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超ヒットアニメ「Fate」入門《後編》  拡大し続ける「Fate」ワールドの“広さ”を知る

超ヒットアニメ「Fate」入門《後編》  拡大し続ける「Fate」ワールドの“広さ”を知る

2006年に放送されたTVアニメによって、“知る人ぞ知る名作”から一躍、メジャーコンテンツへと飛躍した『Fate/stay night』。以降、本作は主にアニメとゲームの二輪で定期的にコンテンツが投入されていくことになる。本稿では、《前編》でお伝えした『Fate/stay night』作品群から分派し、「Fate」ワールドを大きく拡大させていく、スピンオフ作品群について解説する。

文 / 山下達也(ジアスワークス)

「Fate」入門《前編》記事はこちら
超ヒットアニメ「Fate」入門《前編》 原点『Fate/stay night』の“濃さ”を語る

超ヒットアニメ「Fate」入門《前編》 原点『Fate/stay night』の“濃さ”を語る

2017.10.26


『Fate/EXTRA』登場で「Fate」ワールドが
“何でもアリ”に!?

『Fate/stay night』シリーズが拡大していく大きな転機となったのが、2010年に発売されたPlayStation Portable用ゲーム『Fate/EXTRA』(発売元:マーベラス)。この作品で画期的だったのは、それまで主人公・衛宮士郎を中心とした物語だった「Fate」シリーズを解体・再構築したこと。聖杯戦争とそれを取り巻くマスター(魔術師)×サーヴァント(英霊)という設定を残して、別の舞台、別の登場人物での、新しい「Fate」を描けるようにしたのだ。

これは、言わば、「機動戦士ガンダム」シリーズで言うところの、非・宇宙世紀(アナザーガンダム)シリーズの始まりに相当する。原作者の1人であるシナリオライター・奈須きのこも『Fate/EXTRA』が、ガンダムで言うところの『機動武闘伝Gガンダム』(編集部注:それまでの宇宙世紀作品と全く関連のないガンダムとして制作され、以降の作品の自由度を劇的に高めたこと、新規ファンを獲得したことで知られている)のようなものだと語っている。

『Fate/EXTRA』は、『Fate/stay night』とは異なり月で行われる聖杯戦争を巡るストーリーとなっており、主人公が衛宮士郎ではなかったり、聖杯戦争の仕組みもバトルロイヤル形式ではなくトーナメント形式になっているなど、かなり大胆に仕組みが変わっている。主人公以外にも、新たな英霊(サーヴァント)も多数新登場。ただし、一部にそっくりなサーヴァントやキャラクターが存在するなど、ファンがにやりとするような関連性も用意している。

従来作品の知識がさほど求められないということもあって、『Fate/EXTRA』は、これまでのシリーズを知らなかった層を取り込みつつ、「Fate」ワールドを大きく拡大。以降、外伝作『Fate/EXTRA CCC』(2013年)、続編『Fate/EXTELLA』(2016年)と、もう一つの柱へと成長していくこととなる。その好評を受けて、今冬にはなんとTVアニメ化(『Fate/EXTRA Last Encore』)も決定している。

TVアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』のキービジュアル。真っ赤な衣装のセイバーの正体は……。 © TYPE-MOON/Marvelous, Aniplex, Notes, SHAFT

前述のガンダムもそうだが、この“決断”がなければ、「Fate」シリーズがここまで長く続くことはなかったかも知れない。今、スマホゲーム市場で記録的な大ヒットを飛ばしている作品『Fate/Grand Order』も生まれていなかっただろう。

超絶クオリティの『Fate/Zero』が
「Fate」アニメを活性化

そして、それともう一つ、シリーズに新たな風を呼び込んだのが、2011年・2012年に放送されたTVアニメ『Fate/Zero』だ。こちらは、2006年~2007年にかけて同人誌即売会で頒布された公式ノベル(全4巻)が原作で、執筆したのは、当時、アダルトPCゲーム市場においてカルト的な人気を誇っていたニトロプラス所属のシナリオライター・虚淵 玄(うろぶち げん)。アニメファン的には、後に『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』を生み出した脚本家と言った方が分かりやすいだろう。「Fate」シリーズのテイストはしっかり出しつつ、彼の作品特有の「残酷さ」「容赦なさ」がしっかり盛りこまれた見事なマッシュアップ作品となっている(バッドエンド? が約束された物語という点も実に虚淵的)。

主人公の一人である、「魔術師殺し」衛宮切嗣。『Fate/stay night』の主人公、衛宮士郎の養父としてその名前だけが騙られていた男だ【TVアニメ『Fate/Zero』より】

