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『ユリゴコロ』『かの鳥』『不能犯』――出演作が続く松坂桃李が歩む“美しきクセモノ俳優”の道

『ユリゴコロ』『かの鳥』『不能犯』――出演作が続く松坂桃李が歩む“美しきクセモノ俳優”の道

松坂桃李。180cm越えの長身に、端正なマスク。どことなく漂うノーブルな雰囲気。いわゆる“若手イケメン俳優”と言われる中でも、特に売れっ子の一人だけれど、昨今の松坂桃李はそんな括りなど軽く超越して、次々と野心的な作品や難役に挑み、若き名優、美しきクセモノ俳優としての道を着実に歩み始めている。そんな彼が今秋、イヤミスの旗手・沼田まほかる原作の映画化作品、『ユリゴコロ』(熊澤尚人 監督)と『彼女がその名を知らない鳥たち』(白石和彌 監督)で目を見張る存在感を放っているのだ。この2作をはじめ今後も幅広い数々の出演作を控える松坂桃李の魅力を紐解いていく。

文 / 山崎麻

『ユリゴコロ』では繊細かつ大胆な演技で魅せ、『かの鳥』ではゲス男を好演

『ユリゴコロ』
©沼田まほかる/双葉社 ©2017「ユリゴコロ」製作委員会

9月23日(土)公開の『ユリゴコロ』では、現代パートの主人公〈亮介〉役。余命わずかな父親が隠し持っていた〈美紗子〉(吉高由里子)という女の手記を発見して、「人の死によってしか心の拠りどころを感じられない」と告白しながら自らの罪と数奇な半生を綴ったその内容に強烈に惹かれていく〈亮介〉を、穏やかな中にも、どこか得体のしれない物静かな違和感をにじませながら演じている。特に、突然恋人が失踪したことで混乱し憔悴する前半、手記を読んだことで自分の中の激情が氷解していく後半のギャップを、繊細かつ大胆に魅せている。

『ユリゴコロ』
©沼田まほかる/双葉社 ©2017「ユリゴコロ」製作委員会

10月28日公開(土)の『彼女がその名を知らない鳥たち』では、ヒロインの〈十和子〉(蒼井優)と不倫関係に陥る〈水島〉役で、これもまた衝撃的な役どころ。一見、デパート勤めでスマートだけど、中身はペラペラ、女を騙すことに何も感じない自分勝手なゲスな男の役で、あの松坂桃李が!? と驚愕。けれど、「いるいる、こういう男!」と思わずにいられない上、濃厚ベッドシーンの巧みの技にも感心させられることしきりだし、しかもそんな役も完璧に演じていてなんだか似合ってしまっているのだから、松坂桃李、恐るべし!

『彼女がその名を知らない鳥たち』
©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

ちなみに、ファンの方なら知っているかもしれないけれど、ベテランから若手まで揃った映画『マエストロ!』(15/小林聖太郎 監督)の現場で、松坂があまりにも性格が良いためにみんなから“ブッダ”と呼ばれていたという話は有名。もちろんプライベートと役柄は全く関係ないと承知しているものの、あのブッダがこんなにゲス男に……というのがなかなかインパクト大なわけで(笑)。

『彼女がその名を知らない鳥たち』
©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

華とオーラを持ちながら確実な演技で魅了! 舞台『娼年』では新境地を開拓

『侍戦隊シンケンジャー』(09~10/EX)でいきなり主演デビューを飾ったことからもその素材の良さが折り紙つきなのは周知の通りで、映画『今日、恋をはじめます』(12/古澤健 監督)やNHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』(12)などで、ルックスやイメージをストレートに活かして魅了する松坂。その一方、近年では『図書館戦争 THE LAST MISSION』(15/佐藤信介 監督)と『劇場版MOZU』(15/羽住英一郎 監督)で、それぞれタイプの異なる悪役でダークな一面に説得力を持たせたり、『日本のいちばん長い日』(15)では原田眞人監督のもと、自らの信念を貫き暴発する若き陸軍少佐を演じたり、『ピース オブ ケイク』(15/田口トモロヲ 監督)では原作でも人気キャラのオカマの〈天ちゃん〉をキュート&リアルに体現したり、ドラマ『ゆとりですがなにか』(16・17/NTV)では絶妙にダサい童貞くんという意外なキャラクターで笑わせたり。自らのイメージにとらわれない汚れ役も含め、実に多彩な役柄を披露しているのだ。ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(15/CX)や『視覚探偵 日暮旅人』(15・17/NTV)など、主演として作品を牽引する華とオーラを持ちながら、助演でも確実な演技で作品を支える。実力がメキメキと上がってきた彼と仕事したいというプロデューサーや監督が後を絶たないことが、現在の幅広い活躍に繋がっているのだろう。

