Interview

ポルカドットスティングレイ メジャー・デビュー作が伝える、よりリアルなバンドの実像とは?

ポルカドットスティングレイ メジャー・デビュー作が伝える、よりリアルなバンドの実像とは?

快進撃を続けるポルカドットスティングレイ、そのメジャー・デビュー作にして初めてのフルアルバムが届いた。『全知全能』と題されたこの新作は、これまでのレパートリーからピックアップした代表曲のリテイク・バージョン6曲と、書き下ろしの新曲8曲から成る全14曲入り(CDのみ14曲。配信は13曲)。バンドの幅広い音楽性と、進化を続けるライブの魅力を凝縮した快作だ。そこに込めたバンドの戦略と未来への展望を、バンドの中心・雫に聞いた。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 笹原清明

お客さんの反応はより間近で見たいし、100%感じ取りたいと思ってるんです

今回のアルバムがメジャー・デビュー作ということになるわけですが、メジャーというフィールドはポルカドットスティングレイにとってもやはり魅力的な場所なんですか。

ウチは、結成してすぐの段階からメジャー感のある音楽をやろうということはずっと心がけてたんで、メジャー・デビューということについてはひとつの通過点というくらいにしか、実は思ってないです。ただ、環境が整ってうれしいというのはありますけど。我々は、よりたくさんの人にウケる音楽をやりたい、たくさんの人が欲しいと思ってるものを届けたいということのために音楽をやってるので、それはやっぱりメジャーの土俵にいたほうがやりやすくなるわけじゃないですか。だからメジャーへ、という感じですね。

例えばゲーム業界で制作の拠点を東京から福岡に移した会社もあったりするように、メジャーとか東京とか、従来の中心地でもなくても発信できるという状況もあるように思うんですが、いかがですか。

実は、そろそろ福岡と東京を往復する状況がきつくなってきてまして(笑)、“私、どっちに住んでるんだろう?”という感じになってきたんで、東京に住もうかなと思ってたところだったんです。ゲーム業界では、ライブみたいな、作ってる当人たちが出向いて何かをする必要はないので、福岡のほうが作りやすいという部分はあるんですけど、でもお客さんがよりたくさんいるところに自分が出向いて顔を見せなきゃいけないとなると、福岡を拠点にするのは難しいなと思うんです。福岡のお客さんは我々の地元の人たちだからずっと大切にしていきたいという気持ちはありますが、活動拠点はやっぱり東京のほうがいろんなことがやりやすいですね。ただ、いまは忙し過ぎて、引っ越す時間が作れないという…(笑)。

(笑)、ある意味、本末転倒状態ですね。

そうなんですよ。準備はすごくしてるんですけどね。

「お客さんがよりたくさんいるところに自分が出向いて顔を見せなきゃいけない」というのはやはりライブが大事ということだと思いますが、例えば10月15日は代官山UNITで雫さんのバースデー記念ライブをやって、そこで「レム」のクリップがネットでの公開に先駆けて披露されましたよね。

そうですね。

そのときの客席の反応を舞台袖からしっかり観察していたとMCでも話していましたが、そういうコミュニケーションやそういう場は重要ですか。

我々は、お客さんに発信して、それに対して返ってきた反応を次の作品に反映させるまでを一連の流れと考えているので、お客さんの反応はより間近で見たいし、100%感じ取りたいと思ってるんです。だから、MVにしてもただ公開してtwitterで「公開しました」と告知するだけでもいいのかもしれないですけど、でもお客さんの反応を間近で見られる機会があるなら、そっちを選ぶでしょ、っていうことですよ。そっちのほうが、“こういうところで笑うんだ”とか“こういうところは真剣に見てるんだ”とか、そういうお客さんの表情をダイレクトに見られるから、次のMVに反映させる作業が段違いにやりやすいんです。

ポルカドットスティングレイの現在の好調ぶりはSNSに負うところが大きいとは思うんですが、でも数百人の反応ではあっても、現場の反応を直接見たり聞いたりすることのほうが信頼度は高いと感じているということですか。

そうですね。見られる機会があるなら、リアルな反応を見たいっていう。曲を作るときにより多くの人の意見を参考にしたいなという場合にはSNSでアンケートを取ったりもするんですけど、実際に顔の表情を見るっていう、それよりもリアルな反応は無いですから。SNSに書き込まれる反応よりも圧倒的にリアルというか、感じ取れるものがすごく大きいんですよ。ライブ会場での反応って、リアルタイムじゃないですか。自分のなかで反芻して、その上で言葉にして書き込むというんじゃなくて、見たときの反射で表れるものだから、すごく参考になります。