「Zero」という名称から推測できるよう、『Fate/Zero』は、『Fate/stay night』の10年前に行なわれた第四次聖杯戦争を舞台とした前日譚。『Fate/stay night』で深く語られなかった衛宮士郎の育ての親、衛宮切嗣の謎など、多くの疑問点が解消される内容となっており、個性的なキャラクター陣や、終盤に向けた盛り上がりのすさまじさなどで、ファンを再び大きな熱狂に巻き込んだ。

『Fate/Zero』の名コンビ、ライダーと、そのマスター・ウェイバー。当初はやることなすこと全くかみ合わない2人だったが……【TVアニメ『Fate/Zero』より】

こちらは言わば、「スター・ウォーズ」シリーズで言うところの新三部作。前作で曖昧だった部分が補完・補強されることで、『Fate/stay night』自体の魅力を再評価させることにも成功している(実際、筆者は『Fate/Zero』完結直後に、押し入れからPlayStation 2を引っ張り出して『Fate/stay night[Realta Nua]』を再プレイした)。

『Fate/stay night』のセイバーは、その作中でも語られたよう第四次聖杯戦争にも参戦していた。凜々しいダークスーツ姿が新鮮だ【TVアニメ『Fate/Zero』より】

なお、ここで忘れてはならないのが、アニメ制作会社「ufotable」の存在。同社は2000年に設立された比較的歴史の浅い制作会社なのだが、そのアクション描写には定評があり、サーヴァントたちの剣戟描写をこれ以上ないレベルで表現し、その熱狂に大きな貢献をしている。2000年代後半~2010年代前半は、世間の地デジ移行(ハイビジョン化)に伴い、アニメの描写が緻密に、リアルになっていた時代なのだが、『Fate/Zero』の映像美はその代表例の一つと言っても過言ではない。既に放送から7年が経過しているが、そんなことは全く感じさせない超絶ハイクオリティとなっている。まだ観ていないという人は、必見だ。

激しい動きや見事なカメラワークなど、『Fate/Zero』のアクションシーンはその後のアニメ作品に大きな影響を与えている【TVアニメ『Fate/Zero』より】

この時期の「Fate」シリーズはどちらかというとゲームが元気だったのだが、『Fate/Zero』の大ヒットで、“潮目”が大きく変化。原作ゲームの2ルート目をufotable制作でTVアニメ化する『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(2014年)や、3ルート目を劇場アニメ化する『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』(第一章が2017年10月14日(土)公開)など、アニメを中心とした新たなメディアミックス展開がスタートすることになった(これら2作品の詳細については、本特集の《前編》を参照)。

2017年は、パラレル「Fate」が盛り上がる!!

そしてこの後、『Fate/EXTRA』から始まった「Fate」シリーズのスピンアウト展開は、アニメ版「Fate」の展開にも大きな影響を及ぼした。例えば、現在、TVアニメが絶賛放送中の『Fate/Apocrypha』も、『Fate/Zero』で描かれた第四次聖杯戦争のさらに前の『第三次聖杯戦争』から分岐したパラレルワールドを舞台とした“if”の物語(原作は2012年に刊行開始された同名ノベル)だ。この世界では、『Fate/stay night』の舞台となった日本・冬木市から聖杯(正確には「大聖杯」)は失われており、それを強奪、隠匿していた魔術師・ユグドミレニア一族の手によって、ルーマニア(吸血鬼伝説の本場!)の地において、新たな第四次聖杯戦争が行なわれる……という内容になっている。

ユグドミレニア一族=「黒」の陣営。衰退した魔術師家系を寄せ集めたかりそめの一族だが、それ故に聖杯の力を利用し、魔術協会に離反する【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

対する「赤」の陣営は、魔術協会が集めたフリーランスの魔術師を中心に構成。聖堂教会から派遣されたというシロウ・コトミネ(左)が陣営を取り仕切るが……【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

ここで激アツなのが、その第四次聖杯戦争が、7組のマスター×サーヴァントによって争われるバトルロイヤルではなく、7組のマスター×サーヴァントが2セット、赤と黒の陣営に分かれて衝突する大仕掛けなチーム戦となったこと。その名も「聖杯大戦」。主人公・ジークは、どちらの陣営にも属さない調停者=ルーラーことジャンヌ・ダルクと共に、その自らの運命を賭した戦いへと身を投じていくことになる。

調停者・ジャンヌ(右)と、本作の主人公・ジーク(左)。ジャンヌはジークを戦いから遠ざけようとするが、ジークは自らの意志で大戦へと身を投じていく【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

ジャンヌ×ジークコンビと並ぶ人気を誇る、赤のセイバー(右)と獅子劫界離(左)のコンビ。ちなみに赤のセイバーは『Fate/stay night』のあるサーヴァントと密接な関係がある【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

