を持ってくれれば幸いであり、また本作に参加した制作スタッフの方々がまた今後新たなロボットアニメを生み出してくれることにも期待したい。

『ナイツ&マジック』オンエア情報

TOKYO MX 毎週日曜 22:30~
KBS京都 毎週日曜 23:00~
サンテレビ 毎週日曜 24:30~
BS11 毎週火曜 24:00~
AT-X 毎週日曜 21:00~
※放送時間は都合により変更になる場合があります。

『ナイツ&マジック』公式サイト

公式Twitter @naitsuma_anime

©天酒之瓢・主婦の友社/ナイツ&マジック製作委員会