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超ヒットアニメ「Fate」入門《前編》 原点『Fate/stay night』の“濃さ”を語る

超ヒットアニメ「Fate」入門《前編》 原点『Fate/stay night』の“濃さ”を語る

名作アニメは数あれど、長期シリーズ化し、定期的に新作がリリースされるものはあまり多くない。特に『機動戦士ガンダム』(1979年〜)、『超時空要塞マクロス』(1982年〜)のように、主人公や舞台の異なるシリーズが積み重なって大きな“歴史”を描くような作品はまれだ。趣味嗜好が分散し、大多数からの支持を集めるのが難しくなった近年アニメ業界ではこれまで以上に、こうした作品が出にくくなっている。

だが21世紀に入ってからの“新作”にも関わらず、既に5シリーズのTVアニメと、3本の劇場映画(ほか近日中にTVアニメ1作品が放送予定)という偉業を成し遂げている作品がある。それが「Fate(フェイト)」シリーズだ。今回はいよいよ後半戦(2クール目)に突入しさらに盛り上がっている最新作『Fate/Apocrypha(フェイト/アポクリファ)』(2017年7月~)の放送にあわせ、この新たなビッグウェーブの何が評価されているのかを語りたい。

文 / 山下達也(ジアスワークス)


原点はなんと成人向けPCゲームだった
「Fate」シリーズ

今や、アニメだけでなくコミックや小説、ゲームにまで幅広く展開している「Fate」シリーズだが、その原点となっているのは、2004年1月にWindows向け伝奇活劇ビジュアルノベルゲームとして発売された『Fate/stay night』だ。若いファンの中には知らない人も少なくないようだが、実は本作は成人向け作品。2000年代前半の成人向けPCゲーム黄金期の一角を担う作品として、当時は知る人ぞ知る存在だった。

TVアニメ最新作『Fate/Apocrypha』の原作小説執筆およびシリーズ構成を担当する東出祐一郎も成人向けPCゲーム業界出身【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

当時の成人向けPCゲームは極めてシナリオ性が高く、“泣きゲー”、“燃えゲー”など、多くのファンが、成人向け要素以外のものを求めてソフトを購入(女性ファンもこの時期から急増)。『Fate/stay night』はその“燃えゲー”の代表選手として人気を博していた。ちなみに、『魔法少女まどか☆マギカ』脚本でその名を広く知られるようになったシナリオライター・虚淵玄(うろぶち げん)もこの業界出身だ。

息を呑むアクションシーン描写など、手に汗握る“燃え”描写はもちろんアニメでも健在【TVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

そんな『Fate/stay night』が、一般に広く知られる大きなきっかけとなったのは2006年のTVアニメ化。当時はその良質な物語性から成人向けPCゲームのテレビアニメ化が活発に行なわれており、本作はその決定版として鳴り物入りで登場。翌年に原作ゲームが「PlayStation 2」に移植された(『Fate/stay night [Réalta Nua]』)こともあって、ファン層を劇的に拡大させることに成功している。

「英霊」システムの発明によって
歴史ファン・伝奇ファン人気も獲得

……が、単にシナリオが優れているだけであれば、ここまで長く愛される作品にはなり得なかった。その成功の理由はどこにあったのか? 筆者はそれが「Fate」シリーズのキモである「英霊」というギミックにあると考える。

「英霊」について詳しく説明する前に、まずは『Fate/stay night』の概要について簡単に説明する。本作は、「聖杯」を手にした者があらゆる願いを叶えることができるという「聖杯戦争(正確には第五次聖杯戦争)」に巻き込まれた少年・衛宮士郎が、美しい「騎士」の英霊・セイバーと共にバトルロイヤルを勝ちぬいていくという物語。聖杯戦争の参加者は士郎を含めて7名おり、それぞれに異能を備えた「サーヴァント」と呼ばれるパートナーが戦闘の代行者として侍るかたちとなっている(士郎ら、サーヴァントの主は「マスター」と呼ばれる)。

