山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 22

Column

仲井戸“CHABO”麗市、The Boy 67(前編)/雨上がりの夜空に描かれた、ロックンロールの確かな未来

仲井戸“CHABO”麗市、The Boy 67(前編)/雨上がりの夜空に描かれた、ロックンロールの確かな未来

2017年10月9日。67歳のバースデイを迎えたギター少年は、迸る情熱と深い愛で日比谷の空にR&Rの最高峰を描いてみせた。HEATWAVE 山口洋が満を持して書き下ろす、“先輩”仲井戸麗市との出会いと現在。


2017年10月9日。夕暮れの日比谷野外音楽堂。敬愛する仲井戸麗市さんの67回目の誕生日に開かれたコンサート。そこで僕が受け取ったもの。

まったく、なんて人なんだろう?

67歳の少年が最高峰のバンドとともに、魂から中空に風景を描く。それはチャック・ベリーという始祖鳥から始まり、海を越え、人種を越え、世代を越え。連綿と受け継がれてきたロックンロールの現在地。そして最高到達点。何よりもそこに未来が描かれていることに胸が熱くなる。

たった1本のライヴに賭ける情熱と覚悟。果たして僕はここまで突き詰めているだろうか? 音楽が僕に問いかけてくる。そして、しばらくして。これがほんとうの意味での深い愛だと気づくのだった。

僕は同世代の古市コータローくんと観ていた。でも終演後、ライヴについてほとんど語らなかった。互いにこころの深いところで、それぞれの形で受けとっているのがわかるから、語りあうことは野暮で無粋。それはロックンロール・マナーと云ってもいい。照れ隠しに、僕らは何故かPOCOの話をする。それぞれに、それぞれでいい。CHABOさんの音楽は何ひとつ強制しないから。

ロックンロールは生き方そのもの。ウソや虚構は通用しない。どんなに特殊効果を使ったとしても、その人が生きてきたすべてが中空に描きだされる。今日みたいに天井が空ならなおさらだ。

Photo by Mariko Miura

歓びや悲しみ、出会いや別れもすべて飲み込んで。ひとすじのひかりの道が日比谷の空に伸びてゆく。67年前、原っぱがあった頃の新宿から続く、長くて曲がりくねった道。

それはいつかガルシアの風になるんだろう。

できたての新曲がヘッドライトのように、空から僕のこころの闇を照らす。

僕は見事なミドルエイジで、面倒なことに、永遠にはぐれてしまった子供で、いろんな意味で執行猶予中の身。ロックンロールがなければ、もう生きていなかったかもしれない。新曲「AFTERMATH」。悪魔に魂を売ることなく、クロスロードを信じて生きる力。ぐっときた。同じ時代に生きて、未だに先駆者として切り拓いてくれていることに、もはや言葉が見つからない。

気恥ずかしいけれど、今日は書く。そのときわけもなく、この空に恥ずかしくないよう、バカみたいに誠実に生きようと思った。

Photo by Mariko Miura

さぁ、もう観念しよう。

ここで連載をはじめてもうすぐ1年。いつかはCHABOさんのことを書かなければと思い、いつも尊敬のあまり躊躇していた。でも、手渡され続けてきたことへの返礼を、今書かなくて、いつ書くんだろう?

ロックンロールと震災がCHABOさんと僕を出会わせてくれたことになっている。でも、ほんとうはちょっとだけ違う。

たぶん1988年。僕がまだアマチュアで、若くて生意気で、尖っているだけのクソガキだった頃。福岡でライヴを終えたあとの清志郎さん、CHABOさんと食事をさせてもらったことがある。

そんな貴重な機会を作ってもらっておきながら、2時間にわたって、僕は語るべき言葉を持たず、ひとことも発しなかった。失礼極まりないクソガキに、CHABOさんはずっとビールを注いでくれた。別れしな、清志郎さんが僕にひとことこう言ってくれた。「き、君の革パンいいね ! 」。それが清志郎さんと交わさせてもらった最初で最後の言葉。今思い返しても、あの瞬間から人生をやり直したい。この世から消え去りたいくらい申し訳なく思っている。

でも前を向いて生きるしかない。

あれから23年。震災が起きる。自分にできることをやらなければと、空回りばかりして途方に暮れていたとき。

クロスロードにはあの人が立っていた。(続く)


