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『グランツーリスモSPORT』VRが導くドライビングシミュレーションの地平

『グランツーリスモSPORT』VRが導くドライビングシミュレーションの地平

最高のリアルドライビングシミュレーターは、VRの時代においてもなおその地位を守ることができるのでしょうか?

1997年に発売されたPlayStation®版『グランツーリスモ』は、その豊富な設定項目やリアルな操作感覚、そして美麗なグラフィックで描かれた実在車種の登場で、ビデオゲームにおける自動車表現に革新を起こしました。それからもレースゲームではなく“リアルドライビングシミュレーター”として、PlayStation®の歴史とともに進化を続けてきた『グランツーリスモ』シリーズ。第1作目の発売から20周年を迎えた2017年10月19日、最新作『グランツーリスモSPORT』(以下、『GT SPORT』)が発売されました。本作にはさまざまな要素が収録されていますが、なんといってもPlayStation®VR(以下、PS VR)への対応が大きなポイントです。常にその時点で最高の“リアル”を追求し、表現の地平を開拓し続けてきた『グランツーリスモ』シリーズにとっては、当然とも言える進化の一端です。

しかしVRの世界では、いくら美麗なグラフィックでも、それが即リアルで心地よいVR体験につながるわけではありません。そもそもPS VRは、映像の解像度だけを見れば4K・HDRどころか、フルHDのテレビにも及ばないのです。VRにおけるリアルさとは、“体験”を通じてプレイヤーが感じ取るものです。そんなVRの時代においても『グランツーリスモ』シリーズのリアルさは通用するのでしょうか。今回は『GT SPORT』のVR機能に焦点を当て、実際に肌で感じたプレイ体験をもとにその紹介をしていきます。

文 / 大工廻朝薫(SPB15)


あの名車のドライビングシートに乗り込む喜び

『GT SPORT』にはVRショールームとVRドライブという、ふたつのVR専用コンテンツが用意されています。

VRショールームは、ゲームに登場する自動車の3DモデルをVR空間で鑑賞できるモード。細部まで作り込まれた美しいカーモデルを回転させながら、さまざまな角度から堪能できます。

160台を超える収録車種のうち、初期段階から鑑賞できるクルマはアーケードモードで選択可能なデフォルトの8車種。これに加えて、ゲーム内のレース賞金で購入したものや、ミッション達成報酬で獲得したものなど、ゲーム内で使用可能になったクルマが随時追加されていきます。

▲運転席付近を覗き込むと細部まで再現されたインテリアが確認可能。手を伸ばせば触れられるほどの距離から、世界中の名車を隅々まで眺めることができます

そしてVRコンテンツのメインとなるのが、VRドライブです。このモードはVRで再現されたドライビングシートに乗り込み、AIが操作するライバルカーとの1対1のレースに挑むというもの。VR空間で憧れのクルマを自由に乗り回せるという、すべてのクルマ好きが待ち望んだプレイモードです。

▲VRショールームと同様、初期状態では8車種が選択可能。ゲーム内で入手したクルマも使用可能です

▲選択できるコースもほかのモードと共通。ゲームの進捗状況に合わせて順次開放されます

このVRドライブモードでは、従来のあらゆるレースゲームを超える大迫力のVR体験が待っています。

ドライビングシートに座ったプレイヤーがまず目にするのは、緻密に作りこまれた内装表現。実車に使用されているインテリアが、細部に至るまで見事に再現されています。乗り込むクルマが変われば、VR空間内に映し出される内装もそれぞれのクルマのものに変化。ふだんはなかなかお目にかかれない憧れの高級車を自由に乗り換えながら、各車の個性を心ゆくまで味わい尽くすことができます。右ハンドル車と左ハンドル車の視点の差や、市販車の内装とラリーカーの内装の違いなど、それぞれの違いに注目して見比べてみるのもおもしろいでしょう。

▲上がマツダ・ロードスターS、下が三菱・ランサーエボリューションファイナルエディションのラリーカー仕様。市販車の内装そのままのロードスターに比べてランエボの内装は質実剛健、ラリー競技に特化したものとなっています

車内を眺めていると、助手席側の内装も細かく再現されていることに気づくはずです。通常のレースゲームではまず再現されない部分ですが、これもVR体験にとっては重要なポイント。ふだんは注目しない場所であっても、粗が目につけばVR空間そのものの説得力が薄れ、没入感が低下してしまいます。見渡す限りスキのない内装の作り込みは、リアルドライビングシミュレーターを謳う『グランツーリスモ』シリーズならではといったところでしょう。

▲作り込みの光るインテリア。その再現度は実車と見まごうほどです

また、リアルな表現とゲーム的表現の落としどころとしておもしろいのが、タイムや残り周回数などのデータがインストルメントパネル部分に集約されている点です。これらゲーム内のデータは対応する計器類が存在せず、没入感を損ねずに画面内に配置するのが難しい項目ばかり。しかし、ふだんカーナビやカーオーディオなどでさまざまな情報が表示されるインパネ周辺であれば、違和感を最小限に抑えつつ、運転中も無理なく情報にアクセス可能となります。リアリティを最大限守りつつ、ゲームをプレイするうえでのストレスを感じさせない練り込まれたデザインとなっています。

▲ハンドルの右側、カーエアコンのベンチレーター部分に重なるように情報が表示されています。空中に文字が浮かんでいるにもかかわらず、意外にもプレイ中はさほど違和感を感じません

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