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市川準監督特集2015@目黒シネマ 市川準と女優たち

市川準監督特集2015@目黒シネマ 市川準と女優たち

いい映画というものは、「カメラ」も「演出」も、
(意識として)スクリーンからきれいに消えてしまう。
「人を観た」という記憶だけが鮮烈に残って、テクニックがきえてしまう、ということ―――。
そこに映っている「役者」の「生理そのもの」をみつめようとしていることは、本当は役者にとってとても怖いことだと思うけれど、観客にとってはとても興奮することだ。
by 市川準

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市川準

1948年東京生まれ。 CM演出家、映画監督。数多くのヒットCMを演出した。1987年に第一作「BU・SU」を発表し、映画監督デビューを果たす。以降、多くの作品が国内外で高い評価を得る。2008年9月19日「buy a suit スーツを買う」の編集を終え急逝。

市川準オフィシャルサイト

人は生きている間に、何人かのかけがえのない人に出会えるんだろう。。。。。。
私にとって、市川準さんは、まぎれもなくかけがえのない、人です。

宮沢りえ(『トニー滝谷』主演)

『BU・SU』の撮影から30年の月日が流れようとしています。
「麦子」は市川監督です。
私の中の「麦子」のカケラは、18歳の時のままポツンとしています。
お話したい事がいっぱいあります。
でも、またいつか・・・。

富田靖子(『BU・SU』主演)

『あしたの私のつくり方』が再び映画館で上映されることになり、
本当に嬉しいです。
監督の人柄もあり、穏やかで心地のいい現場でした。

成海璃子(『あしたの私のつくり方』主演)

当時、何者でもない私たちに、共に作品をつくろうと、やさしく丁寧に接して下さった。
しかし、あれは、ただ優しかっただけではない。
そこには、貪欲に新しいものに向かおうとした、市川さんの攻めの姿勢があった。

佐藤信介(『東京夜曲』脚本/『図書館戦争』監督)

本格的な二本立て映画館として、映画ファンにはなくてはならない存在と言える目黒シネマ。

さまざまな特集上映が楽しみな同館で、昨年、犬童一心監督の企画により、市川準監督七回忌、そして市川組の名キャメラマンである小林達比古氏の永眠の追悼を込めて『市川準監督特集』が開催されました。
そして今年も市川準生誕である11月25日を中心に『 目黒シネマ名作チョイスvol.13  市川準監督特集2015 市川準と女優たち』と題し、11月21日から3週間の特集上映が開催されます。
今回は市川作品を彩った女優たちに注目し、作品をチョイス。【青春・東京・文学】の三篇に分けて6作品をお届けします。さらに市川作品に縁深いゲストとして、女優の成海璃子さん、脚本家の鈴木秀幸さん、そして女優の宮沢りえさんを迎え、犬童監督とのトークも行われます。

全作35mmフィルムで甦る貴重な上映、市川準が見た女優たちの美しい輝きを再びスクリーンで目のあたりにする貴重な機会をお見逃しなく。

※上映は終了しております。

青春篇 11.21sat-11.27fri

BU・SU
BU・SU

どつぼにはまらない青春なんて、なんの価値もないのだ。
【物語】 監督デビュー作にして青春映画の傑作。性格ブスな少女が上京し、さまざまな出会いや経験を通して少しずつ心を開いていく姿を描く。「花の街」の音楽にのせ八百屋お七を無心に踊る姿は永遠の語り草。
【出演】 富田靖子、高嶋政宏、丘みつ子、大楠道代
【1987年/95分】

あしたの私のつくり方

あしたの私のつくり方

大人になった今でも、歩み続ける「私」への道
【物語】 仲間外れにされないよう自分を偽り、周りに合わせることで自分を守ろうとする少女たちの葛藤を描いた青春ドラマ。悩み傷つきながらも“本当の自分”を模索する少女たちの心情をみずみずしいタッチで描きだす。 市川準監督、最後の商業映画。
【出演】 成海璃子 前田敦子
【2007年/97分】

最終上映後トークショー 22:00~
11.21 sat 対談「市川準と青春」
成海 璃子(『あしたの私のつくり方』主演) × 犬童 一心
司会:尾形 敏朗(映画評論家)
※整理券を配布


東京篇 11.28sat-12.4fri

東京兄妹
東京兄妹

懐かしくて新しい街・・・兄妹(ふたり)はそこで生きている。
【物語】 東京雑司ヶ谷でひっそりと生きる兄妹。出会い、別れ、そして死・・・静かな生活にも、時間は淡々と忍びよる。二人きりで暮らす兄妹の日常風景をスケッチ風につづった作品。
【出演】 緒形直人、粟田麗、手塚とおる
【1995年/92分】


東京夜曲
東京夜曲

その恋は、さりげない日常の中で、秘められたまま咲いて散りました。
【物語】 数年前に家族を残して家を飛び出した男の帰りが、周囲の人々の穏やかな心を揺り動かしていく-―。東京の小さな商店街を舞台に、そこに暮らす人々の心模様を描いた大人の恋愛映画。
【出演】 桃井かおり、長塚京三、倍賞美津子、上川隆也
【1997年/87分】

