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『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』蘇った名作ハードボイルド推理アドベンチャー

『探偵 神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK』蘇った名作ハードボイルド推理アドベンチャー

短編ミステリーが見せる絆の物語

第1回の記事では『神宮寺 GOD』で新たに書き下ろされた長編シナリオ“GOD“のあらすじを紹介しましたが、以降ではかつて携帯アプリ版『神宮寺』シリーズとして配信され、現在では配信停止となっている4本のシナリオについて紹介していきます。なお、本作には携帯アプリ版『神宮寺』の21本目から最後の携帯アプリ版シナリオとなる24本目までが収録されており、それ以前のシナリオは過去にニンテンドーDSで発売した『神宮寺』シリーズに同時収録されています。

まず紹介するのは、作中に登場する人気小説のドラマ化に際して発生した事件、そして小説の物語に隠された真実を巡るシナリオ“鬼姫伝“です。

▲シナリオタイトルの“鬼姫伝“は、物語と事件両方の鍵となる、人気小説のタイトルでもあります

――神宮寺探偵事務所を訪れたひとりの女性。彼女は神宮寺に夫の浮気調査を依頼するのだが、夫の浮気相手だと言って差し出した写真に写っていたのは神宮寺の助手、御苑洋子だった。浮気調査を行うなか、神宮寺はドラマ“鬼姫伝“の撮影中に起きた不可解な事故を調査するよう依頼を受ける。神宮寺の調査はやがて“鬼姫伝“の元となった過去の事件へとつながり、 “鬼姫伝“の物語に隠された真実が神宮寺の手で明かされていく――

才色兼備の助手・御苑に対するまさかの浮気疑惑から始まる本シナリオで描かれるのは、“鬼姫伝“という物語に隠された真実であり、またその物語によって運命を翻弄される姉妹の絆でもあります。ふたりの姉妹に降りかかる悲劇の理不尽さと犯人の矮小さのおかげで、犯人やその動機が発覚した際にプレイヤーが抱く怒りは相当のものですが、そのぶん終盤の展開はスカッとするものがあり、物語の最後に表示されるエンドカード的なイラストには心底、ホッとさせられます。

続いては、ひとりで息子を育て上げようと奮闘する母親とその息子を描くシナリオ“愛ゆえに“です。

▲本作に収録されているシナリオはどれも好きなのですが、個人的なお気に入りを1本選ぶとすればこのシナリオです

――ある日、路地裏で男たちに襲われていた女性を助けた神宮寺。彼女は歌舞伎町でバーを経営していたが、ヤクザからの地上げに苦しんでいた。彼女の息子は母親の身を案じて母親を守ってくれるよう神宮寺に依頼するが、当の本人は神宮寺の助けを頑なに拒む。彼女たち親子との関わりを通して、神宮寺は歌舞伎町の裏側に広がりつつある問題へと足を踏み入れていく――

このシナリオでは母が子を思う心、そして子が母を思う心を描くシーンが非常に印象強く、プレイヤーの胸を強く打ちます。また、終盤の衝撃的な展開も物語に『神宮寺』シリーズらしい重みを与えており、短編シナリオながら読みごたえはかなりのものです。

つぎに紹介する“勿忘草の想い“では、神宮寺が探偵業を始めたばかりのころに受けた依頼が8年の時を経て完結する物語であり、“愛ゆえに“とは違った形で親子の絆を描いています。

▲若いながらもすでにハードボイルドの香りを漂わせる神宮寺の姿が楽しめる本シナリオは、神宮寺ファンなら見逃せません

――8年前に神宮寺がひとりの女性から受けた依頼、それは8年後に彼女の娘にひとつの封筒を渡すこと。時が過ぎ、約束を果たすために封筒を手に取った神宮寺のもとに、息子を探してほしいと話す依頼人が訪れる。母親が遺した封筒を拒絶する娘、失踪した息子と新宿で勢力を広げるヤクザ“鷲牙組“とのつながり、それらはやがてひとつの事件へと結びつく。過去と現在が錯綜し、神宮寺は秘められた真実を紐解いていく――

神宮寺のもとを訪れた母親、そして神宮寺が訪ねる娘、すれ違いの裏に隠れていた真意が8年を経て伝わる瞬間の感動はなかなかに大きく、プレイしながらじんわりとするものがあります。親子の絆を描いているだけあって、このシナリオも非常にいい話なのです!

そして、携帯アプリ版『神宮寺』最後のシナリオとなった“揺らめくひととせ“。こちらではふたりの青年の友情、そして彼らのために奔走する神宮寺の男気を堪能できます。

▲作中に登場する小悪党のどうしようもない小物っぷりにも注目ですが、画像に映るふたりの青年が互いを思う描写はプレイヤーをじつに爽やかな気分にしてくれます

――古びた骨董屋の前にたたずむふたりの青年。ひとりは神宮寺が間に合わなかったとつぶやき、ひとりはそれでも神宮寺を信じると声を絞り出す。ある日神宮寺が受けた小さな依頼はひとつの事件へとつながり、やがて事態は危険な様相を見せ始める。神宮寺がふたりと交わした約束とは――

神宮寺とふたりの青年との出会いが次第に大きな事件へとつながっていくこのシナリオでは、青年たちのいい意味での若さや神宮寺の豪胆な作戦を見ることができます。また、鑑識官の三好も登場し、得意の分析で事件解決に協力してくれるので、彼女が気になる人はこのシナリオからプレイしてみるのもいいかもしれません。

どのシナリオも2時間から3時間程度で読み終えることができるボリュームになっており、読みやすい長さでありながら読後はプレイヤーの心に残るものを持っています。第1回の記事でも書いたように本編の“GOD“も含めて、どのシナリオからプレイしても楽しめるようになっていますので、『神宮寺』シリーズに初めて触れる人はまず短編である携帯アプリ版シナリオをプレイして登場人物になじんでいくのもありでしょう。

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