Interview

加藤和樹にとっての“ROCK”とは?「年齢を重ねた今だから出せる大人の色気」が香る『SPICY BOX』

加藤和樹にとっての“ROCK”とは?「年齢を重ねた今だから出せる大人の色気」が香る『SPICY BOX』

俳優として数々の作品に出演し、近年はミュージカル俳優や声優としても注目を集めているは加藤和樹が、自身の音楽活動における原点でもある“ROCK”に特化したミニアルバム『SPICY BOX』をリリースする。デビュー時から音楽活動を途切れることなく行っている彼にとって音楽とは何なのか、『SPICY BOX』で彼は何を届けたかったのか、加藤和樹の“ROCK”とは何なのかを訊いた。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 冨田望

自分が発信したいことを自分自身の体と心で表現する。それが自分のロック

なぜ今回“ロック”に特化したミニアルバムをリリースしようと思ったのですか?

僕は少年時代からロックが好きですが、自分にとって何がロックかというと、生き様なんですね。自分が発信したいことを自分自身の体と心で表現する。それが自分のロックなんです。昨年、アーティストデビュー10周年を迎えて、“自分にとって音楽とは何なのか”、“音楽で表現したいものは何なのか”、“なぜ自分は音楽をやっているのか”というところの原点を、30代になった今の自分を通して表現したいと思いました。あと、昨年はバラードや女性目線の楽曲をコンセプトにした作品のリリースが多かったというのもありますね。

『SPICY BOX』というタイトルに込めた想いは?

“スパイス”にもいろんな刺激があるように、ギターサウンドのロックにもいろんな表現がありますし、年齢を重ねた今だから出せる大人の色気を感じてもらえるような楽曲たちの刺激を、みなさんに堪能して欲しいという想いで、タイトルを“SPICY BOX”にしました。

『SPICY BOX』の1曲目に収録した「con・fu・sion~心の叫び~」の歌詞に“どれがホントの俺?”というフレーズがあります。役者、声優、歌手、ミュージカル俳優など、多岐にわたって活動されている加藤和樹とリンクする歌詞だと思いました。

自分としてはどれも加藤和樹で、どれも“ホントの俺”だと思っているけれど、ファンの方の中には「どれが本当の姿? 本当は何者?」と感じている方もいらっしゃると思うので、“どれがホントの俺?”という部分は、自分でも今の加藤和樹とすごくリンクすると思いましたね。プライベートで自分ができる経験は限られているけれど、自分は役者をやっているので、いろいろなキャラクターを持った人間を演じているなかでたくさんの経験ができますし、その経験が自分に活きると思っています。活きるということは、自分の音楽にも繋がっていく。そこが自分の強みだと思っています。演じた役や出演した作品からインスピレーションを受けて自分の世界観が広がっていくのが、今の自分の音楽スタイルのひとつだと思っています。

今作に役や作品からインスピレーションを受けて書いた楽曲は収録されていますか?

「I’ll be there」がそうです。この曲は今年の頭に出演したミュージカル『フランケンシュタイン』からインスピレーションを受けて書きました。その舞台で僕はアンリと怪物の一人二役を演じたんですけど、役を通して感じたことを今の自分の言葉で形に残しておきたいと思って。異形である怪物として、人間のアンリとして、そして僕自身への問いかけとして、自分はなぜ生きているんだろう、何のためにここにいるのだろう、自分は何者なのだろうと、自分が生まれた意味を考えたとき、自分は自分でしかないし、何があろうと自分がどう生きていくかは自分次第なんだと。

幅広い活動のなかで経験したことが、加藤和樹の音楽や生き方に繋がっていくんですね。

僕はどれもが音楽に通じる道だと思っています。「I’ll be there」や「con・fu・sion~心の叫び~」もそうですが、『SPICY BOX』の主軸にあるもの、トータル的に言いたいことはひとつです。加藤和樹というひとりの人間が今どういう想いを持っているのか、どんな生き方をしているのか。このアルバムには等身大の自分がいます。芝居から得る経験も、自分の音楽の中に生きています。

積極的に行っているライヴからインスピレーションを受けることも多いのでは?