最終上映後トークショー 21:30~
11.28 sat 対談「市川映画の脚本」
鈴木秀幸(『東京兄妹』脚本) × 犬童 一心(『大阪物語』脚本)
司会:尾形 敏朗(映画評論家)

文学篇 12.5sat-12.11fri

トニー滝谷
トニー滝谷

ひとを愛すると世界が変わってしまうのです。
【物語】 一人の女性の出現によって初めて愛を知り、彼女を失うことで初めて孤独というものを実感する男の姿を静謐なタッチで描いた切ない愛の物語。
【出演】 宮沢りえ、イッセー尾形
【ナレーション】 西島秀俊
【1995年/92分】


つぐみ
つぐみ

【物語】 生まれつき病弱でわがままに育った18歳の少女・つぐみと、彼女に惹きつけられた従姉妹の大学生・まりあ。西伊豆を舞台に、少女たちのかけがえのない時間が叙情的に描かれている。吉本ばななの同名小説原作の青春映画。
【出演】 牧瀬里穂、中島朋子、白島靖代、真田広之
【1990年/105分】

『トニー滝谷』上映終了後トークショー 19:30~
12.6 sat 対談「市川映画の思い出」
宮沢りえ(『トニー滝谷』主演) × 犬童 一心
司会:尾形 敏朗(映画評論家)
※整理券を配布

目黒唯一の映画館 老舗名画座・目黒シネマとは?

目黒唯一の映画館である「目黒シネマ」は、1955(昭和30)年から前身である「目黒ライオン座」「目黒金龍座」として看板を掲げました。
1975(昭和50)年に「目黒シネマ」としてリニューアルし、本格的に2本立て映画館として運営を始めました。
歴史あるレトロ感たっぷりの映画館で、邦画・洋画問わず、ハリウッド大作からアート系作品まで幅広くセレクトした各ジャンルの面白い映画を2本立てでご提供しております。
目黒シネマは、1枚の入場券で映画を2本ご覧いただける「2本立て」営業です。
少しでも安く、たくさんの映画をご覧になりたい映画ファンのお客様には穴場!!
1つのスクリーンで2作品を交互に上映しておりますので、そのまま劇場に残っていただき、映画をお楽しみください。

企画/上映
目黒シネマ

目黒シネマ公式サイト
お問い合わせ先 目黒シネマ TEL:03(3491)2557

協賛
株式会社ADKアーツ / C&Iエンタテインメント株式会社 / 株式会社17 / 株式会社アンデスフィルム / アルバカーキフィルム株式会社 / 株式会社ドメリカ / 市川準事務所 (順不同)

『BU・SU』: ©東宝/日本テレビ / 『あしたの私のつくり方』: ©2007『あしたの私のつくり方』製作委員会 / 『東京夜曲』: ©1997 株式会社衛星劇場 / 『つぐみ』: ©1990 松竹株式会社 / 『トニー滝谷』: ©2005 Wilco Co., Ltd / 市川準ポートレート画像:©北島元朗


「映画で師匠と言える人は市川準監督だけ」
『市川準監督特集2015 市川準と女優たち』企画者

犬童一心監督インタビュー(前編)

今回、「目黒シネマ名作チョイスvol.13  市川準監督特集2015 市川準と女優たち」を企画した犬童一心監督にお話をうかがう機会をいただきました。犬童監督は市川監督とお仕事をご一緒されただけではない、縁遠からぬ関係にあります。今回の企画を目黒シネマで行うことになったきっかけなど、貴重なエピソードをお話くださいました。

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目黒シネマを買い取る。そういうのどう?

はじめに今回の特集を企画することになった経緯をお聞かせください。

この企画は去年からやっているんですが、去年は市川監督の七回忌ということで、さらにカメラマンの小林達比古さんがお亡くなりになったこともあって、これを機会に市川さんの映画を見直したいなと思ったわけです。

実は市川監督とこの目黒シネマは縁が深いんです。生前、市川さんはこの目黒シネマによく見に来られてまして、市川さんにとって、目黒シネマは言わば理想の劇場だったようです。ある時、僕とCMプランナーの仲間だった鈴木秀幸さんが市川監督から相談を受けたことがありまして、市川さんがCMの仕事を全部辞めようと思う、と言うんです。さらに「この目黒シネマを買い取って、自分の映画をかけられる市川準劇場にして、上に市川事務所を置く。そういうのどう?」と(笑)

目黒シネマを買い取るってユニークな発想ですね。どうなったんですか?

もちろん、仕事を辞めるのも、目黒シネマを買い取るのも、僕らは止めました(笑) そういうことがあったので、市川さんの映画を見るなら、目黒シネマがいいと思ったわけです。

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市川監督とはどのように出会ったのですか?

