Interview

映画『あさひなぐ』英勉監督が語る乃木坂46メンバーたちの女優としての魅力

映画『あさひなぐ』英勉監督が語る乃木坂46メンバーたちの女優としての魅力

乃木坂46を起用した「あさひなぐ」プロジェクト。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で2011年より連載開始、現在24巻まで発売されている「あさひなぐ」を原作として、映画と舞台を同時に展開するプロジェクトである。その舞台は5月から6月にかけて、東京、大阪、名古屋で上演され、ライブビューイングを含めるとのべ約4万人の動員を記録した。舞台版とはキャストも一新し、いよいよ映画版が9月22日(金)全国ロードショーとなる。
そのメガホンを取った英勉監督に、作品の魅力と監督の期待以上に一生懸命演じた乃木坂46メンバーの印象、魅力を訊いた。
なぎなたに全力で取り組む女子高生のみずみずしい青春映画。この映画は、今の自分自身に向き合う勇気を与えてくれる出色の作品だ。

取材・文 / 大久保和則 撮影 / コザイリサ

乃木坂46のメンバーたちが役柄や物語を引き寄せた作品になった

素晴らしい青春映画が完成したと思うのですが、現段階ではどんな反響が監督には届いていますか?

まず、乃木坂46のことをあんまり知らない人たちからは、例えば“西野七瀬さんって、本当に旭みたいな女の子なんでしょうね”とか、本人と役が同じように見えているというような感想が多いです。それは、聞いてみて面白かったし、いいことだなと思いました。あとは、30代とか40代とか、やけにおっちゃんが喜んでいるなと(笑)。

それはどうしてなんでしょう(笑)?

乃木坂46のメンバーが、一生懸命やっているからじゃないですかね。最初に、僕から彼女たちに“とりあえず一生懸命やれば、この作品は半分以上成功だから”って言ったんです。その結果、彼女たちは僕の期待以上にやってくれました。ひたすら一生懸命に演じることで、演技がうまいとか下手だとか、なぎなたがどうこうとかを超えていく“何か”がスクリーンを通して見えてくる。その“何か”が世代を問わず、男女を問わず訴えかけてくるものだからこそ、乃木坂46のメンバーとは年も離れているし、女の子でもない(笑)、おっさんたちの心にも刺さるんじゃないですかね。

一方では、中学生や高校生にもぜひ見てほしい作品だと思いました。

どんな響き方をするか、すごく楽しみですよね。まだ感性がやわらかくて、心が揺れている中学生や高校生は、受取り方が大人とは全然違いますからね。映画を観てただ面白かっただけじゃなくて、ひょっとしたら映画を観た次の日からの一週間を、今まで以上に一生懸命に生きたりとかね。自分も一歩踏み出したほうがいいんじゃないかって思ったり。少なくとも、友だちと一緒にこの映画を観たあとに、みんなでカラオケに行こうっていう感じではない気はしますけどね。

英勉監督

友だちと別れて、「俺、今日はちょっと1人で帰るわ」みたいな。

そうそう。そういう気持ちにさせる魅力は、もともと原作にもあると思うんですけどね。

当初、監督が今作に思い描いていたのは、どんなイメージでしたか?

最初は、いわゆるアイドル映画です。アイドル映画って、出演しているアイドルのファンの人たちがそのアイドルのキラキラしている姿を見て、何かを受け取って帰るもの。極端な話、ファンの人だけにちゃんと届けばいい。僕は、それはそれでいいな、面白いなって、まず最初は思いました。でも、プロデューサーの意向は、アイドル映画を作ることではありませんでした。プロデューサーは、あくまで通常の劇映画として、乃木坂46のファン以外の人たちにも届く作品を撮ってほしいと。そこから僕も考え方を変えましたね。

左:二ツ坂高校なぎなた部エース・宮路真春(白石麻衣)

なぎなたの稽古では、監督も同席している時間がかなり多かったと聞きました。

そうですね。今までのキャリアの中で、一番長く演者さんと一緒にいたんじゃないですかね(笑)。でも、そうやって一緒にいることで彼女たちのことがよく知れました。稽古の合間に会話をすることで、彼女たちがこの仕事に対してどんなふうに考えているかなどを、ちょっとずつ知ることができましたから。僕は、乃木坂46にくわしいわけではなかったので、撮影以外の時間にそうやってコミュニケーションを取れたことは良かったですね。

最終的に映画「あさひなぐ」が完成して、監督はどんな作品になったと感じていますか?