特筆すべきは、このサーヴァントが全て、人類史上の偉人・英雄(実在の人物のほか、伝説などで描かれた架空の人物も含む)を霊体として召喚したもの=「英霊」であること。既に有名なネタバレだと思うので書いてしまうが、士郎のサーヴァントであるセイバーの正体は、円卓の騎士伝説で有名なあの王なのである。

女性ではあるが凛々しさを備える騎士、セイバー【『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

物語序盤は、この英霊の正体(真名)が明かされていないというのがポイント。映像中に散りばめられているさまざまなヒントから、それぞれの英霊の正体を推理するのが、本作の大きな楽しみ方の1つとなっているのだ。ちなみに筆者はセイバーについて、女性剣士という見た目から彼女をフランスの聖女ジャンヌ・ダルクだと思い込んでいて、すっかり虚を突かれた。また、ライバルにしてヒロインの1人である遠坂 凛のサーヴァントであるアーチャー(弓兵)の正体にも……。視聴済みの人なら「人類史上の偉人・英雄って、そういうのもアリなのか……」と思った筆者の気持ちを分かってくれるはず。

シリーズ屈指の人気を誇る英霊アーチャー。その正体には多くの視聴者が驚かされ、そして涙した【『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

そして、真名が判明した後に、元ネタとなった偉人・英雄について調べる楽しさがあるのも「Fate」シリーズの醍醐味だ。『Fate/stay night』で原作シナリオを手掛けた奈須きのこの博識さに舌を巻きつつ、サーヴァントの言動や外観などに、そうした歴史上の事実や伝承がしっかり取り込まれていることにニヤリとしてほしい。

例えば中盤に士郎たちを苦しめるバーサーカー(狂戦士)のサーヴァントは何度倒しても復活する、まさにターミネーターのような強敵なのだが、それはその正体が○○○○○だから。彼を倒すためには、その伝説を踏まえ、○回○○なければいけない……といった具合。歴史・伝奇伝承などのマニアなら、ここに絶対にハマる。本作をきっかけに、より知識を深めるも良し、「ふふん、それは知ってたよ」と制作陣との知識バトルを脳内で繰り広げるも良し、だ。

英霊バーサーカー。しかもマスターは童女!!【『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

後の作品で、他の時代、他の時空へと拡散していく「Fate」シリーズだが、この「英霊」システムについては原則として共通。各作品で、それぞれ異なる英霊が登場するので(そのセレクトも絶妙!)、全く飽きが来ない。時空を越えた最強の王様対決や、因縁のある英霊同士の再会など、さまざまなドラマに期待してほしい。

『Fate/stay night』のスピンオフとなる『Fate/Zero』に登場するライダー(騎兵)。その正体は世界史の授業で必ず習うあの人【TVアニメ『Fate/Zero』より】

最新作『Fate/Apocrypha』に登場する黒のセイバー。圧倒的な強さを誇るものの、“弱点”がとても有名な英霊のため、真名を知られることが命取りに……【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

ゲーム原作ならではの
マルチルートシナリオを完全アニメ化

優れたシナリオと、画期的なギミックによって一躍人気作品となった『Fate/stay night』。2009年には、同じ制作陣による劇場映画『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』も公開。こちらは、アニメでは描ききれなかった、原作ゲームのマルチルートシナリオのうち、1度クリアした人だけがプレイできる2つ目のルートを映像化したものとなっている。

このルートは後日、2014年・2015年に改めてTVアニメ化。劇場版では駆け足になってしまった内容を、全26話できっちり描き切っている。最初が士郎とセイバーの物語とするのであれば、2つ目のストーリーでは士郎と凛、そして凛とアーチャーの物語。敵と味方がめまぐるしく変化するなど、王道的だった最初の物語とは対照のトリッキーな展開が見どころだ。

ゲームの2つ目のルートをアニメ化した『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』。最初のルートでは協力関係を結んだライバルの魔術師・凛とアーチャーのコンビを中心に展開する【『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

このルートでは、無敵のセイバーが囚われの身になるなど、想像もできないような超展開が続く【『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』より】

