LIVE SHUTTLE  vol. 210

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Cornelius およそ9年ぶりの国内単独ライブ。ニュー・アルバムのステージでの再現と映像や演出に期待が膨らんだツアー

Cornelius およそ9年ぶりの国内単独ライブ。ニュー・アルバムのステージでの再現と映像や演出に期待が膨らんだツアー

Mellow Waves Tour 2017
10月26日 新木場 STUDIO COAST

6月にニューアルバム『Mellow Waves』をリリースしたCorneliusが、全国ツアー「Mellow Waves Tour 2017」を開催した。国内でのCorneliusの単独ライブは2008年「ULTIMATE SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW」以来、およそ9年ぶり。11 年ぶりのニューアルバムを待ちわびていたファンにとっては、どうしても観ておきたいライブである上に、『Mellow Waves』の曲をライブでいかに聴かせてくれるのか、どんな映像や演出で見せてくれるのか、期待は膨らむ一方だったに違いない。

ツアーに先駆けて、7月には恵比寿・LIQUIDROOMでリリース・パーティーを行い、今夏は「FUJI ROCK FESTIVAL ’17」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」などの野外フェスにも出演。「FUJI ROCK」では、2日目のトリである鬼才エイフェックス・ツインの前に登場し、ベスト・アクトの呼び声も高かった。また、自身のツアー中にベックの武道館公演にゲスト出演することが急遽発表され、20年ぶりに武道館のステージにも立った。ベックは昨年のCorneliusのアメリカ・ツアーでテルミンの演奏時にステージに登場するなどかねてから交流があり、この組み合わせに色めき立った人も多かったはずだ。

その直後の10月25日/26日、新木場・STUDIO COASTで行われたのが「Mellow Waves Tour 2017」東京公演。開演前から多くの観客が埋め尽くす会場に流れる音楽は、メロウというキーワードを自然に思い起こさせる曲を小山田圭吾が自ら選曲。リリース・パーティーの時は、瀧見憲司のツボを得た選曲によるDJがステージへの期待を盛り上げてくれたが、スクリーンには丸い輪が写し出され、その周りの波形がゆらめくというどこかミステリアスな時間が流れる。

ステージからドラムのキックが聞こえ、リズムを刻み出すと、波形が音とシンクロし、ステージに立つ4人のシルエットがスクリーンに一瞬表れる。そこに「Hello, Everyone」の文字。続いて、「Cornelius Mellow Waves」。大きな歓声に包まれ、THE CORNELIUS GROUPが登場し、新作に先駆けて7インチでリリースされた「いつか/どこか」からスタート。中村勇吾による映像はMVとは異なるヴァージョンだが、演奏と映像のシンクロはCorneliusのライブの特筆すべきポイント。『FANTASMA』(1997年)以降、曲ごとに丹念に作り込まれた映像をステージに投射し、生演奏と同期させる演出は今回も継続。また、アルバムの完成された音をライブで、バンド編成で、いかに演奏されるか、特に新作『Mellow Waves』の複雑な構成の曲がどう再現されるのかはおおいに注目された。しかし、このバンドはやってのけるのですね。

今回のTHE CORNELIUS GROUPのメンバーは、小山田圭吾(Vocal, E.Guitar, A.Guitar, Theremin)、堀江博久(Keyboard, E.Guitar, Chorus)、あらきゆうこ(Drums, Chorus)、大野由美子(Keyboard,, E.Bass, Chorus)の4人。バッファロー・ドーターの大野由美子は昨年のアメリカ・ツアー「CORNELIUS PERFORMS FANTASMA」からの参加となるが、小山田圭吾とはsalyu x salyuのツアーや、smallBIGs(小山田圭吾と大野由美子のユニット)、アート・リンゼイやチボ・マットのステージに共に参加するなど以前から親交は厚い。堀江博久、あらきゆうこの二人は、およそ20年近くCorneliusのライブを支えてきたメンバーだ。

新作収録の「Helix/Spiral」ではボコーダーを駆使し、エレクトロファンクの要素を入れつつ、ファンタジックな世界へ誘う。続く「Drop」、「Point of View Point」は、4枚目のアルバム『POINT』(2001年)からのナンバーだが、大野由美子の参加によって、バンドに新たなグルーヴが注入されたことを早くも実感した。

『FANTASMA』からの「Count 5 or 6」に興奮したのは、20年来のファンだけではなかったと思う。パンク/ロックの血が騒ぐこの曲で、堀江博久はピート・タウンゼントばりにジャンプをキメ、小山田圭吾もアグレッシブなギター・ソロで攻めまくる…という光景に、初めて生のCorneliusを観る観客などは驚いたかもしれない。メンバーの背後のLEDライトが曲に合わせて「1」「2」「3」「4」「5」「6」と切り替わる小気味良い演出で、フロアをおおいに盛り上げ、HR/HMに端を発したギター・キッズぶりが炸裂する「I Hate Hate」へと繋げるあたりは、彼の真骨頂でもある。最先端のクールなイメージを持たれがちな人ではあるが、フィジカルでロックな吸引力が強いCorneliusを2017年も見せてくれたのは嬉しかった。

精密な映像に目を奪われてしまうインスト・ナンバー「Wataridori」(『SENSUOUS』2006年)ではギターのテイストががらりと変わり、現代音楽やミニマル・ミュージックをも連想させるナンバー。複雑なリズムを正確に刻むあらきゆうこも素晴らしく、彼女の集中力と、積み重ねたであろう鍛錬に気が遠くなったほど。

