Interview

蒼井優、役の魅力を伝えたいけど『かの鳥』「一番イヤな役」では無理!? 怒りすら感じた共演の“クズ”たちを絶賛

蒼井優、役の魅力を伝えたいけど『かの鳥』「一番イヤな役」では無理!? 怒りすら感じた共演の“クズ”たちを絶賛

見た目がいいとかスペックが高いという点で男性を選んでしまいがちな〈十和子〉ですが、彼女の心情は理解できますか?

全く理解できなかったので、演じているときは心がカスカスになっていました(笑)。〈黒崎〉といるときは特にそうでしたし、〈水島〉(松坂桃李)に対しては、途中から怒りしか感じませんでした(笑)。

劇中ではクズでゲスな役どころだった阿部さん、竹野内さん、松坂さんとの共演の感想を教えてください。

阿部さんとのパートを先に撮って、その後に松坂さん、竹野内さんのパート、最後にまた阿部さんという順番で撮影したんです。阿部さん演じる〈陣治〉は不器用でしたが、松坂さんと竹野内さんはあまりにも器用に女を騙していくゲスな役なので、撮影中盤ではだんだん現場が殺伐としてきて(笑)。みんな冗談で「〈陣治〉、早く帰ってこないかな~」とか言い合っていました(笑)。もちろん竹野内さんと松坂さんとの撮影は楽しかったですし、ご本人たちは本当に優しくて素敵な方なんですけど、役柄があまりにもひどかったので、途中で監督の提案で、みんなで「〈陣治〉、早く帰ってきて~!」と呼びかける動画を阿部さんに送ったくらいです(笑)。

確かに〈黒崎〉と〈水島〉とのやり取りは心が荒んでいきそうですね。

竹野内さんも松坂さんもよくこの役を引き受けてくださったなと思います(笑)。竹野内さんは「ラストの後はどうなると思いますか?」とか、この作品に対して深く考えていらっしゃいましたし、松坂さんは現場でみんなが「先生」と呼ぶくらい完璧でした。もちろんご本人は思慮深い方で全然そんなことないけれど、薄っぺらい〈水島〉を薄っぺらいまま演じられているのを見て、すごい役者さんだなと思いました。改めて、素敵なキャストが集まってくださったんだなと思っています。

白石監督と聞いた時点で「興味が100%」。脚本を読んでワクワクと不安を感じるも「不安も楽しみの一つ」

白石監督からはどんな演出を受けたのでしょうか?

監督は現場で「最高です!」って言いながらずっと笑っていらっしゃったので、「もしかしてこの作品はコメディなのかな……?」と思ったことがありました。実は、私の今回の一番の悩みは、作品のテイストがわからなかったということだったんです(笑)。監督に「コメディなんですか?」と聞いたら、「いえ、コメディではないです」とおっしゃるんですけど、別のシーンでは「じゃあここはゾンビ映画のように見せてください」という指示もあって、「ゾンビ映画風に撮るのかなぁ……?」って考えたり(笑)。

確かに戸惑いそうですね。

それに〈陣治〉といるとき、〈黒崎〉といるとき、〈水島〉といるときと、それぞれ求められることが違っていたんです。〈陣治〉といるときは汚いところばかりだったのに、〈水島〉とのシーンでは急に高級デパートになって、「あれ、月9に出てるのかな?」って思ったり。出たことないのでわからないですけど(笑)。〈黒崎〉とのシーンはカラオケのイメージ映像を撮っているような気持ちになったりして(笑)、ロケ地も違えば監督から掛けられる言葉も違うので、3つの作品を同時に撮っているという感覚でした。

この『彼女がその名を知らない鳥たち』もそうですが、蒼井さんが出演される映画は毎回、興味深い内容や役柄が多いと思います。作品選びのこだわりはありますか?

ワクワクできて楽しそうだと思ったら挑戦するようにしています。実際に楽しくて笑っていられるということではなく、苦しみも含めて楽しさだと思っているので、そういう視点で作品を選ばせていただいていますね。それに現場に対する熱量を感じられないと悲しくなってしまいます。今回は白石監督とお聞きした時点で興味が100%あって、さらに脚本を読んでワクワクと不安を感じて、演じきれるかはわからないけどぜひ参加したいと思いました。もちろんその不安も、この映画での楽しみの一つだったんです。

蒼井優

1985年生まれ、福岡県出身。1999年に『アニー』で舞台デビュー。映画初出演作『リリイ・シュシュのすべて』(01/岩井俊二 監督)で注目を浴び、同監督作『花とアリス』(04)で初主演、『ニライカナイからの手紙』(05/熊沢尚人 監督)で初単独主演を務める。『フラガール』(06/李相日 監督)で第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞。他の主な映画の出演作に『ハチミツとクローバー』(06/高田雅博 監督)、『クワイエットルームにようこそ』(07/松尾スズキ 監督)、『百万円と苦虫女』(08/タナダユキ 監督)、『おとうと』(10/山田洋次 監督)、『春を背負って』(14/木村大作 監督)、『家族はつらいよ』(16/山田洋次 監督)、『オーバー・フェンス』(16/山下敦弘 監督)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16/松居大悟 監督)、『東京喰種 トーキョーグール』(17/萩原健太郎 監督)など。現在、映画『ミックス。』(10月21日公開/石川淳一監督)、ドラマ『先に生まれただけの僕』(10月14日~放送/NTV)に出演中。待機作に映画『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(2018年5月公開/山田洋次 監督)、舞台『アンチゴーヌ』(2018年1月~上演/栗山民也 演出)がある。

オフィシャルサイトhttp://www.itoh-c.com/aoi/


映画『彼女がその名を知らない鳥たち』

2017年10月28日(土)公開

【STORY】
不潔で下品な〈佐野陣治〉(阿部サダヲ)と一緒に暮らしながらも、8年前に別れて以来、一度も会っていない〈黒崎俊一〉(竹野内豊)のことが忘れられずにいる〈北原十和子〉(蒼井優)。何をするわけでもなくただ〈黒崎〉との思い出に浸り、〈陣治〉の稼ぎに頼って怠惰に過ごす日々。しかし、時計の修理を依頼したことから百貨店勤めの〈水島真〉(松坂桃李)と出会った〈十和子〉は、彼のスマートさや外見の良さに〈黒崎〉の面影を重ね、妻子がいることを知りながらも彼との情事に溺れていく。〈陣治〉は〈水島〉との付き合いを知って、早く別れないと酷いことが起こると執拗に迫るが、〈十和子〉はそんな〈陣治〉を罵倒し拒否し続けるのだった。あるとき、刑事から〈黒崎〉が行方不明になっていることを告げられた〈十和子〉は、〈黒崎〉の失踪に〈陣治〉が関わっているのではないかと疑い、このままでは〈水島〉にも危険が及ぶのではないかと考え……。

原作:沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」(幻冬舎文庫)
監督:白石和彌
脚本:浅野妙子
出演:
蒼井優 阿部サダヲ
松坂桃李 / 村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック・中嶋しゅう / 竹野内豊
音楽:大間々昂
配給:クロックワークス
オフィシャルサイトhttp://kanotori.com
※R15作品

©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

【原作本】

彼女がその名を知らない鳥たち
沼田まほかる(著) / 幻冬舎文庫

八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが……。衝撃の長編ミステリ。

< 1 2