さらにこの秋からは3つ目のアニメ化もスタート。士郎を慕う健気な後輩・間桐 桜をヒロインに、『Fate/stay night』の本質的な、ディープな部分の謎を解明する『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』が劇場公開中だ。これらを一通り視聴することで、『Fate/stay night』という物語の真実を立体的に理解することができるようになるだろう。

公開中の劇場アニメ『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』。可愛いだけの後輩キャラだと思っていた桜がまさかの……【『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』より】

そう、アニメ版『Fate/stay night』は、10年以上の時をかけて、今、ついに“完結”しようとしているのだ。こうしたマルチルートシナリオを一通り映像化するという試みは、過去ほとんど例がない(あったとしても、各ルートを数話に超圧縮して、全ルートをまとめて放送するというかたち)。この圧倒的な密度感もアニメ版『Fate/stay night』の魅力だろう。

……だが、「Fate」シリーズの面白さは、こうした“濃さ”だけではない。次回は、『Fate/stay night』=第五次聖杯戦争という舞台から飛び出したスピンオフ作品群の“広がり”について語りたい。本作は、ここからさらに大きなヒットを生み出していくのだ。

「Fate」入門《後編》記事はこちら
超ヒットアニメ「Fate」入門《後編》  拡大し続ける「Fate」ワールドの“広さ”を知る

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2017.10.27

「Fate」シリーズ、ここが好き!

漫画:ニコ・ニコルソン
「Fate沼」にハマることを恐れつつ、既に首までどっぷり浸かりつつある漫画家。新刊『でんぐばんぐ(下)』(太田出版)が好評発売中。

TVアニメ『Fate/Apocrypha』

©東出祐一郎・TYPE-MOON / FAPC

TOKYO MX・BS11・群馬テレビ・とちぎテレビ…毎週土曜24時
MBS…毎週火曜27時30分
Netflix…毎週月曜独占配信

【スタッフ】
原作:東出祐一郎/TYPE-MOON
キャラクター原案:近衛乙嗣
監督:浅井義之
シリーズ構成:東出祐一郎
キャラクターデザイン:山田有慶
音楽:横山 克
制作:A-1 Pictures

【キャスト】
ジーク:花江夏樹
ルーラー:坂本真綾
シロウ・コトミネ:内山昂輝
赤のセイバー:沢城みゆき 
黒のセイバー:諏訪部順一
赤のアーチャー:早見沙織
黒のアーチャー:武内駿輔
赤のランサー:遊佐浩二
黒のランサー:置鮎龍太郎
赤のライダー:古川 慎
黒のライダー:大久保瑠美
赤のキャスター:稲田 徹
黒のキャスター:宮本 充
赤のバーサーカー:鶴岡 聡
黒のバーサーカー:野中 藍
赤のアサシン:真堂 圭
黒のアサシン:丹下 桜

オフィシャルサイト
fate-apocrypha.com
公式ツイッターアカウント
@FateApocryphaTV

映画『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』I. presage flower

©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

2017年10月14日(土)公開

【スタッフ】
原作:奈須きのこ、TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス

【キャスト】
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子      
間桐慎二:神谷浩史
セイバー:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
美綴綾子:水沢史絵
柳洞一成:真殿光昭
衛宮切嗣:小山力也
ランサー:神奈延年
ギルガメッシュ:関 智一
ライダー:浅川 悠
アサシン:三木眞一郎
キャスター:田中敦子
アーチャー:諏訪部順一
葛木宗一郎:てらそままさき
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以

オフィシャルサイト
http://www.fate-sn.com/
公式ツイッターアカウント
@Fate_SN_Anime

パッケージ情報

『Fate/stay night [Unlimited Blade Works] 』
 Blu-ray Disc Box I【完全生産限定版】
価格:3万9,000円+税
枚数:6枚組
時間:480分

『Fate/Zero』 Blu-ray Disc Box Standard Edition
価格:2万7,000円+税
枚数:4枚組
時間:640分

©Nitroplus/TYPE-MOON・ufotable・FZPC                     

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