僕は大阪で「二人が喋ってる。」*という映画を作ったのですが、作っただけでそのままほったらかしになっていました。それを鈴木さんが気に入ってくれまして、VHSを渡したのを、鈴木さんがたまたま市川さんに見せたんですね。

当時、僕は市川さんとは面識はありませんでしたが、ほどなくして、市川さんから突然、会社に電話がかかってきまして、僕に会いたいと。それで東銀座のホテルではじめてお目にかかりました。市川さんからは、この映画は絶対、東京で上映しろ、とおっしゃって、「キネマ旬報」にレビューを書いてくださったんです。

※二人が喋ってる。
1995年公開の犬童一心監督の長編デビュー作品。短編「金魚の一生」でキリンコンテンポラリーアワード 1993年度最優秀作品賞を受賞し、これにより制作されたのが「二人が喋ってる。」。サンダンスフィルムフェスティバル in 東京 グランプリ、第37回日本映画監督協会新人賞受賞。

最初の出会いは作品が先だったのですね。

当時、キネ旬に勤めていて、サンダンスフィルムフェスティバルに出品する作品のセレクトをしていたいた佐藤佐吉さんが、このレビューを読んで、作品を観てくれて無理やり審査作品に加えてくださいました。結果、グランプリをいただき、日本映画監督協会の新人賞までいただきました。それで劇場公開することもできたんです。

“リハウスの娘” で大阪の映画を撮りたい!

そのことがきっかけで市川監督とお仕事をご一緒されるようになったのですか?

東銀座でお目にかかった時は、大阪で映画を作りたいので、シナリオを書いてくれ、ということだったのですが、一年たってもなにも音沙汰がありませんでした。それがいきなり、携帯に電話がかかってきまして、「リハウスの娘が大阪の娘*なので映画を撮りたい」ということでした。

※リハウスの娘が大阪の娘:
池脇千鶴(女優)。1997年に「三井のリハウス」リハウスガールオーディションで、市川準監督に見出され、第8代リハウスガールとして芸能界デビュー。「大阪物語」(監督:市川準、1999年)、「ジョゼと虎と魚たち」(監督:犬童一心、2003年)

それが「大阪物語」になるわけですね。

はい。市川さんは芸人の娘の話はだめかな、ということで、はじめは手品師と娘ということでしたが、大阪の話なので、僕は夫婦漫才師の娘ということでシナリオを書かせていただきました。それが「大阪物語」でした。シナリオを書く際に一ヶ月お休みをもらい、さらに大阪の撮影現場に居させてもらえないか、という僕の要望を会社に伝えたところすんなり通りました。当時も広告業界では市川さんはやはり “神” でして、会社の上の人にとっても、市川さんは上の人で、無理な話も通ってしまったわけです(笑)

芸人の話を撮りたいと言っていた割には、市川さんは特に芸人に興味があったわけではなくて、僕ははじめからミヤコ蝶々さんに出ていただきたいと思っていたので、僕が蝶々さんに直接会ってお願いしてきたんです。あのまとまりがなくなっていく話を落ち着かせるには、「地獄の黙示録」のマーロン・ブランドみたいな存在として蝶々さんが必要だと思ったんです。

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現場での市川監督はどのような監督でしたか?

誤解を恐れずに言えば、市川さんはシナリオを信じていないところがあると思うんです。シナリオの核を信じているというか、核が変わらなければ、セリフは変わってもいいと思っている、ということです。市川さんが「ざわざわ下北沢」(2000年)を撮った時に、出演させていただいたのですが、一生懸命セリフを覚えていたのが、いざ撮影となったら、「セリフ違っていいよ」と市川監督に言われたんです。そういえば僕の時もそうだったよな、と(笑)

監督にとって市川監督はどういう存在なのでしょう?

僕は映画の世界でもCMの世界でもだれかに学んだということがなかったのですが、映画で師匠と言える人は市川監督だけですね。

目黒シネマを買い取る、なんて驚きのエピソードも飛び出しましたが、後半では特集上映でかかる作品について、そして市川監督、犬童監督の女優論まで飛び出します。

インタビュー / チバヒデトシ 写真 / 吉崎貴幸

犬童一心

映画監督/CMディレクター。高校時代より自主映画の監督・製作をスタートし、大学卒業後はCM演出家としてTV-CMの企画・演出を手掛け、数々の広告賞を受賞。 その後、長編映画デビュー作となる『二人が喋ってる。』(97)が、映画監督協会新人賞を受賞。1998年に市川準監督の『大阪物語』の脚本執筆を手掛け、本格的に映画界へ進出。 1999年に『金髪の草原』で監督デビュー。2003年には『ジョゼと虎と魚たち』にて第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞、「メゾン・ド・ヒミコ」(05)で第56回文部科学大臣賞を受賞。 以後、『タッチ』(05)、『黄色い涙』(07)、『眉山 びざん』(07)、『グーグーだって猫である』(08)等、話題作を発表し、『ゼロの焦点』(09)で第33回日本アカデミー賞優秀作品賞・監督賞・脚本賞、『のぼうの城』(12)で第36回日本アカデミー賞優秀作品賞・監督賞を受賞。 近年の作品には『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(14)、WOWOW『連続ドラマW 夢を与える』(15)等がある。