Interview

堀込泰行のコラボ作『GOOD VIBRATIONS』。話題曲「エイリアンズ」のセルフカバーも!

堀込泰行のコラボ作『GOOD VIBRATIONS』。話題曲「エイリアンズ」のセルフカバーも!

長きにわたるキリンジの活動を通じて、ヴォーカリスト、ソングライター、アレンジャーとして、不動の評価を確立した堀込泰行。キリンジ脱退後はソロアーティストとして、2016年10月にアルバム『One』をリリースした彼だが、キリンジ時代に書いた名曲「エイリアンズ」が女優・のんが出演するテレビCMを通じて、時代や世代を超えて再び脚光を浴びるなか、新作EP『GOOD VIBRATIONS』が完成。D.A.N.、tofubeats、□□□(クチロロ)、シャムキャッツ、WONKといった新進気鋭のアーティストたちとコラボレーションを行い、その音楽世界の新たな一面を鮮やかに提示してみせる彼の心中やいかに。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 冨田望

まさに青天の霹靂(笑)。作り手として背中が押されるような瞬間でもありました

2016年10月にリリースされた前作『One』は、キリンジ脱退から3年半越しのアルバムでしたが、振り返ってみていかがですか?

海外には“ビッグ・ロック”という言葉がありますけど、自分としては大きいポップスをやろうと思ったアルバムだったんです。通常、音数を減らしたサウンドで作っていくのが、自分の得意なやり方なんですけど、そのやり方はキリンジや(以前のソロプロジェクト)馬の骨でもやっていたし、過去やってきたこととの差別化を図るために、通常より楽器を増やして、ストリングスやホーンを交えてアレンジした作品でもありました。

そして、今年に入ると、キリンジ時代に泰行さんが書いた「エイリアンズ」が、のんさん出演のテレビCMに起用され、その楽曲の素晴らしさが改めて注目されました。

なにせ、2000年にリリースされた曲ですから、まさに青天の霹靂でした(笑)。そして、曲を大事に扱ってくれたCMだったことや、あのCMで「エイリアンズ」を知ってくれた方々からの反響も嬉しかったですし、わかりやすいものが求められがちな時代にあって、決してわかりやすいとは言えないあの曲が受け入れられたことは、作り手として背中が押されるような瞬間でもありましたね。ただ、自分が年齢を重ねたことで、若いときに感じていた上の世代とのギャップを、今度は若い子が自分に対して感じるようになったわけで、世代を超えて幅広く音楽を届けるうえで、音楽家としては難しい状況になってきたなとも思うんですけど、こと「エイリアンズ」に関しては、歌詞の内容が今の時代とリンクしたところがあるのかなって思います。2000年のリリース当時は今と比べれば、インターネットはそこまで発達していなかったし、SNSのようなコミュニケーションツールもなかったのに対して、今はみんなが常時繋がっているような、繋がっていないような感じじゃないですか。

当時と今とでは孤独の質が違う気もしますしね。

そう。違うと思いますし、SNS上でみんなエイリアン同士なんだけど、繋がりたいという気持ちはあったりして、そういう意識に「エイリアンズ」が響いたのかなって。

そういう意味で、「エイリアンズ」の再評価は17年前に書かれた曲が時代や世代を超えて、響くことがあるというひとつの可能性を見せてくれたと思うんですけど、今回の新作はその「エイリアンズ」の流れを踏まえて、制作が始まったんでしょうか?

そういうわけではないんですよ。まず、最初に自分の音楽をもっといろんな人に聴いて欲しいという気持ちがあり。新進気鋭の、自分とは質の異なる音楽を作っている人たちとコラボレーションしたら面白いんじゃないか?というところで作品を構想していたら、嬉しいことにまったく想定していなかったところで「エイリアンズ」のCM起用によって、いろんな世代に聴かれるという状況が生まれて。

嬉しい偶然がまさに制作を始めようとしていた新たな作品の追い風になったと。

そうなんですよ。そして、今回のコラボレーションに関しては、前作『One』のプロモーションで地方を回っているときにインタビューや雑談で“最近注目している若手はいますか?”と訊かれることがたびたびあって。そこで自分が今の音楽のチェックを怠っていたことに気づかされて、これじゃイカンなって。そこからいろいろなものを聴くなかで、新たに知ったWONKやD.A.N.を含めた6組にお願いすることにしたんです。

その6組は、D.A.N.、tofubeats、□□□(クチロロ)、シャムキャッツ、WONK、泰行さんのツアーバンドであるTHE NEW SHOESと、見事に音楽性が異なるアーティストが顔を揃えていて、泰行さんの曲や歌の魅力をいろんな角度から引き出した作品になっていますよね。

それがうまくいってたらいいなとは思いますけど、各アーティストにはできるだけ自由にやってもらえるように、簡単なドラムとビアノ、歌メロだけのごくごくシンプルな尺の短いデモを渡していて。作業に入る前には、それぞれ実際に会って打ち合わせはしたんですけど、こちらからの要望を具体的に伝えることなく、彼らのアイデアに身を委ねた感じなんです。

では、内容に関して、一曲ずつ触れていきたいと思います。まず、1曲目の「EYE」でコラボレーションしているD.A.N.はエレクトロニックミュージックを通過したバンドサウンドを聴かせる3人組ですが、この曲では泰行さんの曲では珍しく、リズムやフレーズのループをベースに進行していきますよね。

この曲は、D.A.N.を意識して、デモの段階からフレーズの繰り返しを用いていて、それを彼らがさらに膨らませてくれましたし、歌詞に関しても、櫻木(大悟)さんが作ってくれた叩き台に対して僕がリアクションする形でお互いの言葉を半々ずつ盛り込んだ、いいコラボレーションができましたね。4つ打ちの曲は、キリンジ時代に兄(堀込高樹)が何曲か作っていたと思うんですけど、打ち込みのシンセを交えたループ感のあるアレンジは自分の曲ではやったことがなかったし、自分の曲調や声質との相性の良さは新鮮でもあり、発見でもあって、まぁ、彼らのようにクールにはできないとは思うけど、今後、自分なりにトライしてみようかなって思ったところです。

そして、tofubeatsと相まみえた2曲目の「THE FLY」は、60年代中期のビートルズを思わせるベースラインが印象的なサイケデリックなものですね。

tofuくんとはイベントで知り合って、音源をもらったり、彼の音楽は知っていたので、どういう曲を投げても大丈夫だろうという安心感がありました。そのことを踏まえて、彼にはポップス的なアレンジをお願いするんじゃなく、コードは2個くらい、メロディも繰り返しという極端にシンプルなデモを渡して、それを自由に膨らませてもらおうと思ったんですよ。ギターに関しては、エレキのフレーズはtofuくんが最初に考えたもので、彼が打ち込みで入れた音をなぞってプレイしていて、間奏に出てくるガットギターはもともと間を埋めるために仮で僕が入れたアコースティックギターをtofuくんのアレンジで採用されていたので、クラシックギターに持ち替えて、ブルージーなフレーズを弾き直してみました。

そして、この曲は泰行さんの歌詞がすごいことになっていますよね。

ははは。最初は、“火の中に虫が飛び込むように、痛い目にあうのはわかっているけど、僕たちは恋に落ちてしまう”というような恋の歌にしようと思って書き始めたんですけど、作っているうちに、“ハエが食虫植物に捕らえられる”という例えに変わってきて、そこから派生して、気がついたら、女性やアルコール、その他良くないものにハマって、身を滅ぼす人の歌を書くことになっちゃいましたね(笑)。