LIVE SHUTTLE  vol. 206

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サカナクションが、超最新型のライヴをクリエイト! 五感をフルに刺激するパフォーマンス。幕張公演の全貌

サカナクションが、超最新型のライヴをクリエイト! 五感をフルに刺激するパフォーマンス。幕張公演の全貌

サカナクションが、9月30日と10月1日に幕張メッセ国際展示場ホール9-11にて2日間で48,000人を動員した〈SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around〉。本公演はメジャーデビュー10周年を記念した公演であり、2013年5月に開催された〈SAKANAQUARIUM2013 sasanaction〉以来、約4年半ぶりとなる6.1chサラウンドライヴの実現となった。

取材・文 / 岡本明 写真 / 石阪大輔(Hatos)

音が旋回しながら上り詰めていくような高揚感

合計242本のスピーカーと511本のLED BARがスタンディングエリアを取り囲むように配置された会場。開演時刻をやや過ぎてから、ライヴの開始を告げるように深いディレイのかかったパーカッションの音がゆったりと会場に響く。その鼓動のような音にリンクして赤いLED BARが点滅しながら会場をぐるっと一周すると、大きな歓声が上がった。

「どうも。僕たち私たち、サカナクションです!」

山口一郎(vocal, guitar)の第一声から、「新宝島」がスタートした。スピード感溢れる演奏を煽るようにレーザービームが飛び交い、ここに集まったすべての人々を一気に誘い込むサカナクションの世界の扉が開いた。

山口一郎(vocal, guitar)

続く「M」でもメロディアスな楽曲にコーラスが厚みを加えながら、ステージの華やかさをキープ。そして、「アルクアラウンド」でさらに会場の熱気を急上昇させ、興奮のピークへと導いていく。さらに「夜の踊り子」では伸びやかな山口のボーカルとダイナミックなサウンドが交差。コーラスが主体となって構成された「Aoi」は、サラウンド効果による、聴き手の目前まで迫る音像のクリアさで圧倒する。冒頭の数曲だけですでにとてつもない高みへと到達しているのが実感できる滑り出しだ。

そんなハイテンションなステージから一転、巨大な波や水中にいるような映像から始まった「シーラカンスと僕」では、水滴の音を取り入れた浮遊感に満ちたサウンドが会場を包み込む。スクリーンにオイルアートが投射され、最新の技術によるサイケデリックな空間が生み出される。「壁」でも同様にオイルアートを演出に施しながら、ギターのアルペジオがディレイと共にサラウンドスピーカーで会場を周り、まるで抱擁されているような状態で音を浴びるという効果も生み出していた。

岩寺基晴(guitar)

そこから、雑踏の音や映像とともに場面はゆっくりと変化し、クールなビートに感傷的なメロディを乗せた「ユリイカ」へと移っていく。さらに、リフレインされるピアノのフレーズやコーラスと共にじわじわ熱気を帯びていく山口のボーカルが印象的な「ボイル」と、内に秘めた揺れる感情を想起させる曲が続く。

個性を際立たせながら表情豊かな演奏がステージを満たしていく

「みんな一緒に踊ってくれる?」と山口が呼びかけて始まった「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」では心地いいダンサブルなサウンドを構築し、分身人形“山口一郎人形”と共にダンサーが踊るシュールな光景に会場が沸く。曲間を空けることなく次の曲へと繋ぎ、「夜の東側」「三日月サンセット」ではバンドアンサンブルを主軸に持ってくることで、グルーヴ感溢れる演奏を聴かせる。充実したコンビネーションの江島啓一(drums)と草刈愛美(bass)、彩りを与える岡崎英美(keyboards)、カッティングで躍動感を生む岩寺基晴(guitar)と、それぞれの個性を際立たせながら表情豊かな演奏がステージを満たしていく。

草刈愛美(bass)

「みなさん、楽しんでいらっしゃいますか? 今日は一緒に踊りましょう。自由に自分のペースで踊るぞ!」(山口)

メンバー紹介に続くインストコーナーを挟み、「SORATO」へと突入。月面ロボット探査レースに挑戦する日本チームHAKUTOの応援プロジェクトに書き下ろした曲であり、可動式で高い位置に上がったステージにメンバーが横一列となり、そこに星空を投影したアイリス幕を用いるという、この日最大の見せ場となった。奥行きと広がりを感じさせる舞台、重厚なビートと積み上げられたコーラス、そして何度も歌詞に登場する“流星”という言葉が耳に刻まれ、孤高の光を感じさせる壮大なスペースが出現した。

「10年からの新しい一年、また頑張っていきますので、これからのサカナクションをよろしくお願いします」

そのスケール感と高いテンションを維持したまま、「ミュージック」へと連なっていく。抑制の効いたボーカル、澄み切った音色のキーボードがシャープに会場に突き刺さり、サビでは合唱も沸き起こる。合唱と言えば、「アイデンティティ」では最初から観客も全力の合唱で参加。山口の熱唱に合わせ24,000人が叫ぶ様は、これ以上ないほどの一体感溢れる光景だった。さらに間髪入れずに始まった「多分、風。」では重低音を効かせたサウンドで、果てしないほどの盛り上がりを見せていく。サラウンドシステムを活かし、音が旋回しながら上り詰めていくような高揚感をもたらしてくれた。

