Interview

阪本奨悟が映画『恋と嘘』の主題歌&挿入歌を手がけた。福山雅治のカバーに心がけたこととは?

阪本奨悟が映画『恋と嘘』の主題歌&挿入歌を手がけた。福山雅治のカバーに心がけたこととは?

今年5月にリリースしたシングル「鼻声/しょっぱい涙」でメジャーデビューした阪本奨悟。福山雅治がこのシングルのプロデュースを手がけたことや、「しょっぱい涙」がTVアニメ『王室教師ハイネ』のOPテーマに起用されたこともあり、この作品を機に彼のことを知った人たちの中には、華やかなスタートを切ったシンガーソングライターというイメージを持った人も多いのではないだろうか。けれど彼は、俳優としてその将来を期待されていたにも関わらず、17歳のときに音楽の道を進むことを決断し、一度芸能界を去っている。映画『恋と嘘』の主題歌「HELLO」と挿入歌「恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~」を収録した2ndシングルをリリースした彼に、最新シングルに込めた想いと、17歳のときに下した決断について改めて訊いた。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 中原幸

「HELLO」──この曲がリリースされたのは僕が1歳のとき

シンガーソングライターとしてメジャーデビューしたのは今年5月ですが、阪本さんが少年期に俳優活動をしていたこと、一度芸能界を辞めていることを知らない方もいると思うので、音楽の道に進もうと決めるまでの経緯を聞かせてください。

僕が生まれる前から父がジャズギターを弾いていたこともあって、物心ついたときから家ではジャズが流れているような環境がありました。そのなかで小4ぐらいから父のギターを触り始めて、父からコードを教わったりもしていて。音楽は子供の頃から好きでしたね。いちばん最初になりたいと思ったのは、大工さんでしたけど(笑)。小学校の低学年の頃、工事現場で日に日に建造物が出来上がっていくのを見るのが好きで、学校帰りによく工事現場に寄り道していました。

演劇の道に進もうと思ったきっかけは?

小4のときに、いきなり母親から「役者とアイドル、どっちがいい?」って聞かれて。当時『踊る大捜査線』を好きで観ていたこともあって、興味本位で「役者さんかな」と言ったんです。まだ子供だったし、将来を見据えてそう言ったわけではないけれど、今思うと、あれが初めて立った人生の岐路だったんだと思います。それで、母親が履歴書を送ったオーディションに合格してから、演技や歌のレッスンを受けるようになって。負けず嫌いな性格というのもあってか、演技にどんどん惹き込まれていきましたね。

ミュージカル『テニスの王子様』への出演をきっかけに、その後、大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』をはじめ数々のドラマや映画に出演しましたし、将来を期待されていたにも関わらず、阪本さんは17歳のときに音楽の道を歩く決断をしました。

役者をやりながら音楽をやるという選択肢もありましたけど、当時の自分はどちらも頑張るという考えに納得がいかなかったし、音楽だけをやりたいという想いが強かったので音楽の道を選びました。

周りからは「もったいない」と言われませんでしたか?

もちろん言われましたし、事務所を辞めて、いざひとりになってみると、自分が決めたことではあるけど、これからどうしようと不安になりましたし、自分は甘くみていたんだなと思うことがたくさんありました。でも、あの決断があったからこそ、将来の夢を具体的に持つようになれた。あの苦しかった経験があるから今書ける歌があるので、10代のときに自分で決断して良かったなと思っています。

苦しかった経験とは?

ひとりで音楽を始めようと思っても、何から始めたらいいかわからなかったときに、路上ライヴをされている方を見て、この場所だったら自分でもできるかもしれないと思い、路上ライヴを始めたんですけど、誰ひとりとして立ち止まってくれなかったし、自分もどこに向かって歌えばいいのか全然わからなくて。そのときに初めて自分で選んだ道の過酷さを感じました。役者で立っていたステージには僕を待っていてくれる方がいて、その環境が当たり前ではなかったんだな、支えてくれる人たちがいるから自分はステージに立てていたんだなと痛感しましたし、大きな舞台にも立たせてもらっていたので、音楽を始めてもそんなに時間はかからないだろうと、自分を過信していたんだと思います。自分のことを見向きもしないで通り過ぎていく人たちを目の当たりにして、僕は大きなものを捨てたんだと、そのときは後悔しました。でも、自分が選んだ道だったので、絶対に後悔したくないという、そのときに感じた想いは大きなバネになりました。

その頃はオリジナル曲を作っていたんですか?

教則本やコード譜を見ながら独学で作ってはいましたけど、当時は2〜3曲しかオリジナル曲がなくて。しかも、周りの大人たちが全部悪いんだ、誰も自分をわかってくれない、わかろうともしないじゃないかっていうような暗い歌ばかりで。そういう歌だったから誰も立ち止まらなかったんでしょうね(笑)。

とはいえ、自分の想いを吐き出せる場所として、音楽というものがあったのは良かったのでは?

そうですね。書ける場所があって良かったし、自分の書きたいことを書いて振り向いてもらえないのなら、じゃあ次はどうすればいいんだろうと考えるきっかけにはなりました。

つらい状況が続いても、音楽を諦めなかったのはなぜなんでしょう?

