Interview

荒木宏文&丘山晴己が稽古に奮闘中。舞台ならではの『ACCA13区監察課』の魅力を生み出すために

荒木宏文&丘山晴己が稽古に奮闘中。舞台ならではの『ACCA13区監察課』の魅力を生み出すために

舞台『ACCA13区監察課』が11月3日より東京・品川プリンスホテル クラブeXにて開幕する。“もらいタバコのジーン”の異名を持つ謎多き男、ジーン・オータス役に荒木宏文、その友人であるニーノ役に丘山晴己と、作品ファンも納得のキャスティングだ。今回は、稽古が始まったばかりの2人に直撃。暗中模索のなか、舞台『ACCA13区監察課』の世界を探る彼らの生の声をたっぷりお届けする。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 冨田望


荒木さんはビジュアル撮影のときからジーンだった

取材前からお2人の様子を見ていましたが、もうすっかり息ぴったりという感じですね(笑)。

丘山晴己 はい。もうバディです(笑)。

荒木宏文 丘山くんといると、すごく安心するんですよ。もともとの人間性もそうだし、海外に行かれていたこともあって、コミュニケーションを取るのがすごく上手。僕は人と距離を詰めるのが苦手だから、そういう面でもすごくサポートしていただいている感じがします。

丘山 本当ですか? 全然コミュニケーションが苦手な感じはしないですけど。

荒木 普段、若い子と一緒の現場が多いんだけど、その場合、たいてい最初は怖がられるんだよね(笑)。

丘山 なるほど(笑)。

荒木 この現場はそんなことを気にしないで話せるというか。そういう空気感を最初につくってくれたのが丘山くんだと思う。

丘山 僕こそ、荒木さんがいらっしゃることが稽古場での心の支えになっています。やっぱり稽古をしていると行き詰まることが必ず出てくる。そんなとき、荒木さんのところに行けば絶対助けてくれるんじゃないかっていう安心感があるんですよね。

荒木宏文

お互いの役や演技の印象はいかがですか。

荒木 丘山くんは、たぶん、声帯の本質が(アニメ版でニーノ役の)津田(健次郎)さんに近いんだろうなということは、読み合わせで思いました。キーで言えば、たぶん丘山くんのほうが少し高い。でも、そこを下げるだけで声色が津田さんになるんですよ。だから最初からすごくハマってる感じがしましたね。

左:ジーン役 荒木宏文  右:ニーノ役 丘山晴己

丘山 荒木さんとはビジュアル撮影のときに初めてお会いしたんですけど、その瞬間から「ジーンだ!」って思いました。似てるんですよね、オノ・ナツメさんの描く漫画のジーンのフォルムに。スタイルもいいから、まずビジュアル面の完成度が圧倒的ですよね。ジーンって在り方が独特で、どこか悟っているというか、何にも動揺しない雰囲気を持っている。この空気感を出すのって簡単そうで簡単じゃないと思うんですよ。荒木さんは、本読みの段階からそこにまっすぐチャレンジをされていて、すごいなと刺激を受けました。

丘山晴己

すでにあるものをなぞるだけではダメなんだと思う

荒木さんのブログを拝見したら、普段は主人公に共感することはあまりないのに、ジーンには共感を持ってアニメを観ていたと書いていましたね。原作もかなり読み込んでいるそうで、格別な思い入れを感じます。

荒木 そうですね。『ACCA13区監察課』の面白味は、わからない部分がたくさんあること。探りたくなるような謎めいた部分がすごく多いというか。特にジーンに関しては、表情があまり変わらない。そのぶん、実はこう考えているんじゃないかと読者が勝手に想像できる。自分で想像を膨らませて、自分なりに答えを出せるくらい、読者がキャラクターを自分に寄せて読めるんです。だから共感できるのかな、と。そんな原作の持ち味である、見ている人がつい答えを探すために見入ってしまう余白の部分は舞台でも残したいなと考えながら稽古に入ったので、今はすごく試行錯誤している感じです。

とおっしゃると?

荒木 まだ稽古が始まって3日目なんですけど、現段階で演出の石井(幸一)さんからは「声に熱を入れてやって欲しい」とオーダーをいただいているんですね。そうやってセリフに感情を乗せる表現は、僕が面白いと感じていた『ACCA13区監察課』の良さとはまた違うもので。例えば、漫画を読んでいるとわかるんですが、全6巻の中でジーンもニーノも一度も涙を流す場面がないんですよ。そんなふうにつらくても涙も流せないというか、我慢しなきゃいけない芯の強さが、『ACCA13区監察課』の大人な雰囲気をつくっていると思うんです。たとえ内心では驚愕していても決して動揺や戸惑いを出さないポーカーフェイスな感じが、ジーンの人格者としての説得力だと思うし、本心をまるで表情に出さないところにニーノの監視者としての覚悟が見え隠れする。その雰囲気と、声に熱を込めるというアウトプットが対照的で、どうバランスを取っていけばいいのか測りかねているというのが率直な現状です。

丘山 そのなかで原作の持ち味をどうやったら残せるんだろうかというところは、僕らもまだヒントが見つかっていないんです。

荒木 漫画やアニメの『ACCA13区監察課』が、見ている人が答えを探るために、その世界に自分を近づけて楽しむ作品だとしたら、もしかしたら舞台『ACCA13区監察課』は「これが私たちの答えです」と提示するような作品になるかもしれない。まだまだ戸惑いながら稽古を進めていますが、でも戸惑えるということは挑戦でもある。顔合わせのときに、原作監修やアニメ制作に携わった方々から「漫画でもアニメでもない新しい『ACCA13区監察課』を楽しみにしています」と激励をいただいて。その言葉どおり、すでにあるものを単になぞるだけじゃダメなんだろうな、という気持ちで今は稽古に取り組んでいます。

丘山 僕が演じるニーノも、漫画やアニメとはまた少し立ち位置が違って。舞台は、ニーノの視点から物語が進んでいくんですね。言ってみればストーリーテラーなんですけど、それだけに、ジーンとニーノが決して近くならないというか。つねに対角線上にいるような感覚がありますね。漫画やアニメのニーノは、ジーンをフィジカルでもメンタルでもサポートしていて。もちろんそれは与えられた任務ではあるんですけど、ニーノ自身も楽しんでいるように見えたんです。でも舞台はニーノの目から見たお話なので、そこまでジーンにもストーリーにも入り込んでいかないようなところがある。それが今、稽古を2日終えて感じた原作やアニメとの違いですね。ただ、ここから稽古が進んでいくにつれて、語りの部分は客観でも、それ以外の場面ではもっと人間味を出していったほうがいいと思うようになるかもしれない。シチュエーションごとにそれぞれ異なるニーノを見せていかなくちゃいけないのかな、というのが今の僕の感触です。

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