Interview

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

ゲームプロデューサー岡本吉起氏が語るゲームへの熱情(下) 借金17億円と鬱からの再起

まず、「俺を幸せにしよう」と思った理由

最後にこれだけ聞いておきたいと思います。岡本さんがこの間のトークショー(注18)で日本に生まれて良かった、日本に還元したいって言っていたのが、すごい印象的だったんです。それで、晩ゴハンをちゃんと食べられない子供たちを幸せにしてあげたいってことで、「こども食堂ネットワーク」(注19)っていうのがあって、そういったところに会社として寄付をしているってういうんですよ。それを聞いて、僕は岡本さんの人間性に触れた気がしたんです。

注18:総合学園ヒューマンアカデミーが主宰するトークイベント「Gm4u」のことで第1回のゲストが岡本吉起氏だった。
注19:経済的な事情などから、家で満足な食事を取れない子供たちに無料や格安で食事を提供するボランティアネットワーク。

岡本 いやいや、それはヤカラだと思って見てるからでしょ(笑)。まあ、ちょっとだけ話すと、僕らが子供のときって高度経済成長の真っ只中でしたよね。だけど、僕らのおじいちゃんが戦争から帰ってきたとき、日本は焼野原だったんですよ。それって世界最貧国でしょ? でも、そこから世界第2位って言われるところまで上がっていったわけですよ。オレたち日本に生まれて幸せだと思ってたでしょ? 俺も思ってたんですよ。すげえ幸せ、ラッキーだと。で、リレーでいうとじいちゃんがビリでスタートして、父ちゃんたちが……。

頑張って上げたんですよね。

岡本 そう、頑張って上げて、僕らは2位でバトンを受け取った。で、僕らの世代で順位を落としてしまったと思っているんですよ。それが悔しくって。もう1回1位を、金メダルを目指すところまで上げたいよねって思ったときに、そんな日本に子供が少ないとか、子供たちがメシを満足に食えてねえとか、ありえねえと思って、できる限りバックアップしたいと。

僕にできることは限られています。限られているけど全力でいきたいと思ってる。で、何からできるんだと思って一番最初にやったのが、まず「俺から始めよ」です。僕から寄付を始めるんじゃないですよ? まず、「俺を幸せにしよう」です。

将来の日本を背負う子供たちを幸せにする前に、まず僕が幸せになると決めたんです。僕が幸せになって、ウチの会社の幹部連中が幸せになって、ウチの会社の社員が幸せになって、そこからあふれた分でやりますと。居酒屋で升の中にグラスを置いて、そこに日本酒を注いでいくとグラスからこぼれますよね。このグラスの分が僕の生活費ですよ。で、下に置いている升がいざというときの保険で、グラスからこぼれて、さらに升からもこぼれたら、それはみんなにあげようと。

将来の日本を支える人たちに向けて寄付をしていきたい

はい、はい。

岡本 そうしたら、どういう気持ちになるかというと、こぼれたら無限大に全部あげるよっていう気になれるんです。自分に全然余裕がないのにあげようなんて言うと、惜しい気持ちも出てくるでしょ? でも、余ってたら、いいんだって言い切れるじゃないですか。

いろんな人が、いやいや金はいくらでも欲しいよって言うけど、絶対いらないから。ジャマだから、金なんて。死んだら持っていけねえし、国に半分取られるんだし。ちょっとでいい、お金なんて。

僕は神様みたいな人で自分は取らないけど皆さんにパンをあげますみたいなことは一言も言ってなくて、もう取ったって言っているんです。僕はもう自分の分と保険の分をすでに持っているんです。これで十分です。で、自分の子供たちにもあげました、役員連中にもあげました、社員にもあげました。だから、これからは将来の日本を支える人たちに向けて寄付をしていきたいと。

僕はね、将来大人になる今の子供たちから日本を借りて、使わせてもらっているんやと思っているんですよ。だから、この子らのために僕は残さなあかんねんと。その子らをバックアップするのは僕の仕事やと思ってるだけです。で、その子らが大人になったらね、また僕のところに課金してくれっていう……違う違う(笑)。

いやいや(笑)。でも、岡本さんは自分なりに社会に還元できることをすごいやってる感じがします。

岡本 ガチャ引け、ガチャ引け言うてますけどね。

そこでそう言っちゃうから、ヤカラ感が出るんじゃないですか(笑)。

岡本 恥ずかしいんですよ、真面目な話すると。

でも、本当に素晴らしいと思いましたよ。ありがとうございました。

写真:黒川塾54記念写真 2017年10月19日開催 @デジタルハリウッド大学

左:黒川文雄 右:岡本吉起氏

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


著者プロフィール:黒川文雄

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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