乃木坂46のメンバーたちが役柄や物語を引き寄せた作品になったというか、本当にいい頃合いの、絶妙なところをたぐり寄せたなーって思っていますね。これは、一生懸命にやったことが大きいと思うんですけど、作品としてすごく生っぽいというか、ライブっぽいというか。もちろんドキュメンタリーでは絶対にないんですけど、なんともいえないライブ感、リアル感が出たなとも感じています。それはきっと、彼女たちの存在そのものが醸し出しているんだと思います。演出で出せるものではないですから。それぞれが、何かを思いながら演じていたんでしょうね。私も一歩踏み出したいとか、アイドルとしてもっとステップアップしたいとか、そういう本当の気持ちがにじみ出てる映画だなって思いました。だから、なんか不思議な感覚でした。僕の演出意図にはないものが、この作品からは出ているから。映画を観終わったら、みんなこの子たちのことを好きになるんじゃないですかね。僕は、そんなふうに感じました。

八十村将子(桜井玲香)

アイドルって、常に何かしらと対峙して、どこかしらへと進んでいかなければならない存在なので、そこがにじんだのかもしれませんね。

今は乃木坂46というグループでメンバーと一緒にがんばっているけど、結局最後は一人で自分と向き合うしかないという人生の本質というか、真理というか、それを自然に察したところもあったんでしょうね。なぎなたも、みんなで一緒に練習するけど、試合になったら一人で戦わなきゃいけない。なんだろう? 普段の彼女たちが、人気アイドルグループのメンバーではあるけど、じゃあ一人の私ってなんだろう?ってどこかで思っている感覚が、カメラに映し出されたのかもしれないですね。だから、ライブ感やリアル感、ドキュメンタリー感がある作品になったっていう。

監督が感じた乃木坂46メンバーの女優としての可能性や魅力とは?

今作では、主人公の東島旭を演じた西野七瀬さんの表情もとても印象的でした。不安もすごくあるんだけど、同じぐらい希望もあって、その2つを行きつ戻りつしている表情が本当に素晴らしかったです。西野さんに対して、監督はどのような演出をされたのでしょうか?

最初は、いわゆる主人公然とした、もっと型にはまったお芝居を彼女に要求しようと思っていたんです。でも、台本を読んでもらったり、なぎなたの練習を見たりしているうちに、西野さんがもともと持っているものを含んだ旭にしたほうがいいと思うようになりました。

東島旭(西野七瀬)

西野さんがもともと持っているものを具体的に教えていただけますか?

いえいえ私なんて、という感じ。やる気はすごくあってやろうとするんだけど、いざやろうとする時にドキドキしちゃって声が震える。ちゃんと考えているんだけど、ぼーっとしているように見えちゃう。そういう姿を見て、そこも含めた旭ちゃんがいいんじゃないかって思ったんですよね。実際、何かテーマを与えると必死にやろうとするんですけど、すぐにはできなくて悔しさが生まれて、でもまた次の日に必死にやろうとする。よく考えてみたら、そのメンタリティーって旭ちゃんと同じなんですよね。だから、最初に思い描いていた旭ちゃんとは違いますけど、最終的には旭は西野さんにしかできないなって思うようになりました。

旭のライバル一堂寧々(生田絵梨花)

ほかのメンバーについても、監督が感じた女優としての可能性や魅力、面白さなどをうかがえればと思います。まず、ライバル校のエースである一堂寧々を演じた生田絵梨花さんはいかがでしたか?

生田さんは、“もっと演じたい! もっと高みに行きたい!”という女優としての欲を隠さないのが、まずは魅力的ですよね。もっとできると思うし、こんなアプローチもあるんじゃないかっていう、演技への貪欲さが素晴らしいと思います。

二ツ坂高校なぎなた部 部長・野上えり(伊藤万理華)

旭の一学年上の先輩であり、なぎなた部のエース・宮路真春役の白石麻衣さんと同部の部長・野上えりを演じた伊藤万理華さんについては?

白石さんは理解も早いし、たいがいのことがさらっとできちゃう器用さがあるんです。でも、それだけでは終わらせないっていう気合いがある人なので、これからもっともっと女優さんとして活躍していくと思いますね。
伊藤さんは、すごくストイックですよね。映画に対するアプローチも真摯です。もっとばーんと自分を出したくて出したくてっていう熱もすごくて、そう考えると今回の作品では、彼女の中にどこか欲求不満が残っているかもしれないですね。もっともっと自分を出すという部分で。

紺野さくら(松村沙友理)

旭の同級生でともになぎなた部に入部する八十村将子を演じた桜井玲香さん、紺野さくらを演じた松村沙友理さんはどうでしたか?

