Interview

大原櫻子が「一生大事にしていきたい曲」に出会った。水野良樹から受け取った「さよなら」への特別な想いとは?

大原櫻子が「一生大事にしていきたい曲」に出会った。水野良樹から受け取った「さよなら」への特別な想いとは?

作詞・作曲・プロデュースを秦 基博が手がけた前作「マイ フェイバリット ジュエル」から3ヵ月。大原櫻子の通算8枚目となるシングル「さよなら」は、名曲と断言できる、キャリア初となる失恋バラードとなっている。作詞と作曲は、いきものがかりを放牧中の水野良樹。いきものがかりのプロデュースも手がけたことのある亀田誠治が大原のデビュー作『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の音楽プロデューサーを務めていた縁もあり、水野は自ら進んで映画館に足を運んで鑑賞したという。それ以来、大原のライヴはもちろん、出演舞台も観劇するなど、シンガーとして女優として成長し続ける大原をつねに見守ってきた。そんな彼に彼女はどう見えていたのか、そして、大原は彼が書き下ろしたこの曲をどう受け取ったのか。きっと長く歌い継がれていくだろう、新しいスタンダードナンバーが誕生した経緯を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望

失恋したときの感情、ひと言では終わらないいろんな感情が全部詰まっている

4回目の全国ツアー〈4th TOUR 2017 AUTUMN〜ACCECHERRY BOX〜〉がファイナルを迎えたばかりですので、ツアーを終えた感想から聞かせてください。

去年は武道館やホールツアーをやらせていただいたんですが、今回はZeppツアーだったので、お客さんひとりひとりの顔が見えるし、声もすごく聞こえてきて。Zeppならではの良さを改めて感じましたし、ライヴハウスっていいな!と思いました。

これまではツアーのたびに何か新たな挑戦をしてきました。アコギ、ピアノ、ダンスときて、今回は……。

これまでの楽曲をメドレーでアコースティック編成でやったりしました。遊び心がありつつも、ちゃんと歌を届けられる部分もあって、すごく楽しんでライヴができました。あと今回は、ONE OK ROCKさんの「Wherever you are」と中島みゆきさんの「糸」をカバーさせていただいて。お客さんにとってはすごく意外な選曲だったと思うんですけど、楽しんでくれている感じがあったし、とても濃厚な時間でしたね。

紗幕に投射した映像とシンクロしたオープニングも新鮮でした。

ちょっとスタイリッシュでストーリーのあるものにしたかったんです。しかも、1曲目が力強いバラード「ALIVE」だったんですけど、これまでの「盛り上げていくぞ!」という始まり方とは違って、じっくり聴かせる感じでスタートして。ちょっとテイストを変えてみたというか、“ACCECHERRY BOX”の世界に連れていくぞ感を作れたかなと思っています。そういうのはもしかしたらお芝居の影響もあるのかなって思ったりしますね。

そして、アンコールでは新曲「さよなら」の披露もありました。

みなさん、ひと言ひと言の歌詞を聞き逃さないように一生懸命に聴いてくれて。とても丁寧に受け取ってくれているなという感じがあって嬉しかったです。

今回、水野さんに楽曲提供をお願いした経緯を教えてもらえますか?

もともとは音楽番組で共演させていただいて知り合ったんですけど、その前から映画も観てくださっていたし、ツアーも来てくださったし、芝居も全部観に来てくださっていて。とにかく私のことをよく見てくださっている方なんですよ。私、ヴォーカルの(吉岡)聖恵さんとも仲がいいんですけど、そんな水野さんから今年の頭にお声がけをいただいて、「ぜひやりたいです。いや、こちらこそお願いします!」という流れです。

何かリクエストは出しました?

基本的には、水野さんが書いたものを歌いたいと思っていました。私の芝居も音楽も全部見てくれている人だからこそ、安心感がすごくあって。秦さんのときは“嬉しい! ウキウキ”だったのが、水野さんの場合は“嬉しい! 安心”というのがありました。なので、水野さんにすべてお任せしますという感じでしたね。ただ、「サクちゃんの中でテーマとかある?」と聞かれたときに「私はいきものがかりさんの曲の中で『帰りたくなったよ』がすごく好きです」ということは伝えていて……あの曲を聴いたときに、人って懐かしいと感じるものにすごく感動できるんだなと思ったんですよね。それは、舞台をやっていても感じることが多くて。だから、そういう懐かしさがあって、感動できる歌を歌いたいですということは伝えました。そしたら、初の失恋ソングがきてびっくりしたんですけど……。

最初に受け取ったときはどう思いました? どうして失恋バラードだったのか。

大原櫻子としてはすごく新鮮であり、ようやく失恋ソングが歌えるんだなという嬉しさもあり、受け取るお客さんはどう思うんだろうという不安もあり。最初はそんな感じでしたね。もともと特に暗いわけじゃないんですけど、明るい面だけでなく、苦しかったり、悲しかったりする部分も書いてくださったのがすごく嬉しかったです。素の私というか、私の人間性を見てくれていたんだろうなと思いました。

歌詞はどう捉えました?

