Interview

インスタ投稿から産まれた仲宗根泉(HY)の音楽と本が、ありのままの自分を肯定できるきっかけをくれる。

インスタ投稿から産まれた仲宗根泉(HY)の音楽と本が、ありのままの自分を肯定できるきっかけをくれる。

HYのキーボードであり、ヴォーカルを務める仲宗根泉が、『1分間のラブソング』というタイトルをつけたソロアルバムと書籍を同時発売した。
この形態の異なる2つの作品は、アーティストとして、母として、彼女ならではの視点でインスタグラムに投稿してきた1分間の詩とメロディーが核になっている。
そこに存在する言葉とメロディーは、恋愛や日常生活の中にあるリアルな感情を呼び起こし、さまざまな形のラブソングとなって心に響く。
仲宗根泉は、当初、そのメッセージをくれたその人に届けとスタートしたという。そんな楽曲や言葉がより多くの人の共感を得たことをきっかけに、この2つの作品が産まれた。
HYの制作とは違いスムーズにできあがったという作品には、ありのままの仲宗根泉が反映され、日常にそっと寄り添ってくれる祈りが確かにある。

取材・文 / 土屋恵介 撮影 / 荻原大志

1分の間に、どうやってこの人を救ってあげられる言葉を入れようかって

仲宗根さんのソロアルバム『1分間のラブソング』は、インスタグラムにアップしていた楽曲がスタート地点なんですよね。

はい。もともと、私は暇なときに、歌詞や詩を書くことが多くてその流れからですね。何かからインスピレーションを受けた詩をアップしてたんですけど、だんだんコメントが増えてきたんです。その中で、この人はこんなことがあって眠れないんだ、だったらこの人を寝かせてあげられるような曲を作りたいっていうのから、その人に向けての曲を作り始めたんです。

ピンポイントでの作業だったと。

そうなんです。みんなに聴いてじゃなくて、コメントを書いてくれたあなたに伝えたいなって。でも、たったひとりの人に向けてしか書いてないのに、“私の気持ちを代弁してくれてます”とかいろんな人がコメントを書いてくれるようになって、自分も面白さややり甲斐を感じたんです。お金になるとか仕事になるとかも関係なく書いたものだし、それにすごく多くの人が、“今日はゆっくり眠れます”とか“また明日からがんばろうと思います”とか反応してくれるのがうれしくて。だから、今回、こうやってCDや本になったけど、実際、仕事って感覚がないんですよ。

つまりは、コメントをしてくれた人とのコミュニケーションが、ひとつの形になったってことですね。こうした曲の作り方って今まで全然違うと思いますし、それって創作活動としても面白いんじゃないですか。

そうなんですよ。今まで、HYで1年に1回アルバム出すときに1曲入魂って感じで書いてたから、こんなに曲がポンポン出てきて自分で驚いてます(笑)。それは、そこにビジネスがないからでしょうね。やってて楽しいし、ひたすらフォロワーの方が読んでくれて、コメントを見るのが何よりも好きなので。みなさんから、ご褒美をもらってる感覚です(笑)。

ほんとにリアルタイムでの反応ですからね。

そうそう。今までCDを出して、こういう風に聴いて欲しいと思っても、私、エゴサもしないので聴き手の感想って見れなかったんです。エゴサって、ダメなこと書かれてるっていうじゃないですか(笑)。精神的に弱いから、そういうのはあまり見たくなくて。だから、最初はインスタでも書くのは怖かったですよ。悪口とか書かれたら嫌だなって。でも、そういうことを書く人もいなくて。そしたら吹っ切れましたね。自分がやりたくてやってるだけだから、これでいいんだなって。これは素晴らしいシステムだなと思い始めたら、徐々に、自分が夜寝る前に読みたいな、聴きたいなと思い始めて、CDにしたい本にしたいと思ったんです。

自然な流れでCDと本になって行ったと。曲作りでいうと、インスタの動画が1分間という枠が決まってるいたのも、作りやすさにつながりましたか。

それは大きかったです。でも最初は、1分でどうやって曲にしたらいいんだ?って思いましたね。ずっとアーティスト活動をしてると、最初にイントロがあって、Aメロ、Bメロ、サビって構成をどうしても考えてしまいがちで。でもそういうのを覆していいんじゃないかなって思えて、Aだけで終わる曲とか、イントロがなくてもいいとかって発想になって行ったんです。
あと、私は恋愛曲を多く書いてるけど、そうじゃないちょっと面白い曲とかを書くのも大好きで、昔からよくやってたんです。世に出してなかった部分をやってみるのもありだなって。そうやって、気持ち的に楽な発想でやっていったら、曲がどんどんできるようになりました。1分の間に、どうやってこの人を救ってあげられる言葉を入れようかってサラサラできてて。だから、1曲作る制作時間が2〜3分だったんですよ。

それはすごいですね。

この人に書いてあげたいと思った瞬間に、言葉とメロディが一緒に降りて来るんです。それを書き写すだけって感じでした。今CDで出してる音楽が、自分の頭にそのまま流れてきてるだけだから、それを楽譜に起こしただけなんですよ。歌詞も、Aメロでこういう言葉を使ってるからBメロはなんて言おう?とか、そんなことも一切考えてないし。ただ、動画を編集するのが1時間くらいかかるんですよね〜(笑)。そっちの方が時間がかかっちゃった(笑)。

