Interview

太賀が心掛ける「作品の中で説得力をもって演じたい」ということが発揮された『南瓜とマヨネーズ』への想いとは。

太賀が心掛ける「作品の中で説得力をもって演じたい」ということが発揮された『南瓜とマヨネーズ』への想いとは。

夢を追う無職でミュージシャンの恋人と自由奔放な昔の恋人とのはざまで揺れ動く女性の姿を描き、1998年の発表以来、現在まで多くのファンに愛され続けてきた魚喃キリコの名作コミック『南瓜とマヨネーズ』が実写化された。 メガフォンを撮るのは『パビリオン山椒魚』『ローリング』の冨永昌敬。ヒロインのツチダ役にはドラマ『銀と金』や映画『愚行録』で注目を集める臼田あさ美。そして、恋人のせいいち役を抑えた中にも呼吸や体温を感じさせるリアルな佇まいで演じているのが、実力派俳優として活躍もめざましい太賀。
ドラマ『ゆとりですがなにか』から映画『淵に立つ』まで、多彩な作品でガラリと異なる演技を披露し、観る者に鮮烈なインパクトを与えている彼に、本作への思い、「演じること」の魅力について話をきいた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 荻原大志

臼田さんがツチダとしてそこに存在してくれていたので僕もスッとせいいちになれた。

まず、今回の話があったときの率直な思いをきかせて下さい。

まず話をいただいたとき、ちょっとした縁を感じたんです。ちょうどその2週間前ぐらいに臼田さんと仕事とは関係ない場所で会う機会があって。あと冨永監督とプロデューサーの甲斐(真樹)さんも、それぞれ手掛けられる別の作品でオーディションを受けに行ってて。それは叶わなかったんですけど、いつか一緒に仕事ができたらいいなと思っていたところだったので、ぜひという気持ちで臨みました。今回はクランクインまでにわりと時間があって、その間に臼田さんとプライベートな交流を持つことができたのもよかったですね。僕も彼女も音楽が好きなのでライブハウスで会ったり…。

©魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会

まさにツチダとせいいち的な! やっぱり今回演じる上で、臼田さんとの関係性というのは大きかったです?

そうですね。毎回、現場に入る前に台本を読んで自分なりのせいいち像というのは考えては行くんですけど、いざ現場に立ってみて、臼田さんがツチダとしてそこに存在してくれていたので僕もスッとせいいちになれた。臼田さんの存在によってせいいちにしてもらった。それは臼田さんとの信頼関係があったからこそですね。

ちなみに臼田さんとはどんな話をされたんですか?

なんかこう…。いろんな話しをしていたんですけど、なにかを話したというよりは、同じ時間を共有していたという方がしっくり来るかな。芝居に関しても、最初の方は段取りをしっかりやったり、テイクを重ねたり試行錯誤してたんですけど、ツチダとせいいちの場合は芝居をやりすぎるのも違うかもしれないねって。そういう思いを共有できたのは大きかったですね。あと撮影の待ち時間なんかも、2人で縁側みたいなところでボーッとしたり、言葉を交わさずとも共有できる時間が密にあって、そこに違和感がなかった。本当に芝居をしたというよりは、一緒に同じ時間をすごしたという感じでしたね。

確かに今回は皆さん本当に作品の世界を生きているような…。すごく自然で繊細な芝居をされてますよね。

やっぱり映画全体のトーンもありますし、ああいう形が僕の中でのせいいち像だったのかなと。今回せいいちを演じるときに普段の自分のままふらっと行ってすぐに演じられるようには最初思えなくて、自分とせいいちの間をなにか埋めていかなきゃいけないのかなあと思ったんです。で、彼はミュージシャンなので一生懸命ギターを練習してみたり、歌を下手なりに作ってみたり…という作業を通して、自然にできていった感じですね。

役を演じるためには、やっぱり素の自分と役の間を埋めていく作業は必要?