「Myself」はすでにライヴでやっているんですけど、歌入れのときからライヴをイメージしながら、曲やアレンジに負けない歌、パワーを持った歌を意識して歌いました。「ここできて欲しい!」というところにギターソロがばっちりきてくれたのは、とても気持ちよかったですし、グッとテンションが上がりましたね。自分が詞曲を書いていない楽曲も、自分自身が共感して入り込めないと歌う意味がない。夢物語ではなく、現実の自分と照らし合わせて、加藤和樹の生き様として歌わなければ説得力は生まれないと思っています。

「Heart Beat」は加藤さんが作詞を手がけています。

今の世の中を踏まえたうえで、自分らしくありたいという想いを、きっと誰にでも経験があるようなことを、等身大の言葉でストレートに書きました。この歌詞も自分の生き様が出ていますね。昭和の歌謡ロックなアレンジが印象的な「君はFragile」は、自分が詞曲を手がけてはいないけれど、いつも強がっている女性も誰かに支えて欲しいと思っているのではないかと思う自分がいるし、やっぱり男は強くないといけないという想いもあるので、今の自分ならどう歌えるのかということを考えて、見守る優しさを今の自分の表現で歌いましたね。

アルバムのラストに収録した「to you」は、今作の中で唯一のバラード曲です。

ロックに特化したアルバムの中にバラードを一曲入れたくて。最初はもっとハッピーなラブソングにしようかと考えていたんです。でも、ミュージカル『レディ・ベス』で自分が演じた役を通して感じた、いろんなすれ違いがありながらも最終的には自分たちが選択した道を歩いていく。だけど、離れていても想いはちゃんとここにあるんだという関係性の奥深さと信頼感だったので、加藤和樹を応援してくださるファンの方に、普段はなかなか面と向かって言えないような想いを、ひとりひとりに手紙を書くようなイメージで(歌詞を)書きました。

アーティストとして歌うこととミュージカルで歌うこと。加藤さんの中で取り組み方が異なる部分はありますか?

昔は自分の中で、芝居は芝居、音楽は音楽と分けていたけど、ミュージカルソングもボカロもひとつの音楽、どれも音楽なんだと、垣根を取っ払ってやってみたことで得るものがいくつもあったんです。ただ、音楽を通して、ロックを通して自分の生き様を歌うことと、役を演じているなかで歌うことの大きな違いは、お芝居も役たちがどう生きてきたかが歌になっているけれど、今自分が何を感じていて、それをどんな言葉で伝え表現していくのかを、自分自身の言葉として発信することは、自分の音楽でしか伝えられないところだと思います。

ところで、加藤さんは普段どんな環境で詞曲を書いているんですか?

僕は音楽を作るぞモードにならないとできないんです。地方公演先にギターを持参したり、何気なく弾いているときに曲が降ってくるときもあるんですけど、どちらかと言うと、「作る!」と決めて、自分の家で取りかかることのほうが多いですね。締め切りを設定して作り始めるので、自分で自分を追い込んでるなっていつも思うんですけど(苦笑)。曲や詞が出来上がっていくまでの成長過程はけわしくもあるんですが、楽しいです。

普段はどのような音楽を好んで聴いていますか?

音楽を始めた頃は、音楽の知識を増やしたくて、当時流行っていた曲を含めて手当たり次第に聴いていましたね。ボカロに挑戦したときは、初音ミクなどのボカロの曲を聴きまくっていましたし。周りの音を遮ってしまうので車の移動中は音楽を聴かないんですけど、車の中ではよく発声練習をしてますね。で、「あ、窓開いてた!」って途中で気づいて、慌てて窓を閉めます(苦笑)。ここ数年はミュージカル音楽をよく聴いています。ミュージカル音楽って、クラシックもあればロック調の曲もあれば、朗々と歌上げる曲や切ないバラードもあるので、多種多様な楽曲からインスピレーションを受けることも多いです。最近、家でエンドレスで聴いているのは、『RENT』のオリジナルキャストのもの。あと、『レ・ミゼラブル』も好きですね。来年、舞台『マタ・ハリ』で、フランク・ワイルドホーン(作曲家)の楽曲を初めて歌うので、ワクワクしながら聴いたりもしています。ミュージカルの舞台でオーケストレーションの中で歌えるのはとても贅沢なことだと思いますし、その経験をいつか自分のライヴにも活かしてみたいですね。これからも自分のスタイルにいろんなスパイスを混ぜていきたいです。

加藤和樹(かとう・かずき)

2005年、ミュージカル「テニスの王子様」で脚光を浴び、ドラマ、映画、舞台のほか、最近ではミュージカルや声優としても活躍。2006年4月にミニアルバム『Rough Diamond』でCDデビュー。毎年CDリリースや単独ライヴ、全国ライヴツアーを開催するなど、音楽活動も精力的に行っている。2009年からは韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、海外にも活動の場を広げている。 今後の出演作品には、ミュージカル『レディ・ベス』(上演中)、ミュージカル『マタ・ハリ』(2018年1月上演)、ミュージカル『1789~バスティーユの恋人たち~』(2018年4月上演)などがある。
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