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『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』FFの本流を越えた最高の完成度とは

『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』FFの本流を越えた最高の完成度とは

戦記でもあり、成長物語でもある『FFXII』

幻想と科学、多様な種族たちが混在する本作の舞台・イヴァリース。そこでくり広げられる冒険にさらなるリアリティを与えてくれるのが、強力な兵器と政治的戦略が同居する近代的な戦記もののような側面を持つ本作の物語です。本作のあらすじを簡単に紹介すると、下記のようになります。

――イヴァリースの覇権を巡って睨み合うふたつの大国、“アルケイディア帝国”と“ロザリア帝国”。両国のあいだに位置する独立国“ダルマスカ”と“ナブラディア”は、ダルマスカ王妃アーシェとナブラディア王子ラスラの婚礼を行うことで明るい未来を築こうとしていた。しかし婚礼の直後、アルケイディア帝国がナブラディアを侵略し、王子ラスラは戦死。ナブラディア領はアルケイディアに占領され、ダルマスカも事実上の降伏を強いられる。ナブラディアの戦いで唯一の肉親を亡くしたダルマスカの少年・ヴァンは帝国への腹いせに帝国の高官たちが集まる王宮へと忍び込み、そこで空賊・バルフレア、その相棒・フランと出会う。ヴァンはバルフレアたちと関わるうちにひとつの国を滅ぼす力を持つ“破魔石”を巡る戦い、そして帝国やダルマスカ、イヴァリース全土を左右する戦いに巻き込まれていく――

▲物語の合間でストーリーや世界情勢を解説してくれるナレーションも戦記感を増しています

“ただの町人である少年が小さな事件をきっかけに世界を揺るがす戦いに挑むことになる物語”、とまとめると非常に王道の展開ではありますが、本作は主人公であるヴァンが“特別な存在”ではないという点において異質な作品となっています。

▲こちらが主人公のヴァン。気取らない喋りかたも一般人らしさを感じさせます

物語を追うなかで主人公が超人的な能力に目覚める、じつは古代王族の末裔だったことが判明する、といった風に“一般人かと思ったらじつはスゴい人でした”な展開はそこまで珍しくありませんが、ヴァンはあくまでも最後まで“普通の人”であり続けるのです。

『FFXII』の物語において主人公・ヴァンは都合よく超人になることはなく、むしろ終盤になると物語の主人公を自称するバルフレアやダルマスカ王妃のアーシェの陰に隠れがちとも言えます。しかし、特別な立場にない一般人だからこそヴァンは義務感や使命に縛られず、正直に生きることができ、彼のそんな言動が周りの仲間たちを動かすきっかけとなるのです。

▲出会い頭の衝撃的な発言でプレイヤーを驚かせるバルフレア。プレイを進めていくと、この発言に納得できるような場面もかなりあります

▲画面左に立つ女性がアーシェ。母国の仇の帝国に対する理屈としての和平と、復讐を望む感情とのあいだで葛藤する彼女は、バルフレアと並んで物語の中核を担います

イヴァリース全土を巻き込む国家間の争いというスケールの大きい物語のなかで、ヴァンやバルフレア、アーシェたちはさまざまな冒険を乗り越えることで怨恨や復讐といった確執と決別し、やがて自分なりの“自由とは何か”、“自分が為すべきことは何か”を見つけていき、それぞれの道を歩んでいくこととなります。初めは周りに比べて未成熟なところが目立つヴァンもだんだんとみずからの意志で行動する面が見えてくるようになり、国家間の争いという大舞台において中心に立つことはなくとも、ひとりの人間としてはしっかりとした成長を見せます。

▲序盤は感情に任せて動きがちなヴァンが自分で考えて行動するようになるという意味では、本作は主人公・ヴァンの成長物語であるとも言えるでしょう

▲ただし、成長したかと思いきや、女性であるフランに年齢を尋ねるという失礼をしてしまうなど、ちょっと抜けたところがあるのもヴァンの魅力……? ちなみにこの発言のあとは全員から総スカンを食らいます

贅沢を言えば各キャラクターをさらに掘り下げる描写や何気ない日常のやりとり、互いに絆が芽生えていく過程を描く場面が本編の中にもっと盛り込まれていればうれしかったところですが、細かな説明をしすぎない本作の語り口も、よく練られた設定をもとにプレイヤーが想像を膨らませ、ゲームの世界を広げていくことができる本作の作りにマッチしていると言えます。主人公を物語の中枢に置かないという、『FF』シリーズのみならず、それ以外の作品と比べてもかなり特殊な作りのおかげで、プレイヤーが抱く感想はさまざまです。しかし、本作の要素に少しでも興味があれば、ほかの人の評価や意見に左右されず、試しにプレイしてからストーリーの是非を判断してみるのもありでしょう。

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