Interview

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(中)コナミからカプコンへ渡った男

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(中)コナミからカプコンへ渡った男

去る10月19日に開催された黒川塾54にて登壇した岡本吉起氏のトークセッション「ゲーム三冠王 岡本吉起かく語りき」を紹介。

“岡本吉起の人生は誰よりも激しい軌跡を辿っている。その振れ幅は、良言えば人間性の振れ幅をシンクロしているように思える。”

今まであまり語られることのなかった、カプコン退社後に立ち上げた、自身が代表を務めたゲームリパブリック時代、経営破たん後の苦境、その後、モンスターストライクの開発に関わることで再び大きく飛躍することになった経緯までを語った。
黒川塾での、岡本吉起を突き動かすその人としての熱量、ゲームへの愛情と祖の知見、生きる情熱の背景など、幼少期から現在に至る心の深淵を覗く対談をお届けする。

※本記事は3回にわたってお届けする記事の第2回です。第1回(上)はこちら

文 / 黒川文雄

コナミを辞めたら行くところが無かった・・・?

そのあとカプコンに直談判をしに行ったっていう話を聞いたんですけど。

岡本 それは端折られています。実際はですね……給料が安いんで(コナミを)辞めようと思ったんですね。2本当てて、ものすげえ売上を上げたのでバーンとくると思ってたんですよ。それが、これはないよっていう金額で。それで、辞めるって言ったんですよ。頑張っても結果が一緒だったらもういいよって。だって、裏方じゃないからね。ピッチャーで少なくとも2試合投げて完封してるから。

特別賞与とかは出なかったんですか?

岡本 それは出ました。でも、それは関係ないです。給料を上げてくれよって。「マグレのホームランすごいで賞」みたいなのがボーナスじゃないですか。「実力のホームランすごいで賞」が昇給でしょ? だから、どっちなんだって言ったときにマグレ賞ですねって言うから、ならもういいよと。まあ、その後もいろいろあったんですけどね。

それで(コナミを)辞めたんです。辞めたんだけど行くところがなくって、どうしようって言ってたら、コナミで一緒にチームを組んでいた有馬(注6)が「お前だったら、いくらでも行けるよ」って言うわけですよ。

注6:『魔界村』のプログラムなどを担当した有馬敏夫氏のこと。『魔界村』シリーズに登場する難敵「レッドアリーマー」の名前の由来になったといわれている。

レッドアリーマーの有馬さんですね。

岡本 そうです。で、実際にいろんなオファーがあったんですよ。年収5000万のオファーとかもありました。他にも一戸建てを1個やるわとか、そんな話がどんどん来るんです。超売れっ子なんですよ、もうビックリです。そんな状況の時にカプコンっていう会社のオーナーが会いたがっているっていう話がきて。

「開発全部任せるからウチ(カプコン)に来ないか」

辻本オーナー(注7)ですね。

注7:カプコンの創業者で現・代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の辻本憲三氏のこと。

岡本 はい。会ってみないかってレッドアリーマー(有馬氏)に言われて、会いに行ってメシ食って。で、オファーしてくれたんですけど、普通の人はお金とか家とか言うじゃないですか。でも、違ったんです。「開発全部任せるからウチに来ないか」って言われたんです。メチャすごくないですか? 当時の僕、22歳ですよ?

すごいですね~。そうか、22歳か……。

岡本 22歳でお前に開発全部任すから来いやって。ものすごい震えましたね、心が。それで、行きますって言ったわけだけど、まさかカプコンに開発がないとは思わなかった(笑)。

アハハハ、そういうことだったんですか。それはまだカプコンがカプセルコンピュータ(注8)の頃ですか。

注8:カプコンの旧社名。現在の社名であるカプコンは、この「カプセルコンピューター」の略。

岡本 そうです。僕の社員番号は0009番でした。ゼロゼロゼロナイン。かっこいいでしょ? レッドアリーマーが0008番。で、開発を任せてくれるってわけですけど、ふたりっきりですからね、レッドアリーマーと俺と(笑)。

年収5000万円の男<年収400万円の男

そりゃあ、任せるわと(笑)。ちなみに、待遇はどうだったんですか?

岡本 年収5000万のオファーをされている男ですからね。ただ、そうはいってもまあ、現実的なほうがいいかなと思って月給50万欲しいって言おうと思ったんですよ。でも、オーナーの顔が怖くて、思わず「35万」って言ってしまって。そしたら、オーナーが「手取りか?」って言うから、「ううん、額面」と。当時としては安くはないですよ? 今から34年前で当時22歳のお給料と思うと安くはないですけど、年収5000万から比べると安いじゃないですか。月給400万から比べるとね。その後、ちゃんと稼ぎましたんで、徐々に上がってはいきましたけどね。

徐々にではないでしょ。だって、カプコンがアーケードで大ヒット作を次々出せたのは岡本さんが行ったからだってみんな言いますよ?

岡本 行ったからっていうか、オレが行かなきゃ開発がなかったんだから。