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言霊と音楽が心を打つ。音楽朗読劇『夏目友人帳』再演+ライブビューイング開催決定

言霊と音楽が心を打つ。音楽朗読劇『夏目友人帳』再演+ライブビューイング開催決定
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アニメの本放送が終了しても、なお根強い人気を保ち続けている緑川ゆき原作の「夏目友人帳」。その「夏目友人帳」を原作として2013年に好評を博した音楽朗読劇の公演が、新感覚・音楽朗読劇『SOUND THEATRE × 夏目友人帳 〜集い 音劇の章・再び〜』と題して、2015年12月5日に舞浜アンフィシアターにおいて再上演される。さらに、この模樣が全国各地の劇場において、ライブビューイングが行われれる。

音楽朗読劇「SOUND THEATRE」は、手に汗握る朗読劇、最も派手な朗読劇、と言われているまったく新しい感覚のエンターテインメント。朗読者は演技らしいことはしないが、風、煙、香り、炎等、あらゆる演出手法を用い、さらに生演奏で作品世界を盛り上げ、その躍動感あふれるスタイルで、観客は想像力によってその作品を五感で感じ取ることができる。

テレビアニメ「夏目友人帳」シリーズに出演した豪華声優陣が出演する、このエキサイティングかつ想像力あふれる朗読劇の脚本・構成・演出を担当する劇作家・演出家の藤沢文翁さんに、『夏目友人帳』への思いや、自身の朗読劇に関する取り組みについて、お話をうかがった。

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音楽朗読劇『SOUND THEATRE × 夏目友人帳 〜集い 音劇の章・再び〜』の演出を担当する藤沢文翁さん

最初のうちは凄いプレッシャーでしたね

013年に初めて『夏目友人帳』を朗読劇で上演されましたが、その時の観客の反応や手応えをお聞かせください。

原作物は初めてでした。しかも、アニメやマンガで完成している『夏目友人帳』という素晴らしい作品を、あえて朗読劇で、僕が脚本として書き直す……かなりプレッシャーがありました。もともと、アニメ『夏目友人帳』が大好きで観ていましたが、舞台化するにあたって、作品の世界観だったり、言葉だったり、これを自分の中に取り入れるために、DVD、マンガ、資料……全部観ました。それを舞台にする、最初のうちは凄いプレッシャーでしたね。

人気の高い作品ですから。

そうなんです! (朗読劇を)何故あえてやるのか、やる意味があるのか、って思った時に“手触り感”とか“立体感”っていうんでしょうか。今、まさにここで起きていることだ、と感じて頂くっていうのが大事だなって考えていました。公演が終わった後に皆様からとても喜んで頂きました。今まで受け取ったことはない、『夏目友人帳』のファンから手紙を頂いたりとか、公演が終わった後に皆様からとても喜んで頂きました。今回の公演でもやる「偽り神」っていう作品は実は僕が書き下ろしているんですけど、元々、原作にあるんじゃないかっていう風に思っていらっしゃる方もいらっしゃいまして、「あ〜よかった」と思いました(笑)。

「偽り神」は原作にあっても違和感なかったですし、どきどきしながら観る感じで、最後にちょっと泣けるお話でしたね。

正直なところ、朗読劇って向いている話と向いていない話があると思うんです。例えば、格闘モノだと叫び声だけで終わってしまうんじゃないか、とか(笑)、いかに素晴らしい話でもそれではなかなか朗読には向かないと思うんです。でも『夏目友人帳』はとても綺麗な言葉が交わされているし、世界観や設定含め『SOUND THEATRE』にマッチしていたんじゃないかなっていう気はします。

『SOUND THEATRE』に向いていると思うのはどういった理由ですか?

この朗読劇は“見えないものが浮かび上がる”がコンセプトなんです。『夏目友人帳』の世界にも“見える”“見えない”がキーワードになってくる。主人公の夏目貴志には“見える”、(しかし)夏目の友人の田沼には“見えない”、でも“感じる”。また、他の人達には“見えない”、この世界観っていうのが朗読劇に凄く合ってるっていうのはありますね。

原作の緑川ゆき先生は前回の公演をご覧になられましたか?

