Interview

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

去る10月19日に開催された黒川塾54にて登壇した岡本吉起氏のトークセッション「ゲーム三冠王 岡本吉起かく語りき」を紹介。

“岡本吉起の人生は誰よりも激しい軌跡を辿っている。その振れ幅は、良言えば人間性の振れ幅をシンクロしているように思える。”

今まであまり語られることのなかった、カプコン退社後に立ち上げた、自身が代表を務めたゲームリパブリック時代、経営破たん後の苦境、その後、モンスターストライクの開発に関わることで再び大きく飛躍することになった経緯までを語った。
黒川塾での、岡本吉起を突き動かすその人としての熱量、ゲームへの愛情と祖の知見、生きる情熱の背景など、幼少期から現在に至る心の深淵を覗く対談をお届けする。

※本記事は3回にわたってお届けするインタビューの最終回です。第1回(上)第2回(中)はこちら

文 / 黒川文雄

借金17億円、皆さんの想像より100倍くらい大変でした

すごくいい巡り合わせというか、出会いを引き寄せてますよね。今回の『モンスト』だって、岡本さんは大変な時期だったじゃないですか。カプコンを辞めてゲームリパブリック(注16)を創業したけど、リリースの延期とかが続いて大変でしたよね。

注16:岡本吉起氏が2003年に設立したゲーム開発会社。巨額の負債を抱えたため経営破綻となった。

岡本 皆さんが想像しているのより100倍くらい大変でした、ハハハッ。だって、個人で17億円借金ですからね。

億がフタケタくらいとは聞いていましたけど17億円ですか。

岡本 17億円借金したら普通破産するじゃないですか。でも、「オレ、返します」って言いましたから。借金17億円は破産できる金額で普通は悩むところじゃない。(破産しても)誰からも文句は言われないんです。銀行にも言われましたもん、「破産は考えたことないんですか」って。でも、「考えてない」「返す、返す!」って、ずーっと言い続けてました。ただ、今は返さんよと。だって、1円もないですから。だから、今は返さんけど絶対返すから待っとけって、延々言い続けてました。

それで、全額返したんですよね?

岡本 最後にはね。でも、その当時はただのホラじゃないですか。『モンスト』も何も関わっていないし、仕事もないんですから。で、何をしていたかっていったらオリジナルのボードゲームを作ってました。銀行の融資担当から「今、何されてますか?」(※)って聞かれて「段ボール切ってた」って言ったら、向こうはもうガッカリですよ。

そりゃそうですよね。言われた方は何のことか分かんないですよね。

岡本 それで、岡本さんなら、どっかの会社に就職とかできないんですかって聞かれるんですけど、「いや、就職したら17億円返せないだろ」って。就職したら無理だから自分でやるしかない。で、ボードゲームで当てようと。ボードゲームで一番当たったら80億くらい稼げるから、これでイケると思うんだよって言ったら電話切られました。「じゃあ、また電話しまーす」とか言われてプープープー、シーン(笑)。

きっと、こいつアタマおかしいとか思われたんでしょうね。17億円も借金があるけど破産する気はない。それで、借金返すためにボードゲーム作ってて、段ボールを切ってるって、おかしいじゃないですか話が全部。そりゃ完全にアタマおかしくなったと思いますよね。

地獄のような普通の生活の日々

確かに大丈夫かなと思っちゃいますよね。その頃から岡本さんがまったく表に出てこなくなったじゃないですか。当時、僕は岡本さんのブログを読んでいて、確か半地下みたいなところに住んでるとか書いていたような気がしますけど、そのあたりからだんだん更新がされなくなって、どうしてるんだろうなってずっと思っていた時期があるんですよ。

岡本 鬱で倒れてました。鬱、かっこいいでしょ。風邪みたいなもんで、誰でもなりますよ。

僕も軽いのはなったことあります。

岡本 まあ、なんとなくやってましたね。自由が丘のマンションに住んでたんですけど家賃未払いになって追い出されて、仕方なく田園調布の一戸建てに引っ越して。しばらくそこに住んでたんだけど、息子が新築の家を買って、ちょうど空いてるから住めやって言ってくれて、日吉に移ってみたいな。そんな地獄のような普通の生活をしてました。

生活は普通にできてたんですね。

岡本 そうなんですよ。自家用車も持ってましたしね。ギリギリのようなギリギリでないような。ただ、メンタルの部分は笑えなかったですよね。なんで鬱になったんだって話ですけど、カネがなくて鬱になったんじゃないです。僕はギリギリまで会社のために頑張ったと思ってるけど、その社員たちに恨まれたからです。

ああ~~……。

岡本 ゲームリパブリックの株を買ってる子らに「お前何やってんだ、ウチの金やぞ」とか「俺の金をなんや思うてんねん」みたいなことを言われるわけですよ。で、3カ月給料未払いになりますよね、3カ月ももらえなきゃ、当然文句言われます。当たり前です。でもね、あまりに言われ続けるとね……320回くらい言われましたからね。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に自分のスレが立ったことあります?

そういう人はあんまりないと思うな~。

「悪い予感しかしない」ってネットに書いてあった

岡本 あれも、まあまあ堪えますよ。ミクシィさんと岡本吉起が組んで新しくアプリを作りますって……『モンスト』のことですよ? 作りますってなったとき、「悪い予感しかしない」って書いてましたね。

まあ、そりゃそうですよね。あの当時のミクシィとあの当時の岡本吉起ですから。でも、昔は良かったミクシィと岡本吉起なんだから、「頑張ってほしいよね」とも言ってほしいじゃん。なにその愛のない言葉。ウケるとでも思ってるのか、このクソバカが、シバくぞゴラァって思いますよね?

さっきの遠距離攻撃スタンドの持ち主たちですよね。遠いところから攻撃できる。

岡本 そうです。しかも、攻撃力があるんですよね。で、成功したら『モンスト』は実はゲーム業界の天才が関わってたって、オイ! お前出てこい、コラァって。もうブチ切れましたよ。

『モンスターストライク』は木村こうき(注17)さんと岡本さんをはじめとするチームでお作りになったと僕は認識してますけど、木村さんからアプローチがあったんですか?

注17:ミクシィ取締役、XFLAG スタジオ総監督。ゲーム事業部にて『サンシャイン牧場」など多くのコミュニケーションゲームの企画を担当。『モンスターストライク』プロジェクトを立ち上げ、『モンスト』を大ヒットに導いた。