LIVE SHUTTLE  vol. 202

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レキシが繰り広げるライヴという名の“茶番”。極上のサウンドと爆笑のエンターテインメントで楽しませるステージをレポート

レキシが繰り広げるライヴという名の“茶番”。極上のサウンドと爆笑のエンターテインメントで楽しませるステージをレポート

レキシが、10月10日・11日に東京・日本武道館でワンマンライヴ〈不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち 〜稲穂の日〜〉を行った。6月から開催されている全国ツアー〈レキシツアー2017 不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち〉の一環として行われた、通算3回目となる日本武道館公演のタイトルは、“稲穂の日”(10日)、“キャッツの日”(11日)。本稿では、“稲穂の日”の模様をレポートします!

取材・文 / 森朋之 写真 / 田中聖太郎

「茶番に付き合ってくれてありがとうー!」

オープニング映像には、竹千代に扮したレキシ、父上役のいとうせいこう、母親役のみうらじゅんが出演。「おまえに家督を継がせよう」と “ツッコミ如来”と“オルゴール”を受け取った竹千代は「元服するまではオルゴールを開けてはならない」という言い付けを破り、ついオルゴールの蓋を開けてしまう。すると不思議な光に包まれ、竹千代はタイムスリップ……ここで映像は終わり、武道館のステージに置かれた巨大なオルゴールの中からレキシが登場。

オープニングナンバーはもちろん「KATOKU」。途中で「ポリリズム」「チョコレイト・ディスコ」を入れて思い切り盛り上げまくり、アッパーチューン「KMTR645」ではレキシが武道館の端から端まで走りまくり、イルカの浮き輪(20個くらい)が客席に投げ込まれる。かわいいイルカがポンポン飛び回る不思議な光景が広がり、笑顔で身体を揺らす観客もめちゃくちゃ楽しそうだ。

一曲の中に様々な仕掛けと演出を施すため(他アーティストの人気曲を挿入したり、面白いトークを挟んだり)、ライヴ時間に比べて演奏楽曲が少ないことで知られるレキシ(フェスやイベントでは3曲くらいしか歌わないこともあります)。この日は「“レキシのライヴ、3時間で10曲www”とか言われてますけど、画期的な方法を見つけました!」と宣言し、「飛脚記念日なぅ」と題されたメドレーを披露。「妹子なぅ」「真田記念日」「RUN飛脚RUN」を繋げたメドレーなのだが、順番に演奏するだけではなく、それぞれの楽曲を行ったり来たりしながらまったく新しい楽曲として再構築。客席からは何度も「おぉー!」という声が上がる。

さらに「きらきら武士」「狩りから稲作へ」などの人気曲のフレーズも差し込み、「もう『きらきら武士』と“稲作”はやりませんから」「結局、曲を普通にやるより長くなったな……」と言い出す。御恩と奉公と正人(鈴木正人 from LITTLE CREATURES/bass)、蹴鞠Chang(玉田豊夢/drums)、健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES/guitar)などの凄腕のバンドメンバーによる極上のサウンドと爆笑のエンターテインメント性がひとつになった圧巻のステージングだった。

ここで段ボール製の甲冑を着させられたニセレキシ(U-zhaan/タブラ)が登場。まだライヴでは披露されたことがない人気曲「Takeda‘」へ。“武田負けたな、織田に負けたな”と織田信長に敗れた武田信玄のことをラップするレキシに合わせてニセレキシがタブラを演奏するというセッション曲なのだが、「成功するわけない。一回もうまくいったことないんだから」「レコーディングだってうまくいってないからね」「だいたい池ちゃん、リズムなんか聴いてないでしょ?」「合図くれないと入れない!」となぜか2人ともキレ気味(笑)。何度か出だしに失敗しつつも、ラップ×タブラの刺激的な即興演奏を繰り広げ、会場を沸かせる。

さらにバンドメンバーも加わり、大塩平八郎をテーマにした「salt & stone」をニセレキシと共に演奏。蹴鞠Chagとニセレキシのソロ合戦を挟み、濃密なバンドグルーヴを生み出していく。小ネタを満載しつつも、演奏はビックリするほど高品質。これこそがレキシのライヴの醍醐味なのだ、いやマジで。

