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『深夜廻』 闇への恐怖がよみがえる最恐の演出とは!?

『深夜廻』 闇への恐怖がよみがえる最恐の演出とは!?

事故に遭った愛犬の行方を追い、行方不明になってしまった姉を探すため真夜中の街をさまよう妹が、言葉を失うほどの恐怖に襲われる。可愛い姉妹のキャラクターとは対照的に、おぞましいお化けと演出で多くの話題を集めた日本一ソフトウェアが手掛けるホラーゲーム『夜廻』(PlayStation®Vita)から2年。真夜中の街をさまようシチュエーションを受け継いだ最新作『深夜廻』(PlayStation®4/PlayStation®Vita)が2017年8月24日にリリースされた。

リアルな描写で作られることが多い昨今のホラーゲーム界で、当シリーズが累計10万本を突破(2017年09月27日公式発表)するまでに至った理由を、『深夜廻』で描かれる新たな世界の探索を通して紹介したい。発売から時間が経っているが、どうしても触れておかねばならない佳作がここにある。

文 / 深津庵


目を背け、耳を塞ぎたくなる最恐の闇

わずかな街灯に照らされる夜の街は、心霊スポットでないとわかっていても不安になる。通勤通学の帰り道や通い慣れた光景であっても言い表せぬ不安を感じ、怯えた経験が誰にもあるだろう。懐中電灯を握りしめて人気のない街を探索する『夜廻』シリーズでは、そうした記憶を鮮明に蘇らせる仕掛けが随所に設けられている。

最新作『深夜廻』では、”お化け”と総称される、突然姿を現す幽霊や妖怪といった類、うめき声や足音など姿なきものに追い回される悪夢の舞台が前作の倍以上に広がった。さらに、おなじみのクォータービュー(俯瞰視点)に加え、前作にはないサイドビュー(水平視点)を使った演出も施され、これまで以上の恐怖を味わえるようになっているのだ。

今作に登場するのは、お互いを親友と感じているふたりの少女。夏休みが終わるころ、元気で明るい性格のユイと物静かな性格のハルは、花火を見ようと近所の裏山まで出かけていた。しかし、日が落ちた帰り道で道に迷い、ふたりの少女ははぐれてしまう。プレイヤーは離れ離れになってしまったふたりを交互に操り、再会を目指して恐怖体験に身を投じていくのだ。

▲第1章の冒頭には操作を学ぶチュートリアルがある。そこでの少女の行動に思わず声を出して驚き、初っ端から背筋が凍りつく

▲花火を見た帰り道でふたりは離れ離れになってしまう。ここで交わされる違和感のある会話が、物語の後半で明かされていく。散りばめられた伏線を記憶に留め、考察するのも本作の醍醐味だ

トラウマを与える恐ろしいお化けたち

小学生を中心に若い世代にとってお化けと言えば、愛らしくそばに居てほしい存在という傾向がある。その大きな要因は人気の妖怪ゲームとアニメにあり、筆者もそれらシリーズを愛するファンのひとりだ。

しかし、昭和生まれの筆者にとって妖怪を始めとするお化けは、『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者である水木しげる氏が描いてきた、マンガと劇画の中間にある恐ろしい画風の印象が強い。本作には子どものころに怯えながら読んだそれに通ずる世界があり、愛らしいユイとハルの絵柄からは想像もできない恐怖に遭遇するのだ。

▲少女を発見すると追いかけてくる虚ろな霊は、街の至る場所で遭遇し、唸り声がとても怖い相手だ

▲道を塞ぐように現れる巨大な顔の霊で、驚かすことが担当といった存在だ。襲ってくることはないが、突然飛び出す演出にコントローラを握る力も強くなる

▲こちらも道を塞ぐ巨大なお化けで、章によって出現するポイントが変化する。こいつを目撃したときはおとなしく別のルートを探そう

▲家屋から覗き見る大きな目玉も驚かせてくるだけで襲ってはこない。こいつが消えたあとに残される不気味な室内の様子に注目だ

▲投げた石を追いかける化け犬や、タイヤ痕のあるラインしか動けない炎を纏ったタイヤ輪入道など、逃げ隠れする以外の対処法があるお化けも多い

本作に登場するお化けは基本的に退治できず、接触するとプレイヤーは死んでセーブポイントからのリスタートとなる。対応として、遠くから聞こえてくる呻き声や物音のほか、少女の心拍数ゲージを参考に位置関係を知ることができる。一見有利に感じるそうした状況はゲームシステム上の話で、プレイヤーの感情はまったく別の次元にあるといっていい。

懐中電灯と点在する街灯のわずかな光りが照らす世界では、そうした音に耳を塞ぎ、些細な異変から目を背けたくなる。まさに幼少期に覚えた心理的な恐怖が凝縮されているのだ。

▲お化けが近づいたときはダッシュで振り切りったり、看板や茂みに隠れてやり過ごすことができる。心拍数が落ち着き、唸り声や足音などが遠くなるまで身を潜めよう

▲数秒続く悲鳴の後に降ってくる女性の霊。地面に叩きつけられた瞬間の鈍い音と、不自然に曲がった手足で追いかけてくる奇妙な挙動のすべてがトラウマレベルの恐ろしさだ

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