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想像の上の上の上を行く! 舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇、公演レポート

想像の上の上の上を行く! 舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇、公演レポート

舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇が10月20日(金)よりZeppブルーシアター六本木にて上演された。昨年上演された京都紅蓮篇に続き、魔神(サタン)の落胤として生まれた主人公・奥村 燐役に北村 諒、その双子の弟・雪男役に宮崎秋人が続投。演出も前回同様、西田大輔が担当し、よりスペクタクルに進化した「青エク」ワールドを見せてくれた。これまでの舞台では見られなかった驚きの新演出も続々登場した本作の見どころを、同日行われたゲネプロをもとに紹介しよう。

取材・文 / 横川良明

新作だからこそ挑戦を。攻めの姿勢でつくり上げた、イルミナティとの攻防戦

舞台「青の祓魔師」の魅力と言えば、燐たち正十字騎士團と悪魔との壮絶なバトル。これを数々のエンターテイメントを手がけてきた西田らしい演出で舞台上に再現し、観客を驚かせてきた。今回もそんな西田マジックは健在。と言うより完全にパワーアップしている。

正十字騎士團の前に突如現れた啓明結社イルミナティ。イルミナティは、とある「計画」のために、祓魔塾生のひとり・神木出雲(大久保聡美)を連れ去ってしまう。出雲奪還のため、そしてイルミナティの計画を阻止するため、燐たちは立ち上がる。

正十字騎士團とイルミナティの激突が今回の見どころだが、その勢いを一切落とすことなく次々とシーンを展開させるために、西田が採用したのが、可動式の舞台装置。前作でも同様の試みは取り入れられていたが、今回のそれは前回の比ではない。まるでパズルゲームのように休むことなく舞台装置が動き続け、時には客席に攻めこむように前方にせり出してくる。その迫力は、思わず一瞬たじろぐほど。キャストたちが一瞬にして舞台上に姿を現したり、あるいは忽然と消え去ったり、縦横無尽に駆けめぐる舞台装置を活用することで、そんなトリックも自由自在。舞台上に躍動感を生むだけでなく、めまぐるしく変化し続ける舞台装置が、イルミナティの陰謀に翻弄される燐たちの混乱を表しているようにも見えた。

そして、杜山しえみ(松岡里英)の緑男(グリーンマン)を表現するためには、思わず声をあげてしまうような驚きの新演出が。劇場でのお楽しみにとっておきたいので詳細は明かさないが、斬新すぎるアイデアだけに後処理も大変。それをメタっぽくギャグにしながら片づけるキャストの演技に思わずニンマリさせられた。

意外な演出はこれだけではない。終盤、食屍鬼(ネクロファージャー)を憑依させた外道院ミハエル(原 勇弥)の演出にも、オリジナルなアイデアが。もしかしたらプロジェクションマッピングを使えば、もっとスタイリッシュにこれらの場面も表現できるのかもしれない。だけど、みんなが思いつくアイデアには走らない。たとえ賛否を呼んでも、常に新しいチャレンジをしたい。それこそが、クリエイターたるものの気概。囲み会見でも北村や宮崎が「ギリギリ」と語っていたが、これらの演出を安全かつスムーズに実現するには、恐らく相当の負担があるはずだ。まだ試行錯誤の部分もあるのかもしれない。それでも新作をつくるチャンスを与えられたならば、守りに入らず、攻め続けよう。そんな挑戦者のスピリッツを感じた。特にアンサンブルのメンバーは息つく間もない忙しさのはず。なかなか名前が出る機会はないが、彼らの努力と情熱なくして、エンターテイメントは成立しない。この場を借りて賛辞を送ると共に、どうか千秋楽まで事故なく怪我なく駆け抜けてほしい。いち観客として、そう切願する。

ますますハマり役に。二度目の燐&雪男役を、北村&宮崎が好演!