今回はやっとみんながやりたい音が純度100%に近い形で実現されてると思います

今回のアルバムには“全知全能バージョン”として、すでにライブでもおなじみの曲のリテイク・バージョンが6曲収められていますが、そこにもライブの現場で感じた感触が反映されたところはありますか。

例えば「テレキャスター・ストライプ」は、MVの再生回数がいちばん高くて、みんながよく知ってる曲ですけど、その最初の音源、「骨抜き E.P.」のときの「テレキャスター・ストライプ」は当時の流行りの音にすごく沿って作ってるんですよ。でも、いまや我々のことを好きでいてくれているお客さんはこの曲は絶対知ってるんですよね。とすると、もう一段階踏み込んで、ポルカらしい「テレキャスター・ストライプ」を聴かせたほうがいいかなということで、今回はリズムの修正は控えて生感のある仕上がりになるように方向を変えました。

つまり、ライブ感ということを重視したテイクになっている、と?

もうみんな知ってるだろうけど、もっともっとポルカらしく演奏するとこうだよっていうことですね。ただ、最後の「ポルカドット・スティングレイ」はウチが最初に作った曲なんで、1周回ってアコースティックにしたという、そういう面白さを見せてもいいかなという感じです(笑)。今回は振り幅の大きい14曲にしたいということで、「アコースティックもやるよね」という話になり、それでいまのメンバーでは初めてのアコースティック・バージョンを入れました。やってみたら、みんなアコースティックの勝手がわからなくて、“これでいいのかなあ…”みたいな感じになりましたけど。ハルシもちゃんとアコギを弾くのは初めてだし、ミツヤスもカホーンでレコーディングするのは初めてだったから。

さて、今回のアルバムを聴き通した最初の印象は、前作の『大正義』と比べてもずいぶん音が違うということだったんですが、その違いはどうして生まれたんでしょうか。

我々にとって全国流通盤はまだこれが3枚目なんですね。で、最初の「骨抜き E.P.」のときは「我々は音のことに干渉しません。流行りの音になってれば大丈夫です」というスタンスだったんですけど、『大正義』からいまのエンジニアさんになって、そこで我々もちょっと意見を出すことを覚えたんです。それに、我々のなかでも「こういう音がいいよね」とか「ここはこういう感じになったほうがいいよね」ということはあったから、そういうことも話してはいたんですけど、今回はそれをエンジニアさんにバッチバチに伝えました。だから、今回はやっとみんながやりたい音が純度100%に近い形で実現されてると思います。

その要望には方向性のようなもの、あるいはコンセプトのようなものはあったんでしょうか。それとも、曲ごと、あるいはパートごとの個別な話ですか。

個別な話ですね。曲によって、「この曲は、これに使う曲だから」とか、「この曲はお客さんにこういう気持ちになってほしい」「この曲はこういうお客さんに聴いてほしい」というふうに、各々やるべきことがまったく違うので。だから、「この曲では私はこういうふうに歌ったほうがいいし、ハルシがすべきことはこうだよね。ベースはもっと低いところにいたほういいな」というようなことを曲ごとにみんなで話し合って、それをエンジニアさんにお伝えする、という流れで曲ごとのゴールに向かっていく感じだったんで、結構しんどかったです(笑)。

いまのお話からすると、今回のアルバムの14曲それぞれの立ち位置というか役割というか、そういうものがそれぞれに明確にあったわけですね。

そうですね。Excelに1曲1曲並べていって、例えば「テレキャスター・ストライプ」はダンス、「人魚」はジャズ、というふうに、そのカテゴリーを横に書いていって、「じゃあ、ここが手薄だね」とか「このカテゴリーのものを入れたほうがいい」とか、曲の方向性がちゃんと大きく振り幅を持って散らばるように、そして誰が聴いても好きな曲が1曲は見つかるように、ということは考えました。それで、例えば「ショートショート」はJ-POP枠ということをちゃんと決めてから作っていったんです。だから、今回のアルバムはけっこう守備範囲が広いですよ。

