Interview

映画『AMY SAID エイミー・セッド』三浦誠己×渋川清彦対談。「未知の役をやることで自分の人生が豊かになるということ」

映画『AMY SAID エイミー・セッド』三浦誠己×渋川清彦対談。「未知の役をやることで自分の人生が豊かになるということ」

原作モノが多い日本映画界のその一方で、オリジナル脚本で良質な映画も多い。
どちらも映画愛を持って制作されていることには違いないが、“いい映画だった”と観終わった後に思える映画に年間何本出会えるだろう…。人それぞれの感性があるため、全ての人が満足するのは難しいが、出会えた時には景色の見え方がちょっと変わったりする。
そんな思いをさせてくれる映画がある。
『AMY SAID エイミー・セッド』。映画研究会所属メンバー9人。その中の仲間が突然死んでしまう。それから20年後の命日に集まり、その死の真相を知っているという発言から、止まっていた時間を動きだす…。大人の青春映画は、生きること、死ぬこと、これまでのこと、これからのこと、様々なことを考えさせてくれる。その出色の映画に出演している三浦誠己と渋川清彦に話を訊いた。
大人が本気で臨んだ映画の凄みを感じでほしい。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 森崎純子

バジェットの大きい小さい自体はあんまり関係ない役者としてのスタンス

まず本作は、個性派人気俳優が数多く所属するマネージメント会社ディケイドが設立25周年を記念して制作されたもので、お二人をはじめ多方面で活躍されているディケイド所属俳優さんが出演されているにも関わらず、いわゆるメジャー商業作品にはないインディペンデントな空気がとても魅力的です。
出演されたご本人たちとしては、他の現場と特に変わりはありませんでした? 

渋川清彦 どうですかねえ…。バジェットの大きい小さい自体はあんまり関係ない、たとえば海外で撮影して、シネコンで全国一斉公開されるような大作も、ミニシアターでかかる映画も、どっちも映画で、よーいスタート!で演技をするという意味で変わらないんですけど、やっぱり役や作品によって自分の気持ちや準備するものは変わってくるし…。この作品はずっと真夜中に撮影していたので、すごく眠かったのは憶えてますね。

三浦誠己 舞台になってる店が実際に吉祥寺にある店なんですけど、夜、お店が終わってから撮影を始めて朝方まで…。それが4、5日続いたんだよね。

三浦誠己

渋川 そうそう、ギュッと詰まった感じで撮影して、終わった後、みんなで朝方唯一やってる磯丸水産にいって呑んでね。ハードだったけどそういうのはやっぱり残ってるよね。でかいバジェットだと、そういうことはないからね。東京で撮影だと、終わってもすぐさよならで、特にスターみたいな人が多いと、一緒に飯喰ったりすることも少ないし。

三浦 そういう意味では、小さいバジェットだと俳優同士が密にできる感じはありますよね。

渋川 ディケイドは年に何回か飲み会もやってるし、役者同士もその人となりは知ってるんで。知ってるから(演技が)やりやすいかっていうと、それはまたわかんないけど。たとえば、三浦くんは千原ジュニアの付き人みたいなことやってたんで、逆に彼とはすごくやりにくいみたいで(笑)。

三浦 いやあ、千原さんはねえ…。役者になる前からずっと世話になっていただけに緊張するというか、普段と違う感じはありますよね。

渋川 でも、今回に関してはプライベートで仲が良いことがいい方に転んだ例だよね。

©2017「AMY SAID」製作委員会

確かに、「学生時代に一緒に映画を作っていた40代の男女がとあるバーで久しぶりに集う」という映画の世界観ともリンクするものがあって、親密な「身内感」みたいなのは出てますよね。夢を棄ててなお、大人になりきれないでいる者たちを肯定してみせる、切なくもあたたかなストーリーもリアルで沁みます。

三浦 やっぱり自分も20年前ぐらい前に同じような夢を抱いていた友達に会うと、今はそれぞれ違う環境で生きてるんだけど、やっぱり会うと感覚は当時のままというか、昔の関係性に戻るみたいな。そういうのは自分も人生の中で経験したことだったので、リンクするものはあったし…。どこか装っている部分もあるし、本音を言える仲でもある、ちょっと家族とか兄弟に近いような感覚はあるのかなと思いましたね。

