Report

映画「FOUJITA」と「MOMATコレクション」展で知る、パリに愛され、日本に必要とされたレオナール・フジタ

映画「FOUJITA」と「MOMATコレクション」展で知る、パリに愛され、日本に必要とされたレオナール・フジタ

第28回東京国際映画祭のコンペティション部門への出品でも話題となった映画『FOUJITA』が公開中だ。「FOUJITA」は文字通り、フランス・日本で活躍した画家・藤田嗣治=レオナール・フジタの半生を描いており、「死の棘」で第43回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ&国際批評家連盟賞をダブル受賞した、巨匠・小栗康平監督が十年の沈黙を破って、制作された最新作だ。

そして、東京国立近代美術館では、所蔵作品展「MOMATコレクション」において、そのフジタの作品にフォーカスした『特集 藤田嗣治、全所蔵作品展示。』が12月13日まで開催されており、映画に登場する「五人の裸婦」や「アッツ島玉砕」といった名画を目の当たりにすることができる。

FOUJITA

©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

1510131

開催中の「MOMATコレクション 特集 藤田嗣治 全所蔵作品展示。」では、『アッツ島玉砕』(写真中央)などの戦争画14点を展示している

映画は、1920年代、フランス・パリ、「寝室の裸婦キキ」(1922年)をはじめ、 “乳白色の肌” の裸婦を描き、人気画家としてエコール・ド・パリの寵児となった、歓喜と狂乱の時代。そして、1940年代、戦時の日本、戦争画を描いた沈黙と暗黒の時代。フジタが生きたふたつの時代を、時代の空気、文化の違いをフジタの生きざまと絵を通じて描いている。

エコール・ド・パリでは、おかっぱ頭にロイド眼鏡、くわえタバコという出で立ちで創作に取り組み、お調子者という意味の「フー・フー」と呼ばれ、モデルのキキやドンゲン、キスリングといった画家仲間と馬鹿騒ぎに興じたり、モンパルナスで開かれたフジタ・ナイトでは女装したフジタが、キキの花魁道中の介添えを務める、といった華やかで、スキャンダラスなフジタとパリの様子が描かれている。

FOUJITAサブ1r

©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

FOUJITAサブ3r

©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

対して戦時の日本は、「アッツ島玉砕」(1943年)を出品した国民総力決戦美術展が巡回してきた青森、記者の目を逃れて逗留する質素な宿屋から始まる。日に日に物資に乏しくなり、簡素な暮らしに耐えるフジタと五番目の妻、君代の様子がモノトーンで描かれる。二人は山ふところに抱かれた村に疎開し、農家の別棟にアトリエ兼住まいを構え、農村の暮らしや豊かな自然を通じ、美しい日本の姿が描かれる。

本作はいわゆる伝記映画とは異なる。対照的な2つの時代が、静謐で圧倒的な美しさをもった映像で再現されている。小栗監督は「華やかなエコールドパリと暗い戦時という対照的な時代を、フジタの絵を貶めないように美しい映像を心がけて描いた」と語っているとおり、その映像のワンショット、ワンショットが絵画的な美しさだ。それはフジタの描いた絵画とは手法こそ異なるものの、フジタの芸術を、生きざまを描きだして、余りある。

1510133

東京国立近代美術館の2フロアで展開する展示には、フジタの「自画像」2点(いずれも1929年)なども展示されている。

優れた美しさを持つ絵画と映像だからこそ、どちらから先に見ても楽しめそうだが、できれば映画を見てから展覧会に行くことをおすすめしたい。

エコール・ド・パリの時代、「五人の裸婦」(1923年)、「タピスリーの裸婦」(1923年)といった、フジタの名声を決定づけた裸婦像を描く上で重要な表現手法となったのが〈乳白色の肌〉*だ。これらのパリで描かれた作品は繊細で精緻な線で描かれており、浮世絵の美人画のように日本画的な魅力をもった作品と言える。

これに対し、戦時に日本で描かれた「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」(1945年)といったいわゆる戦争協力画は、ゴヤやジェリコー、ドラクロワのように西洋絵画における歴史画に見られるような、力強い手法で描かれている。

エコール・ド・パリの裸婦、戦時の戦争画、どちらも藤田嗣治というパリに愛され、日本で必要とされた、ひとりの画家が描いたとは思えないほど、作風が異なっている。フジタの生きざまを映像に留めた本作を見てから、フジタの作品を見た方が、その作風の違いを理解し、彼の生きざまへの理解が深まるのでないだろうか。

※乳白色の肌
後年の調査でこの乳白色はタルク(ベビーパウダー)を材料としていたことが判明しており、さらに写真家・土門拳が撮影した制作中のフジタの写真から、和光堂のシッカロールだったことがわかっている。

「MOMATコレクション 特集 藤田嗣治、全所蔵作品展示。」では同館の4階、3階の2フロア、約1500㎡を使い、所蔵するフジタの全作品25点と特別出品の1点、計26点を展示している。初となる戦争画14点の一挙展示、フジタが監督を務めた貴重な映画「現代日本 子供篇」もギャラリー内で上映、フジタが挿絵を手がけた本や、当時の雑誌など、フジタの仕事をさまざまな側面から紹介している。

同展ではフジタの戦争画14点を含む、出品絵画作品全26点を収録したカタログ(800円)を販売中。この価格でかなり充実した内容と言える。

DSC03732small

映画公開を記念して、カタログ(写真右)が、映画の半券提示で100円引きで購入できる。左は会場で無料配布しているリーフレット。

【展覧会概要】
展覧会名:MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。
会場:東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F〜2F)
会期:開催中〜12月13日(日)
開館時間:10:00〜17:00(金曜日は10:00〜20:00)※入館時間は閉館30分前まで
休室日:月曜日
観覧料: 一般 430円、大学生130円
詳細はオフィシャルサイトを参照

「FOUJITA」
11月14日角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

文 / チバヒデトシ