Interview

尾崎裕哉 尾崎豊を父に持ち、その歌声を受け継ぐ一人の音楽家。彼の今の佇まいから、目指す音楽のヒントを探る

尾崎裕哉 尾崎豊を父に持ち、その歌声を受け継ぐ一人の音楽家。彼の今の佇まいから、目指す音楽のヒントを探る

昨年、配信シングル「始まりの街」でデビューを果たした28歳のシンガーソングライター、尾崎裕哉。今年3月に発表した初のCD作品であるファーストEP「LET FREEDOM RING」に続く彼のセカンドEP「SEIZE THE DAY」が完成した。偉大なアーティストである尾崎豊を父に持ち、その歌声を受け継ぎつつ、現代を生きる一人の音楽家として、新たな風景を切り開こうという高い志を胸に秘めた彼の音楽世界は、ダンスミュージックやヒップホップ、R&Bの要素を交える、その柔軟さに現代のシンガーソングライターとしての個性が見て取れる。劇場版アニメ『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』主題歌に起用された「Glory Days」が放つ高揚感は果たして彼の音楽をどこに導くのだろうか。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 森崎純子

新人である自分は生きるか死ぬかの心境というか、僕には毎回ベストを尽くすことしかできないなって

Crouching Boysの一員として15歳で初めての作品を発表してから昨年のソロデビューまで、長い試行錯誤の期間があったとうかがっています。

僕は5歳から音楽をやりたいと思っていて、長らく住んでいたアメリカから15歳で日本に帰国したのも音楽をやるためだったんですね。ただし、母親からは「音楽をやるからには基礎をしっかり固めるための経験を積んでから世に出た方がいい」と言われていて。僕もそう思ったので、基礎固めにはかなり時間をかけました。15歳の時、Crouching Boysというユニットを結成して、尾崎豊のトリビュートアルバムに参加したんですけど、そのユニットは一回限りでしたし、曲も詩の朗読だったので、そこまで音楽的なものではなかったですし、そこから仲間内でバンドを組んだり、好きな音楽を追究するようになったんです。そうした活動を通じて見えてきたことは沢山あったんですけど、音楽をやり始めてからデビューまで、12、3年かかったことは意図していた部分とそうでない部分があって。というのも、僕は曲が書けなかった時期が長くあって、その状態から解き放たれるまでに時間が必要だったということもあります。

どこで引っかかってしまったんですか?

今も書ける時と書けない時のムラがあるんですけど、メロディやコード、アレンジといったサウンドはすぐできるんです。時間がかかるのは、歌詞ですね。ちゃんと作品と向き合うとなると、まずテーマを決めるところが一番難しいんですよ。日常の出来事をスケッチするような歌詞はすぐ書けるんですけど、果たして、それが一番自分の言いたいことなのかと考えると迷ってしまう。だから、自分が本当に歌いたいことをずっと考えてはいたし、それを考えているだけじゃなく、実際に言語化するための試行錯誤が5年くらいあり、その状況を打破できたのは、作りながら考えようと思えるようになってからですね。そうした心境の変化と平行して、それ以前はざっくり大枠でしか見ていなかった曲の一つ一つの言葉選びだったり、韻を踏む時の母音と子音の置き方であったり、細部へのこだわりに面白みを見いだしたことで、徐々に曲作りが進むようになっていったんです。

実験的なところが多かったりするのも、手探りで制作を進めているからこそなんですよ

昨年9月のデビューデジタルシングル「始まりの街」、そして今年3月のファーストEP『LET FREEDOM RING』は、音楽家としての出発地点を歌い、何を考え、どこに向かおうとしているのか、聴き手に自己紹介するように丁寧に歌っているところから、歌に対する真摯な姿勢が強く印象に残りました。

ありがとうございます。デビューから1年が経つんですけど、売れている音楽と売れてない音楽が二極化した今の音楽状況で、新人である自分は生きるか死ぬかの心境というか、僕には毎回ベストを尽くすことしかできないなって。だから、作品ごとのステップアップは頭の片隅で意識はしつつも、持ち曲は無限にあるわけじゃないし、全てを考え抜いた末に作った作品でもなく、自分の場合は作りながら固めていくスタイルなんですよね。今回の作品にしてもそうです。蔦谷(好位置)さんと作っていた「Glory Days」が、たまたま、タイアップと合致したので、今回の作品に収録することになったという。まだ、二作目ということもあって、今回は前作とだいぶ作風も違いますし、実験的なところが多かったりするのも、手探りで制作を進めているからこそなんですよ。

