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『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』蘇った名作ハードボイルド推理アドベンチャー

『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』蘇った名作ハードボイルド推理アドベンチャー

ハードボイルドなビジュアルや物語でファンからの根強い人気を持つ『探偵 神宮寺三郎』(以下、『神宮寺』)シリーズ。シリーズ30周年を記念し、2017年8月に発売された『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』(以下、『神宮寺 GOD』)も、事件の発生から解決に至るまでのスリル溢れるストーリー展開、そして事件のなかでくり広げられる人間ドラマの温かみといった『神宮寺』シリーズらしい魅力が詰まっており、ファンのあいだでも好評を博している。

第2回となる本稿では、『神宮寺』シリーズをより魅力的に見せてくれるキャラクターたちや本作に収録されている“GOD“以外のシナリオを紹介し、作品のすばらしさを追及していく。

文 / 村田征二朗(SPB15)


ハードボイルドを象徴する男、神宮寺三郎 

名探偵が謎を解き明かして難事件を解決していく、いわゆるミステリーと呼ばれるジャンル。探偵たちが遭遇する事件の奇怪さ、真相を覆い隠す巧妙なトリック、調査と推理の果てに事件のからくりが紐解かれていくカタルシス。ゲームであっても小説であっても、これらの要素がミステリーの真髄だと言えるでしょう。

▲ヒント機能が充実しているおかげで推理の難度が高くなく、推理が苦手な人でも物語に集中することができるのも『神宮寺』シリーズの特徴です

ミステリーものの醍醐味が謎に包まれた事件の真相に至るまでの過程にあることはもちろんですが、現実的な世界を舞台に非日常的な事件が展開する物語、リアルと非リアルのあいだにある物語だからこそ、導き手となる主人公のパーソナリティが重要だと言えるでしょう。筆者としては、物語の登場人物にこそミステリーの魅力が集約されていると考えています。歴代の名探偵や名刑事を見れば、ミステリーの主人公がただの謎解き以上の役割を果たしていることは疑うまでもありません。

前置きが長くなってしまいました。『神宮寺』シリーズの面白さは推理ものとして優れているだけでなく、ハードボイルドな空気や人と人との絆を描く物語といったさまざまなジャンルの妙が詰まっているところにあるのですが、神宮寺が見せるプレイヤーの推理を導く冷静さ、ハードボイルドそのものな渋さ、人のために怒ることのできる人間性、そんな魅力があってこそ、30年にわたってファンを惹きつけていると言っても過言ではないでしょう。

▲ペット探しや浮気調査といった地味な依頼から殺人事件の解決まで幅広く手掛ける探偵・神宮寺三郎。本作のハードボイルドな空気をもっとも強く印象付ける人物です

冷静沈着な推理で事件を解決し、必要とあれば襲ってきた悪漢を返り討ちにし、タバコと洋酒でひとときの安らぎを得る。感情は心の中に押しとどめて振り回されず、事件で依頼人たちが抱える苦悩や悲しみ、その理不尽さに対する怒りは真実を解明して犯人を突き止めることでこそ晴れると考える神宮寺は、まさにハードボイルドそのものとも言える男です。

国際企業である“神宮寺コンツェルン”の総帥を父に持ちながら家業を継ごうとせず、大学卒業後に単身アメリカへと渡り、探偵の助手として経験を積んだというエピソードも彼らしさを象徴しています。なお、彼にはふたりの兄がおり、本作には登場しませんが過去作では神宮寺が兄と電話で言葉を交わすシーンもあります。外見や立ち振る舞いだけでも格好いい神宮寺ですが、恵まれた環境に甘えることなく人のためになる仕事を選ぶような実直さも彼を愛すべきキャラクターにしています。

依頼人との約束を大切にし、たとえ依頼人がこの世を去ってしまったとしても相手との約束は律義に果たす。困っている人を見過ごすことができず、ときには報酬すらも度外視して相手を助ける行動を起こすことができる男、それが神宮寺三郎なのです。『神宮寺』シリーズに触れれば触れるほどそんな神宮寺が魅力的に見えてきます。

▲チンピラのひとりやふたりなら軽く打ち倒せるほどの実力を持ちながら、無意味な暴力に訴えたりしないところは“本物の男“を感じさせます

『神宮寺』シリーズは事件の謎を読み解く推理アドベンチャーであるとともに、神宮寺三郎という男の活躍、生き様を見ていく作品でもあります。しかし、物語を彩るのは彼ひとりではありません。多くのミステリー作品と同じように、調査を手伝う助手や事件解決のためにしばしば協力することになる警察関係者の存在も『神宮寺』シリーズにおける重要なエッセンスです。