Interview

【招待券あり】新海誠、デビュー15周年記念『新海誠展 -「ほしのこえ」から「君の名は。」まで-』を語る。

【招待券あり】新海誠、デビュー15周年記念『新海誠展 -「ほしのこえ」から「君の名は。」まで-』を語る。

アニメーション映画監督・新海誠のデビュー15周年を記念して『新海誠展 -「ほしのこえ」から「君の名は。」まで-』が、国立新美術館(東京・六本木)にて2017年11月11日(土)~12月18日(月)まで開催される。

過去作品の上映や、展覧会の音声ガイドを映画『君の名は。』で主人公・立花瀧役を演じ、自他ともに“新海誠作品ファン”という俳優の神木隆之介が務めるなど、新海誠のアニメーションの魅力とその軌跡に迫る見どころがたっぷりと用意された展覧会を前に、開催への感想や、作品作りに対する心境の変化、本展の発表会の席上で「僕が監督じゃなかったとしても、2016年のあの夏のタイミングに『君の名は。』のような作品がでてきたんじゃないか」と語った真意など、新海誠に話を聞いた。

取材・文・撮影 / 平山正子


自分の未熟さを含めて恥ずかしい部分も観客に、晒していると思う

まずは、美術館で行われる展覧会への感想をお願いします。

すごく光栄だと思うのと同時に戸惑いがあります。ここまで大きな規模でやっていただくという事は、展示会のキュレトリアル(学芸員)チームの方が、(開催する)意味を見つけて作ってくれているのだと思います。なので今回は、神木(隆之介)君の音声ガイドを含めて、キュレトリアルチームの作品を見ることが楽しみです。

どんなところで、戸惑いを感じますか

僕たちの完成物は1本の映画です。その作る過程で生み出される絵コンテや作画などは、中間成果物であり、スタッフとのコミュニケーションツールです。僕の発想では制作のメモのようなものを“観客に見せよう”とは思わないので戸惑いを感じました。

「ほしのこえ」
監督・新海誠による原画

作品を作る過程を丸裸にされていますが。

まぁ、秘密の日記が出るわけではないので(笑)。見せても差しさわりのないところを展示しています。僕は、映画を出した時点で、自分の未熟さを含めて恥ずかしい部分も観客に、晒していると思うんです。世の中に物を出した先は、“どうやったってコントロールできない”と思います。

どんな時に、コントロールできないと思いましたか?

デビュー作の『ほしのこえ』あたりから痛感しています。観た人の感想をネットで読んだ時に“そんなつもりじゃなかったのに”ということが何度かありました。最初は、観てほしい人にだけ観てもらって“ちょっと褒めてもらいたい”そんな気楽な気持ちで作り始めたんだと思います(笑)。

やはり、デビュー作は観た人の感想は気になりますよね。

世の中に(作品を)出した時点で、観客は選べないし、感想も選べない。『こういうつもりで作った』という言い訳は一切きかない。それを15年前に痛感して、本当にショックでした。でもそれを15年繰り返してきました。『君の名は。』でそのショックが、更新されました(笑)。

作り手側が葛藤される部分ですよね。

最近、聞かれてよく言うのは、村上春樹さんが「『ノルウェイの森』以前は、読者に愛されている気がしていた。以降は憎まれている気がする」とエッセイに書かれていて、並べるのはおこがましいんですが、僕もその気持ちがわかる気がします。

展覧会を見るかたへ向けて、過去作品の自身の中のテーマと共に、解説をお願いします。

『ほしのこえ』(02年2月公開)
テーマ:メールをモチーフにした作品。
携帯メールは今は当たり前のものですが、当時は普及して1年くらいでした。葉書であればいつ届くか分からない。メールはすぐに返そうと思えば返せる。でも、そこに駆け引きが生まれた。コミュニケーションが変わる瞬間だったので、作品にしたいと思いました。

『雲のむこう、約束の場所』(04年11月公開)
テーマ:初めてアニメーション映画を作ろうとした作品。
思いがけずに『ほしのこえ』を多くの人に観ていただき、“もう少し本格的にアニメーションを作ってみたい”と思った作品です。前作は“ゲームムービーの延長”という感覚だったんです。初めての長編でとにかく“大変だった”という反省ばかりが巨大に残ったような映画です。

