Interview

山田涼介「絶対に妥協したくなかった」『鋼の錬金術師』にかけた想い、「居場所はここしかない」と語る強い決意

山田涼介「絶対に妥協したくなかった」『鋼の錬金術師』にかけた想い、「居場所はここしかない」と語る強い決意

日本だけでなく、世界中で愛されるコミック『鋼の錬金術師』がついに実写化される。曽利文彦監督のメガホンにより、最新のVFXを駆使して映画化された本作で主演を務めるのは、『暗殺教室』(15)で第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞に輝いたHey! Say! JUMPの山田涼介。彼自身が原作ファンだからこそ抱えたプレッシャーから、〈エド〉の魅力と共通点、「あまり覚えていないくらいキツかった(笑)」という撮影現場やアクションシーン、「この作品が持つ力に引き寄せられた」という“涙”の理由まで、たっぷりと聞いてきた。さらに「僕の居場所はここにしかない」と言い切り、「自由と引き換えに人には見えない景色を見させてもらっている」と語る彼の強い決意を話してもらった。

取材・文 / 吉田可奈

完成作は「苦労がすべて報われる素晴らしい仕上がり」。朴璐美からの言葉、自然と涙が出た理由とは?

国民的コミックが原作である『鋼の錬金術師』の主人公〈エド〉を演じることに、かなりのプレッシャーがあったと思います。公開を控えた今の心境を教えてください。

山田 プレッシャーは今も感じています。演じているときは常にありましたし、忘れてはいけないものだと思っていました。でも、だからこそ、良い緊張感の中で撮影ができたと思います。

曽利文彦監督とは、どのような話をしながら撮影を進めていったのでしょうか?

山田 監督とは、最初にお互いの熱い“ハガレン愛”を話し合ったんです。それがあったからか、現場ではあまり“指示”というものはなく、わりと自由にやらせていただきました。

お互いに信頼関係ができていたんでしょうね。

山田 そうかもしれないです。

鋼の錬金術師 山田涼介

山田さんが演じる〈エド〉の魅力は、どんなところにあると思いますか?

山田 〈エド〉は16才にも関わらず、壮絶な経験をしているんです。そして強い意志を持っているから、ブレないんですよ。そういう意味では、“男が憧れる男”だと思います。それに、〈エド〉は“女性にとっての初恋の相手”だとよく聞くんです。それが非常にプレッシャーでしたね(笑)。

その〈エド〉は、どんな強敵が現れても、くじけず前に進む力を持っていますよね。その源はどこにあると思いますか?

山田 弟の身体を取り戻したいという一心ですよね。その強い意志があるから、たとえ敵がティラノサウルスでも(笑)、立ち向かって行くと思うんです。この映画はCGもすごいですが、何よりもそういったドラマ部分のストーリーがきちんと描かれているから、感動させられるんだと思います。

鋼の錬金術師 山田涼介

身体を失くした弟〈アル〉と衝突する場面などもしっかり描かれていて、グッときました。

山田 〈アル〉はCGなので、撮影中は相手がいないまま演じているんです。僕も完成した映画を観たときに初めて、「すごく良いシーンになってる」と思いました。あと、撮影時は真夏で、あの衣装に身を包んだまま、40度を超える中で全員が汗だくになりながら演じるというかなり過酷な状況だったんです。なので、あまり詳しいことを覚えていないくらいキツかったですね(笑)。でも完成作は、その苦労がすべて報われるほどの素晴らしい仕上がりになっていました。

原作やアニメ版はコミカルなシーンがとても多いですよね。この映画でも、その一面がしっかり感じられました。

山田 そこは絶対に必要な部分だと思ったんです。なので、走り方ひとつにしても考えて演じました。とはいえ、実写版となると原作やアニメ版のまま演じるとわざとらしくなってしまうので、バランスを考えながら演じていました。