桜井さんは、最後の最後まで役を探って探って、メンバーの中で一番悩んでいたと思います。僕は、役に対するそういうアプローチは好きですけどね。そんな姿を見て、桜井さんは乃木坂46のキャプテンですけど、実は一番ナイーブで引っ込み思案なのかもしれないとも思いましたね。でも、女優としてもっともっとできる人だと思います。必要以上に不安を感じることなく、もっと自信を持って演じていいと思いますね。
松村さんは、すごく勘がいいんですよ。自分は作品の中でどの位置にいればいいのか、そのシーンの面白さは何かっていうことを、彼女は感覚的にわかってる。だから、自分がする演技は決まってるし、ゴールもちゃんと見えてる。そういうタイプですね。

あらためて、西野さんについても聞かせてください。

ひたすら主役をやればいいんじゃないかなって思います。彼女は、いわゆる普通の女優さんではないけど、彼女にしかできないことがあります。映画やドラマって、やっぱりこの人にしかできないことがある役者さんが真ん中に来て主役になるんですよ。だから、彼女は今のままで主役を演じていけばいいと、僕は思いますね。

監督自身、映画「あさひなぐ」を通して、乃木坂46のメンバーに対してあらためて感じたことはありますか?

約3ヶ月一緒にいて、ファンの人たちがこの人たちを好きな意味がよくわかったというか。ファンの人たちは、お目が高いと思います。今は僕も、乃木坂46のファンですって言えますよ(笑)。ただ、まだ愛称では呼べないですけどね(笑)。でも、いつか呼んでみようかなとか、ライブに行ってサイリウムを振ってみようかなとかは思ってます!。

映画『あさひなぐ』撮影現場 ©2017 映画「あさひなぐ」製作委員会 ©2011 こざき亜衣/小学館

映画『あさひなぐ』

2017年9月22日(金)公開

最弱の初心者が最強のライバルに挑む!青春“なぎなた”エンターテインメント! 春、元美術部で運動音痴の主人公・東島旭は、二ツ坂高校へ入学する。
旭は1つ先輩の宮路真春と出会い、その強さに憧れ”なぎなた部”入部を決意!同級生の八十村将子、紺野さくら、2年生の野上えり、大倉文乃と共に部活動をスタートしたが、”練習は楽で運動神経がなくても大丈夫”―そんな誘い文句とは真逆で稽古は過酷そのもの!やがて3年生にとって最後となるインターハイ予選を迎える。
順調に勝ち進んだ二ツ坂だったが、決勝でダークホースの國陵高校に敗れてしまう。なかでも國陵の1年生エース・一堂寧々の強さは圧倒的だった。
野上新部長のもと再スタートを切った二ツ坂は、山奥の尼寺で僧侶・寿慶(江口のりこ)の厳しいしごきによる、地獄の夏合宿を経て一回り大きく成長し、挑んだ秋の大会。再び二ツ坂の前に宿敵國陵高校と一堂寧々が立ちふさがる。
そこで、二ツ坂にとってまさかの出来事が―。真春は部活動に姿を見せなくなり、精神的支柱を失った二ツ坂はバラバラになってしまう。
そのとき、旭は・・・・・・。物語はクライマックスへ向けて大きく動き出す―。

【キャスト】西野七瀬 桜井玲香 松村沙友理 白石麻衣 伊藤万理華 富田望生 生田絵梨花
中村倫也 森永悠希 角替和枝 江口のりこ

【原作】こざき亜衣「あさひなぐ」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
【脚本・監督】英勉
【主題歌】乃木坂46「いつかできるから今日できる」
【配給】東宝映像事業部

オフィシャルサイトhttp://asahinagu-proj.com/

©2017 映画「あさひなぐ」製作委員会 ©2011 こざき亜衣/小学館

英勉(はなぶさ つとむ)

1968年生まれ。京都府出身。
CMディレクター、テレビドラマ演出家を経て、2008年に『ハンサム★スーツ』で映画監督デビュー。『高校デビュー』(2011年)、『行け!男子高校演劇部』(2011年)、『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年)、『ヒロイン失格』(2015年)などのヒット作を手がける。また、2015年にはコントバラエティ番組『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』も話題に。2017年は本作『あさひなぐ』のほか、『トリガール』が公開中。