運命的な流れから生まれた曲なんです

高揚感あふれるビートで、葛藤する主人公とご自身の内面が響き合った「Glory Days」は、てっきり、映画を踏まえて、書き下ろした曲なのかと思ったんですが、そうではないんですね。

蔦谷さんと一緒に作っていた曲とは全く別の軸というか、偶然、アニメのスタッフの方が前作の「サムデイ・スマイル」を聴いて、オファーをくださったんですよ。しかも、アニメ『交響詩篇エウレカセブン』は、かつて、スーパーカーが挿入歌を担当していたこともあって、前作で歌詞面でのプロデュースを手がけてもらった元スーパーカーのいしわり(淳治)さんに今回も関わってもらうという、そういう運命的な流れから生まれた曲なんですよね。

突き詰めると日本の音楽から受けた影響が大きいんですよね

話題に上った前作の「サムデイ・スマイル」ではラッパーのSALUがリリックを提供していましたが、ラップのような節回しの「シアワセカイ」があったり、今回はグルーヴが立った曲が多いですよね。その広がりのある音楽性は、ジョン・メイヤーやエド・シーランのように、ラッパーと共演したり、ビートやグルーヴを土台にした作品を生み出している現代のシンガーソングライターのクロスオーバーと共通するものがあるように思いました。

そうですね。特に2010年代に入って、EDMが盛り上がったり、フェス文化が大きく成長するなかで、シンガーソングライターであってもノリやすさや盛り上がりが重要になってきていると思いますし、時代の変化とともに、自分もそういうことを意識して曲を作るようになりましたね。ただし、僕が好きな音楽の根幹にあるのは、80年代のJ-POP、それから10代の一番多感な時に聞いていたミスチルとサザンとかだったり、母親が車のなかでよく聴いていた宇多田ヒカルさん、aikoさんだったり、突き詰めると日本の音楽から受けた影響が大きいんですよね。

自分の音楽が一番活きるのは、声を受け継いでいることもあって、尾崎豊的というか、声を張るロック的な曲だと思うんですよ

そういうルーツとなる音楽と新しい音楽がミックスされている、と。

目指すべき音楽性も、つい先月まではオールドスクールなロックをやりたいと思っていたし、最近はもっとモダンでポップなことをやりたいなと思ったり、色んな音楽を聴いてきたので、今はその時々でやりたいことを形にしている段階で、作品を重ねていきながら、方向性を定めていける、かな。ただ、自分の音楽が一番活きるのは、声を受け継いでいることもあって、尾崎豊的というか、声を張るロック的な曲だと思うんですよ。だから、そうした様々な要素が上手いバランスで成立する、そんな音楽になったらいいなとは思っていますね。

そして、「Glory Days」も2曲目のファンキーな「シアワセカイ」も日本語だけでなく、メロディやグルーヴに気持ち良くハメている英語詩の表現も尾崎さんらしいですよね。

ありがとうございます。実は歌詞で英語を使うのに抵抗があったんです。でも、前作の「Stay by my Side」を作っている時にスタッフから「英語を使ってみたら?」っていう提案があって、それを形にしたことで、歌詞で英語を使うことに対するハードルが下がったんですよね。そして、確かに日本語と英語が交互に出てくる感じが聴いていて気持ちよかったりもするし、今は自分のなかに制約を設けずに取り組んでいますね。

かたや、3曲目の「愛か恋なんて(どうでもいいや)」と4曲目の「君と見た通り雨」は、尾崎さんのメロウ・サイドが切り開かれています。

「愛か恋なんて(どうでもいいや)」は自分が作ったデモに忠実な曲というか、よりブラッシュアップされた曲になりましたね。ソウルフィールのあるトラックで、なおかつ陰影を投影した、そんな曲です。そして、4曲目の「君と見た通り雨」はもともとアコースティックでやっていた曲だったんですけど、アレンジ段階でR&Bマナーを織り込んでいたりもするし、4曲通して聴くと面白いバランスの作品になっているんじゃないかなって思いますね。

年齢とともに精神的な成長と音楽性の進化やポップ感覚が上手い具合に融合できたらいいですね

以上4曲からなるセカンドEPで前作から音楽性が広がりをみせていますが、この先、どんな音楽家になりたいですか?