『秒速5センチメートル』(07年3月公開)
テーマ:今では作れない、青年期だからこその作品。
前回の制作現場の大変さを“何とかしたい”と思い、ギュッと小さな規模で短編として完成度を高めて作った作品です。また、些細な日常から意味を導き出す作品を作りたいと思っていました。いま思うと時代を濃く反映した作品です。

『星を追う子ども』(11年5月公開)
テーマ:自分は物語作家だと思い定めた作品。
『秒速5センチメートル』の後、しばらく海外に行ったり結婚したりと、自分が大きく変わる青年期から中年期に向う中で生まれた作品です。また、それまでは映像作品を作りたいという気持ちが強かったんですが、自分は物語作家として“現代の物語でどういう物を作れば観客に必要なものになるのか”を考え始めた作品です。

『言の葉の庭』(13年5月公開)
テーマ:完成度だけで勝負した作品。
震災があり、日常がこのまま続くという感覚がなくなり、自分の好きな風景を留めたいと思いました。それまでは、“傷はあるけど、作りたいんだ”と思っていたのが、そういう言い訳をせずに“完成度”だけで勝負した作品です。

『君の名は。』(16年8月公開)
テーマ:喜怒哀楽。すべての感情をいまなら感じてもらえると思って作った作品。
『言の葉の庭』後に、CMや小説などで物語作りの自信が出てきました。今であれば喜怒哀楽が全部ある映画が作れるのではないかと挑み、2014年夏から作り始めました。

『新海誠展』を見に来る前に、この作品だけは観てほしいなというような作品はありますか?

僕の作品を観ていない人も、観てから来た人も、感じ方はそれぞれだと思うんです。なので、特にこの作品を観てからとかはないですね。展示を見てから、もう一度作品を観ると違う見え方はするかもしれません。

やはりライバルはピクサーや、ディズニーなど予算や時間が桁違いのものと勝負しなくてはならない。

物語作家だと思うようになった、きっかけは?

集団制作をするようになって、自分よりも比べものにならないくらい、絵が上手い人がたくさんいてくれるようになり、絵作りをスタッフに委ねる部分が多くなりました。それだけ、才能ある方々と仕事が出来るようになってきたおかげだと思います。

周りの人による影響の変化が大きかったんですね。ほかにはありますか?

もうひとつ、日本のアニメーションの戦い方を考えたときに、やはりライバルはピクサーや、ディズニーなど予算や時間が桁違いのものと勝負しなくてはなりません。そのためにはアニメーションにだけ注意するのではなく、根本にある物語を練ることだと思いました。音楽も絵もセリフも“すべてが物語を運ぶための器なんだ”と考えるようになりました。そうでないとほかのもっと強いコンテンツがあふれる中“選んではもらえない”そんな焦りのようなものがあって、物語を大事にしなければいけないと、周りの環境の変化で僕自身がだんだんと思うようになりました。

コントロールできないのが映画だと『君の名は。』で改めて実感した。

『君の名は。』は、一大ブームになりましたね。

映画は、中高生など10代に見てもらえる映画にしたいと作ってきました。でも、小学生の皆さんにもあれだけ見てもらうことができて、“ブームになるというのは、こういうことなんだ”と実感しました。

ヒットの理由を挙げるとしたら?

大きな理由として、音楽だと思います。 『前前前世』(RADWIMPS)という言葉やメロディーの持つ力が思春期以前の子たちにも届き、それが入口になって映画を楽しんでもらえたと思います。それに小学3~5年生の子どもたちも「泣いた」とか「普通に分かった」と言うらしいんです。大人の思惑の浅はかさみたいなものを感じました。彼らは彼らなりに理解するし、映画の楽しみ方を知っているんです。

それこそ、老若男女が劇場に訪れましたよね。

ターゲットを定めて作ったからと言って、その通りになるわけではないし、作り手の思惑が常に届くわけでもない。コントロールできないのが映画だと『君の名は。』で改めて実感しました。

ちなみに、新海さんの幼少期はどのようなお子さんでしたか?

田舎で育ったので、地面か空しか見てませんでした。虫か雲かを見ていて、中学生まではあまり人間に興味がありませんでした(笑)。

「君の名は。」作画監督・安藤雅司によるレイアウト修正