やっぱり、自分で決めたからでしょうね。一度僕は辞めているので、もう二度と辞めたくない、自分が決めたことなんだからやれるだけやってみよう思っていました。

まるで修行のような時期を経て、2014年に東京での音楽活動を再開しました。

時間はかかりましたけど、またここからがイチからのスタートだと気持ちが引き締まりました。メジャーデビューが決まったときは不安でなかなか眠れなくて。これまでの自分の人生を振り返って、もう後戻りはできない、これ以上遠回りできないとネガティブなことばかりを考えてしまって。でもいざデビューしてみると、何かが急激に変わるわけではなくて。これまでどおりに自分はひとつひとつ積み重ねていこう、音楽を作って歌うということを続けていこうという気持ちは変わりませんでしたけど。

メジャーデビューシングル「鼻声/しょっぱい涙」は、福山雅治さんがプロデュースを手がけましたが、2ndシングルに収録した「HELLO」は福山さんのカバーです。

デビュー時お世話になった福山さんの曲をカバーさせていただけるなんて、とても光栄です。この曲がリリースされたのは1995年の2月で、僕が1歳のときなので、当然その当時のことは知らないんですけど、僕が子供の頃に母親が車でかけていたので、僕もよく歌っていた曲でした。

誰もが知っているヒット曲を、どう自分らしくカバーしようと思いましたか?

まず楽しむことが大事だと思いました。阪本奨悟らしさ、自分の個性をしっかり出すにはどうすればいいのかを考えたときに、このアレンジに導かれるように、華やかに明るく歌おう、と。あと、この言葉だったら、普段の自分はどんなトーンで話すだろうと思いながら、AメロとBメロはわりとしゃべり声に近い声で、ナチュラルに歌うことを心がけました。

「恋と嘘 ~ぎゅっと君の手を~」は映画『恋と嘘』の挿入歌のために書き下ろしたそうですね。

はい。監督さんから、青春のキラキラした部分と一瞬で過ぎ去ってしまう儚さと切なさを両方感じてもらえるような曲にして欲しいというテーマをいただいていたので、曲からは青春のキラキラした部分を、歌詞からは儚さ刹那さを感じてもらえるように、映画に寄り添える楽曲にしたいと思いながら書きました。特に歌詞は自分の学生時代に感じた恋愛のもどかしさを思い出しながら書いたので、そこからも阪本奨悟らしさを感じてもらえたら嬉しいです。映画の楽曲の書き下ろしに挑戦するのは初めてでしたけど、やりがいがありましたし、とても楽しい挑戦になりました。

今、オリジナル曲はどれくらいあるんですか?

カケラのような曲も入れたら100曲くらいはあるかな。基本的に僕はアコギとピアノだけで録音することが多いんですけど、最近はリズムを打ち込みで入れてみたり、ライヴで映える曲を作ってみたり。少しずつですけどバリエーションが増えていくのが嬉しいです。

〈全国阪本化計画〉とネーミングしたライヴ活動では、全国のショッピングモールやイベントスペースなどで歌っていますね。

〈全国阪本化計画〉は全国いろんな箇所に直接歌を届けにいきたいという想いからスタートしているので、僕はどこへでも行きます(笑)。歌える場所があるのは本当にありがたいことですし、本当に幸せなことなんだなって思います。

今、阪本さんが叶えたい夢は何ですか?

いつか全国ワンマンツアーをしたいです。ワンマンツアーって、僕を待ってくれている人たちが全国にいるからできることなので、その日を迎えられるように、僕はこれからも曲を作り、歌うことを続けていきたいです。

阪本奨悟 ワンマンLIVE2018「KNOT~ぎゅっと僕らの結び目を~」

2018年01月14日(日)shibuya duo MUSIC EXCHANGE

阪本奨悟(さかもと・しょうご)

1993年生まれ。兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。過去にミュージカル『テニスの王子様』やNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』に出演するなど役者としての道を進み始めるも、音楽への強い想いから東京を離れ、地元兵庫にて単身音楽活動を開始。2年間の自主活動を経て、2014年にシンガーソングライターとして東京での活動を再開。2016年より〈全国阪本化計画〉と銘打って、全国各地で精力的にライヴを敢行。2017年5月31日にテレビ東京系アニメ『王室教師ハイネ』オープニングテーマ「しょっぱい涙」を含むシングル「鼻声/しょっぱい涙」でメジャーデビュー。
オフィシャルサイト

阪本奨悟さん画像ギャラリー

映画『恋と嘘』

2017年10月14日(土)全国ロードショー
監督:古澤健(『ReLIFE リライフ』)
脚本:吉田恵里香(『ヒロイン失格』)
原作:『恋と嘘』ムサヲ(講談社)
キャスト:
森川葵
北村匠海 佐藤寛太
浅川梨奈 田辺桃子/遠藤章造 眞島秀和 温水洋一
中島ひろ子 三浦理恵子 木下ほうか/徳井義実
制作プロダクション:The icon
配給:ショウゲート

©2017『恋と嘘』製作委員会 ©ムサヲ/講談社
オフィシャルサイトhttp://koiuso.jp/