Interview

蒼井優、役の魅力を伝えたいけど『かの鳥』「一番イヤな役」では無理!? 怒りすら感じた共演の“クズ”たちを絶賛

蒼井優、役の魅力を伝えたいけど『かの鳥』「一番イヤな役」では無理!? 怒りすら感じた共演の“クズ”たちを絶賛

読むとイヤな気持ちになるミステリー=“イヤミス”の旗手と言われる沼田まほかる原作の『彼女がその名を知らない鳥たち』が白石和彌監督のメガホンで映画化される。登場人物が全員イヤなヤツにも関わらずどんどん惹き込まれ、ラストには言いようのないカタルシスを得られる本作で、主人公〈北原十和子〉に扮しているのが蒼井優。W主演を務めた阿部サダヲと、共演の松坂桃李、竹野内豊が演じる3人の男たちの前で変化する〈十和子〉の揺らめきや戸惑いを繊細に演じ、確かな実力で作品を牽引する彼女から話を聞いた。

取材・文 / 山崎麻 撮影 / 三橋優美子
ヘアメイク / 草場妙子
スタイリスト / 森上摂子(白山事務所)

苦労した“不快さ”のバランスと関西弁。〈十和子〉の葛藤が阿部の芝居で引き出されたのは「面白い体験でした」

衝撃的な内容で、鑑賞後はしばらく放心してしまいました。まず、オファーされたときの感想を教えてください。

すごく骨太なのが来たなぁ、という感じでした。この作品のオファーをいただいてから沼田まほかるさんの作品を一気に読んでまんまとハマって、今ではすっかりまほかるさんファンになってしまいました。原作を読み進めていくうちに、イヤな気持ちになるのに面白いからどんどん読み進めてしまう。そういった不快感があるからこそラストが効くんですよね。まほかるさんの迷いのなさや腹の据わり方がこの映画にも反映できたらと思いながらも、生身の人間が動く場合、ラストに向けてどういうバランスで演じるのがいいのか、そのバランスを考えなくちゃいけないので難しいだろうという思いもありました。もちろん白石監督が一番そのバランスを考えなくちゃいけないので大変だったと思いますけど、演じる側も、どの程度の不快さだったら観客のみなさんが耐えられるのかを推し測るのは難しかったですし、未だに正解はわからないです。

そのバランスはどのように考えて演じていたのでしょうか?

たとえば怒鳴るときはどこまで大声を出していいのかとか、セリフもネチネチ言うのかとか、その辺りのことを考えていました。

蒼井さんは女優として挑戦的な役柄もよく演じられていますけど、〈十和子〉はその中でも特に覚悟が必要だったキャラクターだったのではないでしょうか? 蒼井さん史上屈指のイヤな女というか……(笑)。

これまでで一番イヤな役だったと思います(笑)。だから役作りでこういう風に演じようと考える以前に、嫌われる勇気を持つことが大事でした。恥ずかしい話ですけど、やっぱり自分が演じる役は愛情を込めて作り上げますし、良く思われる方がいいじゃないですか。たとえそのキャラクターが劇中で何か間違ったことをしたとしても、その人の中ではきちんと筋が通っていたりするから、この役の魅力が何かしら伝わればいいなと毎回思いながら――もちろんそれだけはないけれど、そういうことも考えながら――演じるんですけど、〈十和子〉はいいところが一つもない最低な人なので、どう考えても無理で(笑)。白石監督といろいろお話していく中で、1カ所だけ、監督と意見がズレたところがあったんです。私が「〈十和子〉はそこまで最低ではないと思う」というお話をしたことで〈十和子〉の“最低”のラインが定まって、演じやすくなったということはありました。

関西弁はどのくらい練習されたんでしょうか?

結構苦労しました。私の両親が大阪出身なので、普段、大阪のイントネーションが入ることもあって大丈夫かなと思っていたんですけど、私自身は福岡出身なので、博多弁も一緒に出てしまうんです。なので、方言指導の方にずっと教えていただきながら演じていました。キャストは(〈国枝カヨ〉役の)村川絵梨ちゃんだけが大阪出身で、他のみなさんは違ったので、みんなで苦労していましたね。私も(〈佐野陣治〉役の)阿部サダヲさんも、お互い何となく関西弁がわかってきたら、相手のミスにも気付くようになって。相手がちょっとミスしたかな? と思うと次は自分がミスをし始めて、お互いにどんどん関西弁が崩れていって、結果、私と阿部さんで大爆笑してしまうということがありました(笑)。

商店街で〈十和子〉と〈陣治〉が揉めるシーンで、泣きながら〈陣治〉を見るときの表情がリアルすぎて、観ていて胸が苦しくなりました。

阿部さんの演技に引っ張られて、泣くつもりはなかったのに泣いてしまったシーンです。〈十和子〉は自分が〈陣治〉とお似合いだということを認めたくない。自分はかっこいい〈黒崎〉(竹野内豊)みたいな男性と見合う女だと思いたいから、あんな不潔な〈陣治〉とお似合いだなんて耐えられないっていう、無駄にプライドが高いところがあるんですよね。でも心のどこかで本当は〈陣治〉と合ってるということをわかっている。だから阿部さんがすごい優しい声で「十和子」って呼んでくれて、涙が止まらなくなっちゃったんです。「そっちの世界にいきたくないからそんなに優しく呼ばないで」っていう葛藤がある。脚本や原作を読んでいたときには気付かなかった〈十和子〉の葛藤が、阿部さんのお芝居を目の前にしたことで出てきたのは、演じていて面白い体験でした。