はい! もう、ドキドキだったんですけど(笑)、とても喜んで頂いて、『夏目友人帳』のひとつの世界観を守ってくれた、みたいなことをおっしゃって頂きました。単行本にもコメント書いてくださったんですよ。

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これまでの朗読劇にない演出が楽しみ。音楽朗読劇「SOUND THEATRE × 夏目友人帳」の前回公演の様子。©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会

それぞれの『夏目友人帳』を自分の“中”で創る

アニメやマンガは2次元、舞台は3次元ですが、違うところ、共通するところはありますか?

違うところっていう以前の問題なのですが……僕は朗読劇を創る時に考えるのは”眠られたら困る”っていうのがありますね、どっかで(笑)。美しい世界観の流れはそのままに、ちょっと強調したい部分、危険な妖怪が出てきたりとか、“夏目、危機一髪!”みたいなところは演出を派手にするとか。会場での特殊効果で、アンフィシアターでしか使えない……日本中、どこの劇場に行っても使えないものがありまして。元々、ここは「シルク・ド・ソレイユ」をやっていた場所なので、炎や爆発が使える、日本国内でも希有な劇場で、エキサイティングな『夏目友人帳』が出来ると思うんです。

これは2次元にないぞ、というところは?

今回会場にいらっしゃるお客さまに楽しんで頂きたいのは、舞台が近いので、近距離で声が聴けるという……。男性が観てもハラハラドキドキするような派手な演出も用意しています。ライブ・ビューイングでも、かなり驚いて頂けたり、感動したりと、たぶん、ごく普通の朗読劇しか観てない人は新鮮に感じられるかもしれないですね。

原作を知っているお客様は”脳内変換”して原作と舞台の共通項を見いだすことが出来ると思うんですね。

確かにそうですね。例えば、舞台にその作者の方が描いた絵(作画)を観せると、観客はさらに物語を観て“作品に寄っていく”ことになると思います。しかし、この朗読劇の場合は絵がないんですね。特殊効果だったり、派手な演出が加わる毎に観客は頭の中で再構築していく……。その再構築は他の誰のものではなく、純粋にその人のものなんですよね。もちろん、夏目の顔、ニャンコ先生の顔なのかもしれませんが、席に座っている方はそれぞれ違う『夏目友人帳』を自分の“中”で創れる。これは、観客にとっても新しいと思います。新感覚でファンの方に受け入れてもらえるんじゃないかな、という確信があります。

オリジナルの声優さんが朗読する声を聴いてるだけで凄いですね。

僕も演出家なので、慣れてはいるんですが、やっぱり同じ空間で聴いてると本当にびっくりしますね。日本独特の“声優文化”というものがあると思っていますが、今回はその頂点に君臨する人達が真剣に、一夜限りのものに取り組むっていうのが、なんかとても素敵ですし、本当に豪華だなって思います!

劇場ではもちろん、ライブビューイングでもその臨場感が感じられるのではないでしょうか?

ライブビューイングで、同時に日本中の人が目撃する、それもまた豪華で素晴らしい体験だと思いますね。

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今回も豪華声優陣の生の声が聴ける! 音楽朗読劇「SOUND THEATRE × 夏目友人帳」の前回公演の様子。©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会

芸術は引き算だと思うんです。そう考えて創ったのが『SOUND THEATRE』です

『SOUND THEATRE』という手法に至った経緯、きっかけは?今、朗読劇はキテると思いますが。

もう、戦国時代ですね(笑)

朗読劇では『ラブレター』、白石加代子さんの『源氏物語』がかなり知られていますが、その中でも『SOUND THEATRE』は異彩を放っています。他の朗読劇とは違うスタンスだな、と思うのですが。

この『SOUND THEATRE』は、僕の生い立ちで子供の頃から蓄積されていたものが一気にまとまったものなんですね。落語が凄く好きで、ずっと落語を観ていました。さらに祖父が常磐津(注1)やっていまして、子供の頃からオペラやミュージカルを観たり……そういう芸能事が好きな家だったんです。

さらにイギリスに留学した時、シェイクスピアの時代より前から音読っていう文化がイギリスにあったことを知りました。例えば『恋に落ちたシェイクスピア』とか『シラノ・ド・ベルジュラック』をご覧になればわかりますが、パーティの終わりに文章や詩を読んだりするのが行われていたんです。あちらの文学作品、特に古典と呼ばれているものは、声に出して読むのを前提に書かれているんです。ヨーロッパの古典もそうですね。

ところが、日本語は音読に向いていない。例えば橋と箸など、わからなくなったりすることばがあると思うんです。でも、ヨーロッパって朗読前提、声に出して読むことが基本にありますから、グリモワール(注2)など、子供達が本を声に出して読んだりするのが文化……そういうものを僕は向こうから持ち帰ってきました。

