Review

『メッセンジャー』

『メッセンジャー』

1999年8月劇場公開作品
発売元:フジテレビ・小学館・ポニーキャニオン
販売元:ポニーキャニオン
DVD:3,800円+税

普通の若者&一文無し超高ビーな女が、
自転車配送業で繰り広げるラブコメ。

STORY

マンションもクルマも服も全て会社から支給され、人も羨む贅沢な生活をしていたイタリアの某有名ブランドのプレス・尚美(飯島直子)。ところがある日突然、そのブランドが倒産。債権者から身ぐるみ剥がされた彼女は、ふとしたキッカケから、身体と汗で日銭を稼ぐ若者の鈴木(草彅剛)と一緒に働くことに。価値観も性格も、全く正反対のふたりは、反発しながらも次第に魅かれ合っていく。個性的な仲間たち(矢部浩之、京野ことみ、加山雄三)も加わり、全てが順調に思えた矢先、思わぬ出来事が……。前作から8年のインターバルを経たホイチョイ・ムービー第4弾は、自転車で書類を運ぶ自転車便がテーマ。今作でも実在する宅配業者が登場するのはホイチョイ作品の妙。東京を縦横に駆け抜ける自転車走行の爽快さが、本作そのものの心地良さにつながる極上のエンタテインメントだ。

監督 馬場康夫
原案 ホイチョイ・プロダクションズ
脚本 戸田山雅司
主題歌 久保田利伸
音楽 本間勇輔
プロデューサー 小牧次郎、石原隆、
倉持太一、河井真也、増田久雄
撮影 長谷川元吉
照明 森谷清彦
録音 中村淳

出演 飯島直子、草彅剛、
矢部浩之、京野ことみ、 加山雄三、
別所哲也、小木茂光、京晋佑、
青木伸輔、伊藤裕子 ほか

都心で一番はやいデリバリーは自転車便、バイク便!?
変わりゆく前世紀末の東京を駆け抜けた若者たち。
そして2015年秋、ホイチョイから編集部に届いたメッセージは……

90年代後半のデリバリーサービスの主流だったバイク便に対して、雑踏の大都会では自転車の方が優位だと主張する若者たちを描いた青春映画『メッセンジャー』。

人混みや群立する雑居ビルの間を駆け抜けるシーンは爽快で、東京にこんなところがあるんだと感心したことを覚えている。実際にどちらが早いかは置いておくとして。このサービスを利用したことがある方なら周知。電話1本で、書類や写真を希望先に運んでくれるし、逆に荷物を指定先から引き上げくれるからこんなに便利なシステムはない。忙しい時はまさに“猫の手”。

でも僕は、この便利なデリバリーサービスを使うことに初めは抵抗があった。だって、劇中でバイク便に対抗した自転車メッセンジャーの鈴木(草彅剛)じゃないけれど、「自分が稼働するほうが絶対に速い! 」って自信があったから。

 思いっきり背伸びしていたブラックカルチャー誌から、アルバイトのまま念願だった洋楽ロック雑誌編集部に配属となった時は二十歳。余りある体力は“パシリ”という仕事に置き換えられた。

写真や音楽がまだデータで交信されていない時代だけにレコード会社からポジ(写真)、音素材(カセットテープ)を取りに行くことが僕の主務。編集長や諸先輩たちが出社して、ひと呼吸した午後1時ぐらいから会社名を一斉ヒアリング。

今日は8社か……路線MAPを見ながら、無駄のない最短時間コースを割り出し、行ってきまーす! はりめぐらされた地下鉄に感謝しながら移動、移動。気が付くと手にはロゴマーク入りの紙袋でいっぱい。たいてい最後に訪ねた会社で一番大きな袋を用意してもらってひとつにまとめていた。

公衆電話から編集部に帰社を告げると、追加のピックアップ指示が入るのがお約束。2周目が始まる。「あれ?安川君また来たの?」「すみません」「大変だね。あ、CD 好きなのあったら持っていきなよ」「ありがとうございます!」……この差し入れが僕にとっての最高の力の源だった。

“人間便”のガソリン。大好きなアーティストの新譜はハイオク! 多い時は1日で3周のべ18社回ったことがある。楽しい想い出しか残っていないのは、顔を覚えてもらい、直接かわいがってもらえた良い時代だったからかもしれない……。

 そんなことを回想しながらもう25年も席を置いているこの出版社で本稿を書いていたら、内線が鳴った。僕に荷物が届いたらしい。ホイチョイ・プロダクションズからだ。今回の特集に関する書類。「ここにサインお願いします」って、あ、自転車便だ! 礼儀正しい爽やかな青年。ニヤリ。僕も最高の笑顔でサインした。ご苦労様! ……ホイチョイ演出!?

文 / 安川達也