そうですね。僕とせいいちの同じところと違うところを探っていって…。僕は俳優でせいいちはミュージシャンで、表現者としては同じなので彼が抱えてる葛藤とか悩みみたいなものはなんとなく僕も共感できるし、それは演じる上での糸口になったと思います。違うところはツチダから見た彼のつかみどころのない飄々としたところとか…。僕はそういうタイプではないので、うまくできたらいいなっていう挑戦でした。でも、それも臼田さんしかり、冨永さんしかり、いろんな人の影響を受けていく中で自然にできていって…。自分の中だけで考えていたせいいち像がどんどん膨らんでゆくのがおもしろかったですね。

冨永監督との作業はどんな感じでした? 

楽しかったですね。冨永さんはアイデアがすごく豊富で、現場でも新しい試みをいっぱい提示してくれる方で、そのひとつひとつがせいいちのディテールを作ってくれて…。脚本を読んで自分が考えていたことを超えて、思いもよらない自分が引き出されていくのが嬉しかったですね。いろんな人が冨永さんとやりたいっていうのがわかるなって。現場のスタッフも今回は冨永さんが学生時代から一緒にやられている方達が集まって下さったみたいで。あうんの信頼関係の上で、みんなが同じ方向に向かってのびのびとやれる環境がすごくよかったですね。

どの役にも共通するのは、その作品の中で違和感なく説得力をもって演じたい。

この映画に出てくる人たちは、せいいちを筆頭に全員、人生を器用に生きることができず立ち止まってしまっています。太賀さん自身はそういう人たちに共感する部分はありましたか?

ありましたね。僕自身、原作なり台本なりを読んで共感できた部分は、彼らが自分の感情のわからなさに立ち止まってしまっているところで。それって実人生の中でもわりとあると思うんです。自分の感情って思ったより自分自身わかってないんじゃないかなと思っていて、僕自身もこうした方がいいってわかってるのに、なんでこうしちゃったんだろう?ってことは繰り返してるし…。ツチダの「私は自分がなにをしているのかわからない」ってセリフも僕、すごい共感できるところで。大人になっても、やらなきゃいけないことはわかってるけどできないとか、そういう矛盾は性別とか年齢とか関係なく誰しも抱えている、すごく普遍的なものだと僕は思いますね。

なるほど。私も昔コミックを読んだ時はモラトリアムな若者たちの物語だと思ってたんですけど、大人になった今も切実に心を揺さぶられてしまいました(笑)。

そうなんですよ、決して特別なことじゃない、失敗って人それぞれあると思うし。でも、それを失敗とは描いてないところがこの映画の素晴らしさでもあるなって。

しかし、最近では『ゆとりですがなにか』のゆとりモンスターのキャラの濃い演技が強烈だっただけに、今回はとても同じ人には思えない!と唸らされました。芝居というものは作品や役によって変わってくるとは思うのですが、常に心掛けてらっしゃることはありますか?

どうでしょう…。どの役にも共通するのは、その作品の中で違和感なく説得力をもって演じたい。今回だったらバンドマンなのに見ている人が、あ、この人本当はギターあんまりうまくないな…と感じてしまったら、作品に集中できなくなるし、すべてが崩れちゃう。それはイヤなんで、今回だったらギターを練習したり、最低限のことなんですけどできることはやろうと。

©魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会

確かに、特に最後のシーンとかせいちゃんの歌が下手だったら納得できない感が残りそうなんですが、見ている方もツチダと同じように報われた!って思える。あの歌の説得力は素晴らしかったです。

そう言ってもらえたら僕も救われます(笑)。あの歌は作詞作曲がやくしまるえつこさんで、演奏も手取り足取り教えていただいたんです。撮影の当日も来てくださって“大丈夫だから”って言われて…。のびのびとやれたのかなって。

