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『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』FFの本流を越えた最高の完成度とは

『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』FFの本流を越えた最高の完成度とは

2017年7月に発売された『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』(以下、『FFXII TZA』)。本作は、2006年に発売された『ファイナルファンタジーXII』(以下、『FFXII』)にさまざまな要素を追加、ブラッシュアップしたリマスター版だ。

“ガンビット”システムや倍速モードなど、本作の手触り部分の面白さについて触れた1回目の記事に続き、2回目となる今回は、幻想と科学、人間と亜人種が混在する世界で戦乱に巻き込まれながら成長を遂げる若者たちを描いた物語、独特のタッチを持つ吉田明彦氏の描くイラストの空気を絶妙に表現したグラフィック、プレイヤーをゲームに引き込むBGM、そして本編の魅力をより一層かき立てる寄り道要素の魅力を追及していく。

文 / 村田征二朗(SPB15)


幻想世界の魅力 

日本を代表するRPG作品はいくつかあります。その中で『FF』シリーズが独特の個性を放っている大きな要因をひとつ挙げるとすれば、それは王道ファンタジーRPGに比べて、機械などの科学文明の存在を扱っているからでしょう。

『FF』シリーズは一部を除けば作品ごとに異なった世界設定が舞台となりますが、ほぼすべての作品において、古代文明や現代的な技術などさまざまな形で科学技術が登場します。いまとなっては“魔法と科学”の世界は昨今のファンタジー作品における定番とまで言えますが、こと日本においてこの組み合わせが定着したのには、『FF』シリーズの影響が少なからずあったと言っても過言ではないでしょう。

▲『FFXII』においても、空中に浮かぶ都市と機械らしさを全面に出した飛空艇や戦艦、幻想と科学という相反する要素が自然に同居しています

シリーズ作品の中でも、『FFXII』はとくに幻想と科学が設定として強く融合しているのが特徴です。空を駆ける戦闘機を製造するほど技術が発達していながらも、地上には金属を蝕む“ミミック菌”が溢れているせいで戦車のような陸上兵器は存在しません。そうすると戦闘機による空中戦が主体となりそうですが、大きな都市や砦は魔道士たちが作り出す魔法障壁によって戦闘機からの爆撃を防ぐことができるため、最終的な決着は地上での白兵戦になる、といった具合に、戦闘システムなどのゲーム的な部分以外でも幻想と科学の関係がしっかりと設定されているのです。

また、本作の舞台となる地域“イヴァリース”の魅力は、技術面だけでなく、そこに住む人々の多様性にも見ることができます。すらりと伸びた手足やウサギのような長い耳が特徴の“ヴィエラ族”、『FF』シリーズではおなじみの“モーグリ族”、人型の爬虫類とも言えるいかついルックスの“バンガ族”、丸々とした巨体が特徴の豚から進化した“シーク族”など、いわゆる人間に当たる“ヒュム族”以外にも多様な亜人種が登場しており、その存在だけでもプレイヤーの目の前に広がる世界のファンタジーらしさを増してくれています。

▲オープニングムービーのさまざまな種族が並び立つシーンを見れば、「あぁ、これぞファンタジー!」とワクワクが込み上げてきます

▲ヴィエラ族は基本的に外界との接触を避けており、物語中盤でヴィエラ族の里を訪れた主人公たちが拒絶されるという、複数の種族が存在する作品における定番の展開もたまりません

そして、『FFXII』と言えば欠かすことができないのが“ジャッジ”の存在です。ジャッジというのは、主人公たちの敵となる“アルケイディア帝国”に属する特殊な騎士たちで、ストーリー上でも大きな役割を果たすのですが、何と言っても印象的なのはそのビジュアルです。西洋風の甲冑に身を包んだ姿は亜人種たちが溢れるイヴァリースにおいてはかなり異質な存在に映り、しかもその甲冑が非常に格好いいのです。

▲ジャッジたちの所属する騎士団は正式名称を“公安総局”といい、各局ごとの最終責任者“ジャッジマスター”は存在感も戦闘力も並外れています。ダークかつ武骨なビジュアルがすばらしい……!

オリジナル版の『FFXII』が11年前に発売された作品ながら、本作の世界設定、そしてそこに暮らす人々から溢れるファンタジー感はいまでも色褪せることはなく、『FFXII TZA』でHD化されたことでキャラクターの衣装や肌、冒険の舞台となる大自然や建造物の質感が増し、より存在感がある、より魅力的な世界として表現されているのです。“ファンタジー”をタイトルに冠しているだけあって幻想的で、それでいて科学文明の存在や設定の作り込みによって地に足のついたリアリティを獲得している本作、世界設定がよく練られたファンタジー作品が好きな人にとっては、舞台となる世界や街の住人たちを眺めているだけでも楽しめることでしょう。