最初に思ったのは「別れた直後に歌っている人の歌なんですか? それとも、しばらく経ってから歌っている人の歌なんですか?」ということですね。水野さんに聞いたら「両方です。時系列が動いています」と言われて。「この曲は別れた直後の人が聴いても、少し落ち着いて失恋から立ち直っている人が聴いても、20年前の恋愛を思い出す人が聴いても、みんなが共感できる曲にしたい」とおっしゃっていて。本当にそれが全部詰まっているというのをすごく感じました。でも最初、それをなかなかうまく捉えることができなくて、最初に歌詞を読んだときは「うわ〜。これ、歌ったら絶対に泣いちゃう」と思いました。サビが「終わったの」っていうフレーズで終わるし、今まで自分が歌ってきた音楽にはなかった強さというか、はっきりした意志みたいなものがあって。だから、これはすごく責任を持って歌う曲だなと感じていました。

主人公の女性には共感できます?

すごくわかるなと思いました。ほとんど自分と近いというか、きっと世の中の女性だけじゃなく、男性も含めて、みんなこうなんだろうなと思います。どんな理由で別れても、好きだった感情は絶対に消えるものではなくて。忘れられないし、悲しいし、苦しい。でも、別れたあとに、夢に向かってもっと頑張ろうと思える自分がいるのはその人のおかげでもあるから、感謝する気持ちもあったり……でも、やっぱり憎い気持ちもある(笑)。そういう、失恋したときの感情、ひと言では終わらないいろんな感情が全部詰まっているので、歌い方も表情をいろいろ変えています。

恋より夢を選んで上京してる女性ですよね。

そうですね。でもたぶん、相手の人の夢も応援するために別れたんだろうなと思うんです。自分の夢のためだけではないんじゃないかって。自分の夢のためだけに別れたなら自己中心的ですけど、彼の未来も応援しているはずで。だからこそ、本当は別れたくなかったんだろうと思うし、切ないし、強いし、前向きだし、素敵な恋愛だなって思いますよね。

歌い方は本当にひと言ひと言で表情は複雑に変わってますよね。

最初の「さよなら」はちょっと強がって笑顔で言っていて。大サビは、大人になりきれない、自分の心の中にずっといる子供のような声で叫んでいる。そのあとに出る「さよなら」は本音というか、悲しい「さよなら」。さよならしたくないさよなら、みたいな感情をぶつけている。生の自分の感情を入れられる歌でした。

水野さんからは歌について何かアドバイスはありました?

「この曲は失恋ソングだけど、太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』のように、笑顔で歌って欲しい」と言われました。そこで、「そうか」と思って歌ってみたら、聴いた人はより切なさが増すんだなっていう発見がありましたね。でも、すごくエネルギーがいる曲なんですよ。最後のサビまでそんなに高くないので、歌いやすいと言えば歌いやすいメロディなんですけど、歌いやすい歌ほど難しいなと思って。どこまで自分が表現できるのかを試されている感覚でした。

大原さんの歌の表現力を感じる曲でした。ご自身では歌ってみてどんな感想を持ちました?

すごいターニングポイントになる曲だと思いましたね。一生大事にしたい曲に出会えたという思いと、今ある私のイメージとかを一回捨ててもらって、純粋にこの曲をいろんな人に聴いて欲しいという強い思いと、覚悟があります。別れたばかりの人の背中も押せる曲だし、「こんな恋、まだ知らないな」という10代の若い人たちにも聴いて欲しいし、本当に幅広く愛される曲になって欲しいと思っています。

ライヴで歌ってみて気づいたことはありました?

同じようには二度と歌えない歌だなと思いました。歌い終わってからものすごく考えちゃう曲というか。今日の「さよなら」はこうだったなって思う曲です。歌い終わって「はい、次」じゃなくて、もちろん歌い終わって次の曲があるんですけど、一回自分の中で深呼吸してから次にいかないとダメな曲ですかね。

そのくらい余韻が残る曲ですよね。

そうですね。大サビ明けに一回バンドの音がなくなって「さよなら〜」ってピアノと歌だけになるんですけど、そのときの緊張感も毎回違っていて。そこに正解はないんですけど、すごい大事な部分なんだよなというのを改めて気づかされていますね。

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