LIVE SHUTTLE  vol. 211

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桑田佳祐が「若い広場」で5万5千人と大合唱。「最後までハッピーなライヴを」と、2度目のドームツアーを開催!

桑田佳祐が「若い広場」で5万5千人と大合唱。「最後までハッピーなライヴを」と、2度目のドームツアーを開催!

2017年にソロ活動30周年を迎えた桑田佳祐。8月にリリースしたオリジナルアルバム『がらくた』を掲げ、全国アリーナ&5大ドームツアー〈桑田佳祐 LIVE TOUR 2017「がらくた」〉を10月17・18日の新潟からスタートした。年末まで10 箇所18公演を巡る本ツアーより、11月12日@東京ドーム公演の模様を考察する。

取材・文 / 小貫信昭 写真 / 岸田哲平

今現在の彼のアーティスト性を、磨きに磨いた内容だった

東京ドームで桑田佳祐およびサザンのライヴを観るのは数回目だが、人々の胸に、まさに深く届いていくものを作り続けているアーティストの場合、巨大な空間を埋め尽くす客席の空気が、そもそも違うのである。それは決して、等圧線の狭い中を吹く“トレンド”という一方通行の風ではない。5万5千人の人たちが、この時間だけは心を裸にして、リアルに持ち寄った想いが渦巻く。もちろんそれは、膨らんだものだけじゃなく、凹んだものも含まれる。でも終演後には、腕の良い自転車屋さんのように、凹んだところに希望の空気をぱんぱんに詰めてあげられるのが、まさに桑田佳祐のライヴなのだ。

彼の作品には、皆で考えていくべきメッセージを含んだものもあるし、軽やかな足取りを取り戻すためのマッサージになるものもある。加えてギャグもある。でも今年はソロ活動30周年ということで、「もしやアニバーサリーな要素も強いのでは……」と思ったが、蓋を開けてみれば、今現在の彼のアーティスト性を、磨きに磨いた内容だった。まだツアーは続いているので詳細は控えるが、明らかに新基軸と思しき部分も、しかと目に焼き付けた一夜となった。

実は『がらくた』がリリースされた際、初回生産限定盤に同封されていた『波乗文庫 がらくた 桑田佳祐 著』の中で、桑田が自らエッセイを書いた際、“アタシ”という一人称を使っていたことに注目した。これは威張るでも卑下するでもなく、心地良い形で世の中との接点を探った際、編み出された人称なのだろう。
実はこの日、ステージに彼が登場した瞬間、その佇まいの中にも“アタシ的なるもの”を感じた。“いつかの自分”を演じたのではない。ブランニューで実年齢な、そんな桑田がドッシリそこにはいたのだった。

「ウィーッス!」。桑田の第一声は短く集約されたひと言だった。そしてMCに関しては、本人の素の喋りにプラス、『8時だョ!全員集合』のいかりや長介さん風になったり、または“フーテンの寅さん”風へも憑依した。ともかく冒頭で、「最後までハッピーなライヴを」と、そんな宣言をして、潔く始まった。

バンドが素晴らしい。ドームという広大な空間だからこそ、余計、♪(音楽)の届き方でわかる。メンバーはお馴染みの人たちが多く、日本でトップの実力を誇る。でもここまでは、集まってもらえば実現する。そこから何を引き出すか? 桑田の場合、まさに腕利きたちの“そこから先”が響いている。特に最新アルバム『がらくた』からの作品が充実していた。最新作から続けて演奏する場面があった。普通、こうした場面では会場全体が落ち着いた雰囲気になるものだが、そこはこのアルバム収録曲たちの浸透力の賜物というか、“ルーキーなのに10年選手的な佇まい”を発揮するものばかりなのであった。

「大河の一滴」は、ライヴでより一層、スピードとエネルギーを増した気がした。サビへの展開が、まさに見事すぎる作品であり、後半へ向かっての“昇り詰め感”を、まさに伝えるパフォーマンスだ。

待ってました。そう思えたのが「若い広場」。なんでもこの曲にいく合図というのが取り交わされているらしく(MCで触れていた)、この日は「もう60だけど……、まだまだ“ひよっこ”!」のひと言でスタートした。歌詞中の“肩寄せ合い 声合わせて”という、そんな現象が会場に巻き起こる。ゆるりと左右に揺れる大観衆、そして大合唱。
ふと目を凝らすと、ステージ上には見慣れたものが……。そう。ドラマ『ひよっこ』において、登場人物たちが他人に言えない心情を吐露していた、薬局の店先の“イチコ”だ。なんとも凝っている。ドラマは終了したが、コラボはこうして続いているのだ。

すでに屈指の名曲として評価が定まる「簪 / かんざし」も聴けた。艶っぽさと切なさ。この2つの感情は、前者が粘着質である一方、後者はパウダー状でもあり、ひとつに表現するのが難しい。それを感情過多にもならず、見事に歌う。“歌唱”という観点で特に評するなら、これまでの桑田のベストのひとつだろう。

実はこの2曲。桑田を育んだ昭和という時代を、それぞれに照らしている作品なのだ。「若い広場」はまさに、団欒(だんらん)、である。家族の団欒。また、当時は社会の中に、例えば会社勤めをしていてもオフィスの中に、団欒があったのだ。
一方の「簪 / かんざし」だが、この作品は昭和のトガった文化を彷彿させる部分もある。そりゃ、桑田が書いた楽曲なのでポップスとしての完成度に届いているが、意識がワープしていくかのような展開とか、後半の楽器ソロへの大胆な構成、そして全体を覆う“耽美な仄暗さ”は、昭和の文化のある側面でもあった。
もし『がらくた』にあの時代が息づくならば、2つが両輪として(その他の作品も様々に絡み合いながら……)描かれているからこそ、信憑性があるのである。

さきほど、30周年のアニバーサリー的なものではないと書いたが、「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」が演奏された際には、スクリーンにこれまでを辿る写真が映され、しばしその気分にも浸った。順番に眺めつつ、このヒトはつくづく、減速せずに今に至ったことを痛感した。

WOWOW presents桑田佳祐 LIVE TOUR 2017「がらくた」 supported by JTB

11月18日(土)ナゴヤドーム
11月19日(日)ナゴヤドーム
11月25日(土)福岡 ヤフオク!ドーム
11月30日(木)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
12月01日(金)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
12月09日(土)アスティとくしま
12月10日(日)アスティとくしま
12月16日(土)京セラドーム大阪
12月17日(日)京セラドーム大阪
12月23日(土・祝)札幌ドーム
12月30日(土)横浜アリーナ
12月31日(日)横浜アリーナ

桑田佳祐(くわた・けいすけ)

1956年2月26日生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。1978年にサザンオールスターズとしてシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。1987年リリースの「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」でソロ活動を開始。2017年10月にソロ活動30周年を迎える。最近の活動としては、7月10・11日にBillboard Live Tokyoにてプレミアムライヴを開催、音楽探訪記映画『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』への出演ほか、8月6日にはソロとしては15年ぶりとなる〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017〉へ出演、8月23日にはニューアルバム『がらくた』を発表。10月より全国アリーナ&5大ドームツアーを敢行。さらに、12月13日にはソロ30周年記念ミュージックビデオ集『MVP』をリリース。

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