年齢とともに精神的な成長と音楽性の進化やポップ感覚が上手い具合に融合できたらいいですね。豊かな、自由な音楽性の片鱗が見えるアーティストになりたいし、長く音楽を続けていきたいですね。そして、次の作品では、今回、入れる隙がなかったエレキ・ギターをフィーチャーした曲をやってみたいなって考えていますね。

尾崎裕哉さん画像ギャラリー

その他の尾崎裕哉の作品はこちらへ

ライブ情報

[SEIZE THE DAY TOUR 2017]

2017 年 10 月 6 日(金) 大阪・NHK 大阪ホール
2017 年 10 月 18 日(水) 名古屋・ Zepp Nagoya
2017 年 11 月 3 日(金・祝) 東京・東京国際フォーラムホール C
2017 年 11 月 12 日(日) 千葉・森のホール 21 大ホール

[弾き語りツアー『One Man Stand』]

2017年12月2日(土)広島・BLUE LIVE広島
2017年12月7日(木)大阪・梅田シャングリラ
2017年12月9日(土)新潟・新潟ジョイア・ミーア
2017年12月10日(日)仙台・Sendai CLUB JUNK BOX
2017年12月22日(金)東京・ReNY

尾崎裕哉(おざき ひろや)

デジタルネイティブ世代のバイリンガル、コンテンポラリー・シンガーソングライター。1989年、東京生まれ。
2歳の時、父・尾崎豊が死去。母と共にアメリカに渡り、15歳までの10年間を米国ボストンで過ごす。
米国ではレッド・ツェッペリンやグリーンデイなど、60s~90sのロック&ブルーズから幅広く影響を受ける。もっとも敬愛するアーティストはジョン・メイヤー。同時に、父親が遺した音源を幼少期から繰り返し聴き続けて歌唱力を磨き、ギターとソングライティングを習得。
帰国後、バンド活動を開始。ライヴハウスなど現場で、ライヴパフォーマンスの経験を重ねながら、ボストンのバークリー音楽大学の短期プログラムへ参加するなどし、音楽スキルをレベルアップ。
米国で経験したホームレス支援活動や、国際NGO『ルーム・トゥ・リード(RTR)』創設者兼共同理事長のジョン・ウッド氏の活動に触れたことがきっかけとなり、社会起業家を目指すべく慶應義塾大学へと進学する。
大学時代は、学業の傍ら、楽曲制作とライブの経験を積み重ねながら、2010年からInterFMで、洋楽紹介番組『CONCERNED GENERATION』、13年から15年まで『Between the Lines』のナビゲイターを務める。慶応の大学院に進学し、音楽家の雇用創出を促す新しいコンサートビジネスを研究し、それを支えるベイズ推論に基づいた機械学習の仕組みの提案。
2016年に、自伝『二世』(新潮社)を出版し、アーティスト「尾崎裕哉」としては初の音源となるDigital 1st Single『始まりの街』をリリース。そして、生放送のTBS特番『音楽の日』でテレビ初出演を果たし、瞬間最高視聴率を記録。SNS にはコメントの投稿が殺到し、 検索ワード、話題のトピックでは軒並み上位にランクインするなど、大反響を巻き起こす。
2017年春、初のフィジカルCD作品『LET FREEDOM RING』をリリース(日本語訳は『自由の鐘を鳴らせ』)。これは、彼が尊敬してやまないマーチンルーサーキング牧師の、「解放」をテーマとしたスピーチからインスピレーションを受けたもの。また、これまで書きためたオリジナルソングを中心に、《HIROYA OZAKI “LET FREEDOM RING TOUR 2017″》と題した初ツアーを開催。
「父が成し遂げられなかったことを果たしたい」という思いを胸に、遂に本格デビューを果たす。2017年10月4日に2nd EP『SEIZE THE DAY』をリリースし、10月6日から初のホールツアー『SEIZE THE DAY TOUR 2017』が開催される。そして冬には初の弾き語りツアー《One Man Stand》の開催も決定している。

オフィシャルサイトhttp://www.hiroyaozaki.com