子供の時から慣れ親しんできた落語とか“話業(わぎょう)”、これを足していくと何があるのかな、と……。ナレーションが必要なくなるんですよね。そこで、ナレーションをなくし、声を出して読むことを前提で台本を作りました。落語同様に、今は日本の文化である“声優文化”がありますから、朗読は声優さんにお願いしました。

例えば「戦闘モードに入りました」とか「2人は結ばれました」とか、通常ならナレーションが入るところを音楽に任せる。言葉で説明しなくても2人がだんだん愛し合っていく部分で優しい音楽が流れたら「あっ結ばれたんだ」ってことが観客は十分理解出来る。

僕は芸術って引き算だと思うんです。『SOUND THEATRE』は、炎や爆発もあります、と言われますが、実は音楽とか、そういう(音の)技量とかを使って引き算していく、どんどんシンプル化したものが『SOUND THEATRE』なんですね。だんだん削ぎ落して効果的に人の脳をどうしたら刺激出来るのかっていうことを考えて創ったらこうなりました。

声優文化、ヨーロッパ古来の音読とリンク、そしてナレーションで説明せずに音楽やいろんな特殊効果で表現するんですね。

それぞれの『夏目友人帳』を持って帰って

今回の公演ではどんな仕掛けがありますか?

そこはお楽しみで(笑)。ただ、斑(まだら)はかっこよくします。前回公演での舞台上に作った竹林は本物の竹を使っておりました。今回も本物感のあるセットを作ります。前回とは劇場が異なるので、雰囲気は多少変わりますが、「夏目友人帳」の世界観に近づけようと思っています。

吉森信さんの音楽も楽しみですね。

アニメの曲を作り続けている作曲家さんで、大御所でいらっしゃるのに、最初から大変協力的でいらして、「こんなこと、出来ますか?」ってお願いしても「出来る、出来る」とか、さらに「こういうやり方がある」と逆にアドバイスも頂いて…。今回も、バンドっていうよりもオーケストラって言った方がいいかもしれない構成で。本当に素晴らしくて、(演奏者)みなさん著名な方々が集結しています。曲だけ聴いて頂いても迫力ありますね。

ライブビューイングは全国38館で上映されるんですよね。

生で行われているものを北海道から九州まで、観ている人達が感動していく連帯感。そして、日本中が『夏目友人帳』に染まる一日。いろんな地域でライブビューイングを観ながら“夏目祭”に参加してもらえたら嬉しいです!

改めて、公演の抱負をお願いいたします。

とにかく手触り感のある『夏目友人帳』。それぞれが想像して、自分なりの『夏目友人帳』を持って帰ってもらいたいです。ライブビューイングで日本中の方に楽しんで頂けると思いますし、一緒に『夏目友人帳』の世界観が好きな人、ファンと劇場に集まって「夏目祭」を日本中で過ごしてもらえたらいいな〜と。

ちなみに藤沢さんは「夏目友人帳」のなかで好きなキャラクターは?

斑が好きです。斑とホタルですね。ホタルは切ないですよね〜。

ありがとうございました。「夏目祭」、たのしみにしています。

【注釈】
(注1)常磐津:三味線音楽の一種。浄瑠璃を語る太夫と、三味線弾きで構成されている。日本の重要無形文化財。初代常磐津文字太夫(1709〜1781年)が延亨4年(1747年)に豊後節より創設。語り物の浄瑠璃の一つで江戸歌舞伎と共に発展した。
(注2)グリモワール:元々はフランス語で魔術の書物を意味する。とりわけヨーロッパで流布した魔術書を指す。グリモワ、グリモアとも表記される。

藤沢文翁

藤沢文翁(ふじさわ ぶんおう):劇作家・演出家
1976年4月19日東京都港区六本木生まれ。英国ロンドン大学ゴールドスミス演劇学部卒業。ロンドン大学教授Robert GordonやRaphael Adjaniに師事する。20代でパリに渡り、その後2005年、英国にて「HYPNAGOGIA」「MERMAID BLOOD」を上演し演出家・劇作家としてデビュー。日本に帰国後、ヨーロッパから持ち帰った手法を用い「手に汗握る朗読劇」としてSOUND THEATRE PROJECT(新感覚・音楽朗読劇)を創設。「HYPNAGOGIA」や「MERMAID BLOOD」の凱旋公演を成功させ、新作の「THANATOS」、TBS主催「叢雲〜MURAKUMO〜」や東宝製作「CROSS ROAD」など続々と上演している。洋の東西を問わず、歴史文化や芸術に精通し、劇場にとどまらずテレビや新作落語、ドラマのシェイクスピア監修等、幅広い分野で活躍している。また近年では、自身のビジネスノウハウと、舞台人としての経験を融合させ「ビジネスで役立つ演出家・脚本家のスキル」を社員研修や講習会として行っている。