ウチのお客さんはそんなに値段の高くないイヤフォンで聴く、という想定で音は作っています

確かに、そう思います。ただ、その上で全体を聴き通すとギターロック・アルバムという印象が強く残る仕上がりだと感じました。

元々ウチの音楽の主役は歌とギターというのはあったんですけど、今回は特により多くの人の共感を得られるというか、誰が聴いてもわかりやすい、まとまりのあるサウンドを目指したことの結果だと思います。どこで何を聴けばいいのかをわかりやすくした、という感じですね。

サウンドのどこかにフォーカスしたほうがわかりやすいとして、そのフォーカスすべきは歌とギターだな、ということですね。

お客さんが一番聴いてるのはやっぱり歌で、その次に聴いてるのはギターですよね。普通の人はベースが何してるかとかあまりわからないだろうし、イヤフォンの質により聴き分けるのが難しいというようなこともあるだろうし。楽器の中では一番わかりやすい存在はリード・ギターだと思うので、だからハルシにはギター・ヒーローになってもらおうということはずっと意識してました。

お客さんが自分たちの音楽をどういう形で聴くかということ、CDで聴くのか配信なのか、スピーカーで聴くのかイヤフォンなのか、みたいなことはどの程度意識していますか。

ウチのお客さんはそんなに値段の高くないイヤフォンで聴く、という想定で音は作っています。だから、ミックス・チェックはイヤフォンでします。ウチのお客さんは10代、20代の人が多いから、そういう人たちは全ての人が高価なヘッドフォンを使っているわけではないじゃないですか。全然ローが聴こえないっていうようなイヤフォンを使ってる人も多いと思うから、私自身も全然ローが聴こえないイヤフォンを敢えて使ってます。

そういう想定で作られている音源からポルカの音楽のイメージを“こんな感じだろう”と思っていたお客さんは、実際のライブを見るとびっくりするでしょうね。

びっくりしますね。ウチは、音源がそんなに大暴れせずにメジャー感を意識して作ってるタイプのバンドですから。でも、ライブでは場所にもよりますが、バチバチに音圧を出すこともあるし、お客さんがたくさん入るとローの帯域も吸われてしまうから、思い切りローを出してる場合もあるし。だから、「ポルカってこんなんやったんや」みたいな話はよく聞きます。

お客さんがそういうギャップを感じることは望むところであるわけですね?

いいギャップは見せていったほうがいいですよね。音源は整ってるけどライブはショボいっていうような悪いギャップだったら良くないですけど、ライブのほうが音源よりグングン来るっていうのはいい感じのギャップだと思うんです。メンバーのキャラクターが「実はおちゃらけた4人なんですよ」っていうのもいいギャップだと思うし。そういうギャップを知るとお客さんは喜ぶし、それを知ることができたということで愛着も深まりますよね。だから、そういうギャップはこれからも、もっとたくさん見せていきたいと思っています。

お客さんには、歌の主人公を私に重ね合わせてほしいと思ってるんです

すでに、ツアーのスケジュールが発表されています。会場の規模もツアーの本数も順調に伸びていますが、このツアーに向けていまの時点での勝算を聞かせてください。

ウチは、小っちゃいところでやりづらいバンドというか、大きくなればなるほどやりやすいというバンドだから、絶対これまでよりもうまくいくと思いますよ。

ところで、この間のUNITでのライブは「25歳になりました」という雫さんのあいさつが最初にありましたけど、そういうライブで♪ハッカ味の薄い薄い現実は私が薄めているだけでした/24年も掛かって気づいた♪(「フレミング」)という歌を聴いたりすると、どんなにその歌の主人公と雫さんは別人格だと思っていても、でもやっぱりドキュメント性を帯びるというか、主人公に重ね合わせることの気持ち良さが出てきますよね。

お客さんには、歌の主人公を私に重ね合わせてほしいと思ってるんです。私がどういう人だと思われようと、それは全然大丈夫なので。むしろ、私はお客さんに“この人はこういう人で、こういう一面もあるのかな”というふうに詮索をしてもらいたくて。そういうのが、みんな好きじゃないですか。この歌詞の“24年”というのも、私自身はこんなこと全然考えてないけど、私が24歳だから24年にしたんですよね(笑)。だから、共感する手段として私という歌ってる存在に投影することがやりやすくなるんだったら、そうしてほしいと思うんです。そういうことすらフックとしてやってるというところはあります。でも、私自身が伝えたいこと、自分の気持ちとして伝えたいことというのは一切無いので、むしろみんな欲しいものを私に伝えてほしいと思ってますね。

