Interview

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(中)コナミからカプコンへ渡った男

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(中)コナミからカプコンへ渡った男

リアリティを追求したクリエイティブ

岡本 それはまだいいほうで、もっとひどい話がありますよ。『麻雀学園』(注11)って書いて「マージャンアカデミー」って読むゲームがあって。これはカプコンではなくてユウガ(注12)から売ったことになっていると思いますけど、作ったのは僕らなんですね。あきまんが絵を描いて、僕が主人公の声を出して。チューニングは西谷亮(注13)がやって、プログラムは僕の師匠がやってみたいな。

注11:1988年にリリースされた脱衣麻雀ゲーム。あきまん氏による女の子のグラフィックやストレスを感じさせない対局などが受け、大ヒットとなった。
注12:総合リース業や運送事業などを手掛けている会社。諸般の事情によりカプコンが開発した『麻雀学園』の販売元となった。
注13:『ファイナルファイト』、『ストリートファイターII』などを手がけたことで知られるゲームクリエイター。現在は株式会社アリカ代表取締役社長を務める。

すごいですね、フルメンバーじゃないですか。

岡本 そう、ウチのフルメンバー、オールスターで作ったんですよ。最初に企画を僕が立ち上げて、ゲームの女の子の服は当時のヨメにデザインさせました。

「当時」のね(笑)。

岡本 元ヨメね。で、女の子のポーズをこうしようとかやってたときに、あの……モデルがあったほうがいいじゃないかと。で、社員の女の子に水着を着せて、いろいろポーズを取らせて、写真をパシャパシャ撮って。ゲームの「ああ~」とかいう声も出させて、それを録音して使いました。

ホントそれ? そんなことやってたんですか?

岡本 やってました、やってました。いやだって、カネがないんだから社員でやるしかないんで。僕もちゃんと声やりましたから。「よーーし!」とか「10Powerツモったぞ!」とか、全部僕の声です。『ストリートファイターII』の「波動拳!」とかの声も全部社員ですよ。

自分が手掛けたものを当てるためには血を吐いてもいい

当時のカプコンではそういうのは当たり前だったんですか?

岡本 いや、僕だけ(笑)。みんな優しいですよ、やっぱり。でも、自分のモンだと思ってたら当てにいくでしょ。で、当てるためなら血を吐いたっていいでしょと僕は思ってます。それに、ちょうどカプコンがヤバかった時期だったんです。

だから、『麻雀学園(アカデミー)』は開発のスケジュールに入ってないタイトルで、僕がまた勝手に作ったんですね。自分たちの労働力の一部を割いて、8割方のメンバーで他の予定のタイトルを予定通りに上げて、残りの2割でまったく新しい1本を作ったんです。当然、徹夜が増えるわけですけど、そんなの全然関係なかったです。それで、その『麻雀学園』が大ヒットして、倒れかけてた会社が持ち直したんですよ。

すごい大貢献したタイトルだったわけですね。

岡本 バッコーンっていきましたからね。すごいタイトルだったです。販売台数は1万7千台くらい。

その当時でそれはすごいですね。

岡本 当時の市場に出ていた麻雀ゲームの完成度が低すぎて。僕ならもっと良く作れるのにっていうのもあったんです。そんな気持ちを前面に押し出して作りました。それで、この作品で開発した敵側の人工知能が取っ掛かりになって、『ファイナルファイト』(注14)を介して『ストII』ってなっていったんですよ。

注14:犯罪都市メトロシティのハガー市長を操作して悪の暴力集団「マッドギア」と戦うアクションゲーム。1989年にカプコンからリリースされ大ヒットを記録。スーパーファミコンをはじめ、さまざまな家庭用ゲーム機にも移植された。

そうだったんですか。

岡本 はい。『麻雀学園』を遊んでもらえると分かりますけど、敵の手作りとか、皆さんが想像しているものより100倍くらい良く出来てます。しかも、8ビットCPUですからね。Z80H(注15)っていう。この「H」が付いてるヤツは16ビット級のスピードが出るとか言われてました、ハハハ。

注15:1980年代にパソコンのCPUなどに広く使用されていた8ビットのマイクロプロセッサー「Z80」シリーズのひとつ。

今となってはどうでもいい速度ですね(笑)。

岡本 16ビットなんて今どき聞かねえよ、みたいなね。でも、ファミコン級の8ビットCPUで作ったのってすごいことだったんですよ。あきまんがドットを打った女の子もね、いい女なんですよ。こんなのよく打つなあって。つまらない言い方ですけど天才ですよね。アレが来なければずっと僕がイラストを描いてました。

岡本さんも描いていたんですか?

岡本 イラストも描くし、ドットも打ってましたけど、あきまん来たからチェンジしました。おかげで楽になったなあ。任せたらホントいい仕事しますからね、アイツ。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


続きは第3回インタビュー
11月7日(火)公開

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2017.11.07

著者プロフィール:黒川文雄

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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