作品の中でも、最初はみんな大人になった自分を装いつつ探り合ってる感じがあるけど、徐々に本音を曝け出してゆく。それができるのは、やっぱり特別な時期を一緒に過ごした人間だからでしょうね。
ちょっと話が逸れますが、お二人ともすごく独特の雰囲気をもつ俳優さんで、様々な役を演じられるバイプレイヤーでありながら、見る人の目を捉えて離さない圧倒的な存在感があります。ご自分では、俳優としてこうありたいみたいなものはありますか?

渋川 うーん、難しいなあ…。三浦くんはそういうの、うまく答えられるよね(笑)

渋川清彦

三浦 いや、すぐ振らないでよ(笑)。おそらく俳優っていう大きいカテゴリーの中では、僕らはちゃんとした教育を受けてはいない。現在のお芝居の背骨として、たとえば新劇とか大河ドラマみたいなニュアンスのお芝居がある一方で、もっと生々しい芝居みたいなものが90年代に出てきて…。70年代でもATGとかそうだと思うんですけど、たとえばミュージシャンが映画にポンと出てくるような。要は「映画の中で魅力的に映る人間」っていうのに変わってきたなかで、僕はさておき、KEE君という、渋川清彦という個性的な存在感っていうのがフィルムの中で際立ってきたんだろうな思いますね。

渋川 まあ、見方は人それぞれだから、「お芝居」が好きな人はそれが上手い人が魅力的に見えるだろうし、逆にお芝居じゃない人間的な目線で見る人は、俺らみたいなのをいいって見てくれてるのかもしれないですよね。でも、逆に俺らは芝居がうまい人に対して、すごい憧れはあるよね。滝藤賢一とか、僕も昔からけっこう知ってるんだけど、やっぱり一緒にやるとうまいなーって肌で感じるし。なおかつ人間的にもおもしろいしね。

三浦 結局、流れですよね。なんか人生の流れでこの仕事やってるなとは思う。

渋川 そうだよね。今からでも芝居をとことん勉強して、とかできるんだけどでもやらないし(笑)。流れですね。

確かに、お二人とも最初から俳優を目指されていたわけではなく、それぞれバンドやモデルだったり、お笑いだったり、別の表現から芝居の世界に入られたわけで。

三浦 人生というか運命というか…。人との出会いだったりの方が大きいかもしれないよね。

c2017「AMY SAID」製作委員会

自分が資質として持ってるものを監督とか観ている人がギュッと取り出してくれてる感じ

俳優のお仕事は、監督なり、役なりとの出会いも大きいですよね。

三浦 僕なんかは、役との出会いがおもしろくてやってるところはありますね。若い頃は暴力的なキャラクターの役が多かったんですけど、ある作品で今回の朝田に近い、やさしい内向きな男の役をもらって。最初は台本を読んでも全然ピンとこなくて、自分の中にこういう部分ってあるんだろうか? と心の中を掘り下げてみたら、やっぱり似たような状況はあって。そこを膨らませていって、役を演じて、完成した作品を観たときに自分の中で、あ、自分の中にもこういう部分があって、こういう演技もできるんだって発見したし、いろんな感情が湧いてきて。たとえば、自分の両親や友達に対しても、これまでとは違った見方ができたりして…。自分にとって未知の役をやることで自分の人生が豊かになるという経験があったからこそ、いろんな役をやってみることにワクワクする気持ちが得られたのかなと思いますね。

今回、三浦さんも渋川さんも従来のイメージとは違う役を演じられているのが新鮮です。これをやらせたらピカイチ!みたいなのは大事ですが、それとは全く違う役に挑戦してゆくことも俳優さんにとっての財産ですよね。

渋川 そうですよね。これをやらせたらピカイチ!みたいなのは結局、自分がもともと資質として持ってるものを監督とか観ている人がギュッと取り出してくれてる感じがあると思う。俺もどちらかといえば、だらしない悪い役ばっかりやってるけど(笑)。三浦くんは日常でも筋トレやったり走ったり、ちゃんとしてるから刑事の役とかもハマるんだよね。