間髪入れずにバラードナンバー「最後の将軍」を歌い上げ、ライヴは後半へ突入。過去2回の武道館公演では豪華なゲスト陣が登場したが(1回目は秦 基博、いとうせいこう、持田香織など。2回目は松たか子、チャットモンチー、キュウソネコカミなどが出演しました)、この日のゲストはニセレキシのみ。つまり、基本的にはレキシ(=池田貴史)がひとりで大舞台を背負っていたわけだが、明智光秀に想いを寄せた歌詞が心に響く「アケチノキモチ」、レキシの音楽性の核であるファンクを前面に押し出した“十七条憲法”ソング「憲法セブンティーン」などを堂々とパフォーマンスする姿からは、レキシ本人の高い音楽性とスターとしての魅力がはっきりと伝わってきた。

クライマックスは「年貢 for you」。音源では旗本ひろしこと秦 基博がボーカル、足軽先生こといとうせいこうがラップで参加しているのだが、「ゲストを期待するのはやめろ! 旗本ひろしは来ません!」と言い、この日はレキシがひとりで歌とラップを熱演。あまりにも素晴らしいステージングを目の当たりにして、笑いながらも感動が押し寄せてくる。小さい米俵(年貢)を1階スタンド席のお客さんに渡し、手渡しで武道館を一周するという演出も楽しい。

そして本編ラストは「きらきら武士」。巨大なミラーボールが煌びやかな光を放ちまくり、武道館全体がダンスフロアへと変貌する。以前、プロデューサーの箭内道彦氏にインタビューした際に「レキシはアイドルだと思ってるんですよ」という趣旨のコメントをしていたのだが、華やかなディスコチューンで観客を踊らせるレキシを見ていると「この人は本当にアイドルかも。いつ、どこで観ても絶対に楽しいんだから」という気持ちが湧いてくるのだった。

いつも以上に感動的なライヴだった気がするな……というジンワリとした想いは、アンコールで気持ちよく打ち砕かれてしまった。「デビュー10周年なんですよ。これも全部、あなた、あなた、あなた、あなた(と観客を指さす)ひとりひとりのおかげだと思っています。ありがとうございます」と感謝を伝えたところまでは良かったのだが、映像(やついいちろうが“キャッツの妖精”、岡井千聖が“稲穂の妖精”に扮し、レキシをもとの世界に戻そうとするコント仕立てのお芝居)を挟み、レキシとバンドメンバーが緑のタイツの“稲穂の妖精”になって登場してくる。大御所ベーシスト、鈴木正人にこんな格好をさせられるのはレキシだけだよな……と思っていたら、“ズシン、ズシン”という地響きとともに”大稲穂様”という巨大な人形(顔のモデルはレキシ)を誘い、やついいちろうも現れ、客席はゆるい笑いに包まれる。

どうやらほとんど段取りをしていないらしく、その後もレキシとやついのゆるいトークが続き、ようやく「狩りから稲作へ」を披露。「これ、もうやりたくないんだよな……」というくだりにもしっかり時間を使いつつ、それでも最後はお約束の「キャッツ!」でエンディングを迎えた。もちろん“INAHO(稲穂を模したグッズ/600円)”を揺らす観客も大喜び! そして、ラストの挨拶は「茶番に付き合ってくれてありがとうー!」。笑いと拍手のなかこの日のライヴは幕を閉じた。

何だかきついことばかりの世の中において、いつ、どんなときも楽しい気持ちになれるレキシの音楽は本気で大事(あと、実はめちゃくちゃ本格的なファンク、ソウルミュージックを幅広いリスナーが楽しめる形で表現しているという意味でもきわめて貴重な存在だと思う)。アラフォー世代のスターとして、これからの活動にもめちゃくちゃ期待してます!

不思議のウチナーのレキシと稲穂の妖精たち

2017年10月21日(土)ミュージックタウン音市場

レキシ10周年!凱旋ライブ!!「レキシのライブに遊びに来(き)ねの〜〜」

2018年04月29日(日)鯖江市・西山公園

レキシ

池田貴史、福井県出身。1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてメジャーデビュー。2004年より中村一義らと共にバンド100sでも活動を行う。日本の歴史に造詣が深く、ソロプロジェクト、レキシとして2007年にアルバム『レキシ』でデビュー。最新作は2017年4月リリースのシングル「KATOKU」。椎名林檎、私立恵比寿中学、関ジャニ∞などのプロデュース、怒髪天、SAKEROCK、星野 源、サンボマスターなどでサポート・キーボーディスト参加するほか、役者として是枝裕和監督作品『海街diary』(15)、TBS 日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』(16)に出演するなど、多方面で活躍している。
オフィシャルサイト

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