インタビュー / 文:高浩美、撮影:チバヒデトシ

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©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会


【公演について】

新感覚・音楽朗読劇『SOUND THEATRE × 夏目友人帳 〜集い 音劇の章・再び〜』

[公演詳細]
日時:2015年12月5日(土)[昼公演]13:00 / [夜公演]18:00 開演 ※いずれもSOLD OUT
会場:舞浜アンフィシアター

公演 オフィシャルサイト
http://natsume-ongeki.soundtheatre.jp

[ライブビューイング詳細]
日時:2015年12月5日(土)[昼公演]13:00 / [夜公演]18:00 開演
会場:東京、大阪、名古屋、福岡、熊本、北海道、宮城、静岡、広島 ほか全国各地。上映劇場の詳細はライブ・ビューイングHPでご確認ください。

ライブビューイング オフィシャルサイト
http://liveviewing.jp/natsume/

[公演データ]
第1幕 音劇版「儚い光〜きずな〜」
ある夜、夏目が寝苦しくて目を覚ますと、そこにニャンコ先生の姿がない。酒でも飲みにいったのかと再び布団に入ろうとするが、ある一つの事が気になって眠れない。今夜は静かすぎる・・・。「妖」が見える。そのために孤独を味わってきた夏目だが、同時に「妖」が見えなくなって苦しむ人の姿も見てきた。もし、ニャンコ先生が「いない」のではなく「みえない」のだとしたら・・・? 先生を探しに行く夏目の脳裏をよぎるのは、過去の記憶。沼の側で出会った「ホタル」と名乗る妖の物語・・・。お互いを想い合った人と妖。しかしある日を境に、人は妖を見る目を失った。妖を求めて彷徨う人と、自分はここにいるのだと訴え続ける妖の物語。シリーズ人気エピソード「儚い光」をベースに、夏目と人、そして妖達との絆を語る。

第2幕 音劇版「偽り神」
サウンドシアター作品において原作・脚本・演出を手掛ける藤沢文翁によるオリジナル書き下ろしエピソード。

骨董品屋で夏目が出会ったのは、付喪神(つくもがみ)が宿った怪しげな掛け軸。そのままにはしておけないと掛け軸を引き取る夏目と、「余計なことに首を突っ込むな」とご立腹のニャンコ先生。しかし、掛け軸の中に宿っていたのは心優しい付喪神だった。人の思いと、その思いが作り出した「偽物の付喪神」が織り成す心温まる物語。

脚本・演出:藤沢文翁
音楽:吉森 信
出演:神谷浩史(夏目貴志)、井上和彦(ニャンコ先生/斑)、堀江一眞(田沼要)、木村良平(西村悟)、菅沼久義(北本篤史)、松山鷹志(一つ目の中級妖怪)、下崎紘史(牛顔の中級妖怪)、桑島法子(ホタル)、浜田賢二(杉野章史 / 崇徳院)、寺崎裕香(サヨ)

【原作解説】
マンガ作品『夏目友人帳』の原作は緑川ゆき。現在『LaLa DX』および『LaLa』で連載中(白泉社)。2015年現在単行本は19巻まで発売。アニメシリーズは第1期が2008年7月〜9月まで、第2期『続 夏目友人帳』は2009年1月〜3月まで、第3期『夏目友人帳 参』は2011年7月〜9月まで、第4期『夏目友人帳 肆』は2012年1月〜3月まで放送された。
妖怪が見える少年・夏目貴志は、祖母の遺品から『友人帳』を見つける。これは祖母・レイコが妖怪をいじめ負かし、その際に奪った名前を集めた契約書であった。それ以来、名を取り戻そうとする妖怪達から狙われるようになってしまった夏目。ふとしたきっかけで自称用心棒となった妖怪・ニャンコ先生と共に妖怪達に名を返す日々を送り始める。

アニメ オフィシャルサイト
http://www.natsume-anime.jp/