プラス思考だと思われるけど意外と違うんですよ。

(笑)。さて、アルバムは、インスタでアップした楽曲を元にレコーディングされたわけですが、中でも人気があった「いつかあなたの夢が」をフルサイズにして収録してます。

1曲だけ、みんながフルサイズで聴きたいって曲を決めてくださいって選んでもらったら、これが1位になったんです。最初は自分の中で1分の状態でできあがってるから、作れるかな?と思ったんです。だけど、いざピアノの前に立ったときにスラスラ出てきました。5分くらいの曲をスムースに書けたのはめっちゃ久々だなって。

曲の元になったエピソードについて聞かせてください。

この曲は、先生になるって勉強してる友だちがいて、彼女の仲間で私のファンの子がいたんですよ。その子が何度か試験に落ちてて、次ダメだったらこの夢を諦めるっていうので、友だちから、“最後にIzu何か言ってくれない?”って言われたんです。で、その子から今までがんばってきた話をちょっと聞いたんですよ。そのあとに、すぐ“いつかあなたの夢が”ってサビの部分がわ~っと降りてきたんです。でも、私バラード専門だから、あまりこういう歌詞を書くのが得意じゃないんですよ。

恋愛系じゃなく、人生を励ますタイプの歌ですよね。

そう。だから自分でもこういう曲書くんだって意外でした。さらに意外だったのが、それをアップしたときに反響がものすごかったんです。私は、恋愛の歌をたくさん書いてるから、フォロワーの方も恋愛で悩んだり苦しんだりしてる人が多いのかなと思ったけど、それだけじゃないんだなってわかりました。自分も34歳になり、ファンの方も結婚したり子供がいたりで、自分がこの先どの道に行けばいいのか模索してる人とか多いんだなって。フォロワーの方も、10代より20代前半くらいからの人が多いし、だから恋愛よりも、自分自身の夢だったり、“ここでいいの?”って思って聴いてる人が多いんだなって。そう感じられたときに、さらに自分の視野が広がりました。これからもっといろんな物語を書けそうだなって。

聴き手の人と一緒に成長してるっていう感覚もありますか。

ありますね。みんなの成長も見れるし、逆に自分自身を見てる感じもしますね。自分も今ここだよって、同じ悩みを持ってる人には直にコメントします。明日に光が見出せるような言葉をかけてあげますね。他の人がちょっと背中押してあげるだけで、“こんなにちっぽけなことで悩んでたんだ”って気付けたり、乗り越えられることってあるじゃないですか。そういう感覚ですね。

自分では思い詰めてても、誰かからのちょっとしたひと言で気持ちが楽になることありますよね。

そうそう。私って、いつもバッサバッサはっきりものを言うから悩みなんかないと思うかもしれないけど、結構ひとりになるとめちゃ考えるタイプなんですよ(笑)。へこんだりもするし、私も人間なんで(笑)。みんなに助言してるから、プラス思考だと思われるけど意外と違うんですよ。ほんとの仲宗根泉は弱くて、それを這い上がらせるために、もうひとりの仲宗根泉ががんばれって言ってるみたいな感じなんです。
だから、自分と同じ境遇だと、自分が言われたいことがわかるんです。ただ、同じ意味でも、こういう言われ方したら嫌だなとかもあるじゃないですか。だったら、こういう言い方すれば聞いてくれるなとか、その人のタイプを分析して言葉にしてますね。私、人の心理分析するのめっちゃ好きなんです。フォロワーの方がどんな人かはわからないけど、2〜3行の言葉使いとかで、大体どんなタイプかわかるんですよ。この人にははっきり言ってもいい、この人には遠回しに言わないととかは考えますね。それは、自分が同じような経験をしてきてるからこそわかることだと思います。

経験者として、フォロワーの方に道しるべ的なメッセージを送ってると。あと、サウンド面の話をすると、ゴスペル、ソウル、ブラックミュージックな音が軸になってますよね。

私、もともとブラックミュージックが好きなんですよ。でも、HYで出そうとすると、いい具合に4人にかき消されてそういう風にならないんです(笑)。5人でやると、どうしてもHYの色になるんですよね。それはバンドとしてはいいことだとは思うんですね。でも、今回はやりたいことやれるので、思いっきり自分の好きなブラックミュージック的に仕上げたんです。なのに、「片想い」って曲だけ歌謡サスペンスみたいになっちゃって(笑)。レコーディングしてるときも、どんどんドスの効いた歌い方になって自分でも笑っちゃって(笑)。それも、自分の好きなものだからいいんじゃないかなって。どれも、自分の好きな音だし、レコーディングしててすごく楽しかったですよ。

「このギターと愛と」は、英詞でアコギのサーフロックじゃないですか。

これは、曲が浮かんだ瞬間からカントリーみたいなイメージができてたんです。そのときは、英語ができないから日本語の言葉が浮かんだんですけど。でも、CDになるなら絶対英語で歌いたいと思ったんです。そっちの方が似合ってるから。で、英語に訳してもらってレコーディングしたんです。英詞で歌うのも、前にアメリカツアーに行くときに「AM11:00」って曲を英語バージョンで歌ったくらいだったからすごく新鮮でした。
あと、自分の中でラブソングをアコギでさらっと歌うっていうのもなかったから。でもやりたかったんですよ。コルビー・キャレイが好きで、そういうサーフ系のカントリーなイメージができてたから、そういう感じで歌いました。だから、今回、音楽面でも新しい世界を広げられたと思います。

サウンド面でも、自分のイメージがドンと出せたと。

今回は、自分が全部指示してやれたから、完璧に仲宗根泉の音楽になりました。自分で聴いて、いい歌作るな〜って満足してます(笑)。

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