仲井戸“CHABO”麗市(なかいど・チャボ・れいち):1950年、新宿生まれ。中学2年でザ・ビートルズ、エレキギターと出会う。1970年、加奈崎芳太郎と出会い、“古井戸”結成。同時期、忌野清志郎と出会い、“RCサクセション”のメンバーとして活動。1979年に古井戸解散。1980年にRCサクセション9thシングル「雨上がりの夜空に」発売、1981年よりその後恒例となる日本武道館コンサートを始める。
1985年『THE仲井戸麗市BOOK』でソロデビュー。1986年よりRCとして夏の日比谷野外音楽堂に立つ一方、“仲井戸バンド”としてツアーを開始する。1990年、RCが無期限休養状態に入ると同時に本格的なソロ活動をスタート。1991年、The Street Slidersのギタリスト、土屋公平と“麗蘭”を結成。現在に至るまでソロ活動と並行して活発に活動している。
泉谷しげる、矢野顕子、坂本龍一、梅津和時、三宅伸治、竹中直人、村上“ポンタ”秀一、宮沢和史、寺岡呼人、夏木マリ、斉藤ノブ、和田唱、浜崎貴司、奥田民生、斉藤和義、中村達也、石橋凌、藤井一彦ら多くのミュージシャンと親交が厚く、様々なコラボやセッションを行ったり、リスペクトを受けてライヴにゲスト出演したりしている。
2012年11月3日、福島県相馬市復興プロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”に参加。以降、毎年このプロジェクトに関わっている。
2015年、デビュー45周年を機に『CHABO』を発表。アルバム制作メンバーである早川岳晴、河村カースケ智康、Dr.kyOn、片山広明、梅津和時と共に今年10月9日、日比谷野外音楽堂で67歳バースデーライヴを行った。

仲井戸“CHABO”麗市オフィシャルサイト

「雨あがりの夜空に」

HR7S070 ¥1,500(税別)
Mastard Records
CHABO BAND、梅津和時、片山広明で1980年発表の名曲をセルフカバー。7インチレコード

ON THE ROCK 仲井戸麗市“ロック”対談集

仲井戸麗市 著
¥2,300(税別)
リットーミュージック
三浦友和、KONISHIKI、夏木マリ、佐野史郎、奈良美智、オダギリジョー、小林克也ら24人の豪華ゲストと“ロック愛”を語り合う

仲井戸麗市ライヴ情報

“Boys, be ambitious”
仲井戸”CHABO”麗市×おおはた雄一(Vo.G)
11月10日(金)東京・南青山MANDALA
仲井戸”CHABO”麗市×湯川トーベン(Vo.G)
11月22日(水)東京・南青山MANDALA

仲井戸麗市ソロステージ「唄う・奏でる・読む」
12月25日(月)東京・EX THEATER ROPPONGI

麗蘭“Come On! Let’s go!”
12月28日(木)京都・磔磔
12月30日(土)京都・磔磔
2018年1月27日(土)大阪・Billboard Live OSAKA
2018年1月29日(月)東京・Billboard Live TOKYO

ライヴ詳細はこちら


著書プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年、福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。2003年より渡辺圭一(bass)、細海魚(keyboard)
、池畑潤二(drums)と新生HEATWAVEの活動を開始。2017年5月には14作目にあたるアルバム『CARPE DIEM』をリリース。東日本大震災後に立ち上げた福島県相馬市を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE 2017”は古市コータロー、池畑潤二、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと共に南青山MANDALAで5日間のライブを開催。現在、全曲録り下ろしによるベストアルバムをレコーディング中。10月20日からは全曲リクエストで構成されるソロツアー2017〈YOUR SONG-2〉がスタート。12月にはバンドで全国4公演ツアーを行う。
オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋(HEATWAVE)solo tour 2017 autumn『YOUR SONG-2』
10月22日(日)函館 喫茶・想苑
10月25日(水)弘前 Robbin’s Nest
11月5日(日)岩国 himaar
11月7日(火)福山 Boggie Man’s Cafe POLEPOLE
11月10日(金)高知 Sha.La.La
11月15日(水)横浜 Thumbs Up
11月11日(土)高松 Bar RUFFHOUSE *スペシャルライヴ!『OUR SONG』山口洋 × 藤井一彦 
詳細はこちら

HEATWAVE TOUR 2017 WINTER
12月14日(木)愛知 TOKUZO
12月15日(金)福岡 DRUM Be-1
12月17日(日)京都 磔磔
12月22日(金)東京 duo MUSIC EXCHANGE
詳細はこちら

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