「大戦」というだけあって、序盤からガチンコのチームバトルがくり広げられる『Fate/Apocrypha』。サーヴァントのど迫力な必殺技(宝具解放)も惜しげもなく投入されており、まさに全話クライマックスとなっている。なお、本記事公開タイミングでは、物語はまさにクライマックス直前。ここから完結に向けて熱く盛り上がっていくので、まだ観ていないという人も、ぜひリアルタイム視聴に合流してほしい!(過去エピソードは、Netflixで視聴可能)

もちろんサーヴァント同士の派手なバトルシーンは健在。伝説や神話で語られるような英霊たちが、持てる力を振り絞って激突する!【TVアニメ『Fate/Apocrypha』より】

そのほか、『Fate/stay night』の人気キャラ、イリヤを主人公としたスピンオフ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』といった変わりダネ作品も要注目。こちらは同名コミックを原作に、2013年からアニメ化が始まっており、既に4期・合計40話を超える本編並みのロングシリーズに(しかもこの夏には映画『劇場版Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』も上映)。イリヤが魔法少女(!?)になって冬木市の平和を守るという、コメディ色強めの(とは言え、「Fate」らしいダークでヘビーな展開も多い)内容となっている。可愛い女の子たちのキャッキャウフフが楽しみたい人にもおすすめだ。

さらに、昨年末にはTV特番『Fate Project大晦日TVスペシャル -First & Next Order-』において、スマホアプリで展開中の『Fate/Grand Order』序章をアニメ化した『Fate/Grand Order -First Order-』も放送された(本作はシーズンごとに制作されるPVCMも完成度が高く豪華!)。また、先に述べたよう、『Fate/EXTRA』を元にしたTVアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』も今冬放送開始となっている。

ふり返って見ると、なんとこの2年間の間に、4シリーズもの「Fate」(『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』、『Fate/Grand Order -First Order-』、『Fate/Apocrypha』、『Fate/EXTRA Last Encore』)がTVアニメ化されているということになる。ここまでの勢いで新作が生み出され続けた作品はこれまであっただろうか?(いや、ない)

アニメとしての「Fate」シリーズの盛り上がりは、これからも当分続いていくことになるだろう。もはや「Fate」はアニメファンにとっての基礎教養。今後、どんどん新作が追加され、追いつけなくなってしまう前に、今、合流せよ!

TVアニメ『Fate/Apocrypha』

©東出祐一郎・TYPE-MOON / FAPC

TOKYO MX・BS11・群馬テレビ・とちぎテレビ…毎週土曜24時
MBS…毎週火曜27時30分
Netflix…毎週月曜独占配信

【スタッフ】
原作:東出祐一郎/TYPE-MOON
キャラクター原案:近衛乙嗣
監督:浅井義之
シリーズ構成:東出祐一郎
キャラクターデザイン:山田有慶
音楽:横山 克
制作:A-1 Pictures

【キャスト】
ジーク:花江夏樹
ルーラー:坂本真綾
シロウ・コトミネ:内山昂輝
赤のセイバー:沢城みゆき 
黒のセイバー:諏訪部順一
赤のアーチャー:早見沙織
黒のアーチャー:武内駿輔
赤のランサー:遊佐浩二
黒のランサー:置鮎龍太郎
赤のライダー:古川 慎
黒のライダー:大久保瑠美
赤のキャスター:稲田 徹
黒のキャスター:宮本 充
赤のバーサーカー:鶴岡 聡
黒のバーサーカー:野中 藍
赤のアサシン:真堂 圭
黒のアサシン:丹下 桜

オフィシャルサイト
fate-apocrypha.com
公式ツイッターアカウント
@FateApocryphaTV

映画『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』I. presage flower

©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

2017年10月14日(土)公開

【スタッフ】
原作:奈須きのこ、TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス

【キャスト】
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子      
間桐慎二:神谷浩史
セイバー:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
美綴綾子:水沢史絵
柳洞一成:真殿光昭
衛宮切嗣:小山力也
ランサー:神奈延年
ギルガメッシュ:関 智一
ライダー:浅川 悠
アサシン:三木眞一郎
キャスター:田中敦子
アーチャー:諏訪部順一
葛木宗一郎:てらそままさき
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以

オフィシャルサイト
http://www.fate-sn.com/
公式ツイッターアカウント
@Fate_SN_Anime

パッケージ情報

『Fate/stay night [Unlimited Blade Works] 』
 Blu-ray Disc Box I【完全生産限定版】
価格:3万9,000円+税
枚数:6枚組
時間:480分

『Fate/Zero』 Blu-ray Disc Box Standard Edition
価格:2万7,000円+税
枚数:4枚組
時間:640分

©Nitroplus/TYPE-MOON・ufotable・FZPC      

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