「ショートショート」に♪花は散るときのために咲く♪というフレーズがありますが、それについてこの歌の主人公は♪子供の私にはそんなの分からないよ♪と歌っています。いま自分たちのキャリアにどんどん花を咲かせていっているバンドのボーカリストとしては♪花は散るときのために咲く♪という考え方をどう思いますか。

これはお客さんに「どういう時に失恋ソングを聴きますか?」というアンケートを取って、その結果をまとめていって書いた歌詞なんです。お客さんから聞いたデータが一番正しいのと、希望を曲に反映させたいので。

♪花は散るときのために咲く♪というフレーズについて聞いたのはバンドの現在と展望ついての考えを聞きたかったからなんですが、バンドの成功を望む気持ちというのはそういうロマンチックな感情ではないですか。

私は、仕事としてやってるんで、そこに情緒的なことは入ってないです。仕事として成功させたいと思っているだけで、それは夢とかではないんですよ。夢って、不安定じゃないですか。“成功するといいな”みたいな、願望が入ってると思うんですけど、仕事で成功するというのは願望で終わっちゃダメだから。私のなかでは、成功すると決めたから、もう決定事項みたいな感じなんですよ。だから、そこには夢とかロマンはないですね。

つまり、バンドが成功することは、“花が咲く”というふうに喩えるような感覚のものではないということですね。

そうですね。それを確実にするためにこの段取りを踏んでいきましょうね、という感じなんです、いまは。小っちゃい頃に“ゲーム作る人になりたいな”と思ってたあの気持ちは“花が咲く”とかに近いロマンがあるかもしれないですけど、いまは仕事としてやってますから、そういう感覚はないです。

その成功への道のりは順調に進んでいるように見えますが、雫さんのなかの教訓として、そういう時期に気をつけるべきことは何かありますか。

それは、メンバー一同そうなんですけど、調子に乗らないようにしたいです。結果をきちんと見て、良かった側面もあれば、反省しなきゃいけないところ、次には改善できるところも必ずあるので、そこを冷静に受け止めて、総合的にいい結果が出たとしても「良かったから、いいじゃん」というふうにはならないように。いい結果は出たけど、こういう問題もあったから、次回はそこを直せばもっと良くなるという考え方が全員できるようにはしてます。

まずは、次のツアーをいいツアーになるよう期待しています。

頑張ります。本数が多いんで。

ありがとうございました。

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ライブ情報

ポルカドットスティングレイ 2018 TOUR 全知全能

2月4日(日)ポルフェス15 大阪・大阪BIG CAT
2月10日(土)ポルフェス16 神奈川・Yokohama Bay Hall
2月12日(月・祝)ポルフェス17 埼玉・熊谷HEAVEN’S ROCK Kumagaya
2月16日(金)ポルフェス18 石川・金沢EIGHT HALL
2月18日(日)ポルフェス19 宮城・仙台Rensa
2月25日(日)ポルフェス20 北海道・札幌PENNY LANE 24
3月2日(金)ポルフェス21 新潟・NIIGATA LOTS
3月10日(土)ポルフェス22 香川・高松MONSTER
3月16日(金)ポルフェス23 福岡・福岡DRUM LOGOS
3月18日(日)ポルフェス24 愛知・名古屋DIAMOND HALL
3月21日(水・祝)ポルフェス25 広島・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
3月24日(土)ポルフェス26 東京・AKASAKA BLITZ

ポルカドットスティングレイ

雫(Vo.& Gt.)、エジマハルシ(Gt.)、ウエムラユウキ(Ba.)、ミツヤスカズマ(Dr.)。
福岡を拠点に2015年活動開始。活動歴が他アーティストと比較しても短い中、それを感じさせないバンド・アンサンブル、既に教祖的存在感、早耳のリスナー、メディアの投稿から引火し、現在までバズりあげる。代表曲は、YouTubeの視聴回数700万回を超えた「テレキャスター・ストライプ」。特にYouTubeでは全公開作品総再生回数1,800万回を誇る。Vo.&Gt.の雫が生み出すリスナー心理を考えたソングライティングとセルフプロデュースに対する認識と表現の仕方から、「何かを企む超常ハイカラギターロックバンド」と称される。

オフィシャルサイトhttps://polkadotstingray-official.jimdo.com