岡崎英美(keyboards)

「みなさん、楽しんでいただけたでしょうか? 僕たち私たち、サカナクション、今年で10周年を迎えさせていただきます。10年やっているといろいろなことがあります。その中でもチームサカナクション、スタッフのみんな、そして今日来てくださっているみなさんのおかげでここまでこれました。10年からの新しい一年、また頑張っていきますので、これからのサカナクションをよろしくお願いします。ありがとう、サカナクションでした!」(山口)

ラストに用意されていたのは「グッドバイ」。一音一音に魂を乗せるようにゆったりと演奏し、歌詞を噛み締めるように歌う山口の姿が鮮やかに記されたエンディングだった。

江島啓一(drums)

「アンコール、ありがとうございます。みんな自由に踊ってる?」(山口)

大歓声のアンコールに応え、再び登場するメンバー。細かい音の粒子が飛び交うようなミックスが施され、ダブ的なアプローチを聴かせた「サンプル」は、会場全体が波打っているような錯覚に陥るほどの強烈な空間処理がなされていた。そして、ステージに関わる“チームサカナクション”のスタッフたちを映像で紹介したあと、「ホーリーダンス」でさらに体を揺らす。

「みんな、まだまだ踊れる? じゃあ、一緒に踊っていただきましょう。新曲です!」(山口)

オリエンタルな雰囲気を漂わせたサウンド、エモーショナルなボーカルと、これまでの彼らの持ち味を推し進め、より力強さを増した感触の新曲は、彼らの今後が楽しみになるものだった。

「出す出す詐欺を働き、申し訳ございません(笑)」

最後に、ここで観客にわかりやすいよう、今回のサラウンドシステムを前方、後方、右側、左側と、各ポジションにセットされたスピーカーで音を鳴らし、さらにはサラウンドで会場を一周してみせる。

「でも、ステージの上では全然、サラウンドがわからない。君たち、ずるいな(笑)。今回のスピーカーシステム、普通の3~4倍の経費がかかりまして。ありがたいことに無事ソールドアウトしましたが、なんと赤字なんです。グッズを買っていただかないと、サカナクション、解散じゃなくて破産になるんです(笑)」

「あと、僕ら、5年ぐらいアルバムを出していないんですが、そろそろメドが立ちました。来年の春、リリースすることになります! 出す出す詐欺を働き、申し訳ございません(笑)。今度こそ、新しいアルバムを出して、また新しいツアーを回りたいと思います。そして、このイベントもひとつのレギュラーイベントとしてこれからもやっていきたいと思います。アルバムが気に入ってライヴに来たいと思っていただけたら、ぜひまた遊びに来てください。みなさんと同じ時代に生まれたサカナクションを、これからもよろしくお願いします。ありがとう、サカナクションでした!」

山口が観客に感謝の言葉を述べ、メロウな「目が明く藍色」をラストに幕を閉じたこの日のステージは、10年の集大成と共に、次への歩みも感じさせたライヴであった。彼らはこの手ごたえをもとに、より充実した今後の制作活動へと向かう。2018年はニューアルバムへの期待もかかる、重要な年になりそうだ。

なお、本公演はNHKが8K映像22.2ch立体音響でライヴ収録し、番組化予定。2万人以上のオーディエンスが参加した大規模なロックコンサートを8K&22.2chでライヴ収録し、番組にするのは世界初の試みとなる。

SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around 2017.10.01@幕張メッセ国際展示場ホール9-11 SET LIST

M01. 新宝島
M02. M
M03. アルクアラウンド

M04. 夜の踊り子
M05. Aoi
M06. シーラカンスと僕
M07. 壁
M08. ユリイカ
M09. ボイル
M10. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
M11. 夜の東側
M12. 三日月サンセット
M13. Inst
M14. SORATO
M15. ミュージック
M16. アイデンティティ
M17. 多分、風。
M18. グッドバイ
EN01. サンプル
EN02. ホーリーダンス
EN03. 新曲
EN04. 目が明く藍色

サカナクション

山口一郎(vocal, guitar)、岩寺基晴(guitar)、草刈愛美(bass)、岡崎英美(keyboards)、江島啓一(drums)。北海道で結成。2005年に活動を開始。2007年にアルバム『GO TO THE FUTURE』でメジャーデビュー。出演するほとんどの大型野外フェスではヘッドライナーで登場するなど、現在の音楽シーンを代表するバンドの中心として活躍。ワンマンライヴや楽曲リリースのほかにも、音楽に関わる音楽以外の新しいカタチを提案するプロジェクト“NF”を立ち上げ、様々なクリエイターやアーティストを巻き込み音楽の可能性を広げる活動を定期開催している。映画『バクマン。』の音楽で第39回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。
オフィシャルサイト

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