やりすぎても、やらなすぎても、原作ファンの気持ちを考えると難しいところですよね。

山田 はい。〈エド〉を演じると決まったときから、その難しさは覚悟していました。アニメ版で〈エド〉の声を担当した朴璐美さんが、「〈エド〉を演じるこの苦労は、日本のどこを探しても、私と山田くんにしかわからない」とおっしゃってくださったんです。すごく嬉しかったですが、本当にその言葉通り、どのシーンも難しかったですね。〈エド〉は芯がブレないながらも、心を素直に揺さぶられることに対して、過敏に反応するんです。

鋼の錬金術師 山田涼介

たしかに、複雑な心境のシーンと、強く立ち向かうときの表情のギャップは強く感じました。中でも特に、“泣きの演技”がすごく印象的でした。

山田 ありがとうございます。今回の涙に関しては、演技をしている最中は相手がいないものに対して泣いていたので、自分でもどうやって泣いていたのかわからないんです(苦笑)。でも自然と涙が出てきたのは、この作品が持つ力に引き寄せられて、気持ちが素直になったからだと思うんですよね。

泣くように気持ちを持っていくような作業はなかったんですね。

山田 なかったですね。この作品が持つパワーに、涙腺を刺激されたんだと思います。

「〈エド〉は誰にもやらせたくなかった」――スタントなしで挑んだアクションシーンとイタリアロケを述懐

鋼の錬金術師 山田涼介

劇中の衣装も素晴らしかったです。〈エド〉になりきれたのは、衣装の力も大きいのでしょうか。

山田 そうですね。衣装を着る直前まで、「〈エド〉になれるのかな」とすごく不安だったんです。でも衣装を着ると、〈エド〉の気持ちが作れるんですよ。衣装合わせは、「こんなに何回もするのかよ!?」って思うくらい(笑)、回数を重ねました。その甲斐あって、ステッチの色まで凝っているので、細部までクオリティが高いんです。僕の意見が反映された点としては、ズボンの可動域が狭すぎてアクションが出来ないので、アクション用のズボンを途中で作ってもらったんです。〈アル〉との喧嘩のシーンはそれで挑みました。

かなり激しいアクションシーンがたくさんありましたが、全くスタントマンを使っていないとお聞きしました。

山田 そうなんです。〈エド〉は誰にもやらせたくなかったんです。なので、命綱を付けずに屋根から飛び降りることも躊躇せずやりました。

怖くありませんでしたか?

山田 7メートルくらいの高さの屋根だったので、「これならやれる」と思いました。それ以上だったらさすがにやらなかったかもしれないですけどね(笑)。

鋼の錬金術師 山田涼介

撮影で特に大変だったパートはどこでしょうか。

山田 原作で大事な決め台詞などは、言うテンションに苦労しました。「このド三流が!」というセリフは、原作ほど啖呵を切ることができなかったんです。

それはどうしてでしょうか?

山田 「人質がとられている状況の中で、そこまで強く発言ができるだろうか?」って考えたんですよね。でもいざ撮影が終わってから、「やっぱり原作のようにテンションを上げて言う必要があったのでは」と思って、声だけ録り直してもらったんです。でも、いざ当てはめてみたら、最初のセリフの方がハマったんですよ。

そう思えるまでやったからには、後悔がないですよね。

山田 はい。絶対に妥協したくなかったので、やり直させてもらえて本当に有難かったです。自分が納得しないと世に出しちゃいけないと思うので、やれることはやっておこうと思ったんです。あと、劇中で「俺とお前の格の違い」というセリフがあるんですが、原作だと最初は単に「格の違い」なんですが、物語が進むにつれ、〈エド〉に仲間ができてくると、「“俺たち”とお前の格の違い」に変化するんです。物語が進むにつれ、セリフも変わっていくところは鳥肌モノなので、ぜひ注目して観てもらいたいです。

撮影はイタリアでも行われたんですよね。

山田 はい。でも、実は冒頭のアクションシーンは、カットによって日本とイタリアの両方で撮っているんです。完成作を観ると、どこが日本でどこがイタリアかわからない仕上がりなんですが、まさか同じテンションのままに同じシーンを二つの国で撮影するとは思ってもいなくて(笑)。すごく貴重な経験になりました。たとえ別の国で撮ったとしても、こんなに上手く仕上がっているのは、曽利監督の手腕だと思います。この映画は、曽利監督じゃなきゃ撮れなかった作品だと思います。

イタリアでの撮影はいかがでしたか?