このように彼が評価されているのは映像作品だけではない。彼にとって転機になったのでは、と思われるのが、昨年至るところでその評判を轟かせた舞台『娼年』だ。

「延々とセックスを見せる」という表現手法 舞台『娼年』観劇レポート

「延々とセックスを見せる」という表現手法 舞台『娼年』観劇レポート

2016.09.01

演出は『愛の渦』(14)などで過激な表現に挑んできた劇団ポツドールの三浦大輔、しかもR15指定。松坂は一糸まとわぬ姿で、生々しいセックスシーンを、それこそ体当たりで、ときに観客をいい意味で呆然とさせる演出のもと演じきった。人間の根源的な営みであり、身体のコミュニケーションであるセックスを通し、自分を見つめていく。もともと役者とは肉体のすべてをさらけ出して表現する職業なのだということを改めて感じさせた野心的な作品。とても生半可な覚悟ではできなかっただろう。おそらく彼は羞恥心や功名心などを捨て去り、そこに立ち、役者としての意識を新たにしていたはずだ。この舞台で絶賛された彼の次の作品の一つが『彼女がその名を知らない鳥たち』だというのも思わず納得してしまう。

朝ドラ、ダークヒーロー、刑事……出演作が続く松坂桃李の進化と深化に注目

『不能犯』
©宮月新・神崎裕也/集英社・2018「不能犯」製作委員会

さて、今秋公開の『ユリゴコロ』『彼女がその名を知らない鳥たち』のほかにも、期待の出演作が目白押し! まず、NHK連続テレビドラマ小説2度目の出演となる『わろてんか』が10月2日(月)よりスタート。ヒロインの〈藤岡てん〉(葵わかな)と運命の恋に落ちる旅芸人一座の〈北村藤吉〉を演じ、“国民の恋人”に。映画では、狙ったターゲットをマインドコントロールして確実に死に追いやるダークヒーローものの『不能犯』(2018年2月1日公開/白石晃士 監督)に主演。黒スーツ姿でこちらを見据える瞳に、観客も冒頭から心を支配されてしまうに違いない。もう1作、『孤狼の血』(2018年5月12日公開/白石和彌 監督)では、『日本のいちばん長い日』でも共演している役所広司と共に刑事を演じる。警察小説×『仁義なき戦い』と言われているハードな内容で直木賞候補にもなった原作を基にしたこの作品は、昭和63年の広島が舞台。対暴力団の捜査を強引に進める上司(役所)のやり方に戸惑いつつ、試練に立ち向っていく部下を、アツく演じて、理想と現実の間で揺れる青年像を見せてくれるはずだ。今後も松坂桃李の役者としての進化と深化、そして作品ごとに魅せる七変化から目が離せない!

映画『ユリゴコロ』

2017年9月23日(土)公開

原作:沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉文庫)
監督・脚本:熊澤尚人
出演:
吉高由里子、松坂桃李 / 松山ケンイチ
佐津川愛美、清野菜名、清原果耶 / 木村多江
音楽:安川午朗
主題歌:Rihwa「ミチシルベ」(TOY’S FACTORY)
配給:東映/日活

オフィシャルサイトhttp://yurigokoro-movie.jp/
©沼田まほかる/双葉社 ©2017「ユリゴコロ」製作委員会

【原作本】

ユリゴコロ
沼田まほかる(著) / 双葉文庫

ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題されたノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか? 絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー! まほかるブームを生んだ超話題作、ついに文庫化!

【関連曲】

ミチシルベ
Rihwa

配信開始日:2017.09.20

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』

2017年10月28日(土)公開

原作:沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫)
監督:白石和彌
脚本:浅野妙子
出演:
蒼井優 阿部サダヲ
松坂桃李 / 村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック・中嶋しゅう / 竹野内豊
音楽:大間々昂
配給:クロックワークス

オフィシャルサイトkanotori.com
©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

【原作本】

彼女がその名を知らない鳥たち
沼田まほかる(著) / 幻冬舎文庫

八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが……。衝撃の長編ミステリ。

映画『不能犯』

2018年2月1日(木)公開

『不能犯』
©宮月新・神崎裕也/集英社・2018「不能犯」製作委員会

原作:『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載 原作:宮月新/画:神崎裕也)
監督:白石晃士
脚本:山岡潤平、白石晃士
出演:
松坂桃李 沢尻エリカ
新田真剣佑 間宮祥太朗 テット・ワダ 菅谷哲也 岡崎紗絵 真野恵里菜 忍成修吾
水上剣星 水上京香 今野浩喜 堀田茜 芦名星 矢田亜希子 安田顕 小林稔侍
配給:ショウゲート

オフィシャルサイトhttp://funohan.jp/
©宮月新・神崎裕也/集英社・2018「不能犯」製作委員会

【原作本】

不能犯
宮月新, 神崎裕也 / グランドジャンプ

数々の変死事件現場にあらわれる謎の男・宇相吹正。しかし、誰も彼の犯行を証明することができない。人は彼を、犯罪を実証することができない容疑者「不能犯」と呼ぶ・・・。 憎悪、嫉妬、欲望そして愛・・・・・・ 宇相吹は依頼人の歪んだ思いに応え、次々と人を殺めていく・・・。 戦慄のサイコサスペンス開演!!