Interview

「音楽に乗せて言葉を伝えることが使命」――石丸幹二が語る『スカーレット・ピンパーネル』とミュージカル俳優に成るまで

「音楽に乗せて言葉を伝えることが使命」――石丸幹二が語る『スカーレット・ピンパーネル』とミュージカル俳優に成るまで

世界的な作曲家であるフランク・ワイルドホーンが音楽を手がけ、NYブロードウェイで上演されている人気ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』。日本での初演は宝塚歌劇団によるものだったが、脚本や音楽などに改良を加えた改訂版を2016年に上演。大好評をうけて、2017年にも再演されることになった。
本作の座長であり、ピンパーネル団を束ねる英雄<パーシー・ブレイクニー>を演じるのが石丸幹二さん。石丸さんといえば、ミュージカル界では誰もが知る大スター。テレビでもドラマ「半沢直樹」の敵役<浅野支店長>で視聴者に大きな爪痕を残して以来、現在もドラマ、CMにひっぱりだこだ。
このたび、石丸さんに『スカーレット・ピンパーネル』について役に対する思い、作品の見どころのみならず、自身の生い立ちからミュージカルアクターに至るまでの話も訊くことができた。バックグラウンドにも触れた充実のインタビューを読んで、ぜひ公演に足を運んでみて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


パーシー・ブレイクニーの参考とするリーダーは中村主水!?

「スカーレット・ピンパーネル」はブロードウェイで1997年に初演され、日本では宝塚歌劇団が上演しました。今作は、ブロードウェイ版の演出による改訂版として2016年に上演され大ヒット。再演がすぐに決まりましたね。ストーリーは、イギリス貴族とフランス革命の勝者、ロベスピエールたちとの戦いです。革命軍対貴族の互いの正義感がぶつかり合う、これぞヒーローものという印象を受けたのですが、石丸さんはこの作品をどのように思われますか。

フランス革命は、レ・ミゼラブルのように民衆が貴族に立ち向かう姿に感動するのですが、貴族の視点からでも新しい発見があるんです。アメリカ人の作曲家であるフランク・ワイルドホーンに今作のことを聞くと、「フランスとイギリスで起こっている事件をアメリカが俯瞰したものを、コメディとして仕上げたんだ」と言われて、そんな解釈もあるんだと驚きましたね。

 

主役のパーシー・ブレイクニーはどのような人物だと思いますか。

パーシーはヒーロー中のヒーローだと思います。イギリスでNo.1の大貴族、知力もあって、リーダーとしての統率力がある。マルグリットという素敵な女性と結婚したばかり。けれど、女心に疎いという欠点があります。それでも、忍耐強く接してくれた彼女を通して、新しい自分に変わっていく成長物語でもあるんです。

そんなパーシーはスカーレット・ピンパーネル団のリーダーですが、役作りのため参考にされた実在するリーダーがいるんでしょうか。

実在の人物ではないですが、ドラマ『必殺仕事人』の中村主水(故・藤田まこと)が参考にできるかと思いました。いわゆる、悪を成敗する時の精悍さと、家では奥さんや姑さんにかなわないという落差が、スカーレット・ピンパーネル団のリーダーでいるときの彼と普段のパーシーとのギャップに似ています(笑)。

ヒロインのマルグリット役の安蘭けいさんは、男役でパーシー役を宝塚の時に演じられています。まさに当たり役でしたが、ご覧になられた時の印象はありますか。

男前でした(笑)。パーシーには別の一面があり、イギリス貴族だとバレないように〈グラパン〉という胡散臭いおじさんに変装するんです。小池修一郎さんが演出された宝塚版はそのグラパンが活躍していた。グラパンを演じている安蘭さんがコミカルで面白いんです。なのに、剣を振ればたちどころに敵をやっつけてカッコイイ。驚きですよね。

安蘭さんからアドバイスを受けることはありましたか。

僕にとってはいい参考書が近くにいるわけですから(笑)。彼女が大事にした作品で、愛着があるからパーシーという役を熟知している。パーシーの心の動きに関しても、安蘭さんに話を訊いて役作りをしました。

宝塚版では、ワイルドホーンさんが安蘭さん演じるパーシーのために「ひとかけらの勇気」という曲を書き下ろされたのでしたね。

改訂版では安蘭さんの「ひとかけらの勇気」はタイトルを変えて、「悲惨な世界のために」とリニューアルされ、新しい歌詞で同じメロディラインを、一幕では私が、そして、安蘭さん自身が二幕で歌います。宝塚ファンなら、この名ナンバーをマルグリットとして歌っている姿は、きっと身悶えしますよ(笑)。そして、ワイルドホーンは、改訂版にも新曲を書いてくれました。上原理生くんが演じるロベスピエールに「新たな時代は今」が書き下ろされ、「ここから先は」という曲がパーシーのために書かれました。

ワイルドホーンさんの曲の魅力はどこにありますか。

一度聞くと、口ずさんでしまいたくなるメロディです。ただ、誰でも歌える歌は書かれない。いわゆるカラオケの気分で歌っていると、だんだんキーが高くなり歌えなくなって、息が足りなくなるような曲を書かれるんです。歌い手泣かせですね。メロディは簡単なはずなのに、歌えないもどかしさが魅力です。

海外戯曲の場合は翻訳がとても大切だと思うのですが、海外戯曲ならではのご苦労はありますか。

翻訳は役者にとっても非常に大事です。僕らはその訳を頼りにセリフを語るのですから。翻訳を手がけた木内さんは、演出家のバリーさんに英語版に則して直訳して欲しいと注文されたそうです。日本語は英語に比べて、3倍の言葉が必要なんですね。つまり3分の2のエッセンスが溢れてしまう。それをどれだけ日本語に入れ込んで、英語版と違わない解釈にするのか。木内さんは海外スタッフと我々との間に入って、忍耐強く訳してくれて本当に感謝しています。

若手の俳優・歌手との共演から生まれる化学反応を僕自身が楽しみにしている

スカーレット・ピンパーネル団には2.5次元舞台などで活躍する若い俳優も出演されます。

久保田秀敏くんや多和田秀弥くん、東啓介くんなど若い俳優達が集まってくるので、たくさん意見を交わしながら、一緒に作っていくスタンスがいいですね。歴史物に挑戦することは役者人生において良い経験ですからどんどんやって欲しいです。

2.5次元舞台はアニメやゲームを原作にしていますが、今作も小説が原作で、似ているところがあると思います。今の2.5次元舞台のブームをどう捉えていらっしゃいますか。

客席と近い距離に舞台があり、役者はある時はスターだけれど、ある時は素の人間といった自由な存在になることができる。昔のミュージカルは、舞台があって、その下にオーケストラピットがあるので、舞台から飛び出せない制約がありましたが。一方で『キャッツ』のように客席を飛び回る自由なミュージカルは、2.5次元舞台と近い部分は大いにあると思います。

近年は若手俳優との共演だけではなく、テレビの音楽番組でmiwaさん、乃木坂46の生田絵梨花さんなど若い歌手の方たちとのコラボレーションが見られる機会も増えましたね。

新しい才能に触れ合うチャンスだと思っています。フィールドは違うけれど、ともに長年愛されてきたスタンダードを一緒に歌う。共演から生まれる化学反応を僕自身が楽しみにしていて、これからもどんどんやっていきたいですね。

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