山田 イタリアでは、実際に過去に錬金術が行われていたんです。〈エド〉が“キメラ”(合成獣)と戦うシーンを撮影した場所は、本当に錬金術が行われていたらしくて。それを聞いてから撮影したので、すべてのものに意味と、重みを感じました。あとは、列車のシーンで見える風景とドローンで撮影した街のシーンは、CGを一切使っていなくて、イタリアのそのままの風景なんですよ。その素晴らしさも感じてもらえると思います。あとは撮影の最終日に、ご褒美として本場のイタリアンを食べました。現地の雰囲気も手伝って、最高に美味しいパスタを食べられました。

撮影中はイタリアンを食べていなかったんですか?

山田 撮影中はほとんどパンと林檎だったんです。

あんなに大変なアクションシーンがあったのに……。

山田 そうなんですよね。でも、最終日に食べたご褒美のパスタが最高に美味しかったので、いいんです(笑)。それも良い思い出になりました(笑)。

鋼の錬金術師 山田涼介

「頑固さはブレちゃいけない」「ここしか居場所がない」――センターとしての決意と芸能界で生きる覚悟

さて、〈エド〉のブレない信念というのは、山田さんご自身にも通じるものがあると思うのですが、いかがでしょうか。

山田 僕、かなり頑固なんですよ。生意気ですし(笑)。そこは〈エド〉と似ているのかもしれないですね。それに、「俺が間違っているわけがない」と思うタイプの〈エド〉には共感できることが多かったんです。そう言えるのは、自分を信じているからこそ言える言葉だと思うんですよね。

Hey! Say! JUMPのメンバーとしているときも、頑固なんですか?

山田 Hey! Say! JUMPのセンターとしては、ブレてはいけないと思っているんです。というのも、いま僕がこの位置にいるのは結果論であり、最初からセンターを目指していたわけではないんです。だから、結果として、センターになる過程で作られた頑固さはブレちゃいけない気がするんです。

どうしても頑固は治らない……?

山田 もうしょうがないですよね、それは性格だから(笑)。

〈エド〉は〈アル〉のために強い意志を持っていますが、山田さんが強くいられるのは、何があるからでしょうか。

山田 僕には、ここ(芸能界)しか居場所がないと思っているんです。この世界でダメになったら何もできないと思っているから、ここで生きる覚悟があるんです。『鋼の錬金術師』のテーマも“等価交換”ですが、僕は“自由”を手放す代わりに、他の人が見られない景色を見させてもらっていると思っているので、とにかく一生懸命やるしかないなって。その分、僕は腹を括っているんです。

だからこそ、どんなに大変な撮影でも乗り越えられるんですね。

山田 はい。今回、監督からかなりの無茶振りがありました(笑)。僕にとって初めてCGを相手に戦うという撮影だったので仕方がないんですが、泣いているシーンは、かなりカット割りされていたので、何度も何度も泣いたんです。それはもう、大変でしたね(笑)。でも、僕も監督に無理を言いながら撮影を進めていたところがあるので、お互いが妥協することなく、素晴らしいものが出来たと思います。