いや、バンドマン独特の雰囲気とか佇まいもすごく自然でハマってました。

今回バンドのメンバーもすごく熱心で。劇中で彼らが演奏してる曲を僕が聴くシーンがあるけど、あれも実際には画面で音は流れないのに、バンドマンの空気を出すために浅香(航大)くんも若葉(竜也)くんも大友(律)くんも、みんな特に楽器がうまいわけでもないのに課題曲を完璧に練習してきて。映画の冒頭の時点では、せいいちはもうバンドを脱退してるんだけど、僕も自分達がどういう音楽をやってきたかというのを感覚的に共有するためにクランクイン前に彼らと一緒に時間を過ごして。誰が言い出したわけでもなく、発表する場もないのに自然に、僕がへたくそなりに曲を作ってきて、みんなで広げていくみたいな作業をしたり…。あのバンドマンたちの空気を作ってくれたのは、間違いなくあの三人で、僕も彼らによって奮い立たされましたね。

そういう画面に映ってない時間の積み重ねがこの映画のリアリティに繋がってるんですね。今後、こういう作品をやってみたいとかはあります?

僕、橋口亮二監督の映画が大好きなので、いつかぜひ出てみたいですね。でも作品とか役って縁だと思うし、すがってどうにかなるものでもない。俳優って目に止まらないとどうにもならない仕事でもあると思うので、そのためにもいっこいっこ、大事にやるしかないですね。

太賀

1993年、東京都生まれ。
存在感のある高い演技力が老若男女のファンの心をつかみ、多くのドラマや映画、舞台に出演。映画『バッテリー』(07)で注目を集め、「天地人」(09/NHK)、 「江~姫たちの戦国~」(11/NHK)、『桐島、部活やめるってよ』(12) 「八重の桜」(13/NHK)などに出演し人気を博す。その他にも「あまちゃん 」(13/NHK)、『男子高校生の日常』(13)、『人狼ゲーム』 (13)、『私の男』(14)、『ほとりの朔子』(14)など話題作に立て続けに出演し、第6回TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。ドラマ「ゆとりですがなにか」(16/NTV) ほか映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)、『淵に立つ』(16)、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(16)に出演。公開待機作に映画『ポンチョに夜明けの風はらませて』(10月28日公開)がある。

太賀さん画像ギャラリー

映画『南瓜とマヨネーズ』

2017年11月11日(土)全国ロードショー

監督・脚本:冨永昌敬
原作:魚喃キリコ『南瓜とマヨネーズ』(祥伝社フィールコミックス)

キャスト:臼田あさ美 太賀 浅香航大 若葉竜也 大友律 清水くるみ 岡田サリオ
光石研 / オダギリジョー

製作:『南瓜とマヨネーズ』製作委員会
制作プロダクション:スタイルジャム
配給:S・D・P
オフィシャルサイトkabomayo.com
©魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会

ストーリー:
ツチダ(臼田あさ美)は同棲中の恋人・せいいち(太賀)のミュージシャンになる夢を叶えるために、内緒でキャバクラで働き生活を支えていた。一方、無職で曲が書けずスランプに陥ったせいいちは毎日仕事もせずにダラダラと過ごす日々。
しかし、ツチダがキャバクラの客・安原(光石研)と愛人関係になり、生活費を稼いでいることを知ったせいいちは心を入れ替え働き始める。そんな矢先、ツチダにとって今でも忘れられない昔の恋人・ハギオ(オダギリジョ-)と偶然、再会を果たす。
過去の思い出にしがみつくようにハギオにのめり込んでいくツチダだったが…。

原作本

南瓜とマヨネーズ
魚喃キリコ(著)
フィールコミックス

©魚喃キリコ/祥伝社フィールコミックス


ヒロイン・ツチダ役 臼田あさ美さんインタビュー記事はこちら
映画『南瓜とマヨネーズ』に漂う、臼田あさ美が「身近にいそうな女性像」をごく自然に演じ、醸し出す独特の空気感とは。

映画『南瓜とマヨネーズ』に漂う、臼田あさ美が「身近にいそうな女性像」をごく自然に演じ、醸し出す独特の空気感とは。

2017.11.10