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【要注目アニメレビュー】競技ダンスの躍動を“神作画”で描ききる! いよいよクライマックス突入、『ボールルームへようこそ』の完成度

【要注目アニメレビュー】競技ダンスの躍動を“神作画”で描ききる! いよいよクライマックス突入、『ボールルームへようこそ』の完成度

平凡な中学生が社交ダンスの世界と出会い、徐々にその才能を開花させていく青春ダンスアニメ『ボールルームへようこそ』。2017年7月の放送スタート以来、王道の青春“スポ根”ものとしての楽しさや優れた映像美などで話題の一作だ。物語の盛り上がりもますます加速している本作について、2クール目の折り返し地点となる第18話までを振り返りつつあらためてレビューする。

文 / 鳥居一豊 構成 / 柳 雄大

優雅なイメージの社交ダンスが“キレ味鋭いアニメになる”面白さ

何の取り柄もなく、毎日を無気力に過ごしていた中学生・富士田多々良(ふじたたたら)は、ひょんなきっかけから社交ダンスを知り、自らもダンスの世界に足を踏み入れる。『ボールルームへようこそ』は、そんな競技としてのダンスを魅力たっぷりに描いた作品だ。「月刊少年マガジン」連載中のコミックが原作で、アニメの制作はProduction I.G。力強い描線は原作のイメージそのままで、優雅な踊りとしてのイメージのある社交ダンスをスポーツとして力強く描いているのが大きな見どころ。

その作画には、実際に踊ったワルツやタンゴをかなり研究し描いていることを想像させるリアルさ、ダイナミズムがある。これは推測だが、本作のダンス作画にあたっては映像資料の確認はもちろん、ダンスの競技会を間近に見学したり、場面によってはプロダンサーに監修を受けたりといった制作陣の努力が想像できる(アニメのエンディングでは取材協力として日本ダンススポーツ連盟、ヨシダダンススクールといった名前がクレジットされる)。それほどにリアリティーのあるダンスが描かれているのだ。

1秒で24枚の絵を動かすフルアニメ(フルモーション・アニメ)に対し、日本のアニメはリミテッド・アニメと呼ばれ、1秒におよそ8枚~12枚ほどの絵を動かす。これは、毎週放送されるテレビアニメ制作のための苦肉の策とも言えるが、『鉄腕アトム』以来の長い歴史でその手法は洗練されていき、現代ではフルアニメとは違った独特の動きの面白さを得られるものとなっている。動きの緩急に合わせて作画枚数を調節し、制止したコマの緊張感と動いたコマの躍動感で映像全体のリズムをコントロールしていくわけだ。

『ボールルームへようこそ』は、この手法のアニメのひとつの極致ともいえる。3拍子のワルツのゆったりとした動きであっても、その踊りはキレ味たっぷり。ステップの力強さ、動きの優雅さ、生き生きとした表情が巧みに描かれるのだ。

競技ダンスを魅力的な“スポ根”として見せるストーリー

多々良が急きょ“代役”として競技に参加させられることになる第3話では、緊張したおぼつかない足取りから、次第に楽しさいっぱいに踊るようになる様子が生き生きと描かれる。また、シリーズ前半のクライマックスである天平杯の決勝(第9話~第11話)では、自らが絵画の「額縁」となりパートナーを「花」として魅せるその演技で、観客や審査員の目を引きつけていく。激しい動きと、一生懸命な表情、そしてまさに花が咲いたように魅力的なポーズには、実写とはひと味違うアニメの魅力がたっぷりと詰まっていた。

そんなダンサーたちを描いた物語だから、ダンス競技はもちろんのこと、ふとした日常の仕草であっても、立ち姿が美しい。鍛え抜かれた体幹を持つダンサーたちの身体は姿勢がよく、立っているだけで周囲の人の目を引く。ダンスの場面ばかりでなく、質の高い作画で物語は描かれていく。

