Interview

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

2週間でモックアップを作って提案した「モンスト」

岡本 ミクシィさんから、みんなが集まってワイワイガヤガヤ楽しいものを一緒に考えたいと。その時点でマルチプレイですよね。それでスマートフォンでってなった時点で、僕のアタマの中ではもうブレはなかったです。で、2週間後にプレゼン来てくださいってなってモックアップを持っていったんです。これには木村さんもビックリしてましたね。

よく2週間で作れましたね。

岡本 ゴールが見えていたとか、いろいろ理由はあります。あと、キャラクターとかサウンドとかは全部、某国民的人気RPGのモノを借りましたから。モンスターも青くて目が大きいのとか。

アッハハハハハ、そうか、そういうことか。なるほどね~。

岡本 もちろん狙ってやったんですよ? その某人気RPGのモンスターたちが登場して、某人気RPGの曲が鳴ってってノスタルジィを感じるじゃないですか。ゲームも面白いし、キャラもいいし、ノスタルジィあふれる感動とか、もうホント涙モンなんですよ。しかも、3ステージ作って持っていきましたからね。

それは心躍りますよね。

岡本 でしょ? でもね、この話にはオチがあるんです。木村さんに見せたら「すみません、(その某人気RPGを)一度も遊んだことないです」って言われちゃって。

ハハハハハハハ。

岡本 ほんとガッカリですよ。危険な橋を渡った意味ないじゃないかって(笑)。実際には一緒に仕事をしてみて、木村こうきのマーケティング理論がすごく良くって、それが心に刺さって。ホントに勉強になりました。ホント素晴らしいです、若いのに。僕からするとですよ? 彼は40数歳とかですから、フツーのおっさんですけど、僕からすると若くて。すげえなあコイツは、この人はホント天才だと思って付き合ってきました。ずっとケンカしてましたけどね(笑)。

実際には作っている途中にはケンカしているわけですよ。ある程度の線までは譲れるんです。そのあと、木村こうきがまたいいこと言うわけですよ。「産業廃棄物は出さない」って。

「産業廃棄物」って何だって?言ったら、昨日まで使えていたキャラクターを使えなくするんじゃなくて、今度は神化とか獣神化とかして、もう1回脚光を浴びるキャラクターにしてあげましょうというワケです。

なるほど、それはいいですね、採用です!となりました。だから、使えるとこはOK出すけど、ダメなことはダメだという。

僕はゲーム屋さんで彼は違うから、僕に見えてるものと彼に見えてるものは違う。彼はマーケティングから見てるけど、僕はゲームを作る方から見ていて、将来ここに着地したいっていうのが当然あって、完成品も見えてるから譲れないところっていうのはいっぱいあったんです。だからまあ、だいぶ大ゲンカしました。例えば、初期の『モンスト』がクソみたいな絵だったのを知ってます? あれは木村こうきが通したんですよ。一カ所だけ負けたのがそこです。

イラスト制作や管理業務は木村さんの仕事なんですね。その部分は岡本さんとして譲歩したんですね。

岡本吉起の「関ヶ原」とは

岡本 そうなんです。あれでいいのか?・・・と。こっちも意見が通らないのは腹立たしいし、絶対に譲れない「関ヶ原」と思ってるところで負けたわけですから、めっちゃムカついたんですよ。「関ヶ原」って言うのは、自分が考えているポイントで、絶対に相手に譲れないポイントのことを言うんです。まあ、「関ヶ原の合戦」ですよ。……でもですね。

結果、言いますよ? アレでゲーム売れましたから、木村さんが正しかったんですよ。

そうだったんですね。

岡本 でもね、当時の絵をホント見せたい。ホントにひどいから。それで大ゲンカしました。もう「死ね、お前!」とか思って。「こんないい企画が、お前のせいで台無しや!」みたいな。

グラフィックデザインをメインでやってるヤツも、最終的にはウチに入りましたけど、最初に誘ったとき「入りません」って言われましたから。このグラフィックはオレが入ったくらいじゃ立て直しできないから行かない、このゲームは売れないって。いろんなヤツを誘いましたけど、みんな断られました。これは無理、絶対無理って。それくらいひどかったです。2ちゃんねるにも「ミクシィさん、ヒマだから社員に描かせているんじゃね?」って書かれましたから。

木村さんも、絵がいいとは思ってはいなかったです。「ギリ耐えられる」っていう言い方をしていましたから、絵が悪いと分かってる。でも、ギリ耐えられるから大丈夫って言ったんです。

そうか、導入のタイミングでの判断としては正しかったってことですかね。

岡本 いろんなことで木村さんのことは尊敬しているけど、あそこのあのギリギリの読みっていうのは。何が彼をそうさせたのかいまだに分からない。あの初期のあの絵で踏ん張れるとは予想できなかったですね。ホント、あのときに戻れたら謝ります。

だから、「関ヶ原」で一発負けてるんですよ。大敗を喫してるのに天下獲れちゃった。すごいですね、木村さんは。何が見えたんだろう、あの男。僕は最初から全部計算して、あの絵では絶対いかれへんと思ったのにいけたのがすごい。しかもね、何百体っていうキャラクターのデザインをひとりの男に全部任せて。

初期の絵って1人のイラストレーターが全部描いたんですか?

岡本 そうです。よくそんなん振ったなあって感じやし、よく受けたなとも思うし、よく間に合ったなって。

ちなみに、もうすでに次を見据えていますよね?

岡本 次ですか? 作るでしょうね。作らないと怒られますもんね。

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