俳優として、レベルアップした作品になったんですね。

山田 そうですね。ここで得たものは、これから出会う作品や役に活かしていけたらいいなと思っています。

山田涼介

1993年生まれ、東京都出身。2007年にHey! Say! JUMPのメンバーとして、シングル「Ultra Music Power」でメジャーデビューを果たす。歌手として活動する一方、「探偵学園Q」(06・07/NTV)に出演して以来、俳優としても活躍中。映画『暗殺教室』(15/羽住英一郎 監督)では映画初出演にして初主演を飾り、第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞に輝いた。その他の主な出演作に、ドラマ「1ポンドの福音」(08/NTV)、「スクラップ・ティーチャー~教師再生~」(08/NTV)、「左目探偵EYE」(2009・10/NTV)、「理想の息子」(12/NTV)、「今日の日はさようなら」(13/NTV)、「金田一少年の事件簿」シリーズ(13・14/NTV)、「母さん、俺は大丈夫」(15/NTV)、「カインとアベル」(16/CX)、映画『グラスホッパー』(15/瀧本智行 監督)、『暗殺教室 ~卒業編~』(16/羽住英一郎 監督)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17/廣木隆一 監督)など。Hey! Say! JUMPとして、12月20日(水)にニューシングル「White Love」をリリースする。

映画『鋼の錬金術師』

2017年12月1日(金)公開

全世界待望のファンタジー超大作、兄弟の絆を懸けた冒険が始まる!
運命に挑む兄弟〈エド〉(山田涼介)と〈アル〉(声:水石亜飛夢)。幼き日に最愛の母を生き返らせようと、禁断の術を犯した〈エド〉は手脚を失い、〈アル〉は魂だけの鎧の身体になった。必ず弟の身体を取り戻す――そう決心し、鋼の義肢、オートメイル(機械鎧)を身に着けた〈エド〉は、やがて“鋼の錬金術師”と呼ばれる存在となる。
身体を取り戻す唯一の手がかりは、謎に包まれた“賢者の石”。“賢者の石”を求めて旅をする兄弟の前に立ちふさがる美しき最強の敵、ホムンクルス。それはやがて国家を揺るがす強大な陰謀に巻き込まれていく……。壮大な旅の果てに、待ち受ける驚愕の真実とは? 兄弟の絆を懸けた、感動の冒険が、いま始まる!
<錬金術――それは、あらゆる物質を新たなものに作り変える魔法のような科学>

原作:「鋼の錬金術師」荒川 弘(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
監督:曽利文彦
脚本:曽利文彦 宮本武史
出演:
山田涼介 本田翼 ディーン・フジオカ
蓮佛美沙子 本郷奏多 / 國村隼
石丸謙二郎 原田夏希 内山信二 夏菜
大泉洋(特別出演) 佐藤隆太 / 小日向文世 / 松雪泰子
音楽:北里玲二
主題歌:MISIA「君のそばにいるよ」(アリオラジャパン)
配給:ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイトhagarenmovie.jp

©2017 荒川弘/SQUARE ENIX
©2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

【原作コミック】

鋼の錬金術師
荒川弘(著者) / 月刊少年ガンガン

兄・エドワード・エルリック、弟・アルフォンス。2人の若き天才錬金術師は、幼いころ、病気で失った母を甦らせるため禁断の人体錬成を試みる。しかしその代償はあまりにも高すぎた…。錬成は失敗、エドワードはみずからの左足と、ただ一人の肉親・アルフォンスを失ってしまう。かけがえのない弟をこの世に呼び戻すため、エドワードは自身の右腕を代価とすることで、弟の魂を錬成し、鎧に定着させることに成功。そして兄弟は、すべてを取り戻すための長い旅に出る…。

MISIAの楽曲はこちらから


マスタング大佐役 ディーン・フジオカさんインタビュー記事はこちら
ディーン・フジオカ『鋼の錬金術師』ついやってしまう“マスタングジョーク”、細切れ撮影での難しさ明かす

ディーン・フジオカ『鋼の錬金術師』ついやってしまう“マスタングジョーク”、細切れ撮影での難しさ明かす

2017.11.28