三浦 僕、この世の中でいちばん欲しいものが健全な肉体と精神なんですよ。これが、精神が宿りかけたら肉体が健全じゃなくなったり、なかなか難しくて。この両方がぱっと揃うような日常が得られたら、オレもう何もいりません。

渋川 いらないよね、仕事も(笑)。

三浦 うん。いや、それは困る(笑)。でも、そういう仙人みたいな人には憧れますよね。

渋川 ムリじゃない? 健全な精神とか、ムリやから面白いなと思うし。俺は適当に、いいペースで仕事ができるのがいいなと思いますね。あんまり忙しすぎると健全な精神でいられないだろうし、やっぱり実生活のことはなんかしら芝居にも反映されてると思うし。

c2017「AMY SAID」製作委員会

役を演じるといっても自分の肉体を使うわけですから、「男の顔は履歴書」じゃないですけど、やっぱりその人の実生活とか人生で背負ってきたものは出てると思います。渋川さんと三浦さんはお付き合い長いんですよね…?

渋川 長いよね。特にすごく深く付き合ってるわけではないけど、それこそ20年前に三浦くんがジュニアの付き人していた頃から…。すごい暗黒の時代も知ってるんで。

三浦 そうですね。暗黒の…ちょうど二十歳すぎぐらいの頃。

渋川 『ポルノスター』(豊田利晃監督の1998年のデビュー作。千原ジュニアが主演で渋川もKEE名義で出演)の撮影の後に、よく一緒に呑んでたんだよね、直接はそんなに話してなかったんだけど、いつもいるのにある日いないときがあって。あれ、三浦くんどうしたの?ってジュニアにきいたら、あいつ海を見に行ってる。死のうかどうか迷ってるって(笑)。

三浦 いやー。あの頃は本当ーに悩んでましたね。本気で芸人も俳優もやめて、田舎に帰って普通の仕事をして親孝行してから死のうかなとか、いろいろ人生の大転機でしたね。

渋川 俺もそういうのを聞いてたからさ、今こうやって一緒にやれてることがすごく嬉しい。

三浦 いや、本当に。

まさに『AMY SAID エイミー・セッド』のパラレルワールドを見るような…。グッとくるお話、ありがとうございました!

AMY SAID エイミー・セッド

2017年9月30日(土) テアトル新宿ほか全国公開

監督/脚本:村本大志
脚本:狗飼恭子
企画・製作:佐伯真吾
キャスト:三浦誠己、渋川清彦、中村優子、山本浩司、松浦祐也、テイ龍進、石橋けい、大西信満、村上虹郎、大橋トリオ、渡辺真起子、村上淳

音楽:jan and naomi 
テーマ曲:「AMY SAID」大橋トリオ

プロデューサー:関友彦 田中和磨 
制作:コギトワークス
配給:ディケイド
宣伝:フリーストーン

ストーリー:
映画研究会の仲間9人。その中のファムファタル的な存在だったエミ(柿木アミナ)がある日突然彼らの人生からいなくなって20年。彼女の命日に久しぶりに集まったのは、パン屋を営む朝田(三浦誠己)、無農薬野菜をつくる飯田と直子(渋川清彦、中村優子)、売れない俳優岡本(山本浩司)、キャリアウーマンの美帆(石橋けい)、 介護士の五島(松浦祐也)、IT会社を経営する木塚(テイ龍進)。「わたし本当は知ってるの、エミが死んだ理由。ずっとみんなに言いたかった」突然の直子 の言葉に、それぞれの中で止まっていた時間が動き出す。そしてそこに訪れる、招かれざる客、川崎(大西信満)。彼が現れた理由は、朝田にとって思いもよらないものだった。かつて同じ夢を見て、同じ夢に破れた。20年後、僕たちはようやく本当に語るべきことを語り合える。生きること、死ぬこと、そしてまた生き続けること。エミが最後に言いたかった言葉を探す、ある一夜の物語。

公式サイトhttp://amy-said.com/
©2017「AMY SAID」製作委員会