進化しているのはもちろん演出面だけではない。昨年からの続投組である北村&宮崎もそれぞれ燐と雪男というキャラクターを前回以上に手中におさめてきた感がある。そもそも俳優としての特性を見たとき、そのクールビューティーなビジュアルもあり、北村はどちらかと言われれば陰の属性を持った役を振られることが多い。一方、宮崎は親しみやすい雰囲気も相まって、陽の属性を持ったキャラクターがよく似合う。そういう意味で、燐と雪男の配役は、前回の発表時から個人的には逆の印象を持っていた。

それが、いざ舞台に上ってみるとどうだろう。ふたりが何と役にハマっていることか。北村はその細い身体をいつも以上に大きく使い、ちょっと粗暴なところもあるが友情に厚く正義感に燃える燐を体現。特に印象的なのが、前半の日常場面だ。勇気を出してしえみをダンスパーティーに誘おうとするも、呆気なく玉砕。報われない想いを発散するように、学園祭でクラスの出し物であるおにぎり屋に精を出す姿なんて、いかにも男子らしいいじらしさがある。一方で、終盤、追いつめられた出雲を救うために颯爽と登場した場面は、胸のすくカッコよさ。今回は、どちらかと言うと、出雲ら周辺のキャラクターにスポットが当たることが多い分、ここで主人公として面目躍如の存在感を見せつけた。

対する宮崎も声からしてしっかりつくりこんでいる。燐とは対照的に冷静沈着な優等生である雪男のキャラクターを抑制の効いた声色で表現。戦いの場面でも終始落ち着き払った態度で仲間を牽引する。一方で、メフィスト・フェレス(和泉宗兵)やルシフェル(横田龍儀)と対峙する場面では、雪男の心の脆さが露わに。特にルシフェルと対峙する場面は、客席で繰り広げられる。間近で宮崎の演技を体感できる幸運に恵まれた観客は、ぜひ注視してほしい。緊張で身体がぐっと強張り、毛穴から汗がにじみ出る。雪男の複雑な胸中を細胞から演じる宮崎の芝居を肌で感じ取れるはずだ。

出雲が! 竜士が! 廉造が! 祓魔塾の仲間たちが主役級の大活躍!

また、今回は奥村兄弟以上に、出雲や勝呂竜士(山本一慶)、志摩廉造(才川コージ)ら祓魔塾生の心の動きに焦点が当てられている。特に鍵を握るのが、出雲と母・玉雲(田中良子)の親子のドラマだ。人を信じることを恐れ、一度は燐ら祓魔塾生の助けを断り、孤独の道を選んだ出雲が、最後の最後に母・玉雲の仇を討つべく、外道院ミハエルと対決する場面。出雲が仲間に放った本音の言葉は、ツンデレな出雲の性格もあって、瞼が熱くなる。

そして、まさかの裏切りを見せた廉造も見逃せない。目を奪われるのが、演じる才川の突出した身体能力。戦闘場面では随所にアクロバットを挟んで、華を添える。それでいながら、仲間を裏切った後もまるで心を痛める素振りを見せない。そんな腹の掴めない志摩の性格を、才川が深刻さを取り払った演技で見せる。才川が飄々と演じれば演じるほど、苦悩する山本らの演技とのコントラストが生まれ、対立軸も明確に。バトルシーンの多い本作で、人間ドラマとしての軸を、今回は祓魔塾生の仲間たちが担った。

「青の祓魔師」はダークファンタジーらしい世界観が面白さの秘密だが、それだけでなく聖十字学園を舞台とした学園モノとしての魅力も持っている。本作のエンディングは、そんな「青の祓魔師」らしい爽やかなシーンに。ここから燐たちの戦いはさらに苛酷さを増していくが、またこのキャストでそれを演じられる機会が来ることを待ちながら、今はまず本作の成功を願いたい。

