DREAMS COME TRUEが愛され続けているということ  vol. 1

Review

DREAMS COME TRUEの音楽は、今を生きる人の潜在意識に身を以てアプローチする心理学だ。

DREAMS COME TRUEの音楽は、今を生きる人の潜在意識に身を以てアプローチする心理学だ。

DREAMS COME TRUEが約3年ぶりにオリジナルアルバムをリリースした。
タイトルは『THE DREAM QUEST』。
ここには様々なタイプの全13曲(+ボーナストラック5曲) が収められている。タイトルが示す通り、今作はまさにロールプレイング的とも言える冒険の世界。スタートボタンを押したら、そこには広大な音楽世界が広がり、我々は驚きと発見の旅にでる。
そんな新しい世界を常に見せてくれているドリカムが愛され続けている理由をこの新作『THE DREAM QUEST』を踏まえて展開していこうと思います。
クエストの隠しアイテムが発見できるヒントを祈って。


「DREAMS COME TRUEが愛され続けているということ」vol.1

ポピュラー音楽は心理学だ、とひとまず言ってみよう。

とすれば、例えば“国は赤字なんだから税金が増えるのもしょうがないのかな”と思っている国民からもっと税金を集めるのに、「税率を上げた分の税金は次世代のために使う」と言うよりも「税率を上げるのは凍結し、みんなでたくさん儲けて、その増えた分から国に払ってもらいましょう」と言うほうが支持を得やすいと見積もる政治家のごとく、ポピュラー音楽家もまた相対的によりポジティブな印象を与え、かつその行方を見定めやすい未来を提案したりしがちだ。にも関わらず、DREAMS COME TRUEのニュー・アルバムのタイトルが、デビューから28年目にしてあらためて“探索”、あるいは“冒険”を表示していることにはやはり注目せずにはいられない。

もちろん、ポピュラー音楽家がみんな印象操作のような表面的作業に一生懸命であるわけではないし、とりわけDREAMS COME TRUEの作品にあっては音楽自体に込められた心根こそが表現の魅力の源泉になっているから、タイトルのみを取り上げて取り沙汰することにあまり意味はない。むしろ、そういう作品だからこそ表に掲げられたタイトルから深く分け入って、その真意を探索するべきだ。とは言え、「伝え方が9割」という本がベストセラーになってしまったりするこの時代において、音楽に限らず、ポピュラー・フィールドを舞台にした生業がことごとく似たような様相を呈していることには異論はないはず。コモディティー化などという言葉で説明されたりもするその状況は、そのジャンルの成熟ということを伝えていたりもして、実際のところJ-POPの商品性はかなり高いレベルで同質化している。ユーザーもその事実は漠然と了解していて、つまりは“外観はいろいろだけど、中身はだいたいどれも変わらないでしょ”みたいな認識だろう。そこで、洗濯機や掃除機の話なら、「もうMADE IN JAPANでなくてもいいよ」と、廉価なアジア諸外国製品にユーザーの気持ちは流れていったりするわけだが、ことは音楽なのでやはり価格要因だけで話は済まなくて、音楽そのものの価値が判断されているんだろうと思われる。

そこで話は、「ポピュラー音楽は心理学」という初期設定に戻る。

DREAMS COME TRUEは、音楽リスナーがその深層心理に潜ませた“こうである自分”や“こうありたい自分”を目の前に浮かび上がらせてみせるから、どうにも気になってしまうのだ。吉田美和も中村正人も、そのことを戦略的に意図しているとは思わない。人間の心情の柔らかくて優しい部分、ユーモアや諧謔、あるいは哀しみや嘆きまでも肯定するのがポップスというものなのだから、その本質と真摯に向き合っていることの結果なのだろうと思うけれど、おかげその中身はコモディティー化の埒外にある。彼らの音楽に特徴的なのがそこに浮かび上がる像の生々しさとその浮かび上がらせる手際の丁寧さであることは周知の通り。そして、この2017年の今、彼らが届けてくれる新作では特に“こうありたい自分”への傾きが強いことは見逃すべきではないし、だからこそ今回のテーマは探索、あるいは冒険なんだろう。

ところで彼らの表現はいつでも当事者的で、というのは例えば音楽の楽しさというものを伝えようとする場合に、「音楽というのは○○なもので、△△な面白さや□□な驚きがあるんですよ」みたいな説明をするのではなく、音楽の楽しさに身を浸している自らの姿を見せつけて、その渦の中に引き込んでしまう。だから、教科書的な小難しさがないし、ニュース報道のようなよそよそしさがない。彼らがDREAM QUEST=夢の探索/冒険というとき、彼ら自身も冒険に出かけ、我々はその冒険を追体験し、それを終えた後では、それこそ遊園地の同じアトラクションを体験した後に「楽しかったねえ」と言い交わすような共感で、彼らとつながることになる。少なくとも、そんなふうに感じられる。彼らの音楽を聴くことは、最初からずっとそういう体験だった。だから、彼らが浮かび上がらせる“こうである自分”や“こうありたい自分”が、それ以前に意識していた像とは違っていたとしても、“そうか、本当の自分の気持ちはこういうことだったんだ”と納得することになる。

DREAMS COME TRUEの音楽は、今を生きる人の潜在意識に身を以てアプローチする心理学だ。ニュー・アルバムは13曲+ボーナストラック5曲というたっぷりとしたボリュームだが、その起伏に富んだDREAM QUESTの過程で、彼らは果敢に、あるいは周到に、様々な音楽に挑んでみせている。ということはおそらく、人々は今、わけ知り顔の人たちが語るもっともらしい未来像よりも、共に手を携えて未来へ向かおうとするエネルギーを、そしてその仲間をこそ求めているんだろう。DREAMS COME TRUEの二人は、ビッグ・アーティスト的重々しさには捉われず颯爽と、そうした人々の気持ちの流れの先陣を多彩なサウンドで駆け抜けていく。心理学にも長けたポピュラー音楽家はいつでもアクティブなのだ。

文 / 兼田達矢

ライブ情報

かんぽ生命 Presents DREAMS COME TRUE CONCERT TOUR 2017 / 2018 THE DREAM QUEST
10/21(土)・22(日) さいたまスーパーアリーナ
10/28(土)・29(日) 大阪城ホール
11/3(金・祝)・4(土) マリンメッセ福岡
11/18(土)・19(日) 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
11/25(土)・26(日) サンドーム福井
12/2(土)・3(日) 北海道立総合体育センター北海きたえーる
12/16(土)・17(日) 横浜アリーナ
1/6(土)・7(日) 日本ガイシホール
1/13(土)・14(日) 大阪城ホール
1/20(土)・21(日) 神戸ワールド記念ホール
2/3(土)・4(日) 日本ガイシホール
2/10(土)・11(日) マリンメッセ福岡
2/17(土)・18(日) 広島グリーンアリーナ
3/3(土)・4(日)横浜アリーナ

かんぽ生命 Presents DREAMS COME TRUE CONCERT TOUR 2017 / 2018 THE DREAM QUEST ~ドリカムの夕べ~
12/23(土・祝)・24(日) グランメッセ熊本
3/24(土)・25(日) 沖縄コンベンションセンター展示棟

リンク

ニューアルバム「THE DREAM QUEST」特設サイト
https://ticket.yahoo.co.jp/special/dct/
DREAMS COME TRUE オフィシャルサイト
http://dreamscometrue.com/

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