Review

『巨影都市』巨大な影の足元に生きる人々のサバイバル

『巨影都市』巨大な影の足元に生きる人々のサバイバル

『ウルトラマン』シリーズ、『エヴァンゲリオン』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『機動警察パトレイバー』、『ゴジラ』シリーズ、これらの作品に登場する巨大なヒーローや怪獣あるいは人型兵器といった巨大な影、“巨影”が突如現れた、とある都市。巨影たちに立ち向かうヒーローではなく、巨影の脅威に巻き込まれて逃げ惑う一般市民に焦点を当てているのが本作『巨影都市』だ。

第1回となる本稿では、原作ファンであれば興奮を抑えられない巨影のスケール感、巨大怪獣たちの足元を逃げ惑うというありそうでなかったシチュエーションなどから本作の魅力を追及していく。『絶体絶命都市』シリーズや『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット』などを手掛けたメンバーが集まったグランゼーラらしい、強烈にパンチの効いた選択肢が生み出す独特のカオスについては第2回の記事で触れていく。

文 / 村田征二朗(SPB15)


ありそうでなかった、“巨大ヒーローの足元”に焦点を当てる 

ビルをなぎ倒し、街を破壊していく巨大な怪獣、そしてそれに立ち向かっていくヒーロー。特撮やアニメ、マンガで幾度となく描かれてきた巨大ヒーローの戦いに憧れてきた人は少なくないでしょう。怪獣との戦いで街がド派手に破壊されるのは巨大ヒーローものの醍醐味ですが、冷静に考えると戦いの舞台となっている街に住む人たちの被害も気になってきます。『巨影都市』は、そんな巨大ヒーローものには定番の“ヒーローたちが戦っている場に居合わせたらどうなってしまうのか”を体験できる作品です。

本作は超自然規模の災害とも言える巨影たちの脅威からいかに生き延びるか、が主軸となっています。“巨影は何者でどこからやってきたのか”といった点は、物語終盤で明かされはするもののストーリーの中核を担うものではなく、純粋に誰もが一度は想像したであろうシチュエーションでのサバイバル体験を重視したゲームなのです。そして、そんな危機的状況の中でときに真面目に、ときに超絶おバカな選択肢を選んでいくのが楽しいのです。

▲この圧倒的スケール感! プレイ中に思わず「でけぇー!」と声を出しそうになってしまいます

ゲームは一般市民の主人公がとある女性との待ち合わせに向かう場面から始まるのですが、巨大ヒーローと怪獣、本作では“巨影”と総称されるものたちが突然現れ、ついさっきまで日常を送っていた街は一気にパニック状態となります。主人公は巨大ヒーローに変身する能力もなければ戦闘ロボットのパイロットでもなく、多くのプレイヤーと同じ”ザ・一般市民”ですので、当然ながら巨影に立ち向かう手段など持ってはいません。そのため、プレイヤーは巨大な脅威にさらされながらもひたすら逃げ回り、逃げた先で出会う人々とさまざまなドラマを展開させていくことになります。

▲主人公は男女から選択でき、ゲーム開始時の選択肢によって外見なども変化します

『ウルトラマン』シリーズ、『エヴァンゲリオン』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『機動警察パトレイバー』、『ゴジラ』シリーズと、これだけ豪華な作品を扱うとなれば、普通は目玉となるヒーローや怪獣、兵器を操作させるゲームになりそうなものです。しかし、本作は敢えてそれらを正義や悪を体現する存在としてではなく超自然災害としてとらえ、人類にとっての脅威として描くという、非常に贅沢な使いかたをしています。

人類の敵であろうと味方であろうと戦闘ですさまじい被害が出ることには違いなく、足元を逃げ回る人々にとってはただの脅威でしかありません。戦闘の規模が大きすぎるゆえに一般市民に被害が出てしまう、という巨大ヒーローものやロボットものにおける“あるある”を一般市民の立場から体験します。

▲ウルトラマンやゴジラなど、すでにおなじみのキャラクターだからこそ格好いいという純粋な憧れと戦闘のはた迷惑さとの対比が強調されます