ギリギリの挑戦の末に生まれる、想像の上の上の上を行く舞台

囲み会見では、奥村 燐役の北村 諒、奥村雪男役の宮崎秋人、神木出雲役の大久保聡美、ルシフェル役の横田龍儀、外道院ミハエル役の原 勇弥が登壇。

北村が「今までにない演出だったりギミックだったり、前人未到のいろんなものがつめこまれた舞台になっています」と紹介。その見どころの多さに「目のやり場に困るくらいの…」とコメントすると、すかさず隣にいた宮崎が「言い方合ってる?」とダメ出し。すると北村が困り笑いを浮かべながら「“目が足りない”みたいなやつです!」と訂正。舞台を下りても、まるで燐&雪男のようなやりとりを見せた。

そんな宮崎は「今作はやべえ作品になるんじゃないかな、と。西田さんのいろんなアイデアを、スタッフさんやアンサンブルさんの力で実現していて、それがいよいよ始まるのかと思うと、少し緊張しています」と初日の心境を明かした。

取材陣からの「自分以外で、この人の芝居いいなと思う人は?」という質問に対し、宮崎は「やっぱり外道院ですね。出てきた瞬間からインパクトがすさまじい」と絶賛。北村は「出雲と玉雲ですね」と神木母娘を指名。「出雲と玉雲の親子の話が個人的に好きで、ジンと来ます」と感想を口にした。

その出雲を演じる大久保は、北村と宮崎の名前を挙げ、「いるだけで安心感・安定感があって、ついていきますって気持ちになります」とニッコリ。宮崎が照れ隠しように「そうやって世の中を渡ってきたんだな」と茶々を入れ、座組みの仲の良さをにじませた。

さらに横田が「僕は志摩廉造がすごいなと思います。とにかく動き回っていて、アクションがとてもカッコいい」と同じ俳優として尊敬の言葉を述べると、原は「僕は上官ですね。隣にいて支えるというか、女房的な立ち位置がいいなと思います」とルシフェルの寵愛を渇望する外道院ミハエルらしい嫉妬まじりのコメントで笑わせた。

最後に宮崎が「ギリギリまで悩んで、ギリギリまで挑戦して仕上げている作品。絶対にお客様にものすごいインパクトを与えられると思います」と抱負を語ると、北村も「お客様の想像の上の上の上をいっているんじゃないかなと思う。ぜひ楽しみにして劇場に足を運んでいただきたいです」と熱をこめた。

舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇は10月20日(金)から29日(金)までZepp ブルーシアター 六本木にて上演ののち、11月2日(木)より5日(日)まで新神戸オリエンタル劇場にて初の神戸公演が行われた。本公演のBlu-ray&DVDは、2018年3月28日に発売が決定。加速する「青エク」ワールドをぜひ体感してほしい。

舞台「青の祓魔師-島根イルミナティ篇-」

東京公演:2017年10月20日(金)~10月29日(日) Zeppブルーシアター六本木
神戸公演:2017年11月2日(木)~11月5日(日) 新神戸オリエンタル劇場
原作・脚本協力:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
脚本・演出:西田大輔
出演:奥村燐:北村諒 奥村雪男:宮崎秋人/
勝呂竜士:山本一慶 志摩廉造:才川コージ 三輪子猫丸:土井裕斗
杜山しえみ:松岡里英 宝ねむ:樋口裕太 朴朔子:小槙まこ/
神木出雲:大久保聡美/
ルシフェル:横田龍儀 親衛隊上官:稲村梓 外道院ミハエル:原勇弥/
メフィスト・フェレス:和泉宗兵 神木玉雲:田中良子 ほか

オフィシャルサイト

Blu-ray&DVD 舞台「青の祓魔師-島根イルミナティ篇-」

発売日:2018年3月28日 Blu-ray:¥8,800+税
アニメイト限定版Blu-ray:¥9,300+税
DVD:¥7,800+税
アニメイト限定版DVD:¥8,300+税
発売元: アニプレックス
販売元: ソニー・ミュージックマーケティング

青の祓魔師 リマスター版 1

著者:加藤和恵
出版社:集英社