このツアーで初披露された「The Spell of a Vanishing Loveliness」は、アルバムではLushのミキ・ベレーニ(小山田氏のはとこ!)とのデュエットが話題となったが、ライブでは大野由美子が彼女のパートを担当。その歌声はさすが、DOOPEES! キャロライン・ノヴァック! 曲の持つメランコリックなメロディーが、メロウというテーマをここで再び思い出させる。次の「Tone Twilight Zone」(『POINT』)へと続く流れで、Corneliusは以前からメロウと呼んでいい柔らかくなめらかな質感の音を好んで表現してきたとあらためて確認した。

ツアーでぜひ聴きたかったのが新作に収録されていた「未来の人へ」。坂本慎太郎が作詞を手がけ、この曲を初めて試聴会で聴いた時は何とも切ない気持ちになり、Corneliusでこんな風に心が揺れるとは…と、時の流れを感じたが、猫を主人公にしたストーリー性のある映像と共にグッときた人も多かったのではないだろうか? そこからアルバムの曲順と同じく、インストゥルメンタルの「Surfing on Mind Wave pt 2」へと続く時間がヤバかった。Corneliusを長年手がけている辻川幸一郎のトリップ感溢れる波の映像と音で、時間が溶けて行くような幻惑の世界を体感。観客を夢見心地にさせたまま「夢の中で」へ入ってゆく中盤〜後半が今回のツアーの最もファンタジックな時間帯だったような気がする。

『Sensuous』からの「Beep It」、「Fit Song」、「Gum」は、THE CORNELIUS GROUPの演奏力を存分に堪能できる3曲。完成度という点では唯一無比のCorneliusのアルバムの音を、バンド・サウンドで緻密に構築してみせるその強い意志と圧倒的な熱量たるや! 映像とのシンクロも、もはや当たり前のように見せてしまっているが、彼らの集中力と緊張感は尋常ではないはずで、にも関わらず、そのテンションが観る側を熱くさせていく。「Beep It」の堀江博久のクレイジーなシンセ、「Fit Song」の複雑なリズムとタイミング、「Gum」のハードかつリズミックなギターなど、バンドの存在感が以前に増してスケールアップ。ギタリストとしてこの10年で経験値を上げ、磨きがかかった小山田圭吾のプレイに随所でハッとさせられ、類を見ない音の刺激に会場の興奮度も急速に上昇。

というタイミングで、イントロが流れたと同時に大歓声が沸き上がったのは、「Star Fruits Surf Rider」。ミラーボールが回り、ドリーミィかつロマンチックな世界に誘う1997年、Corneliusの代表曲だ。間奏の堀江博久のトランペットには意表を突かれたが、20年前の曲でも鮮度を失わないことをここで再確認。本編の最後は、アルバムに先駆けて7インチでリリースされ、静かな衝撃を与えた「あなたがいるなら」だった。耳元で語りかけるような日本語のボーカル、エレピの音色や珍しくブルージーなギター、独特のテンポ。まさにCorneliusの新境地と呼べる音と歌だ。坂本慎太郎が彼にラブソングを書いたのは、「今までやっていないこと」という理由だけでなく、彼ならこんな切なく美しい歌を歌える、と見抜いてのことだろう…と、ライブに浸りながら感じた。「Thank You,Very Much」という文字が浮かび上がり、本編はロマンチックな余韻を残して幕を閉じた。

本編はMCは一切なかったが、アンコールで再び登場した小山田圭吾が、ここでようやく「どうもありがとう」と挨拶し、メンバー紹介。心なしかメンバーの表情にもホッとした安堵感が漂う。アコースティック・ギターに持ち替えて披露されたのは「Breezin’」(『Sensuous』)と、「Chapter 8」(『FANTASMA』)。ドリーミィでポップな「Chapter 8」は大野由美子のコーラスが入り、今まで以上にスウィートな魅力が倍増。最後に映像なしで演奏されたのが「E」。これがエモかった! 2000年のライブビデオ『EUS』と、2010年に砂原良徳のリマスタリングで再発売された『FANTASMA』の初回限定盤DVDのみに収録されているライブ音源のみのレア曲だ。新旧取り混ぜた構成になったこのツアーのラストに、ノイジーなギターが爆音で鳴り響く曲で締めるのが今なおライオット性を秘めたCorneliusらしい。ステージの白い壁にメンバーのシルエットだけが映る演出もヴェルヴェット・アンダーグラウンドのよう。凝りに凝った映像でさんざん愉しませておいて、最後の最後にすっぴんで豪速球を放り込む! そんな大胆な胸がすくようなエンディングだった。

11 年ぶりのアルバム、9年ぶりの国内ツアーというプレッシャーがかかる中、予想を遙かに超える新しい音を見事なステージングで見せてくれたCorneliusとTHE CORNELIUS GROUP。ライブバンドとして脂がのっているだけに、願わくば、次はあまり時間を置かずに魅せていただきたいと切に願う。

文 / 佐野郷子

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Cornelius

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後 1993年、小山田圭吾のソロユニットCorneliusとして活動開始。現在まで6枚のオリジナルアルバムをリリース。1998年からは世界20カ国以上でアルバムが発売され、アメリカ・ヨーロッパ各地などでツアーを重ねる。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX、プロデュースなどで幅広く活動中。

オフィシャルサイトhttp://www.cornelius-sound.com/

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