やがて多々良は高校生になり、本格的に競技ダンスに没頭していくが、パートナーがいない。そんな彼の前に登場するのが、今はダンスをやめてしまっていた同級生の緋山千夏(ひやまちなつ)。彼女はかつて男性役であるリーダーとなることが多く、パートナーとしての経験が足りない。一方の多々良は良くも悪くもパートナーの魅力を引き出す演技をするタイプで、リーダーとしての積極性に欠ける。そんなふたりがペアを組むことになれば、上手くいくはずがない……。二人は衝突を繰り返しながら、強豪のひしめくアマチュア大会の優勝を目指す。

性格的にも正反対な二人がペアとなる展開は、青春ドラマとしてもスポ根物語としても定番と言えるものだが、このふたりの衝突が緊張感を生み出し、ダンスもさらに凄みを増す。このように、競技ダンスの背景にあるストーリーも魅力的なものとなっている。

ダンスの動きと楽曲との調和による“音楽もの”としての楽しさも

本作の映像とともに大きな魅力となっているのが音楽だ。ワルツやタンゴ、クイックステップといったダンスで流れる楽曲とダンサーの動きが一体となることで、さらに映像としての面白さが高められていく。第18話では、予選で使われた曲に対し千夏が「踊りにくい」と不満をこぼすなど、同じワルツの楽曲でも思った以上にバラエティー豊かなことに驚く。ジャンルとしては“スポーツもの”のアニメでありながら、“音楽もの”のアニメが持っている魅力も兼ね備えているのが本作ならではの楽しさだ。

また、作品の主題歌にも注目してほしい。1クール目(第1話~第11話)のオープニングでは「10% roll, 10% romance」、2クール目(第12話~)のオープニングでは「Invisible Sensation」という楽曲が起用されているが、これはどちらもロックバンドUNISON SQUARE GARDENによる書き下ろしナンバー。彼らの音楽は実にダンサブルで、独特なメロディーや早口の歌唱も節回しが独特で、聴いているうちに身体が動いてしまうようなノリの良さがある。そんな彼らの音楽がダンスをテーマとした作品に使われるのはまさにベストなチョイスだと感じられた。物語が進むほどに歌詞の内容と登場人物たちの気持ちがフィットしていくような感覚があるのも心地良い。

ますます加速する物語。シリーズ後半の見どころは?

アニメとしてかなりテンポの良いシリーズ構成・展開となっている本作は、連載中の原作コミック(現在最新9巻)の物語にも追いつく勢いだ。このスピード感でいけば2クール目のクライマックスとなるはずのコンクール本戦の行方は、原作でもまだ描かれていない。それだけに、ここからの展開からますます目が離せなくなっている。多々良の目標である天才ダンサー・兵藤清春は、多々良に対し曖昧なアドバイスばかりして戸惑わせているが、この先の活躍も楽しみ。そして目下のライバルである釘宮方美も、今のところは「ちょっと嫌な奴」だが、実はなかなか人間味あふれる良いキャラなので見逃せない。

競技ダンスを迫力たっぷりに描くだけでなく、多彩なキャラクターたちの魅力や青春ドラマとしての面白さもいっぱいの『ボールルームへようこそ』。ますます盛り上がっていく物語を手に汗握って楽しんでほしい。

TVアニメ『ボールルームへようこそ』

MBS 毎週土曜 深夜2時08分~
TOKYO MX 毎週日曜 23時30分~
BS11 毎週日曜 深夜1時~
群馬テレビ 毎週日曜 深夜1時30分~
ITV 毎週木曜 深夜1時36分~
ANIMAX 毎週火曜 19時~(リピート放送は同日27時~/翌日6時30分~)

Amazonプライム・ビデオにて日本・海外独占配信
(但し米国においてはAnime Strikeにて配信)
※日本では毎週土曜日MBS放送直後より配信開始

※放送・配信日時は変更になる可能性があります。

©竹内友・講談社/小笠原ダンススタジオ

TVアニメ「ボールルームへようこそ」公式サイト

原作コミック

ボールルームへようこそ
著書:竹内 友
出版社:講談社